ガサササササ―――  
「ひッ・・・!」  
 草むらから踊り出たモンスターに息を呑む。イヤなヤツに遭遇した。しかも状況は最悪。 
嫌悪と恐怖が背筋を駆け上がる。  
(ヤバい―――!)  
 仲間とはぐれた。昼なお暗い森で出口の方向もわからない。MPも使い果たした。武器は短剣のみ。 
非力な女魔法使いであるアタシひとりでは、このモンスターは倒せない。 
しかもこいつに、この触手の塊に捕まったら―――  
 アタシには逃げ出す以外の選択肢はもちろんない。きびすを返して駆け出そうと―――  
 ずべしゃっ!  
 ―――して、派手に転んだ。つまずいたんじゃない。何かに足を払われた。何か――― 
それはもちろん、振り返るまでもなく、ヤツの触手。振り返っている暇はない。 
ヤツの触手の届かないところへ、一刻も早く―――  
 ずしゃあッ!  
 起き上がる前に足首を引っ張られた。うつ伏せに体ごと引きずられる。 
足首を締め上げる太い触手の感触。 
腰の短剣を抜き、振り返りざまにそれを振り上げたアタシの見たものは―――  
 足首に巻き付く、アタシの腕ほどもある太い触手と、 
今まさにアタシを飲み込もうとでもするように扇状に広がり、四方から迫る無数の触手―――  
「―――――ィっ!!」  
 心臓が縮み上がる。足首に巻き付く触手めがけて短剣を振り下ろした。 
でも、その腕に別の触手が巻き付くほうが早かった。 
同時に、腕に、足に、首に、腰に、無数の触手が―――  
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――ッ!!!」  
 
 悲鳴をあげながら、触手を振りほどこうと力いっぱいもがく。  
「離せ、このッ―――いやっ、離せぇ――――っ!」  
 ぬらぬらと粘液で滑る触手は思いのほか力が強い。巻きついた触手から腕を引き抜こうとしても、 
滑ったぶんだけまた絡みつく。全身に絡みついた触手で四肢は全く自由に動かせなくなった。  
 
「助けてっ、誰か――誰か、助け――――むがっ」  
 悲鳴を塞ぐかのように口に触手をねじ込まれた。あごが外れそうなほど太い。  
(こ、このッ―――)  
 初めてモンスターへの攻撃が実る。噛み付くという原始的な方法ではあれども。 
でも、それはあまりに無力な攻撃だった。歯は触手の表面に食い込む事さえなかった。 
そのかわりに、触手のでこぼこした先端から染み出す粘液の味が口一杯に広がった。  
「うえッ―――」  
 苦甘い味覚。でも、それを感じたのは最初だけで、すぐに口の中が痺れてきた。 
熱く感じた触手の先端よりも、自分の口の中のほうがじんじんと熱くなる。これは――毒――?  
そう考えていたのに、喉の奥に溜まった粘液と自分の唾液を思わずごくりと飲み込んでしまった。  
(しまった―――!)  
 じんじんと熱い感触が喉から胸へ、そしてじわじわと全身へ広がっていく。  
―――もう、駄目だ。  
 力が抜けた。握っていた短剣が手からこぼれ落ちた。それが最後の抵抗の証であったかのように。  
 
 全身に絡みついた無数の触手は、それぞれがまさぐるように先端を押し付ける。 
アタシは本来は戦闘に直接は参加しない魔法使いだから、堅いアーマーの類は身に付けていない。 
厚手のローブと、その下は下着のみ。そのローブの上から、触手の愛撫が容赦なく続く。  
「ふンっ―――」  
 胸の膨らみを押し上げられて声が漏れた。アタシ、感じている―――触手に責められて。 
これも毒のせい―――?  
 いつしか、アタシの体は仰向けに持ち上げられていた。腰から背中に、お腹に、触手が滑る。 
ローブがはだけて肌があらわになる。内股を滑っていた触手のひとつが下着の上から秘所に触れた。  
 
「ンッ!」  
 快感が背筋を走る。触手が滑り、下着を押しのけた。そこには触手のものとは別の粘液が溢れていた。 
触手は狙いを定めるように、すっかり潤んだスリットを何度か往復し、そして先端を体内への侵入口に 
合わせる。そ、そこは、おしり―――  
「ンン―――ッ!」  
 触手に塞がれた口から声が漏れた。ぶっとい触手が、アタシを押し広げて入ってくる。 
ずる、ずるる、という感触。  
 今度は、お腹を滑っていた触手が下りてきた。前から下着を押しのけ、膣口を捉える。 
そんな、両方いっぺんになんて―――  
「―――――ッ!!」  
 あそこが限界まで広がってる。もう一本、入ってくる。お腹の奥へ、奥へ。なぜか痛みは感じない。 
快感が腰から背筋を伝って脳天に突き抜ける。全身がわななく。 
あそこが、おしりが、二本の触手を締め上げる。  
「くは―――あぁ―――ッ!!!」  
 快感が弾けた。同時に、無数の触手の先端から熱い白濁液が勢いよく噴出した。 
もちろん、口の中の触手からも、お腹の中の二本からも。膣奥が、お腹が、熱い粘液で満たされる。 
喉から流れ込み、入りきれなかった白濁液が口からどろりと溢れる。  
 
 朦朧とした頭でぼんやり思い出していた。図鑑でこのモンスターを見たときの事を。 
あれは、まだ魔法学校に通っていた頃。  
『触手で動物を捉え、その体内に1000〜2000個の卵を産み付け、繁殖する。 
孵化した幼生は線虫状で、苗床となった動物を餌とする。苗床として特にヒトの  
♀を好む。攻撃は強力ではないが、捕まった場合の危険度は非常に高いので、  
生息域では必ず複数人のグループで行動しなければならない』  
 モンスターとその幼生のイラストを見て顔をしかめた覚えがある。 
でもそのときは、まさかアタシがこんな目に合うとは夢にも思っていなかった。  
 
 涙が流れた―――  
                                          END  

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