ある日の平和な昼下がり。  
 タウン情報誌を発行するアクノ企画の事務所で、アルバイト記者の森永・ヘレン・真理はテレビを前に大あくびをしていた。  
 所長以下の記者全員は、新たに店開きをしたイタリアンレストランの取材に出払っており、彼女一人が留守番をしていたのである。  
 肩まで垂らしたワンレングスの黒髪が、母譲りの美貌によく似合っている。  
 ポロシャツの胸部を大きく盛り上げている巨大なバストやジーンズのポットパンツからスラリと伸びた長い足はブラジル人である父方の遺伝によるものである。  
「あぁ〜ああ。私もイタメシ食べたかったなぁ」  
 TVワイドショーを見ながら、真理は何度目かの同じ愚痴をこぼした。  
 その時、モニター上部に臨時ニュースのテロップが流れ始めた。  
「えぇっ、国籍不明のヘリが侵入?」  
 やりかけたアクビを中断すると、真理は安物のソファーから立ち上がった。  
 テロップは追跡したJ隊機が、奥多摩方面でヘリを見失ったことを告げていた。  
「こうしてはいられないわ。ティアラ・アップ!」  
 目を閉じた真理がこめかみに両手を当てる。  
 同時に彼女の額に光り輝く黄金のティアラが出現した。  
 続けて胸の前で腕をクロスすると充分に気を練り上げてから、勢いよく両手を広げる。  
「チェンジ・ラスキア!」  
 掛け声と共に真理の体が光の渦に飲み込まれていく。  
 ポロシャツとジーンズが瞬時に消し飛び、代わりに純白のハイレグレオタードが裸体に貼り付く。  
 レオタードの前面には、赤色のWと青色の星形を象ったラインが大きくデザインされていた。  
 目の周囲を覆うマスク、そしてグラブとブーツは共に純白である。  
 基調となる白は正義を、赤いWは女性の慈愛を、そして青い星形は宇宙の知恵をそれぞれ象徴しているのである。  
 そして最後に黄金色に輝くパワーベルトが彼女の腰に装着され、変身が完了した。  
 この間わずか数秒の出来事。  
 彼女こそ、M78星雲に住むというエネルギー生命体、超聖母ティアラよりスーパーパワーを授かった正義のエージェント、流星天使ラスキアである。  
 
 
「急がなくっちゃ。ラスキア・フライングッ」  
 貸しビルの窓から飛び出したラスキアは、奥多摩方面に向かって消えていった。  
 
 
 奥多摩まで一飛びで辿り着いたラスキアは、謎のヘリを探して哨戒飛行に移る。  
 緑に覆われた山々は、平和そのものである。  
 過ぎゆく夏を惜しむようなツクツクボウシの合唱が、一種もの悲しさを漂わせていた。  
「おかしいわね、これだけ探して見つけられないなんて」  
 思えばJ隊の追跡機が姿を見せないのも不審である。  
「既に撃墜されてしまったのかしら」  
 低空飛行に入り、何か痕跡がないかと眼下を見渡すラスキア。  
 その時、いきなり曳光弾の束が彼女の体を掠めた。  
「……?」  
 振り返ったラスキアは、太陽をバックにした不審ヘリが急速に接近してくるのを認めた。  
「しまった。奇襲だわ」  
 急降下して逃げようにも高度が低すぎる。  
 慌てふためくラスキアに向けて、機関砲が火を噴いた。  
 体を横滑りさせて、ギリギリで曳光弾をかわす。  
 体を逸れた曳光弾は、木々に命中すると爆発を起こして太い幹をへし折った。  
「うぅっ、40ミリ機関砲? アレを喰らったらタダでは済まないわ」  
 敵の攻撃力を見せつけられ、ラスキアに緊張感が走る。  
 続いて機体のポッドからロケット弾が連続に発射された。  
「アゥゥゥーッ」  
 直撃は回避したラスキアであったが、大爆発の衝撃波を受けてバランスを崩しかける。  
 もうもうと上がった黒煙が、ラスキアの体をヘリの視界から遮った。  
「今の内に体勢を立て直さないと」  
 一旦地表すれすれまで降下して勢いをつけたラスキアは、余勢を駆って急上昇に入る。  
 速度と高度を回復したラスキアはドッグファイトに入ろうと旋回を開始した。  
 ところが黒煙を突破して来たヘリは3機に増えていた。  
「しまった。仲間がいたのね」  
 運動性の良いヘリ3機に追い回されて、ラスキアはたちまち窮地に陥る。  
 苦労して1機のバックに取り付いたと思うと、他の1機が背後から援護してくる。  
 それを回避して上昇しようとすると、既に頭を押さえていた1機が上から被さってくる。  
 恐ろしいまでの連係プレーであった。  
 
「ダメだわっ。勝ち目がない」  
 ラスキアは一時退却しようと全速力で逃走に移った。  
 しかし謎のヘリは振り切られるどころか、ジリジリと追いついてくる。  
 謎のヘリの正体はアパッチ攻撃ヘリであり、その最高速度は時速365キロに達していた。  
 時速300キロが限界のラスキアよりも有速なのである。  
 しかもラスキアの方は、最高速度を出すとあっという間に備蓄エネルギーが尽きてしまう。  
 ラスキアの力の源は、パワーベルトが空中イオンから吸収するエネルギーである。  
 しかし最高速度で飛んだり光線技を使ったりすると、消費量が生産量を上回り、一時的にエネルギー切れになってしまうのである。  
 みるみる速度の落ちていくラスキアに接近する灰色のヘリ。  
 その姿は、まるで一匹の羊に襲いかかる狼の群れのようであった。  
 ピタリと照準に捉えられたラスキアに向かって、40ミリ砲が火を噴いた。  
「アァーッ」  
 脇腹に直撃を喰らったラスキアは、悲鳴を上げて眼下の造成地に墜落していった。  
 
 
「あぅぅっ」  
 墜落したラスキアは、脇腹を押さえて呻き声を漏らした。  
 ピストルの弾ぐらいではビクともしない彼女の体であったが、40ミリ砲弾ともなればエネルギー量が桁違いである。  
 彼女の肉体を貫くことは不可能であったが、爆発の衝撃までは吸収しきれなかった。  
 正義の象徴である白いレオタードも、左脇腹が大きく裂けてしまっている。  
 エネルギーさえ元に戻れば、レオタードは徐々に修復されるので問題ないが、体に受けたダメージはバカにならない。  
「恐ろしい敵だわ。とにかく森の中に隠れないと」  
 ヨロヨロと歩き始めたラスキアの足元で、無数の砂埃が舞い上がる。  
 同時にもの凄い銃撃音が周囲に轟いた。  
「ハァァァーッ」  
 脇腹の痛みも忘れて、ラスキアは横っ飛びに岩陰に隠れた。  
 そこで激しい銃撃が終わるのをじっと待つ。  
 ようやく辺りに静けさが戻り、そっと顔を出したラスキアの見たものは、崖の上に整列した迷彩服の軍団であった。  
 
「あなた達っ、夜盗鬼族なのっ」  
 ラスキアは地球征服を狙う敵組織の名を叫んだ。  
 それに答えるように、只1人上衣を着ず、OD色のタンクトップを身に付けた兵士がサングラスを外した。  
 サングラスを外すまでもなく、豊かな丸みを帯びた曲線で女性であることは明白であった。  
 切れ長の鋭い目と薄い唇が、冷酷かつ有能な印象を与える美女であった。  
「夜盗鬼族? そんな下等な生物と一緒にされたくないものね」  
 女性士官は軽蔑するような目で冷たくラスキアを見下ろした。  
「私はJ隊特殊作戦部隊の如月一尉。お前を生け捕りにして、神秘の力を暴くのが任務だ」  
 如月と名乗った女一尉は、手にしたJ隊制式自動小銃を構え直した。  
「J隊がどうして……」  
 ラスキアは訳が分からず混乱しそうになる。  
「知れたこと。お前の力を我々の手中に収め、無敵の天使軍団を結成するのだ。そのあかつきには、私が天使長となるのは無論のことよ」  
 如月一尉の高笑いが周囲を圧する。  
「そうはさせないわ」  
 ラスキアはなけなしのエネルギーを使い、腕からビーム放った。  
 間髪置かず、部下の兵士がガラス質の盾で一尉を守る。  
 盾に命中したと思うや、光の帯は屈折し、あらぬ方向に流れていった。  
「偏光グラス?」  
 思いもよらぬ結果を前にして、ラスキアは激しく動揺する。  
「お前の技など先刻承知よ。その力、お前より我々が使った方が効果的というもの」  
 如月一尉の合図で、一斉射撃が再開された。  
「うぅっ」  
 再び岩陰に転がり込むラスキア。  
「隠れても無駄よ」  
 J隊自慢のロケット砲が火を噴き、ラスキアの潜んだ大岩を吹き飛ばした。  
 その爆発に紛れて、ラスキアは大きくジャンプする。  
「今までの敵とは違うわ。出直さないと」  
 ラスキアはそのままラスキア・フライングで逃走しようとする。  
「逃がさなくてよ」  
 如月一尉は部下に命じて迫撃砲をセットさせる。  
「撃てっ」  
 乾いた音を立てて飛び出した砲弾が、ラスキアの周囲で爆発を起こした。  
 ラスキアの全身が破片と青白い煙に包まれる。  
 その煙を吸い込んだ途端のことであった。  
「アァーッ、目が見えないっ。息が……息が出来ないぃーっ」  
 J隊科学兵器研究所の製造した毒ガス弾は、ラスキアの神経に激しく作用した。  
 自然界には無い化学毒に犯されたラスキアは、真っ逆様に森の中に墜落していった。  
 
「やった。探し出して生け捕りにしろ」  
 如月一尉の命令で、屈強の兵士達がラスキアの墜落地点へと走り去る。  
「巨象も即死するシアン化合ガスだ。如何にティアラ戦士といえど只では済むまい」  
 如月一尉は満足そうに笑うと、部下の後を追って森の中に入っていった。  
 
 
 一方、毒ガスを浴びて墜落したラスキアは半死半生の状態でのたうち回っていた。  
「くっ……苦しい……うぅ〜っ」  
 人間を遥かに凌ぐ耐久力と解毒機能を持つティアラ戦士ではあるが、戦自研開発の毒ガスは彼女の神経細胞に激しく作用していた。  
 解毒作用をフル回転させても、ガスの成分が細胞を侵食していく速度に追いつかない。  
「仕方……ないわ……」  
 ラスキアは手探りでレオタードの股間をまさぐり、クロッチ部のホックを外す。  
 続いてポーチから薬液の満ちたプラ容器を取り出すと、細く伸びた先端部を自分の菊座に差し込んだ。  
「ふぅぅっ……」  
 そして球状に膨らんだ本体部を指で圧迫し、内容液を体内に注入した。  
 毒素が全身に回ってしまったら身動きできなくなる。  
 その前に濾し取った毒素を体外に排出しなくてはならないのだ。  
「はぅっ……うぅっ……くぅぅぅ〜っ」  
 ラスキア・エネマが早くも作用を見せ、彼女の尻が小刻みに震え始める。  
「あぁっ……もう効いてきたわ……むぅぅっ」  
 俯せに横たわったラスキアの足がピンと伸ばされ、足指が内側へときつく折り畳まれる。  
 全身脂汗にまみれた体を激しく震わせながら、ラスキアは歯を食いしばった。  
 効率的に毒素を抜くためには、限界まで我慢して一気に排泄する必要がある。  
 ラスキアは目を閉じると、両手の拳を固く握りしめた。  
 
 
「何をしておる。まだ見つからんのか」  
 如月一尉がヒステリックに叫んだ。  
 墜落地点を隈無く探しても、今だ目指すラスキアの行方は分からないのである。  
「身動きできずに、その辺りに潜んでおるに違いない」  
 苛立ちを押さえきれない如月一尉は、手にした乗馬ムチで草を薙ぎ払う。  
「一尉殿ぉっ。これを」  
 部下の一曹が低く唸り声を上げた。  
 
 如月一尉が駆け寄ると、一曹の指差す先にラスキアのいた証跡が転がっていた。  
「むぅぅっ、奴は体から毒素を出し切ったということか」  
 一尉の形の良い眉毛がキリリと逆立つ。  
「毒が抜けたからといってエネルギーが回復した訳ではない。今の内に草の根分けても探し出せっ」  
「しかし一尉殿。演習の名目でこの地域を封鎖しておけるのは明朝までです」  
 新任の三尉が差し出口を挟み、ムチでしたたかに打たれる。  
「優位を保つためには、常に攻撃を続けてエネルギーを浪費させるしかない。軍用犬を使えっ」  
 一尉の命令で3匹のシェパードが解き放たれた。  
 3匹はラスキアのしゃがんでいたと思われる辺りをクンクン嗅ぎ回る。  
 獲物の臭いを覚え込んだ3匹は、周辺の草むらに鼻を近づけグルグル回り続ける。  
 そして目指す臭いを見つけると、あっという間に森の中へと走り去った。  
 
 
「私の超能力が通用しないなんて。恐ろしい敵だわ」  
 まだ疲労感の残る体を引きずるようにして、ラスキアは森の奥へと進んでいく。  
 空中戦で完敗を喫した上、超兵器まで無力化されたことによる精神的ダメージは小さくなかった。  
 しかも今度の敵は、これまで彼女が命懸けで守ってきた人間なのである。  
 共に平和を守るはずのJ隊が敵に回ったとは、いまだに信じられない出来事であった。  
「功名心に駆られた一部隊の暴走に違いないわ。何としても逃げ切って真相を明らかにしないと」  
 その時、ラスキアの研ぎ澄まされた聴覚が、高速で接近する複数の存在を察知した。  
「何か追い掛けてくる?」  
 自分の速力を遙かに凌ぐ移動速度に、ラスキアは緊張して身構える。  
「来たっ」  
 藪を強引に突破して現れたのは、子牛程もあろうかと言う3匹のシェパードであった。  
「まずいっ。まだエネルギーが回復していないのに」  
 ラスキアはパワーベルトのバックルを見下ろし、赤い星に輝きが戻っていないことを確認する。  
 脱兎の如く逃げ出したラスキアだったが、軍用犬はあっという間に追いすがる。  
 そして三角形のフォーメーションでラスキアを取り囲んだ。  
「ダメッ、逃げ切れないわ……アァーッ」  
 
 正面と右後方から、飛び掛かって来た2匹のシェパードを避けるため、ラスキアは高く跳躍する。  
 ギリギリで2匹をかわしたラスキアが、ジャンプの頂点で一瞬停止する。  
 その無防備になった瞬間を狙い、残る1匹が唸り声を上げて彼女に飛び掛かった。  
「あぐぅぅっ」  
 100キロを超える化け物犬の体当たりを受け、軽々と吹き飛ばされたラスキアが松の大木に強かに背中を打ち付ける。  
「こいつら、私の跳躍力を越えているわ。それにこの連携……只の軍用犬じゃないわ」  
 痺れ上がった体に鞭打ち、何とか立ち上がろうとしたラスキアだが、2匹の軍用犬に左右から噛み付かれ、その場に組み敷かれてしまった。  
 衝撃でクロッチのホックが弾け飛び、下半身が無防備に晒される。  
「いやぁぁぁ〜ん」  
 尻を高々と突き出した、屈辱的なポーズを強いられるラスキア。  
「ハァッ、ハァッ、ヘッ、ヘッ」  
 リーダー犬が激しい息遣いをしながら彼女の股間に鼻を伸ばし、剥き出しになった秘門を嗅ぎ回る。  
「いやぁぁぁ〜っ。臭いを嗅いじゃ駄目ぇっ」  
 ラスキアは肩越しに振り返ると、犬の股間に30センチ級の巨大な生殖器が見えた。  
 その生殖器ビキビキと脈打ち、先端から既に白濁色の液が滴り落ちている。  
「あっ、あなた達……何を考えているのぉっ」  
 犬達が身の程をわきまえず、自分との交尾を企んでいると知ったラスキアは、頬を朱に染めて憤慨する。  
 しかし、その目は超特大の生殖器官に釘付けになって離れない。  
 
「あんなので突かれたら……私……」  
 犬に輪姦される自分の惨めな姿を想像するうちに、ラスキアの股間が湿り気を帯びてくる。  
「うそぉっ、私そんなの望んでない」  
 毒素に冒された彼女の体は、理性による制御を受け付けなくなっていたのである。  
 溢れ出てきた液体を、長い舌で刮げ取るように舐め回すリーダー犬。  
「イヤァァァーッ」  
 ラスキアの悲鳴が上がるが、肉体は既に本能の管轄下にあった。  
 彼女のスリットが受け入れ態勢を整えたのを確認すると、満を持してリーダー犬が尻にのし掛かる。  
 そして怒張を突き上げ、3度失敗した後に先端部の突入を果たした。  
「あぁっ……来る、入ってくるわ……」  
 狭い膣道を押し広げるようにして、肉の塊が侵入してくるのを感じるラスキア。  
 遂に行き止まりまで不法侵入を許した時、まだ犬の逸物は3分の1を余していた。  
 挿入を果たした畜生は、中の具合を味わっているのか、しばらくジッとしていた。  
 そしてまるで下克上の征服感を楽しむように、ゆっくりと腰を動かし始める。  
 最初ゆっくりであったスラストは、やがて激しさを増していった。  
「私……犬とやってる……犬に犯されてるんだわ……いやぁぁぁ〜っ」  
 犬にメスとして後ろから犯されるという背徳感が、否が応でも正義のヒロインの興奮に火をつける。  
 人間では考えられないようなダイナミックな腰の動きが、ラスキアを高みへと導いていく。  
「すっ、すごぉ〜い。こんなのって……私、どうなっちゃうの? あおぉぉぉ〜っ」  
 犬のペニスの根元がボール状に膨れあがり、接合部に密着する。  
 後ろ足が足踏み運動を始め、いよいよ発射の時が近づいてきた。  
「お願いっ、膣内出しだけは許してぇ……」  
 振り返ったラスキアが、恨めしそうな目で訴えかける。  
 しかし犬畜生に乙女の祈りなど通じるわけもなかった。  
 犬の怒張が今一層激しく跳ね上がったとみるや、次の瞬間おびただしい量の精子を放った。  
「イヤァァァーッ」  
 同時にクライマックスを迎えたメス犬も、背中を極限まで反り返らせて果てた。  
 休む暇など与えられず、直ぐに次席のシェパードが入れ替わり、ラスキアの腰に跨る。  
「もういやぁっ。お願いだから許してぇっ」  
 腰をくねらせて、挿入を拒むラスキアだったが、苛ついた犬に首筋を噛まれて大人しくなる。  
 魔犬3匹相手では勝ち目はなく、逆転のチャンスをジッと待つしかない。  
 悲鳴に興奮した一番の若手が、剥き出しにした生殖器官をラスキアの鼻先に突き付ける。  
「……しゃぶらないといけないの?」  
 一瞬悲しげな表情になったラスキアだったが、観念したように舌を伸ばして恐る恐る亀頭部に触れてみる。  
 
 物足りなさを感じた犬は、怒張を突き付けて強引に彼女の唇を割る。  
「いやっ、それは許し……うげぇぇっ……おごぉぉぉっ……」  
 いきなりの強制フェラチオにラスキアは目を白黒させてえづく。  
 同時に背後から犬の逸物が攻撃を開始した。  
 真横から見るとラスキアの体は、前後から串刺しにされたようであった。  
 若い魔犬があっという間に登り詰め、口内発射する。  
「うげぇぇぇ〜っ」  
 ラスキアが生臭い精子を吐き出そうとした途端、若い魔犬が唸り声を上げて牙を剥き出しにした。  
「……全部……飲めって……いうの?」  
 犬なんかに精子を飲むことを強制され、ラスキアは惨めな余りに泣き出しそうになる。  
 しかし反攻できる状況にはなく、やむなく命令に従う。  
「いったいどんな調教されているのよ」  
 愚痴をこぼしている間にも、後ろからの責めは続いており、ラスキアのエクスタシーは右肩上がりの急カーブを描く。  
「あぁん……イク?……またイク?。ハァァァ〜ンッ」  
 ラスキアは身を激しく震わせて、2度目のアクメに達する。  
 ラスキアの体内で跳ね回っていた犬のペニスも、膣のうねりに負けて暴発する。  
 またも、もの凄い量の精子が彼女の膣内に吐き出された。  
 間髪入れず、若いシェパードが入れ替わり、逆流してきた汁をポタポタ落としている膣口に舌を伸ばした。  
 他の2匹も争うように彼女の股間に群がってくる。  
「もっ、もう止めて。お願いだから、少し休ませ……ヒヤァァァ〜ッ」  
 興奮して開ききった小陰唇を舐め上げられ、ラスキアが悲鳴を上げて背筋を反らせる。  
 それと同時に、弛んでしまった尿道口から小水が勢いよくほとばしった。  
「キャイィィィーン」  
 小水を浴びた途端、3匹の魔犬はのたうち回って苦しみ始めた。  
 体内の毒素を濾し取った猛毒尿を、まともに浴びてしまったのだった。  
「今の内だわっ」  
 毒素を排泄したことにより、彼女の体調は更に回復した。  
 パワーベルトの星の輝きも明るさを増している。  
「あと少し回復したら逆襲に出れるわ」  
 ラスキアは、悪事に利用されただけの魔犬に憐れみの視線を送ると、森の奥へと姿を消した。  
 
 
「犬なんかに……汚されてしまうなんて……」  
 畜生にレイプされたラスキアは、精神的なショックからまだ立ち直れないでいた。  
 魂が汚される度、彼女に与えられた力は確実に弱まっていくのである。  
「むっ?」  
 森の中をさまようラスキアの頭上で激しいローター音が轟き始めた。  
 燃料補給を終えたアパッチ攻撃ヘリが戦線に復帰したのである。  
「右20度、エネルギー反応あり。距離250」  
 後部座席の観測員がエネルギー探知機の反応を読み上げる。  
 ティアラ戦士は空気中のイオンをエネルギーに変換して超能力の源としている。  
 エネルギー変換の手段はティアラ戦士それぞれに異なっており一律ではない。  
 例えば紅天使フォルティアは、レアクシオン・スリップと呼ばれるパンティがその役割を果たしている。  
 ラスキアの場合は腰に巻いたパワーベルトが変換器であり、またエネルギーを貯蔵する役目も兼ねているのだ。  
 貯蔵されたエネルギーは、ティアラ戦士の活動する度に消費されるのであるが、その際に約2パーセントのロスが生じる。  
 その2パーセントのエネルギーは、再びイオンに還元されて空気中に放出される。  
 つまり彼女がティアラ戦士として活動する限り、常に特殊なイオンが漏れ出しているのだ。  
 J隊の開発した探知機は、そのイオン濃度の誤差をモニター上に現してティアラ戦士の居場所を探索する機能を持っていた。  
「丸見えだぜボインちゃん」  
 パイロットはサーモグラフィのモニターで、ラスキアの隠れ場所を正確に探知した。  
 青や緑の背景の中に、赤い光がクッキリと人型を描いている。  
 その南に数十個の赤い光がゆっくりと西へと移動している。  
「アルバトロス1から地上部隊へ。対象は現在地より北へ約150の位置にあり」  
 パイロットは如月部隊に無線連絡を送った。  
 
 
「よし、女狐を捕捉した。こっそり包囲せよ」  
 同士討ちを避けるため、半円形の包囲網でラスキアを取り囲むJ隊特殊作戦部隊。  
 ヘリはラスキアの気をそらせるために、わざと反対方向にデタラメな射撃を繰り返す。  
 ラスキアが後方の気配に気が付いた時、既に包囲網は完成していた。  
「しまった。ヘリは陽動だったのね」  
 そう思う間もなく、もの凄い銃撃が襲いかかってきた。  
 ラスキアは地面を転がって火線を避ける。  
 
 彼女を掠めたライフル弾が、岩場に深々と突き刺さる。  
 その弾頭は特殊な重合金を使い、先を鋭く尖らせた『対ティアラ戦士専用弾』であった。  
「うぅっ、すごい威力だわ。アレに当たるわけにはいかない」  
 地面に身を伏せたラスキアの耳に、砲弾が宙を切り裂いて飛来する音が聞こえた。  
「キャアァァァ〜ッ」  
 大爆発の連続に包まれ、ラスキアの体が木の葉のように舞い上がった。  
 地面に叩き付けられたラスキアが呻き声を上げる。  
 その周囲に再びガス弾が撃ち込まれ、青白い化学ガスが立ち込める。  
「あぁっ、また毒ガスだわ」  
 ラスキアは熱気と毒素にむせ返る。  
「吸い込んだらお終いだわ。ラスキア・タイフーン」  
 ラスキアは両手を水平に開くと、ブーツの爪先を支点に高速に回転を始める。  
 途端にラスキアを中心とした旋風が発生し、吹き荒れる突風がガスを四散させた。  
 ホッと息をつく暇も与えられず、木々の間から迷彩服の兵士達が飛び出してくる。  
 アサルトライフルの先には鋭い銃剣が輝いている。  
「来たわねっ。ラスキア・ビームッ」  
 ラスキアは両手で十字を組み、腕から眩い光線を連続に放つ。  
 ところが、兵士が構えた偏光グラスの盾は、ラスキア・ビームをあっさり無力化してしまった。  
「うぅっ、ラスキア・ビームが……」  
 必殺技をキャンセルされてラスキアに動揺が走る。  
 その隙に間合いを詰められ、ラスキアは肉弾戦に移行した。  
「エイッ、ヤッ、タァァァーッ」  
 格闘戦となると、常人の100倍のパワーを誇るラスキアが圧倒的に有利である。  
 その上、彼女は宇宙拳法の達人なのだ。  
 突き出された銃剣を捌きながらかいくぐると、兵士の懐に飛び込んで掌底を突き上げる。  
 即死させないよう手加減するのが大変なくらいだ。  
 続いて飛び込んできた3人は、回し蹴りの一撃で一気に倒す。  
 背後から組み付いた兵士が、勢い余ってメロンほどもあるバストを掴んでしまった。  
「きゃあ、エッチ」  
 鋭い肘打ちを受けた男は崩れ落ちそうになるが、必死でラスキアの足にしがみつく。  
「今だっ。一斉に掛かれぇっ」  
 5人の男達がラスキアに飛び掛かると、手足に組み付いて押さえ込もうとする。  
「触らないでよっ」  
 ラスキアは一旦身を屈め、膝の屈伸を使って伸び上がる。  
 同時に両手を大きく振るって、5人の男を跳ね飛ばしてしまった。  
 
「化け物だぁ」  
 恐れを知らないJ隊の猛者共も、圧倒的なパワーの前に慄然とする。  
「距離を取って火力で圧倒しろ」  
 兵士達はすかざす後方に下がり、銃列を組んでラスキアに狙いをつける。  
 襲いかかってきた銃弾の雨を、ラスキアは連続バック転で避けきった。  
「相手をしていられないわ」  
 ラスキアは余勢を駆ってジャンプすると、そのままラスキア・フライングに移る。  
 
 
「逃がすか。チェーン・ロックを撃て」  
 ずらりと並んだ迫撃砲が次々に乾いた発射音を立てる。  
 火薬の圧力で飛び出したのは、鎖をぶら下げた枷であった。  
 鎖の先端には金属製の半球が付いている。  
 まだ低速のラスキアに襲いかかった枷の一つが、右の手首に食い込んだ。  
「はっ?」  
 続いて左の手首にも枷が取り付く。  
「あぁっ?」  
 驚くラスキアの目の前で、カチャリと金属音を上げてロックされる枷。  
 ロックが完了すると、半球に仕込まれたコイルに電流が流れ、電磁石として機能しはじめた。  
 鎖の先端に付いている半球型の金属が磁力で互いを引き寄せあう。  
「あぁっ、繋がる?」  
 左右の鎖が繋がれば、ラスキアは手錠を掛けられた状態になってしまう。  
「うぅ〜っ……だっ、駄目ぇぇっ」  
 抵抗虚しく、磁力で噛み合った2個の半球は完全な球体と化す。  
 それと同時に内部の空気が排出され、中は真空状態になった。  
「はっ、外せないっ」  
 磁力だけでなく、マグデブルグ半球の作用を利用したチェーンロックは簡単には外れない。  
 手首の枷に気を取られている隙に、今度は左右の足首に枷が掛かる。  
 そして同じく2個の半球が吸い付き、鎖と鎖を連結してしまった。  
「おっ、重い……飛べない」  
 気が付くと、再びパワーベルトの星が光が失いかけていた。  
 おまけにアパッチ攻撃ヘリが、空域に姿を現せた。  
「うぅっ、奴らには敵わないわ」  
 空中への離脱を断念したラスキアが着地すると、再び兵士達のライフルが火を噴いた。  
 上空からも40ミリ機関砲の曳光弾が降り注ぐ。  
 立体的な攻撃の前にラスキアは窮地に陥った。  
 
 手足を縛る鎖のせいで、ラスキアの行動の自由は著しく制限される。  
「無様な格好だわ、ラスキア」  
 銃撃を止めた兵士の後ろから、如月一尉が姿を現す。  
「命が惜しかったら、この辺で大人しく降伏するのよ。四つん這いになって、こちらにお尻を向けなさい」  
 一尉は降伏の証として、屈辱的なポーズを強いる。  
「だっ、誰がそんな……」  
 怒りのために声を失うラスキア。  
 誇り高いティアラ戦士として、そんな恥ずかしい真似は死んでも出来ない。  
「じゃあ、これまでね」  
 如月一尉はホルスターからピストルを抜くと、ラスキアに向けて発射した。  
「うぅっ?」  
 胸に鋭い痛みを受けて、ラスキアが体をあらためる。  
 左胸に変わった形の銃弾が食い込み、そこから細い導線が伸びていた。  
 如月一尉がピストルのスイッチを入れると、導線を通じて500万ボルトの電撃がラスキアを襲った。  
「キャァァァーッ」  
 市販のスタンガンの10倍もの高圧電流がラスキアの体中を駆け巡る。  
 同時にパワーベルトの安全装置が働き、自動的に彼女の腰から脱落した。  
 ラスキアの身体に大電流が流れると、装着者の身を守るため、パワーベルトから大気中に放電され、同時にベルトが外れてしまうのであった。  
 如月一尉は既に、ラスキアのパワーベルトの弱点を掴んでいたのだ。  
 随意筋をやられて身悶えするラスキアは、もはや無力化されていた。  
 如月一尉は身を屈めてパワーベルトを拾い上げる。  
「私はコレを持って一足先に戻るから。アンタ達はこの女を研究所まで護送しなさい」  
 下級兵士のプライドを守り、欲望を満たしてやる。  
 そういう機微に聡いからこそ、如月一尉は男達の上司足り得るのであった。  
「この野郎、さっきはよくも」  
「ヒヒヒッ、犯ってやるぜぇ」  
 着地したヘリに向かう一尉の背後でラスキアの悲鳴が上がる。  
 しかし冷酷な女士官は、眉毛一本動かさなかった。  
 
 
 奥多摩から南下する1台の幌付きトラックがあった。  
 J隊特殊作戦部隊の偽装輸送車である。  
 その荷台に、息も絶え絶えとなったラスキアの姿があった。  
 20人を越える屈強の男達が、寄ってたかって無力化された彼女を弄んでいた。  
 レオタードのクロッチ部分は上へと掻き上げられ、黒々とした縮毛の間から恥ずかしい部分が見え隠れしている。  
 タンクトップ式の肩紐も肩からずり下ろされており、圧倒的な存在感を持つ2つの膨らみが露出していた。  
「たまんねぇぜ、この体はよぉ」  
「自由に出来るのは、研究所に着くまでだからな」  
「今のうちにタップリ楽しんでおこうぜ」  
 本能剥き出しの野獣と化した兵士達は、ラスキアの乳房にむしゃぶりつき、股間に顔を埋め、暴虐の限りを尽くす。  
 正面からラスキアに抱きついた兵士が、欲望の固まりを蜜壷にぶち込むと、そのまま後ろ向きに倒れ込む。  
 前のめりになり、さらけ出された生々しい結合部分の真上で、菊の形をした肉の窄まりがヒクヒクと収縮している。  
 前屈みに尻を突き出したラスキアの背後に男の1人が忍び寄る。  
 そして誘いかけるようにピクついているアヌスに、剛直の先端をあてがった。  
「いやっ、そこだけは堪忍してぇっ」  
 肩越しに振り返ったラスキアの目に怯えの色が走る。  
 しかし兵士は彼女の腰に手を掛けると、一気に菊花の中心を貫いた。  
「かっ、かはぁぁぁ〜っ」  
 ラスキアは大きく口を開いて息を吐き出し、少しでも肛門括約筋を緩めようと図った。  
 前後のホールを支配した肉棒がゆっくりと抜き出しされる。  
 リズミカルなピストン運動は徐々に加速され、肉壁の摩擦が激しさを増してくる。  
 摩擦により発生した快感が次々に脳神経に流れ込み、否が応でも正常な感覚を押し流していく。  
「いやぁぁぁっ。もう許してぇっ」  
 泣き叫ぶラスキアの口の中に、生臭い肉棒が突き込まれる。  
 
「うむぅぅぅっ」  
 濃厚な腐敗臭にむせかえり、涙がポロポロとこぼれ落ちた。  
 あぶれた兵士が周囲に群がり、左右の手にむりやり剛直を握らせる。  
「おらっ、扱くんだよ」  
 ラスキアは少しでも負担を軽くしようと、必死で手を上下に揺すった。  
 順番待ちの兵士達が我慢出来ずにマスターベーションを始め、ラスキアの体に白濁色の液をぶっかける。  
 人の波に揉みくちゃにされたラスキアは、虚無の底に沈んでいった。  
 
 
 無重力空間を漂うような頼りない感覚の中で、ラスキアは意識を取り戻した。  
 見慣れぬ白い壁が四方を取り囲んでいた。  
「うぅ〜ん……はっ? いやぁぁぁ〜っ」  
 ラスキアは、一糸まとわぬ姿で大の字に拘束されている自分に気付いて悲鳴を上げた。  
 唯一体に張り付いているのは、目元を覆う白いマスクと黄金のティアラだけである。  
 ラスキアは手足を動かそうと暴れるが、強固な拘束具がそれを許さなかった。  
 巨大な金属リングの内径に円筒形の突起が4つ設けられており、その突起の中に彼女の手足が深々と差し込まれている。  
 いくら藻掻いてみても手足が抜ける気配はなく、手足を大の字に開いているため恥ずかしい部分が全て隠しようもなく晒されていた。  
 突起に差し込まれている手や足には、それ程の拘束感を感じない。  
 おそらく突起から流れ出す微弱な電流が、ラスキアの運動神経に作用しているように思えた。  
「ようやくお目覚めかしら。随分と寝覚めの悪い女ね」  
 正面のシャッターがせり上がり、タイトスカートの軍服に着替えた如月一尉が初老の男を伴って入室してきた。  
 戦闘服の時にはバックにまとめられていた髪は自然に垂らされ、彼女が意外に若いことが分かった。  
 こうしてみるとラスキアこと森永真理と同じくらいの年齢に見える。  
 初老の男は白衣を着ており、見るからに科学者という感じであった。  
「あなたは誰なのっ。私をどうする気っ?」  
 羞恥心から身悶えでもすれば、男の目を楽しませるだけなので、ラスキアは堂々と胸を張り、毅然とした態度で相手を見据えた。  
 
 元々彼女はどこに出しても恥ずかしくないプロポーションの持ち主である。  
「流石はティアラ戦士。絶体絶命のピンチに陥っても気が強いわい」  
 初老の科学者はニヤニヤして満足そうに頷く。  
「ラスキア、こちらはJ隊科学研究所の千住博士よ。博士、噂のティアラ戦士ラスキアですわ」  
 如月一尉が初対面の双方を紹介する。  
「博士はエネルギー科学の第一人者なの。きっと貴女の神秘の力を解明して下さるわ」  
 立ち居振る舞いから言葉遣いまで、すっかり変わってしまった如月一尉が説明する。  
「余計なお世話だわ。そんなことよりこれを外してよ」  
 ラスキアは左右に首を巡らせて、忌々しい拘束具を睨み付ける。  
「そうわいかないわ。貴女の力をJ隊の科学力で生かしてあげるの。地上最強の軍隊の出来上がりだわ」  
 如月一尉はそれが決定事項だといわんばかりにせせら笑った。  
「超聖母ティアラの力が、悪の所有物になるもんですか」  
 ラスキアは一尉を睨み付ける。  
「天使軍団を結成したあかつきには、月面に隠れているティアラも捕らえてみせるわ」  
 ティアラ戦士の力を持った軍団に襲われれば、超聖母ティアラといえども勝ち目はない。  
 超エネルギーの秘密が知れれば、宇宙の秩序は保てなくなる。  
「アンタなんかは天使になれないわ。あなたには魔女がお似合いよっ」  
 ラスキアは我を忘れて声を荒げる。  
 何事かと駆け付けた一尉の部下達が、一斉にライフルを構える。  
 それを冷静に制する一尉。  
「そんな生意気な口、二度ときけなくしてあげる」  
 一尉はラスキアに近づくと、目元を覆い隠す白いマスクに手を掛けた。  
 敵の意図を見抜いたラスキアに怯えの色が走る。  
「いやっ……お願い、やめてぇっ。それだけはぁ〜っ」  
 激しく首を振ってイヤイヤをするラスキアからマスクが外された。  
 遂に素顔を晒してしまったラスキアこと森永真理。  
「うふふっ、わりかし別嬪じゃないの。これが破廉恥な格好で暴れているラスキアの素顔なのね」  
 ラスキアにとって素顔を見られることは、ヌードを見られるより恥ずかしいことであった。  
 
「素顔を隠して別人格になりきってるから、どんな恥ずかしいことでも出来るのよ。これで少しはお淑やかになるでしょう」  
 一尉はそう言って、打ちひしがれて項垂れたラスキアに冷たい視線を送る。  
「これの秘密はだいたい分かったわ」  
 一尉がジュラルミンケースから黄金のベルトを取り出して、ラスキアに見せつける。  
「あっ、私のパワーベルト……返してっ」  
 ラスキアは罠に掛かった獣のように暴れる。  
「これは空中イオンをエネルギーに変換するコンバーターなのね。こんなオモチャ、直ぐにも量産が可能だわ」  
 一尉が小馬鹿にしたように鼻を鳴らし、ラスキアが歯噛みする。  
「問題は、変換したエネルギーをどうやって活用するか……だわ」  
 一尉の目が危険な光を帯びてくる。  
「今からお前の体の秘密を調べてあげる。時間をタップリ掛けてね」  
 千住博士が奇怪な形をした器具を並べていく。  
「逃げようったって無理よ。そのリングから出ている特殊な電磁波が、お前の体に残留してるスーパーパワーに干渉して、筋肉の機能を狂わせているの」  
 絶望感に包まれたラスキアはガックリと項垂れた。  
 
 
 ラスキアの全身にセンサーが取り付けられ、色とりどりのコードが蛇のようにのたうっていた。  
「お前の体にエネルギーを流してやるぞい。強い反応を示す内臓に、神秘の源があるに違いないて」  
 千住博士はヒヒヒと笑い、機器の調整に余念がない。  
 一刻も早くメスを振るいたいといった態度がありありであった。  
 今では荒くれ兵士達は追い出され、如月一尉と千住博士だけが実験室にいる。  
「それじゃエネルギーを流すわよ」  
 一尉がスイッチを入れ、ラスキアの体にエネルギーを注入していく。  
「このエネルギーを使って……」  
 与えられたエネルギーを元手に起死回生を狙ったラスキアだったが、目論見は見事に外れた。  
「幾らエネルギーが戻っても、電磁波が干渉している限り同じことよ」  
 ラスキアの心を見透かしたように笑う博士。  
 その時、ラスキアに一計が浮かんだ。  
 
「ティアラ・オフ!」  
 ラスキアから真理へと再チェンジした途端、今までの無力感が嘘のように霧散する。  
 何の抵抗もなく円筒突起から手足が抜ける。  
 素早く脱出した真理は、驚いている博士の頸動脈にチョップをお見舞いした。  
 グニャリと崩れる博士。  
「貴様ぁっ」  
 如月一尉はパワーベルトをケースにしまうと、真理に襲いかかる。  
 J隊式マーシャルアーツとティアラ流宇宙拳法の壮絶な格闘戦が始まった。  
 手数で圧倒しようとする宇宙拳法と、相手のミスにつけ込むマーシャルアーツ。  
 真理が先手を取り、如月一尉がブロックする。  
 バランスを崩した真理に、一尉のパンチが飛ぶ。  
 短く細かいパンチの連打を捌ききれず、真理が追いつめられる。  
「このぉ〜っ」  
 苦し紛れのサマーソルトキックが炸裂し、一尉がその場に転倒した。  
 すかさず飛び掛かった真理は、マウントポジションから拳の雨を降らせる。  
 しかし如月一尉こそ、真の意味でのノールールデスマッチを身上としているのだった。  
 一尉は剥き出しになった真理のアヌスに人差し指をくぐらせ、中で鉤状に曲げる。  
「ヒィィィーッ」  
 たまらず腰を浮かした真理の背中に、強烈な膝蹴りが打ちつけられた。  
 2人の格闘術は全く伯仲していた。  
 
 
 激しく肩で息をする2人の間に、荒くれ兵士達が転がり込んできた。  
「大変です。警務隊の連中がっ」  
 血相を変えた一曹が如月一尉に注進する。  
「なにっ、奴ら早くも嗅ぎつけたか。データはバックアップを取っているな。何一つ証拠を残すな」  
 警務隊、つまりJ隊における憲兵隊の到着を聞いて、如月一尉は色を失う。  
「味方が来て狼狽えるのは不審だわ。さては、今度のことは全てアンタ達の独断ね」  
 真理はJ隊全軍が敵なのではないと知って安堵する。  
「ラスキア、勝負は預けた。今度あった時が、お前の最期と思え」  
 捨て台詞を残して逃げる特殊作戦部隊と千住博士。  
 
「待ちなさいっ」  
 追い掛ける真理の目の前で、特殊合金のシャッターが閉じられた。  
 同時に自爆装置にスイッチが入る。  
「まずいわ」  
 真理はジュラルミンケースからパワーベルトを取り出し、自分の腰に巻く。  
「ティアラ・アップ! チェンジ・ラスキア!」  
 たちまち流星天使の姿を取り戻すラスキア。  
 レオタードの破れや汚れもすっかり修復されていた。  
「時間がない。ラスキア・フライング!」  
 天井を突き破ったラスキアは、そのまま上空へと昇っていく。  
 安全距離まで達した時、地上で大爆発が発生した。  
「これで彼らの暗躍の証拠が……」  
 悔しそうに眼下の火災を見下ろすラスキア。  
 しかも彼女の秘密は、かなりのレベルで敵の手に流出してしまったのだ。  
 その上、彼女は素顔を見られてしまっている。  
「これからの戦いは厳しくなるわ」  
 ラスキアは下唇を噛みしめ、再度眼下を見下ろした。  
 
 
 その3日後のこと、如月一尉は関東J隊病院を訪れていた。  
「お姉ちゃん。来てくれたの?」  
 ベッドの上には脳性麻痺の後遺症で、歩けなくなった一尉の妹、妙子が寝ていた。  
「いい子にしてた? はい、お見舞いよ」  
 一尉は妙子が大好きなアイドルタレントの写真集を手渡した。  
「うわぁっ、これ欲しかったんだぁ」  
 ひとしきりページをめくった後、おもむろに妙子が呟いた。  
「ねぇ、お姉ちゃん……あたし、また歩けるようになれるかな」  
 不意を突かれてギクリとなる一尉。  
 しかし直ぐに満面の笑みを取り戻すと、妹に向き直った。  
「もちろんよ、神様がお見捨てになる訳がないわ」  
 一尉は込み上げてくるものを必死で押さえ込んだ。  
「だって、あなたは私の大事な天使なんだから」  
 如月一尉は自分自身に言い聞かせるように呟いた。  
 

テレワークならECナビ Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル