「ん?あれ…三崎さん?」  
夏休みの繁華街、学生ばかりが目に付く中で、ふと司の目に入ってきたのはクラスメイトの三崎ゆい…が、男二人に絡まれているの図。  
ナンパだろうか、と思って見ていると、男がゆいの腕を取って無理やり連れて行こうとしている。  
おとなしいゆいのことだ、断りきれないのだろう。  
とっさに歩み寄って、声をかけた。  
「何やってんだ?アンタら」  
男二人は司より少々上背があるが、臆することなく近寄ってきたためか簡単にゆいの手を離す。  
「お前こそ何なんだ?」  
ふりかえった男の間からこちらをうかがっているゆいが、ほっとした表情をしているのが見える。  
「…高槻く…」  
ゆいの台詞をさえぎって、目配せして手をとる。  
「恋人だよ。ゆい、お前ぼーっとしてんだから一人で歩き回るなっつったろ?ほら、いくぞ」  
言い切ると、男たちも人ごみで騒動を起す気はなかったらしく早々と引き上げた。  
それでも怪しまれるとマズイのでゆいの手を握ったまま、しばらく歩く。  
「…と、この辺でいいか。大丈夫?っつか、余計なことしちゃった?」  
「う、ううん、ありがとう。どうしようって、ほんと、困ってたの。ありがとうね、高槻君」  
手を合わせるゆいの仕草はとても可愛い。本当に男だったら、こんな子を彼女にしたいなぁと思わせるような少女だ。  
「いや、たまたま通りかかっただけだしさ。喧嘩になってたら負けてただろうけど」  
笑って言うと、ゆいもくすりと笑う。  
「あ、ねぇ、高槻君、今から時間ある?」  
携帯で時間を確認するが、実際は時間など何時でも良かった。どうせ一人でふらりと買い物に来ただけで、特に用事もない。  
「ん?あるけど…なんで?」  
「お礼したいの。マックでいい?」  
すぐそこにあるファーストフード店を指差したゆいに、思わず手を振る。  
「いや、いいよ別に…たいしたことしてないし」  
「いいから!…高槻君に聞きたいこともあるし…ね?」  
ぼーっとしているようで押しが強い。だからクラス委員などやっていられるのだろうな…と思いながら、結局マックに足を踏み入れた。  
二階席の隅でシェイクをすすり、ぼんやりと街行く人々を見る。  
さっきからゆいは何か言いたそうにしているのだが、言い出す気配がない。  
 
このままシェイクを飲みきって家に帰ろうか、と司がぼんやり思ったときだった。  
「…あの、ね。高槻君って、彼女とか…いるの?」  
 
おもわずシェイクを吹いた。  
いやまさか。たしかに女の子にはそれなりに人気があるが、まさかゆいが。隣のクラスのあいつと付き合ってるんじゃなかったっけ。  
そう思っていると、ゆいが慌てて言葉を継ぐ。  
「あ、あのね、違うの!あたしじゃなくて、友達がね…高槻君のこと知りたいって」  
口の周りを拭いて、なんとか落ち着く。彼氏ならいるけどな、しかも先生、という内心はおしとどめ。  
「…いないよ。でなきゃ一人でこの辺ふらふらしてねーって」  
「…あ、そっか、そーだよねー。うん、そっかー…」  
わかりやすい回答のはずなのに、ゆいの納得の仕方はどうもおかしい。  
次は何を言ってくるんだろうと思ってシェイクをすすると、またもや爆弾発言。  
「…じゃあ、三宅先生と付き合ってるってほんと?」  
ぶは、とより豪快にシェイクを拭いた。ゆいの方向に飛ばさなかった自分をほめつつ、げほげほとむせる。  
「ご、ごめん、あぁぁあの、別に高槻君がホモとかじゃなくて、いや、そうなんだけど、じゃなくて、  
だって高槻君が、先生の家に遊びに行ってるって言うから…」  
落ち着けない。落ち着けるわけがない。よりによって決定的瞬間を目撃されていたとは。  
隆也は気にするなと明るく言ってのけたが、実際にこういう事態に陥ると困るのは隆也も司も同じである。  
「…誰だよそんなこと言ったの…」  
「え?えーと…見たのは他のクラスの男の子らしいんだけどね、女の子の間ではちょっと噂になってる」  
そうだよな、女の子のほうがこの手の話は好きだよな…と思いつつ、どう収拾をつけたものかと思案する。  
「…で、三崎さん他女子の意見では俺がホモってことになってんの?」  
「え。…わ、わかんないけど、高槻君もてるのに彼女いないし…そういうこともあるのかなって…」  
多分これが、クラスの、下手をすると知り合いの女子全員の共通認識で、それこそ下手をすると完璧にホモだと思われているのだろう。  
まぁ、それでも構わないといえば構わないのだが、それで男に言い寄られるとなると、少々困る。  
ゆいの表情をうかがうと、困ったような表情で一生懸命何かを考えている。  
彼女は口が堅いと有名だし、これ以上噂を広めないよう協力してもらいたい。となると、いっそ真実を告げてしまったほうが楽か。  
「…残念だけど俺はホモじゃない」  
それでも一応、相手の出方を伺う。  
「そっか!そうだよね、うん、良かった!友達も喜ぶよ!」  
にこにこと、屈託のない笑顔。多分その、司に気があるらしい友人もこんなふうに喜ぶのだろう。  
…それはそれで、心が痛い。やっぱり言うしかない、と決意して、司はゆいの目をみつめる。  
「…ただ、女の子と付き合うつもりもない」  
「……え?」  
くるりと、ゆいの大きな目がさらに大きくなる。深く息をついて、ゆいにだけ聞こえるように、声を絞り出す。  
 
「…俺、女なんだ」  
「え…た、高槻君が、おん、な…って…え…それじゃ…?」  
ぶつぶつと、内心駄々漏れで呟くゆいの反応は当然だろう。  
「あぁ…だから…」  
「え、じゃあ、ホモじゃなくてオカマさんってこと!?」  
ごつん。  
テーブルに頭を打ち付けて、そのまましばし考える。  
なんだろう、この子の相手は思ったより疲れるかもしれない。  
大丈夫?と心配そうなゆいの声に、ゆっくり頭を上げる。  
「………逆だ」  
そう言うのがやっとだった。  
「逆?…ってことは…オナベ?」  
こくん、と頷く。  
「え、え…えぇぇぇぇぇっ!?」  
顔に似合わずデカイ声を出す。おかげで周囲の視線が注がれて、慌てて司はゆいの口を押さえた。  
「ちょ、ちょっと落ち着いて。ゆっくり息して…そう」  
手を離して深呼吸をさせると、ゆいはようやく声をひそめる。  
「ほんと?…だって、学校には男として登録されてるでしょ?そんなこと…」  
「…まぁ、そのへんのからくりはうまいことやってるからさ  
そんなわけだから、その子には、俺には好きな人がいるとかなんとか言っといてくれるかな?あと、このことは秘密にしてほしいんだけど」  
わかった、と言って、再びゆいは考え込む。  
司のシェイクはもうほとんど残っていない。…胃に入ったのは半分程度のような気がするが。  
その最後のシェイクを飲みつくして、さっさと帰ろうとする司に、ゆいは三度の攻撃。  
「…じゃあ、先生と付き合ってるのはほんとなの?」  
最後の一口も堪能できない。  
「………本当、です。…ほんとに、ほんとに内密にお願いします。バレたら俺退学だし…先生もクビだろうし」  
「わ…本当だったんだ…うん、大丈夫。助けてもらったし、あたしも高槻君や先生とお別れしたくないし」  
なんでかちょっと頬を赤くして言うゆいは、本当に約束を守ってくれるだろう。とりあえずは大丈夫そうだ。  
今日は色々と神経を使ったような気がする。というか、正直疲れた。もう帰ろう、と立ち上がる。  
「…じゃあ、俺はそろそろ…」  
「ちょっと待って」  
ごめん、今いかにも嫌そうな顔した、俺。  
 
しかしゆいに気にした様子はなく、なんだかもじもじとしている。  
「…あ、あのね…その、お願いが、あるの…」  
「…いいよ。秘密にしてもらうかわりに、俺にできることなら」  
快く言って座りなおし、ゆいの赤い頬を見つめて、その雰囲気の愛らしさを再確認する。  
「あの、ほんとに、失礼なこと聞くんだけど…だから、答えたくないなら答えなくていいからね?」  
遠まわしな言い様に嫌な予感がする。無視して帰ればよかったかもしれない。  
「その…先生と…Hしたの?」  
帰ればよかった。ぱっと自分の頬も染まったのがわかる。  
「…あの、さ、それは…何で知りたいのかな…」  
「あ、ご、ごめん。その、あたしね、今付き合ってる人がいて…あの、だから…参考に……」  
語尾が消えていくのを聞くと、こっちが申し訳ないような気分になる。  
「あー…そっか、うん…まぁ、不安にもなるよね…」  
「う、うん。だからね、あの、もし高槻君がいいなら、色々教えて欲しいなって…女の子同士だとなんか、言いにくいし  
でも、その人と実際…する、ときに、あたしが怖がっちゃったら悪いかなって……」  
ゆいの健気さに少し胸を打たれる。実際、初体験への恐怖というのは並みのものではない。  
「…わかった。俺にできることなら協力するよ。…ただまぁ…ここで、ってわけにはいかないけど」  
「ほんと!?うん、わかった。じゃあうちでしよう。今誰もいないし…」  
しよう、って何か違う気がしますよ?誰もいないに越したことはないけど、何かちょっと、おかしくないですか?  
などと嫌な予感がぐるぐると司の頭を回り始めるが、言ってしまったら現実になりそうで、結局何も言わずにゆいについて行くことになった。  
 
「はい、ここに座って。飲み物持ってくるから」  
「あぁ、おかまいなく…」  
ゆいの部屋に一人取り残され、ぐるりと部屋を見渡す。なんというか、女の子の部屋だ。  
人気バンドのポスターがあって、タンスの上にはぬいぐるみがあって、ベッドやカーテンはピンクで、机の上には可愛らしい小物が並んでいて。  
大きな姿見があって、テーブルの上にはいろとりどりのマニキュア。部屋の隅に詰まれた雑誌もおしゃれな女の子であふれている。  
こういうのが苦手だから男やってるんだっけな、と再認識させられるような、女の子らしい部屋である。  
ゆいは夏の定番カルピスを手に戻ってきて、また司に白濁液を吐かせるようなことをさらりと言った。  
「どうせ脱ぐんだし、冷房つけなくてもいいよね?」  
なんとか吐かずにカルピスを飲み下す。  
「っぐ……う、な、何?脱ぐって…実践!?」  
「え、あたしはそのつもりだったんだけど…ダメ?」  
真剣にダメ?とか言われると、男じゃなくても許したくなるから不思議だ。  
 
「ダメ…ってわけじゃないけどさ…いや、いきなりだったから…」  
「…だって高槻君の都合もあるだろうから、時間ないし…その、知識だけなら、あたしだって人並みにあるモン」  
頬を染めて拗ねたように言われると、やっぱり憎めない。こんな可愛い子を抱こうとしてるのはどこのどいつだ。  
…いや、予想はついているのだが。  
「…三崎さんの相手ってさ…」  
「ま、まって、言わないで!…あのそれがわかっちゃうと、ほんとに、恥ずかしくて学校で高槻君の顔見られなくなっちゃうから!」  
いきなり実践をもちかけておいてなんだそれは。と思わなくもないが、これはこれで恋する女の子独特のものなんだなと思うとほほえましい。  
「わかった。聞かない。…で、ほんとに、その…して、いいの?」  
「…うん……えっと…最初は、キスから、だよね」  
ゆいが司の横に腰を下ろす。これはどうにも本気でゆいの彼氏役をやらなければならないらしい。  
「まぁ、そうだけど…」  
緊張した面持ちのゆいの頬に、軽く口付けてやる。  
「口は、ほんとに好きな奴にとっておきな?最初はキスも難しいかもしれないけど、そんなに怖いもんじゃないから、大丈夫」  
「…うん」  
まぁ、たまにはこういうのもいいかもしれない。自分が犯られるわけじゃなし、とどこか無責任にふっきれた司は、にこりと笑ってみせる。  
「あと、高槻君、はやめてくれるかな。司でいいよ。俺も、ゆいって呼ぶから」  
「うん…司、くん」  
苦笑して、ゆいの背に腕を回す。やわらかな女の子の身体は、さわり心地がいい。  
そのまま抱き寄せて、しばらく抱き合う。ゆいの鼓動が聞こえて、それを落ち着かせるように背を撫でる。  
「…大丈夫…相手も緊張してるんだから、力を抜いて…」  
「…うん…」  
少し毛先の巻いた髪をどけて、首筋に口付けるとぴくりと身体が跳ねる。  
「……多分、だけどな。相手も初めてだと、どうしていいかわからないだろうから、服は自分で脱いでやるといいかもしれない  
 相手が脱がせようとしたら、手伝ってやって…あ、しないとはおもうけど、ジーパンは厳禁な。脱がせずらいから」  
言いながら少し身体を離して、ゆいのシャツを脱がせる。  
「…あと多分…下着も脱がせずらいから、やっぱ自分で脱いだ方がいいかも」  
「う、うん…ねぇ、た…司君は脱がないの?」  
聞かれて、思わず手を止める。脱がないで済まそうとしたのだが、そうもいかなさそうだ。  
「いや…脱ぐよ。…恥ずかしい、よね?お互い背中合わせで脱ごうか……あぁ、ベッドの上で」  
「うん」  
 
背中を向け合って服を脱いでいたら、後ろから声がかかった。  
 
「ね、脱いだ服ってどうしよう?」  
「…そのままでいいよ。どうしても気になるならたたんでもいいけど…」  
サラシを巻き取るのに少し時間がかかって、ゆいを待たせてしまう。真昼間から女の子の部屋で裸になるというのは、どうにも恥ずかしい。  
振り返ると、シーツにくるまったゆいがじっとこちらを見ている。  
「ごめん。多分ほんとは男の方がさっさと脱ぐと思うんだけど…」  
「…司君、綺麗。ほんとに女の子なんだね…」  
改めて言われると、やはり恥ずかしい。そっとゆいのシーツを剥ぐと、白く滑らかな裸体が目の前に現れる。  
ごく、と唾を飲み込んだ。  
「…うん…する、よ?」  
首に口付け、そのまま鎖骨に唇を滑らせる。ぴく、と反応するのを感じて、胸に手を添え、下から持ち上げるようにもみしだく。  
「ん、ぅっ…」  
やわらかく、少しずつ力を込めて、指先で性感帯をくすぐる。…自分でするように。  
軽く乳首がたってくるのを感じて、興奮を覚える。耳を甘く噛んで、できるだけ低く囁く。  
「…感じる?」  
「ん、うん…」  
手を胸から離し、身体をぴたりとくっつけるように抱き寄せて、ベッドに押し倒す。  
額にキスして、笑ってみせる。  
「…大丈夫。緊張しないで…もし乱暴にされるようだったら、ちゃんと痛いって言えばわかってくれるから」  
「うん…ね…司君も……最初、怖かった?」  
あぁ、腕立て伏せは重要だな、とぼんやり思いながら上体を離して、「最初」のときのことを思い出す。  
「…最初かぁ。入れる前はやっぱり怖かったよ。でもそれ以外は怖くなかったかな。ちゃんと優しくしてくれたし」  
「先生が?」  
思わず苦笑する。司の「最初」の相手は、ゆいとも顔見知りだ。  
「…いや、他の奴。…多分…大切なのは、怖がらないことと、素直に反応することだと思う。  
相手も女の体のことなんてわかってないからさ、態度なり言葉なりで伝えてやらないと、向こうも困ると思う」  
ゆっくり、できる限り優しく声をかけると、ゆいの表情も緩む。赤い頬に口付けてやると、視線をさまよわせて口を開く。  
「そっか…あ、あの、ね…あたし、その…入れるとこって、わかんないんだけど…」  
「…あ……自分で触ったこと、ないんだ。そっか…最初に触るのが俺、ってのもなんだかな…」  
遠慮する司をじっと見つめて、ゆいは決意を込めて言う。  
「……自分で、触るから…司君の、見せて」  
「っえ…!?…あ……」  
ぱちぱちと司が目を瞬かせている間に、ゆいは司の下から這い出して上体を起している。  
 
「お願い!」  
同じようにベットの上に腰を下ろして、司は逡巡する。ゆいの手を導いてやって、自分で触れるよう手ほどきすることはできるだろう。  
だが、こう正面切って真剣に頼まれると、なかなか嫌とはいえないのが司の欠点でもある。  
「…わかった…じゃあ、俺と同じかっこしてくれる?」  
足を前に投げ出し、開いて、膝を折る。M字開脚とかいう、それこそよく「見える」体勢だ。  
恥ずかしさで顔が火照ってくる。それでもゆいの方を見やると、同じように火照った頬を恥ずかしげに伏せて、同じ体勢を取っている。  
「…ここ…こうして…」  
そっと自分の花弁を開いて見せると、ゆいの視線が痛いほど突き刺さる。  
「わ…こんなに…なってるんだ……」  
困ったことに、視線だけで軽く感じてしまう。隆也にいじめられるうちに気が付いたのだが、どうも自分は軽くMっ気があるらしい。  
「ん…ほら、ゆいも…」  
「うん…あ…」  
おずおずと伸ばされた白い指が、グロテスクな花弁を割る。中は濃く鮮やかなピンク色で、てらてらと淫靡に光っている。  
自分の物もああ見えるのだろうか。そっと秘裂の中心から下へ指をすべらせる。  
「…ここが、入れるとこ…ん…ぅ」  
つぷ、と指先を入れて、息をつく。ゆいを見る目も、女のそれに変っていた。  
「…入れてごらん。大丈夫、指先だけなら痛くないから…」  
「う、うん…えっと…ん、ここ…?」  
司よりも蜜のにじんでいるそこはかんたんにゆいの細い指先を受け入れた。  
「ん、なんか…すごく、キツイ…」  
「…最初…いきなり入れようとしたら、ちゃんと止めて…指いれてからにしてもらったほうがいいよ…っん…」  
ぐ、と指を押し込んで、ゆいに微笑みかける。それを食い入るように見ていたゆいは、ゆっくりと自分の奥へと指を進ませる。  
「…指でね…ほぐすと、少しは入りやすくなるから…は……んっ…あ……」  
思わず自分のGスポットをこすって、声をあげてしまう。  
「…司君、気持ちいいの…?なんかよく、わかんないん、だけど…」  
指を入れても動かすことができずにいるゆいの視線が、じっと司に注がれる。それが、快感になる。  
「気持ちいい、よ…ん…でも、最初は…中はあんまり、気持ちよくないから」  
指を引き抜くと、僅かに蜜に汚れていた。ほっとしたようにゆいも指を引き抜いて、汚れた指を不思議そうに見ている。  
「女の子が一番気持ちいいのはここ…クリトリス、ってやつ」  
言って、頭を出し始めた陰核を撫でると、ぴく、と背がはねる。このまま行為に没頭したいと思わせるような快感に、息が乱れる。  
「は…触ってごらん…」  
すっかり女の表情で言う司に見入っていたゆいは、はっとして自分のそこに手を伸ばす。  
 
「…えっと…あ、これ?……っきゃ…!」  
初々しいゆいの反応に、口元が緩む。乱れた息を整えて、足をそろえて座りなおす。愛液のぬめりにも快感を覚える。  
「…強くすると、痛い人もいるみたいだから…そっと、ね」  
「うん…」  
これで少しは免疫が付いただろうか。とはいえ挿入…はできるものではなし、あとの問題は自分で自分の性感帯を理解しているかどうかだ。  
「…あの、さ。オナニーはしたこと、ある?」  
あからさまに言うのは少しはばかられたが、他に言いようもない。  
「う、うん。あの、胸は…触るんだけど、その…あそこは、触るの怖くって、下着の上から…」  
「そっか…自分で感じるところがわかると、感度良くなって少しは楽になるんだけど…」  
考え込む司に、いつも唐突なゆいがまた大胆な提案してくる。  
「じゃあ、触りっこしようか?」  
「…へ?」  
思わず間抜けな声もでる。  
「あ、だから、司君が感じるところをあたしが触ってもらって、あたしもお返しするから…」  
…それは本格的なレズプレイではないだろうか。  
とはいえ一番手っ取り早い方法ではある。  
「…んじゃ、やってみる?」  
「うん!」  
やたらとゆいが楽しそうなのは何でだろう。  
どうも彼女と司の関係はボケ→つっこみ→とんでも発言→撃沈、と流れが決まっているらしい。  
しかしここまできたらもうヤケだ。心の中で隆也に謝って、ゆいの首を舐め上げて、手は胸をもみはじめる。  
「んぅ…は、司君、も…」  
ゆいの舌がたどたどしく首を這い、司の動きに習って胸をもむ。  
「ん、そう…ここ、がいいの…」  
性感帯をなぞると、ぴくりと身体を跳ねさせて、同じように触れてくる。  
「ん、気持ちいい…ここ、司君も感じるんだね…」  
「うん…あ……ゆいのここ、起ってきたよ…」  
硬くなった乳首を指先でつまんで、くりくりとこねてやる。  
「ひゃんっ…あ、気持ち、いい…」  
同じように乳首をこねられると、司のほうがするどく反応してしまう。経験が多い分感度が磨かれているのかもしれない。  
「んぅっ…は、うん……あと…ん」  
熱い息を耳に吹きかけて、舌を差し入れる。  
 
「きゃ…ん、なんかっ…ぞくぞくするね…」  
無邪気に笑うゆいの吐息と舌が耳を愛撫すると、司の背が震える。  
「っん…は…」  
「…なんか司君、可愛い。ね、先生とするときって、どんな感じなの?」  
間近で目を覗き込まれると、ふっと現実に引き戻されたような気がする。  
「…え…あぁ…どう、って言われてもな…」  
自分だけ息が上がっているのが恥ずかしい。ゆいの頬も赤く色づいているのがせめてもの救いだろうか。  
視線から逃れるように鎖骨やうなじに口付けながら、言葉を紡ぐ。  
「…優しい、よ。たまに意地悪もするけどね」  
優しくて意地悪な男の顔を思い出しながら腰の周りを撫でてやると、ゆいは身をよじりながらも真剣な表情で聞いてくる。  
「ん…うまい?その、イったりするの?」  
しかも、実にストレートに。  
ゆいの手が腰に触れると、同じように身じろいでしまう。男とは違う柔らかな手の感触は、癖になりそうだ。  
「…は…まぁ、あの歳だからね、俺らの歳の男よりはずっとうまいと思うよ…ん…イク、こともあるし…」  
腰からお尻にかけての丸みのあるラインをなぞって、尻を撫で、肉をつかむ。  
「…っイク、ときってどんな感じ?」  
ゆいの手は繊細な動きをする。ひょっとしたら、司よりうまいのかもしれない。  
「ふ…んっ…頭が真っ白になって…身体が、震えて…あそこがぎゅぅってなって…よく、わかんない…」  
思い出すと、それだけでも快感が走る。ぴくぴくと震えながら、ゆいの内腿に手を伸ばす。そっと撫でてやると、ぴくりと震える。  
「…ね、あそこ…触って」  
驚いて顔を上げると、上気した頬でうっとりと見つめてきた。  
「……ん、わかった…ゆいも、俺の…触って…」  
頬に口付けて、そっと足の付け根に手を滑らせる。  
少し膝を開いてくれたゆいの中心を指先で割り開いて、濡れた入り口に指を沈める。  
「ん、司君、もね…」  
同じようにされて、あられもない声をあげてしまう。  
「ひゃあっ…は……はぁ……ゆい…ここが、Gスポット、だよ…」  
指先を曲げて膣内をこすりあげると、きゅうと膣が締まった。  
「んっ…あ、なんかっ…そこ、いい……」  
「…うん、ゆいのここも、喜んでるよ…」  
ゆいの反応に頬を緩ませるが、同じようにしようとうごめく指に反応する。  
「っん…あ、もうちょっと、下、そう…っんぅっ…」  
 
きゅう、と指を締め付ける膣の感覚。  
「…司君のも、喜んでる…ね」  
どうも自分の方が感じてしまっているらしい、というのはわかっているのだが。  
あくまでこちらが教える側であることに変りはない。司が動かなければゆいも動きようがない、はずなのだが。  
「ここって、誰でも気持ちいいの?」  
ゆいの細い指が優しくそこを往復する。  
「は…ん、多分…でも」  
同じようになぞってやりながら、掌で陰核を刺激する。  
「っひゃ、あっ…」  
ゆいの身体が跳ねて、手が止まる。そのまま指を深くさしこみ、きつい膣肉をおしわけて抜き差しする。  
「…ゆいが感じるところだけ、わかればいいんだよ…どこがいいのか、俺に教えて?」  
「ん、うんっ…でも、司君、もっ…」  
なんでこうも攻めたがるのだろう。このまま(自覚はなさそうだが)器用なゆいに攻められては、司がもたない。  
「いや、俺は…っあ…はぅ、んっ……!」  
あわてて辞退しようとしたが遅かった。ゆいの掌が陰核を押しつぶし、強烈な快感が背を走る。  
「ね、いっしょに…気持ちよくなろう…」  
ただそれだけが、ゆいの希望なのかもしれない。  
「んは…わかった、から…ぁ…ゆいの感じるとこ、ちゃんと教えてね…」  
くちゅくちゅと指の抜き差しを続けると、ゆいの反応も次第に大きくなってくる。  
「ん、あ、そこ…そう、されると、いいよっ…」  
じっくりとゆいの中を刺激して、弱いところを探っているのだが、それも次第に辛くなってくる。  
「は、はぁ…あ、やぁっ…だめ……」  
ゆいは覚えが早く、司の弱点を確実についてくるのだ。上気した肌を啄ばみながら、指先は中を刺激し続ける。  
「あん…っ…は、司君、可愛い……」  
「ひゃ…ちょ、ゆいっ…」  
身体から力が抜けて、震えが止まらなくなる。このままでは一緒に、どころではない。  
決意して、司は指の抜き差しを早くし、ぐりぐりと陰核を刺激する。  
「ひゃ、司くっ…あ、あぁんっ…だめ、なんかっ…くるっ…!」  
震えだしたゆいの身体を空いた手で抱き寄せて、攻める手はそのままに耳元で囁く。  
「いいよ…イって」  
「っや、あぁぁぁんっ!」  
司の言葉とほぼ同時に嬌声をあげて、ぎゅう、と膣が収縮し身体が痙攣する。  
 
「っんぅっ……は…はぁ…」  
いきおいよく指が引き抜かれた感触に司も身を震わせ、ゆいから指を引き抜く。  
しっかりと抱きとめて、背を撫でながら息を整える。  
「…ゆい、可愛かったよ。あと、ちゃんと自分の感じるところ、わかった?」  
ようやく余裕をとりもどして耳元でつぶやくと、ゆいがぱっと身体を離した。  
「司君もね、すっごく可愛かったよ。ありがと。ちゃんと自分のも…司君のもわかったし」  
その笑顔は男を虜にしそうに可愛いのに、司には悪魔の微笑みに見えた。  
ゆいの彼氏もきっと、いつか知ることになるだろう。まだそれが先の話だといいのだけれど。  
苦笑した司の頬に口付けて、ゆいはまた真剣な表情で言う。  
「…ね、先生も最後、可愛いよって言うの?」  
「………」  
なんというか、もう関わらないようにしよう。遅いかもしれないけれど。  
絶句した司を不思議そうに見つめたゆいが初体験をしたのは、この夏のことだったとか。  
 

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