*       *       *  
 
 
電気あんまでイかされたままの状態で沙耶は胸の鼓動が収まるまで、その姿勢から  
動かなかった。慎也はその沙耶の姿を座っていている。結果的にローアングルから  
覗く格好になり、沙耶とは反対に慎也の胸の鼓動は高鳴り続けた。  
沙耶のスカートは捲くれ上がったままであった。スポーツショーツがスカートから  
チラリと見えた状態で、その肝心なところは濡れそぼって透けている上、少女の  
その部分の形に食い込んでいた。日焼けした滑らかな肌の太股から行き着く、一筋の  
クレバス――。その光景だけで慎也の雄の器官はズキズキと痛むぐらいに屹立する。  
胸元も着崩れたままで、スポーツブラからは緩やかな谷間が見えている。スクール  
水着の日焼け後があちこちに覗けて今、男がこの部屋に入ってきたら、それがどんな  
取り澄ました聖人君主であっても自我を抑えるのに苦労するだろう。  
 
「う……ん……」  
沙耶が上半身を起こしたので、彼女を凝視していた慎也は少し慌てて視線をそらせた。  
(う……収まれ、こいつ……)  
自分の下半身に向かって心の中で命令する慎也だが、彼の意思とは裏腹にすぐには  
収まりそうにない。立つ時は早いのにw。  
 
「慎也……」  
四苦八苦している時に声をかけられて心臓が飛び上がりそうになった。引きつった  
笑顔で振り返る慎也。  
「な、なんだ……?」  
「シャワー……浴びたいよぉ……汗でベトベト……」  
沙耶が潤んだ目で慎也を見る。まださっきの余韻があるのだろうか? と邪推しながら  
も慎也はその瞳に吸い込まれそうになった。  
 
(冗談じゃない……まだこいつは中学生になったばかりなんだぞ……?)  
自分で自分の気持ちを否定しようと躍起になるが、なかなかそれを打ち消せない。  
小悪魔と言うのはこういう子を言うのだろうか? と心の中で思った。  
「シャワー……? あ、浴びればいいじゃないか」  
慎也は視線をそらせながら言う。可能な限り平静を装ったつもりだが通じているだろうか?  
「そうだけど……その……」  
沙耶は困ったように座りなおした。膝立ちからぺたんとお尻をつける座り方。  
スカートはまだ直してないので、正面の慎也からは一番肝心な所だけがくっきりと  
覗ける状態だ。  
 
(うわぁあ〜〜!!)  
これでは生殺しだ、と慎也は思った。さっきその沙耶に淫靡な悪戯をした罰かもしれない。  
しかも……。  
 
「あ、足がふらついて……立てな……。きゃあ!?」  
沙耶はふらつく足で立とうとしたが、がくりと膝の力が抜け、目の前の慎也に雪崩れ込んだ。  
「お、おい!」  
慌てて慎也は沙耶を抱きかかえる。髪が鼻をくすぐり、仄かに官能的な匂いがした。  
昨日までの、いや、先ほどまでの沙耶には一切感じなかった匂いである。  
 
「だ、大丈夫か……?」  
自分があまり大丈夫じゃないような上ずった声で慎也が心配する。  
「うん……ごめん。……腰に力が入らなくて……エヘヘ♪」  
沙耶が笑う。慎也に体重を預け、目を閉じてギュッと首に回した手に力を込めた。  
蒸す様な暑さの部屋の中にいるはずだが、慎也も沙耶も暑さは感じなかった。  
むしろ、心が落ち着くような涼やかさを感じたかもしれない。密着しているはずなのだが。  
 
「お……おれのせい、かな?」  
「うん。慎也のせいだよ♪」  
沙耶は微笑みながら言う。  
「でんき……あんま? なんかされて、私の大事なところを責めて……エッチなんだから」  
じっと慎也を見つめる視線に耐え切れなくなったように慎也が視線を逸らした。  
だが、沙耶はその慎也の視線を追う。どこまでも追われて、逃げられない気がした。  
だが、それが心地よい気もした。  
「だから、責任とってね♪」  
「せ、責任!?」  
「うん」  
慎也の動揺にクスクスと忍び笑いをする。  
「責任とって、私をシャワーまで連れて行ってね、慎也♪」  
沙耶は悪戯っぽく微笑んだ。  
 
 
          *       *       *  
 
 
「電気あんまされたのって、初めてだっけ?」  
肩を貸しながらシャワー室に向かっている時に、間が持たなくて慎也が尋ねた。  
以前なら、そんな事気にした事はないのだが、こうして沙耶と密着して居間から  
風呂に行くまでの時間が凄く長く感じた。  
 
「当たり前だよ! あんなえっちぃの……」  
沙耶が怒った口調で言う。表情はこの上ない笑顔のままだ。  
「都会の女の子はみんな経験してるけどな」  
「……そうなの?」  
「そうだよ。可愛い子ほど電気あんまされる。これは常識なんだ」  
沙耶が感心した表情になるので、慎也は思わずテキトーな法螺を吹いてしまった。  
もっとも、実際に電気あんまは流行りだすとあっという間に蔓延するので、必ずしも  
法螺とは限らないが。  
 
「でも、私が都会に行っても誰もしないね」  
「どうして?」  
「だって、田舎者だもん。都会の子って綺麗なんでしょ?」  
「いつの時代の話だ、それは」  
呆れたように沙耶を見る。  
「だって――」  
沙耶は慎也の視線を評価されてるように感じ、思わず萎縮する。  
「雑誌見てると、ステキな服とかアクセサリーをつけた可愛い子が一杯いるもん。  
このあたりじゃあんなの売ってないし、私じゃ着こなせないよ……」  
実際にそれを着てみろと言われたかのように、恥かしそうに俯く沙耶。  
 
それは服やアクセサリーが綺麗なだけだろう――? と、慎也は喉から出かかった  
言葉を飲み込んだ。  
(雑誌ね――)  
慎也もクラスメートが購読しているその手の雑誌を見た事はある。だが――。  
(素材そのものが違うと思うけどな)  
沙耶の日焼けしながらもキメ細かい肌を見ながら思う。雑誌に載っている子で沙耶より  
綺麗な子など、一人だっていない。互角の子はいるが、そんな子は表紙とカラーページ  
2,3枚でいなくなってしまう。  
贔屓目が入ってるだろう、とは自分でも感じたが、慎也はそう思った。  
しかし、それを口に出すことはしなかった。  
大事な宝物を慈しむ心が働いたから、と言えば聞こえがいいが、実は案外、この沙耶を  
自分が独占したい深層心理が働いたからだけかもしれない。慎也自身が気づいたかどうかは  
分からないが。  
 
やがて二人は脱衣所についた。田舎だけあって脱衣所も浴場も広く、しかも古びた家だが  
ここだけは最新式の給湯システムで、慎也の家の風呂とは段違いの入り心地である。  
「ふぅ〜、やっとついた」  
「ありがと、慎也。……フフフ」  
「なんだ?」  
「慎也がたくましかったらお姫様抱っこで連れてきてくれたのに……」  
「悪かったな、もやしっ子で」  
「あ〜〜、だから、足が疲れちゃったぁ〜」  
「何を言ってるんだ、お前は?」  
「だから責任とって♪」  
「またかよ……今度は何だ?」  
「だから……」  
沙耶は大きく息を吸い込んだ。  
「……一緒に入ってシャワー浴びるの……手伝ってよ」  
さり気無く言おうとして失敗し、頬を染めて俯く沙耶を、慎也は呆然と見つめていた。  
 
 
          *       *       *  
 
 
「し、慎也……もう、準備いい?」  
沙耶が脱衣所から顔を覗かせる。  
「ああ、入っておいで」  
シャワーで軽く風呂場を洗い終えた慎也は普通に返事した。  
それが表面上だけなのは自分が一番よく分かっていた。ノズルを持つ手は小刻みに  
震えている。  
 
「入るね……」  
沙耶は胸を隠して入ってきた。バスタオルは巻いていない。全裸だ。  
慎也は視線を外さず……いや、外せずに沙耶の裸体を凝視した。  
(うわぁ……)  
去年とは何もかもが違っていた。日焼けした手足はスラリとしてるが細くはなかった。  
太股の部分は特にボリュームがアップしている。第二次性徴期を迎えた胸は勿論、  
腰のあたりもふっくらと丸みを帯び、ウエストは締まったように見える。  
そして、肩甲骨まで延びた長い髪。全てが少女から大人へ、とまでは言わないが、  
その成長過程はまざまざと見せつけられた。  
 
だが、もっと違うのは――。  
(俺自身の反応、かな?)  
沙耶が服を脱いで現れただけで、既に慎也の心臓の鼓動は破れんばかりに激しく  
なっていた。去年はそんな事はなかった。  
あったとしたら、あの幼い割れ目を凝視した時ぐらいだろうか――。そう思うと、  
自然に視線もそこに移動する。さっき電気あんまで散々虐めた、神秘の秘裂に。  
足は内股で閉じているが、上つきの女陰が正面からでも見えていた。  
(やっぱり……生えてたんだ)  
電気アンマした時の感触で既に分かってはいたが、柔らかい縁取りが生えていた。  
これも去年と違うところである。  
 
それにしても沙耶は何故全体を隠そうとしないのか? と慎也が訝しんでいると、  
「洗って……慎也……」  
小さな声だが、慎也にははっきりと聞こえた。沙耶は視線を逸らせたままだ。  
だが、その全身は日焼けの区別がつかなくなるほど真っ赤になっていた。  
 
「う……。うん……」  
何でも無さそうに返事をしたが、  
(意識しまくりだよ……)  
慎也は沙耶の手を取り、自分の方に引き寄せた。沙耶は一瞬硬直したようにビクリと  
反応したが、素直に慎也の導きに従う。  
そのまま沙耶を自分と同じ方向に向け、シャワーを浴びせた。顔から上は避け、肩口から  
背中を中心に。そして、お尻や太股にも。水圧がお尻の割れ目を刺激した時、沙耶は  
ビクッと反応した。しかし、全体的に大人しく、極端に恥かしがりもせず、慎也の  
されるがままになっている。  
 
(それで余計に意識しちゃうんだよな……)  
去年までならシャワーを浴びせてやっただけできゃっきゃっと喜んでいた。  
だが、今は逆に無理に反応を押さえ込もうとしているように見える。  
(もしかして、余裕がないのかな……?)  
だが、それは自分もだった。視線を合わせずシャワーを浴びせるこの距離感。先ほどまでは  
スキンシップも楽しめたのに、お互い裸になってからは手を握った以外は肌を  
触れあわせていない。  
 
(こ、こういう時は……よぉし!)  
男の方からアプローチすべきだ! と考えた慎也はシャワーを浴びせながら沙耶の背中に  
密着した。  
「きゃっ!? し、慎也!?」  
振り返った沙耶が目を丸くするが、慎也の意図を理解したように、微笑むとまた方面を  
向いた。そう、彼女はもう慎也に全てを任せるつもりなのだ。それがどんな結果になろうとも。  
(暖かい……な)  
慎也が最初に思ったのはそれだった。不思議な事である。茹だる様な暑さの夏の午後の  
冷たいシャワーなのに、『熱い』でもなく『寒い』でもなく『暖かい』と感じるなんて。  
その感触の気持ち良さを慎也は楽しんでいたが――。  
 
「あ、あの……。慎也?」  
少し困った表情でまた沙耶が振り返る。  
「どうした?」  
慎也はまだ沙耶の肌の感触を楽しんでいる。  
「その……お尻のトコに……」  
沙耶は真っ赤になった。慎也は沙耶のお尻を見ようとして、ハッと気がついた。  
慎也の屹立した肉棒が、さっきから沙耶のお尻を刺激していたのだ。あまりに沙耶の  
肌の感触を楽しむ事に没頭するあまり、自分では気がつかなかった。  
 
「ご、ゴメン!」  
慌てて慎也が沙耶から離れた。解放された沙耶は恥かしそうにもじもじしていたが、  
思い切ったように慎也のほうに向き直って言った。  
「その……慎也。それ……わ、私が……慰めてあげた方がいい?」  
思わずポカンとなる慎也。沙耶は自分が言ってる事を分かってるのだろうか?  
「ど、どうすれば良いかは分からないけど……お、教えてもらえれば、私……」  
(こいつ……相当耳年増だな)  
ぽっぽっと湯気が出そうなぐらい頬を紅く染めた沙耶を見て慎也はそう思った。  
情報を仕入れ倒したはいいが、整理できていない状態。知識として性を理解できて  
いないのだ。大体、『慰めてあげる』なんて言葉、どこで覚えたのだ?  
 
不思議な事にドギマギしている沙耶を見ていると、慎也の気分は落ち着いてきた。  
胸が高鳴っていたのは自分だけでなく、沙耶も……いや、むしろ沙耶の方がより緊張  
しているのが見て取れ、安心させられたのかもしれない。  
「お前はそんな事を考えなくてもいいんだよ、沙耶」  
慎也がまた沙耶の背後から抱きしめた。そしてシャワーのノズルを手にする。  
「でも……慎也……」  
「シャワーを浴びに来たんだろ? まだ途中だよ」  
慎也はシャワーのノズルをさっきより下の位置に持ってきた。そして噴出口を斜め上に  
向けるその標的は……。  
 
「し、慎也……そこは……ひゃあん!?」  
沙耶が焦った表情で悲鳴を上げる。シャワーは沙耶の股間――女の子の急所に命中していた。  
勢い良く噴出する水の糸の集まりが沙耶の敏感な部分を直撃し、刺激する。  
「だ、だめ……。慎也! そこは……ああん!」  
「何がダメなの?」  
「だって……くすぐったい……」  
沙耶は嘘をついている、と慎也は思った。くすぐったいかもしれないが、きっと  
それだけではないはずだ。口ではごまかしても、切なそうな表情にそれ以外の  
気持ちが顕れている。  
「さっき電気あんまで虐めたところだからな。よ〜〜く冷やしておかなきゃ」  
「そ、そんな……関係ないよぉ……。痛くされたわけじゃないのに……」  
「いいや。俺がいいと思うまで当て続けてやる」  
「だ、だめ……。うっ……くっ!」  
股間に水流を当て続けられる沙耶がもじもじと内股になって悶えている。  
その姿を見ると逆に慎也は止める事が出来なくなった。いつまでもこうやって  
虐め続けてやりたい。慎也の嗜虐心は尽きることがないように見えた。  
 
だが――。  
 
「そ、そこばっかり……狙っちゃやだ……」  
沙耶の言った言葉にズキンと胸を突かれる。その言葉は他でもない、慎也が一年前  
同じ事を沙耶にして言われた言葉だ。思わず噴出孔の向きを変える。  
沙耶の女の子の急所を弄り続けていた奔流は、標的を外れて太股に当たり四散する。  
「はぁ……。はぁ……。はぁ……」  
沙耶は一人で立っていられなくなり、慎也にもたれ掛って目を閉じた。膨らみかけた  
胸は荒い呼吸のたびに緩やかに上下し、小さな口元は燃やされた体の熱を放出するか  
のように熱い吐息をつく。頬だけでなく体もピンク色に染まり、ぐったりと慎也に  
身を寄せる姿は、慎也にとっては誘惑以外に何物でもなかった。  
 
「一年前と……同じだね……」  
沙耶が慎也にぴっとりと身を寄せたまま言う。慎也はドキリとした。  
「……やっぱり、気づいてたのか? ……あの時に?」  
「うん……。慎也の顔つき、強張っていたもん……」  
「…………」  
あの後も沙耶は普通に「お兄ちゃん」と接してくれた。だが、そう言えば見送りの時、  
いつもより寂しそうな顔をしていたのを覚えている。  
 
「その時は何かの勘違いだって思ったの。でも……」  
沙耶は慎也の胸に頬を当てるようにしながら言った。  
「慎也達が帰った後、私……何回もその時の事を夢に見たの。それで、その夢に  
出てくる慎也の顔は、いつもの優しいお兄ちゃんじゃなくて……私を食べようとする  
何かの顔に見えたの。童話の狼さんみたいな……」  
慎也は沙耶の話を黙って聞いていた。沙耶は目を開けて慎也の瞳をじっと見つめる。  
「私、その時に思ったの。もう、あの優しいお兄ちゃんはいないんだって……。  
自分でも分からないけど、何故か日増しにそう感じるようになっちゃった。自分で  
思い込みすぎたのかもしれないけど」  
「…………」  
「あそこにいたのは、私を守ってくれるお兄ちゃんじゃない。あの人は、私を獲物の  
様に狙う慎也って男の子――。そう思っちゃった」  
 
だから慎也への呼び方から『お兄ちゃん』が取れたのか。  
慎也は胸の奥が少し痛んだ気がした。それは良心の呵責なのかもしれない。  
自分を頼りにし、守ってくれる存在だと信じていた妹に対し、自分は欲望の目を向け、  
純真な妹の気持ちを踏みにじった――。  
 
「ごめんな、沙耶――」  
慎也はぎゅっと沙耶を抱きしめる。  
「ど、どうしたの、慎也?」  
急に抱きしめられて沙耶は慌てたが、すぐに落ち着いて身を任せる。慎也に対する  
沙耶の気持ち――それはずっと前から決まっているのだ。  
「お前の気持ちも知らず、俺は自分の欲望に負けちゃったんだな――お前の信頼を  
裏切って、それで――」  
「ち、違うよ! それは……違う……」  
慎也が兄として沙耶の気持ちを裏切った事を詫び始めると、沙耶は慌ててそれ自体を否定した。  
 
「ちょっと怖かったけど、私、嫌だったんじゃないよ。それよりも……嬉しかった……」  
 
慎也が目を丸くする。沙耶は上目遣いで少し悪戯っぽく慎也を見た。  
「だって……。慎也は私を『女の子』として見てくれたんでしょ? 『妹』じゃなく」  
一瞬、虚を突かれた様に慎也は呆然とする。頭がテンパッていて沙耶の言う事を  
理解するのに時間が掛かった。完全には分かってないかもしれない。  
だが、沙耶が自分に対して悪い感情を抱いていない事だけは、何とか理解した。  
 
「私、嬉しかった――。だから、次に慎也に会った時にはもっと女の子らしくなって  
みようと思ったの。髪を長く伸ばしたり、今まで興味がなかったファッション雑誌を  
見たり、都会の流行を追ったり――。男の人と女の子がその……する事の本も読んだり  
したよ」  
恥かしそうに告白する沙耶。慎也はこの一年での沙耶の大きな変化の理由を理解できた  
気がした。精神的にもそうだが、肉体のほうも彼女が『女の子らしくなりたい!』と  
願う気持ちが性ホルモンの分泌を促し、第二次性徴期とあいまって大きな変貌を  
遂げさせたのだろうか。  
 
「そっか。沙耶は変わったんだな。この一年で」  
感慨深げに慎也は言った。体は大人になりかけても精神は成長していない――それが  
彼の沙耶への評価だったが、それは明らかに年長者の思い上がりだった。  
「うん。慎也は変わらないね。やる事前と同じだもん」  
「う゛……」  
クスクスと沙耶が笑う。股間に水を当てて虐めた事を言ってるのだろう。本当の  
事なので何も言い返せない。  
 
「でも……」  
沙耶は慎也から離れた。そして二本目のシャワーのノズルに手をかける。  
水圧を上げながら慎也を振り返った表情はどことなく悪戯っぽい笑顔の様な気がする。  
「それでもいいかもね。私の方は変わったもん。……前みたいに、やられっぱなし  
じゃないんだからっ!!」  
嬌声を上げると沙耶は水圧を上げたシャワーのノズルを慎也のほうに向けた。  
狙いは誤らず、慎也の股間の屹立している男の器官を直撃した。  
 
「いってぇ〜!! こ、こら! シャワーの水圧高すぎるぞ!」  
「だって、フルパワーだもん!」  
「ば、馬鹿! そんなのをここにぶつけるな!」  
「これでいいんだもん! 慎也のイケナイ所にお仕置きだよ〜だ!」  
キャハハハ、と笑い転げながら慎也の雄の器官を狙い撃ちする沙耶。さっきから  
立ちっぱなしで静まらない肉棒には冷水シャワーは丁度良かったが、水圧があまりにも  
強すぎて痛い。間違えてすぐ下の男の急所に当たったりしたらたまらないだろう。  
 
「この〜! そっちがその気なら、こっちは電気あんましてやる」  
「えっ……!? そ、そんなの水遊びに全然関係ないよぉ!?」  
いきなり脈絡もないお仕置き宣言に沙耶が仰天する。  
「関係なくてもやってやる。さっきと違って今度は『生』でやられるんだぞ。  
物凄く効くからな……」  
浴室は格闘には狭いが電気あんまぐらいなら出来るスペースはある。  
慎也の表情がいやらしく変化した。端整な顔立ちだが、唇が意地悪に釣りあがり、  
目に怪しい光を帯びたその表情は見る人が見れば百年の恋も冷めそうだ。  
身の危険を感じた沙耶はシャワーを浴びせながら後退りするが、慎也はノズルを  
持っていないほうの手で股間を守り、その攻撃を防いだ。  
 
「ず、ずるい〜〜!!」  
「男の急所が狙われてるんだ。当たり前だろ?」  
「じゃ、じゃあ私だって……!」  
沙耶も片手で股間を守る。その姿は逆に沙耶の意識がそこにある事を示し、慎也の  
欲望を新たに刺激するだけであった。  
 
「フッフッフッフッフ……」  
「な、なぁに? 変な笑い方しないでよ……」  
「女はそれで全てを守れると思ってるのか?」  
「ど、どういう意味!?」  
沙耶としては消極的だが互角のはずだと思っている。なのに慎也は不気味な微笑を  
浮かべて余裕の表情だ。  
「こういう事さ」  
慎也はにやりと笑うと、シャワーノズルを股間より上に向けた。その標的は――。  
 
「きゃあん!?」  
沙耶が悲鳴を上げて胸を押さえる。  
「し、し、し、し……しんや〜〜!!」  
怒ったような表情で慎也を睨みつける。しかし、全然怖くなかった。むしろ可愛らし  
くて睨まれた相手が萌えてしまうだけだ。  
「『秘技・乳首シュート』。どうだ、そこも効くだろ?」  
「な、なにが『乳首シュート』よ! エッチ! スケベ! ヘンタイ!!」  
「そうやって胸を守ってると、今度は……」  
いやらしい笑顔で慎也が狙ったのは勿論、沙耶の股間だった。さっきまで手でガード  
していたが、胸を狙われて上のガードをしたため、今は無防備である。  
「ひゃあーん!! ず、するいよぉ〜!!」  
さっきより水圧が高かったのでちょっと痛かったらしく、沙耶は内股になって股間を  
押さえて後退りした。  
「今のは名づけて『妙技・クリショット』かな? 次はこっちで当ててやろうか?」  
慎也がシャワーのノズルを操作すると、噴出口の口径が小さくなり、水流が集約する。  
圧力が加わる分だけ水の出る勢いは増し、より強力な水流となって噴出する。  
 
慎也はコンディショナーのボトルにシャワーのノズルを向けた。中身が入ったボトルは  
激しく水を打たれる音を立てながらも暫くは耐えていたが、加え続けられる圧力に  
ゆっくりと倒れた。  
「うっ……。そ、そんなの見せられても怖くないもん。私だって、これで……」  
沙耶も慎也の真似をして噴出口を搾る。慎也の時と同様、水の勢いが増し、強烈な音を  
床のマットに響かせた。  
 
「よぉ〜し、シャワー対決だ。クリショットばっかり狙ってやる」  
「わ、私だって狙うんだからね! 覚悟はいい!?」  
「それが違うんだな」  
「な、なにが?」  
「立ってる位置を良く見なよ」  
慎也の言葉に沙耶が周囲を見回したが、特に変わったような事はなかった。持っている  
武器(シャワー)は一本ずつ、威力も同じ。強いて言うならばシャワーの元栓が慎也の  
傍にあるだけ……元栓?  
 
「へへん、こうするのさ!」  
慎也は沙耶の持っているシャワーの元栓を掴むと、素早くそれを捻った。見る見るうちに  
沙耶のシャワーの勢いが減衰する。  
「あ〜〜〜!! ひ、ヒキョウモノ〜〜!!」  
「気づかなかったお前が悪い。それ!」  
「きゃあん!? だ、だめぇ……!」  
慎也は容赦無しに沙耶の股間を狙って水流を叩きつけた。見事に命中し、沙耶がビクリと  
反応して逃げる。  
「こら、逃げるなんて卑怯だぞ?」  
「ど、どっちが卑怯なのよ〜!」  
沙耶が慌てて後ろを見せる。だが、それこそが慎也の狙いだった。  
「第3の必殺技、『絶技・アナルストライク』!」  
名前だけで何をするか分かる取ってつけた技名を叫びながら慎也は低く構えて沙耶のお尻の  
穴に下から命中させた。ぷりん、とした可愛い裸のお尻の丁度割れ目に奔流が命中し、  
湿った音を立てた。  
 
「きゃあああああ……!!」  
ウォッシュレットの最強レベルの何倍も強い水圧――。それを斜め下60度ぐらいの絶妙な  
位置から突き上げられた沙耶は思わず目の前の壁に両手をついて動きを止めてしまった。  
下手に動けば転んでしまいそうな強烈な技だ。  
「だ、だめ……慎也! お尻は……だめぇ!!」  
髪を振り乱して沙耶が懇願するが慎也は勿論やめようとしない。ノズルをどんどん沙耶の  
アヌスに近づけ、より強烈に責めていく。沙耶はその度に壁に手をついたまま首を振って  
悶える。お尻は懸命に本流から逃げようとするが、慎也の絶妙なノズルワーク?で、一瞬  
たりとも振りほどけない。  
 
「だめだよ、慎也……。さっきまでと全然違うじゃない……何が『クリショット』よ!」  
「こらこら……」  
慎也の態度の豹変を沙耶がなじる。先ほどまでの恥かしがってた慎也はいったいどこに  
行ったのか。プチ切れ気味に文句を言う沙耶。  
「だけど、こうさせたのはお前なんだぜ、沙耶」  
「わ、私……?」  
「だって……」  
シャワーを止め、壁に手をついている沙耶の体を抱きしめた。そのままシルエットだけを  
見れば、そのままバックスタイルでセックスしている男女に見えるだろう。だが、慎也は  
挿入はしていない。  
 
天に向かうように垂直に屹立したそれは沙耶の下腹の位置で熱くたぎっていた。沙耶には  
それがよくわかり、その事を考えただけで胸がドキドキする。  
「沙耶は受け入れてくれたじゃないか。俺がこういう遊びが好きなのを……」  
「あっ……」  
切欠は沙耶だった。彼女が意表を突いて慎也のイチモツにフルパワーのシャワーを浴びせたのだ。  
楽しそうな笑顔と共に。  
「俺、それで随分気が楽になったよ、沙耶……」  
慎也が沙耶の背に頬を当てる。沙耶は執拗な悪戯されている最中である事も忘れ、慎也の  
暖かさを感じた。  
「沙耶は無理して俺に付き合ってくれてるんじゃないかって、それが心配だった……。  
だけど、さっき見せてくれた笑顔で、沙耶は受け入れてくれている。その心配はしなくて  
いいんだ、と思ったら、凄く気が楽になった。沙耶の見せてくれた笑顔、演技じゃ絶対  
出せないもんな――」  
慎也は三つ年下の少女に甘えるように擦り寄る。沙耶もそれを受け入れるように慎也の  
なすがままにされていた。  
 
「で、でも……。慎也のは遊びを越えちゃってるよ。エッチすぎ! それにシツコイし」  
「シツコイ男は嫌いか?」  
「あ、当たり前じゃない! ……だって、困っちゃうもん」  
「なんで困るの?」  
「そ、それは……」  
拒否できないから――とは決して言えない。言えばこのエッチ男はさらに調子に乗るだろう。  
沙耶は慎也が少々エッチな事をしてきても十分付き合える自信はあった(妙な自信だと思うが)。  
だが、いかにそうであっても限度と言うものがある。慎也は責め方がいやらしく、陰湿で  
執拗だった。それに沙耶は辟易させられる。  
 
「シツコイ男と言われたのなら、しょうがないな……」  
慎也は再びシャワーのノズルを手にした。じりじりと沙耶に迫る。沙耶は頬を引きつらせ  
ながら、慎也から遠ざかろうとする。  
「そういう言いがかりをつけられるのなら、それに相応しい事をしてやろうじゃないか」  
「い、言いがかりじゃないもん! 今だっていやらしくニヤついてるじゃない? そ〜いう  
所がシツコイって言うの!」  
沙耶の非難にも薄ら笑いを浮かべているだけの慎也。自分の憧れの『お兄ちゃん』が実は  
卑劣な変態だと分かった少女沙耶の内心はいかばかりか……w。  
 
「それと勿論『電気あんま有り』だからな」  
「だ、だからその『電気あんま有り』って何なの? 水遊びと何の関係が……」  
「関係なんかないな。ただ、俺が沙耶に電気あんましてやりたいだけだ。必ずするからな。  
絶対に逃がしてやんない」  
平然と慎也は嘯く。沙耶は段々腹が立ってき。  
「い、いいよ。その勝負、受けた!」  
「へっ?」  
「だから! 『電気あんま有り』でいいって言ったの! その代わり、私だって慎也に  
電気あんまするから!」  
沙耶が可愛らしく怒る。慎也には勿論大歓迎だった。お風呂場で、全裸で大好きな女の子と  
電気あんまのかけあいっこをする――こんな素晴らしいシチュエーションには滅多に  
めぐり合えないだろう。  
 
「フッフッフ……後悔するなよ? 今度はすぐにはイかせてやらないからな。ねちっこく、  
長時間かけてやってやる。イきそうになったら緩めて、落ち着いてきたら強める――。  
悶えっぱなしで、苦痛と快感の狭間を彷徨うような電気あんまをしてやるぞ――俺は陰湿で  
執拗でシツコイ男なんだろ?」  
沙耶の言葉を逆手に取りながら、端整な顔を台無しにする邪悪な表情で沙耶に笑いかける。  
まさしく陰湿で執拗でシツコイ男だw。  
「へ、ヘンタイ……。もう、ヘンタイでサイテーなんだから……」  
沙耶は思わず股間を両手で守った。まあ、当然であるが。  
その内股になって股間を意識しながらもじもじする沙耶は慎也にとって最高のご馳走に  
見えた。  
 
 
          *       *       *  
 
 
「やぁん! やだ、だめぇ!」  
「逃げるなよ、勝負受けたのはお前だろ?」  
「そ、そうだけど……自分だけシャワーを使うのはずるい……あぁん!」  
沙耶の体を捕まえると、まだ成長期の胸を撫でながら、もう片方の手で至近距離から  
シャワーの奔流を股間に当てている。割れ目に沿って上下に微妙に動かされ、クリトリスや  
アヌスなどの敏感な部分を弄られるたび、沙耶は小さく悲鳴を上げている。  
 
慎也の執拗ないじめ?は続いていた。沙耶にヘンタイと言われて怒ったのだろうか。  
(絶対に違うよぉ……『お兄ちゃん』ワザとそういう振りをしてる)  
沙耶にはなんとなく、感覚的に慎也の本心が分かったような気がした。一見、沙耶の言葉で  
開き直ったかのように見えるが、実はそれすら演技ではないのか、と沙耶は思っていた。  
売り言葉に買い言葉で開き直ったからこうなったのではなく、本当はこうしたかったら  
あのようなシチュエーションに持っていったのではないか? もっと言うのなら最初から  
そういう目論見があって計画的に進めたわけでなく、内心の欲望が主導で感覚的にそういう  
流れに持っていったのではないか――そこまで沙耶の頭で分析したわけではないが、  
慎也の顔を見ると、どうも自分は罠に嵌められたのではないかと言う気がした。  
 
「そろそろ、一回目の電気あんまを始めるか」  
慎也がシャワーを股間から外す。沙耶は漸くほっと一息ついた。先ほどから十分近く、  
股間をシャワーで刺激されっぱなしだったのだ。  
「そろそろって言われても……それに、一回目?」  
「ああ」  
慎也はにやりと笑う。  
「何回でもやってやるからな。この休み中に、沙耶には普通の女の子が経験する一生分の  
電気あんまをしてやる」  
「じょ、冗談でしょ? ……慎也、なんかヘンだよぉ!」  
口ではそういいながらも沙耶は慎也がそういう事をするのが好きな男の子なんだ、と  
段々理解できてしまっていた。だけど、感覚的に受け入れるかどうかは別の話……。  
(う〜〜、ここまでヘンタイだったなんて……)  
沙耶は本当に困ってしまうが、イヤだったら拒否をすればよいのに、それは沙耶の  
頭からは全く浮かんでこなかった。そもそも、慎也を拒絶する事が彼女には有り得ない事  
なのだ。だからひたすら困っている――つまり、何の解決策も浮かばないのと同じである。  
 
「こ、こうなったら、守るもん! お、お母さん達が帰ってきたら慎也だってこんな事  
続けられないんだからね!」  
沙耶は亀の子の様に丸まり、股間を両手でカバーした。確かにこの状態では電気あんまは  
出来ない。  
「確かに、おばさん達は夕方に帰ってくるもんな」  
日差しはまだそれほど長くはない。いじめる時間はそれなりにありそうだが、安全圏を  
考えた場合、亀の様に守られていては時間がなくなるかもしれない。  
 
「しょうがないな……」  
慎也は溜め息をついた。  
「こんな事はしたくなかったんだが……」  
「な、な、な……なによ!?」  
ボソボソと呟く慎也を不気味に感じて沙耶はうろたえた。このヘンタイは何をしてくる  
つもりなのか……。  
「先に謝っとく、沙耶。女の子にこんな事はいちゃいけないのは百も承知なんだが……」  
「だ、だったらするなぁ〜!! ……な、何をするつもり!?」  
「こういう事……」  
慎也は何か手にした液体を沙耶の顔に塗りつけた。ぬるっと粘りのある液体が一部  
沙耶の目に入ると、  
「きゃああああ〜!!! め、目が〜! 目がしみる〜〜!」  
「沙耶! 顔を出せ!」  
すかさず慎也が沙耶の顔を洗い流した。液体はどうやら殆ど入らなかったようで、沙耶の  
目の沁みもすぐに取れたが……随分と泡立っている。香料の匂いもキツい。これは……。  
 
「しゃ、シャンプー!?」  
「ぴんぽ〜ん♪」  
「な、なにが、ぴんぽ〜ん♪だ! 悪戯も度が過ぎるよ、慎也……あれ?」  
「隙あり!」  
「ひゃあん!?」  
慎也は一瞬の隙を突いて沙耶を突き飛ばした。濡れたマットに半身起こしていた沙耶は  
弾みでそのまま90度後方にひっくり返る。足が上がった状態で。  
「チャンス!」  
慎也はそのチャンスを逃さなかった。たちまち沙耶の両足を掴むと股間に足を割りいれる。  
「きゃん! だ、だめ!?」  
沙耶は懸命に足を閉じたが、締め付けた太股の間をぬるっと慎也の右足が滑って通り、  
やすやすと股間に足の裏があてがわれた。  
「ああ……ん♪」  
一瞬、甘い声を出してしまい、羞恥心が沙耶を襲う。しかし、さっきのシャンプーを  
思い出すと怒りが頭の中を支配する。  
 
「なんて事するのよ、このバカシンヤ!」  
「ば、バカシンヤ?」  
「馬鹿でスケベで陰湿でヘンタイのバカシンヤの略よ!」  
全然略してないばかりかダブってる事にも気づかず、沙耶は激怒する。  
「お、女の子相手に、男として……いえ、人としてああいうことをしていいと思ってるの?  
そこまでして私に電気あんましたいの!?」  
「…………うん」  
寝かされた状態だががっくりと肩を落とす沙耶。慎也の心を開かせる事に成功したら、  
中から出てきたのはこんなサイテーの性格だったとは……。  
 
しかし――。  
 
「きゃあう! う、動かさないで!」  
慎也が足を動かすと沙耶の生の股間が刺激され、ビクリ!と反応する。  
「電気あんまなんだから、動かすだろう?」  
慎也は平然と言う。だが、声が上ずっているのを沙耶は聞き逃さなかった。  
(慎也も――興奮しているんだ――)  
本当は自分もであった。ついに生で慎也に電気あんまされる――。つい一時間前まで  
その言葉の意味すら知らなかった自分が、慎也の言葉を借りれば、普通の女の子一生分の  
電気あんまをこれからされるのだ。  
 
(お母さん、まだ帰ってこないよね――)  
帰ってきて欲しいのか、欲しくないのか、それすら分からないまま、沙耶は慎也の  
与える振動に小さな悲鳴を上げながら身を固くした。  
 

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