「そういやお前さ。2組の高橋に告白されたんだって?」
「うん」
「凄いな。これで学園四天王の全員から告白されたことになるのか」
「四天王?」
「告白されたくせに知らなかったのか?我が学園でバレンタインにチョコを三桁以上貰うと
噂されるモテモテの男たちの総称だ」
「へー」
「サッカー部エースにして、甘いマスクと日本人離れしたプレイが女子に大人気の
『和製ベッ○ム』こと、中野!」
「きっとあの髪型は本人だから似合うのよね」
「ボクシング部部長にして、常に冷静沈着な試合運びで一度のダウン経験もない
『鉄壁のポーカーフェイス』、佐々木!」
「断った時その場で泣き崩れてたけど」
「大した特徴もないのに何故かモテる、『リアルラブコメ主人公』、間中!」
「懸垂しながら告白されたのは後にも先にもあの時だけね」
「そして四天王最強と名高い『学園一の頭脳とルックスを持つ男』、高橋までもが
お前の毒牙にかかったわけか」
「・・・人を悪の魔法使いみたいに言わないでくれる?」
「で、どうすんの?」
「どうするって、何が?」
「返事」
「ふふーん。気になるんだー?」
「ぜ、全然?」
「かっこいいよねー高橋君」
「ま、まぁそうだな」
「誰かさんと違って優しいし、誠実そうだし」
「誰かさんって誰だ」
「女子の間でもね、凄い人気なんだよ」
「なんせ四天王だからな」
「そういう人に「好きだ」ってはっきり言ってもらえると、やっぱり嬉しいよね」
「!!」
「なんて返事しよっかなー」
「・・・(そわそわ)」
「・・・(にやにや)」
「・・・(そわそわそわ)」
「ふふ。安心していいよ〜ちゃーんと断るから」
「なな、なんで俺が安心すんだよ、馬鹿か!?」
「わっかりやすいなぁ〜」
「何がだよ!?」
「えへへー、何がでしょう?」
「ったく・・・付き合っちまえば良いのに。きっともうねーぞ、こんなチャンス」
「いいの?私が、高橋君や他の誰かと付き合っても」
「何故俺に聞く」
「なんでだと思う?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「私ね」
「ん?」
「好きな人、いるんだ。だから断るの」
「・・・・・・そうなのか」
「ずっと待ってるの。絶対、その人も私のこと好きだと思うから」
「お前から告白しちゃえばいいじゃん」
「好きな人からは告白されたいの。女の子の夢なのよ」
「ふぅん。良く分からんな」
「でしょうね」
「なんだその馬鹿にしたような目は」
「アンタに女心が分かるわけないわよね、ふっ」
「とてもむかつくな」
「(・・・ほんと、鈍いんだから)」
「ん?なんか言ったか?」
「ううん、別に」
「・・・まぁいいや。それで、どんな奴なんだ?」
「あ、やっぱり気になるんだー?」
「べっ、別に。単なる興味だよ。あの高橋を振るくらいだからどんなスーパーマンなのかってな」
「全然だよ」
「へ?」
「私が好きなのは、もっと不器用で意地っ張りで鈍感で単純でほんのちょっぴりだけ優しいんだけど
その何倍も馬鹿な奴なの」
「・・・そりゃまた凄まじい奴だな」
「そうそう、凄まじい奴なの」
「俺とはまるで対極の位置にいるような奴だ」
「いや、アンタだってば」
「―――は?」
「あ。」