1.  
男は泥に足を取られ、倒れこむ。  
その瞬間、今まで男の頭があったところを、さっと一条の矢が走った。  
振り向くと、男の背後の控え壁にそれが突き刺さっている。  
「糞っ、ふざけやがってノルマン人め! ぶっ殺してやるっ」  
一瞬背筋が凍り、次の瞬間男は恐怖を打ち払うように大声で悪態をついた。  
そうは言ってみたものの、頭を上げることはしない。  
城壁から飛んでくる矢の数は衰えを知らないかの如く、彼の周りに降り注ぐ。  
攻防が始まって一ヶ月以上が経った。  
飢えと渇きに苦しめられた戦いも終わろうとしている、男はそう思った。  
最後を華々しく飾ろうとするかのように、モンテヴェルデの反撃は激しさを増していた。  
 
肩の高さまで掘り下げた掩蔽壕。  
その縁には土嚢や牛馬の死体、あるいは死んだ仲間を積み上げて壁が築かれていた。  
男は壁の影に隠れると、振り返る。  
黒々とした、巨大な大砲がそこに鎮座していた。  
彼の相棒である。  
 
トルコ軍に残された数少ない重砲。  
数週間かけて、男は仲間と塹壕を掘り、床板を敷き詰め、水をくみ出し……  
ようやく射撃位置までたどり着いた。  
弓矢どころか、城壁から石を投げれば届きそうな地点まで。  
そこから人間の頭ほどもある砲弾を叩きつければ、城壁など紙に等しい。  
「へ、全くしゃぶりつきたくなるような、いい女だぜ」  
黒々とした鉄の砲身に、男はそう呟く。  
その瞬間、彼の脳裏に故郷に残してきた妻と子供の顔がよぎった。  
――ここまできて、死んでたまるか。  
作業が遅れても、命の方が大事だ。  
男は敵の射撃が止む機会をうかがおうと、塹壕の縁からそっと顔を覗かせた。  
その時。  
 
「お前、なにを休んでいるか。隠れていても大砲は動かせんぞ」  
男はその声がした方を睨んだ。  
彼はこれでも砲術下士なのだ。三日前に昇進したばかりとは言え。  
そんな彼に横柄な口を聞くことの恐ろしさを馬鹿には教えてやらねばならない。  
そう拳を握り締めたところで、彼は凍りついた。  
 
声を変えた男は、黒テンの毛皮のマントを羽織り、金に輝く鎧を着けている。  
頭には半月の飾りのついた兜。腰には真珠で飾られた刀。  
周囲を固める、イエニチェリの兵士たち。  
「ぱ、パシャ」  
男が弁解をするより先に、アクメトは顎をちょっと動かした。  
たちまち男は物陰から飛び出して、大砲を設置する作業に取り掛かる。  
もはや矢玉を気にしている場合ではなかった。  
 
「パシャ、このような所までお出ましになると危険です」  
「君もここにいては危険だろう、砲術長」  
アクメトは笑った。  
慌てて追いついてきた砲術長の警告を受け流しつつ、城壁の方に目を向ける。  
時折、鋸壁の向こうに動く影が見えた。  
一瞬姿を見せ、矢を放ってはまた壁の影に隠れる兵士たち。  
実戦こそ最良の学校だ。この一月ほどでモンテヴェルデ兵も腕を上げた。  
だが、それも無駄なあがきに過ぎない。  
「やはり敵の弾薬は尽きたようだな?」  
「計略かと思い、砲の張りぼても作ってみましたが、やはり撃ってきません。  
火薬が尽きたか、それとも砲を全て失ったか……どちらにしても」  
「今日で終わり……か」  
 
トルコ軍の攻城砲を遠ざけていたものは、稜堡とそれに守られた火器だ。  
だがここ何日もの間、城壁からは一発の砲声も轟いていない。  
それはモンテヴェルデの弾薬が底をついたことを意味する。  
そうなれば、トルコの大砲は好きな距離まで接近し、射撃することが出来る。  
塹壕と盾に守られた砲は、弓矢と投石などでは破壊出来ない。  
「しかしパシャ、これほどまでごり押ししなければならないものなのですか」  
目の前の堀には、ここ一週間の間に死んだトルコ兵が折り重なっている。  
後ろを振り向けば、泥に大砲が埋まっている。  
軟弱な地盤に侵入させて足をとられ、放棄せざるを得なかったのだ。  
アクメトが損害に構わず攻撃を繰り返した結果だった。  
 
「奴らに時間が限られているように、我々にも時間がないのだ。  
斥候の報告が正しければ、教皇軍はあと一週間ほどの距離にいる」  
アクメトの顔に初めて恐怖がよぎった。  
一万以上を数えた彼の軍も、今や八千を割り込もうとしている。  
もし背後から教皇軍に襲われれば、挟み撃ちにされてしまうだろう。  
アクメトとしては、モンテヴェルデが降伏するのを待っているわけにはいかなかった。  
足りない兵は、貴重な水夫を船から上げて埋め合わせている。  
 
アクメトにはもう一つの敵がいた。  
それはトルコ本国である。  
今回の遠征を推進し、アクメトの後ろ盾となっていたスルタンの体調がよくない。  
アクメトへの援軍を率いてイスタンブルを発ったものの、途中で病に倒れたのだ。  
そのため、アクメトには補給も増援も届かなくなっていた。  
――スルタン・メフメト二世は死ぬかもしれない。  
――ならば、死に行く者より、次のスルタンの機嫌を伺っておいた方がいい。  
そんな日和見が宮廷の中に広がり、スルタン子飼いのアクメトは孤立しつつあった。  
せめて、メフメト二世が死ぬまでにモンテヴェルデを落とさなければ……  
敗戦の責任を、アクメト一人が被ることになる。  
 
「敵将は、若いながらになかなかやるようだな」  
焦りを部下に悟られまいとしたのか、アクメトはあくまで快活に振舞った。  
砲術長は頷く。  
「公爵の私生児でアルフレドなる少年です。先日の暴動以来、総大将となったようです」  
「幾つだ」  
「十六と聞きました」  
ほう、とアクメトはため息をついた。  
彼の息子ほどの若さではないか。そんな子供に自分は翻弄されているのか。  
「あの日以来、モンテヴェルデの守りは一層固くなったようだな」  
「暴動を起こしたのが和平派のジャンカルロだったのが我々にとっては不運でした。  
彼は処刑され、和平を口にする者はいなくなってしまいましたから」  
「やつらは、町を枕に討ち死にする気か」  
そう言ってアクメトは笑ったが、周囲の誰一人として笑わなかった。  
兵士たちも、これが時間との戦いであることに気づいている。  
教皇軍が到着するまでに町を落とせば自分たちの勝ち。  
もしモンテヴェルデが守りきれば、負けなのだ。  
 
不安げな部下たちに叱責の目を向ける。  
どうやら甘い顔は有効ではないようだ。  
「正午を持って総攻撃せよ。一斉砲撃の後、突撃する。損害に構うな」  
 
 
2.  
崩壊の音は、町にいた誰にも聞こえた。  
とりわけアルフレドには、それは天が落ちたかのように思えた。  
「マエストロ、あなたは下がってください!」  
アルフレドは傍らにいたフランチェスコに叫んだ。  
「崩れましたな、殿下も早く城へ」  
「あなたが行くのが先です。二度も行方不明になられては困る」  
フランチェスコは苦笑しつつ頷く。  
 
シエナのフランチェスコは生きていた。  
聖アンナ門が突破された日、彼は弟子たちとはぐれ行方不明になっていた。  
だが、彼は二日後ひょっこり姿を現した。  
侵入したトルコ兵から逃げ回り、丸一日農家の納屋に潜んでいたのだ。  
そもそもはぐれた理由が  
「町の作業場に残してきた原稿を取りにいったから」  
というものだと知った時には、さすがのアルも彼を叱責せざるを得なかった。  
もちろん次の瞬間、喜びと親しみを込めて彼を抱擁したのだが。  
 
「ちゃんと原稿は全て城の図書館に収めてありますから、御心配なく!」  
フランチェスコの言葉に肩をすくめてから、アルは兵に彼を守るよう指示する。  
それから塔の階段を駆け上がった。  
 
塔から望む町は、燃えていた。  
城壁のあちらこちらから黒煙がもうもうと上がり、炎がちらちらと舌を伸ばす。  
そこかしこに梯子がかけられ、トルコ兵が押し寄せている。  
モンテヴェルデ兵が何度それを撃退しても、やがてそれは数の暴力に押し流されていった。  
そして、遥か遠方に見える、大穴。  
聖レオ門の近くの城壁が崩落し、巨大な突入口が作られていた。  
それを防ぐのは僅か数十人のモンテヴェルデ騎士。  
だがトルコ兵はその十倍以上でそこに押し入ろうとしているように見えた。  
予備兵力などない。  
突破されるのは時間の問題だった。  
 
「撤退しろ。全兵まとめて、城に引き上げる!  
鐘を鳴らさせろ! 市民を城へ避難させるんだ!」  
アルは身を躍らせ、その後に兵士たちが続いた。  
もはや、抗戦は無意味だ。後は何人生き残れるか。それだけが問題だった。  
 
アルフレドと護衛の騎士たちはすぐ城壁の裏に繋いであった馬に跨った。  
すでに遠くの方から早鐘の音が聞こえてくる。  
それに急かされるように、兵士たちは塔から、城壁から飛び出してくる。  
「城まで走れ! いらぬものは捨てろ!」  
剣を振り、アルは五指城を指し示す。  
そんな言葉も不要とばかりに、兵士は次々と走り出した。  
持ち場を離れれば、当然トルコ兵はすぐさま城壁を乗り越え、門を破るだろう。  
これは死との競争なのだ。  
 
「殿下! 私は先に行って、城門のところで待ちます!」  
フランチェスコがアルフレドの傍で止まった。鞍もつけていない馬に跨っている。  
「最後のぎりぎりまで門を閉めないよう、伝えてくれ」  
「分かっております、殿下もお早く」  
アルが頷き返すと、フランチェスコは荒っぽく馬の腹を蹴った。  
去っていくマエストロを見ながら、アルは門の方を振り返る。  
既に外に破城槌がすえられたのか、閂を掛けた門扉を繰り返し叩く音がする。  
槌が叩きつけられるたび、門扉はまるで鼓動を打つようにたわんだ。  
「……ここはもう駄目だ、さあ急げ!」  
逃げる兵士たちの殿につくと、アルは彼らを急かすように叫んだ。  
 
だが、アルの目論見はたちまち潰えた。  
危険を知らせる早鐘に、兵士どころか市民もまた一斉に逃げ出していた。  
通りは人で溢れ、方々から逃げてきた人間があらゆる場所で鉢合わせしていたのだ。  
角でぶつかって倒れる者。親とはぐれて泣く子供。  
乗り手を失って暴れる馬。それに蹴倒される男。散らばる家財道具。  
武器を振り回して道を切り開こうとする兵士……  
混乱がそこかしこで起こり、それは波のように町へと広がっていた。  
アルはその大混乱の最後尾にいながら、その様子を見守るしかなかった。  
 
コンスタンティノやディオメデウスが生きていれば、事態は違っていたかもしれない。  
だが、幾らアクメトが感心しようと、十六歳の少年はやはり少年でしかなかった。  
戦場で「逃げる」ことの難しさを知らないアルに、この状況を解決する術はなかったのだ。  
 
「アルフレドさま」  
隣にいた護衛の一人が、兜の下から押し殺した声で呼びかけてきた。  
その騎士の視線に、アルも従う。  
「破られたか――」  
大通りの向こう。アルの目に、異形の乗り手の姿が映った。  
その背後には、小札鎧を身に着けた戦士たちの一団も控えている。  
トルコ軍の一隊は、聖ジョヴァンニ門を破り、アルたちに追いすがろうとしていた。  
 
再び馬首を巡らす。  
避難民と撤退する部隊は、まだ道半ばだった。城へと延びる道をのろのろと進んでいく。  
五指城のそびえる丘を見上げれば、ようやく先頭の集団が城に達したところだった。  
いや、それどころか、まだ城壁のあちらこちらでは戦いの音が聞こえた。  
殿の兵たちは、命を捨ててまで同胞の避難を守ろうとしているのだ。  
「殿下、来ます」  
騎士の声にアルは振り返った。  
トルコ騎兵の一団がこちらに向かって来るのが見える。  
その数は、どう見ても五十は下らない。  
それは決して襲歩と呼べるほど早くはなかったが、着実に間合いを詰めてきている。  
 
アルは剣を抜いた。  
その意味を悟ったのか、護衛隊も抜刀する。  
「蛮勇は無用。これは逃げるための戦いだ!」  
アルは兜の面の下で、腹に力を込めて叫んだ。  
緊張のあまり声が震えるのはどうしようもなかった。  
「一撃を与え、敵の足が乱れたら一目散に城を目指せ、いいな!」  
おう、と服従の声が響いた。  
目だけで彼らの様子を伺う。  
護衛の数、七騎。  
半分生き残ることが出来れば、僥倖だろう。  
いや、アルフレド自身生き残れるか分からない。  
だがその瞬間、アルの脳裏には護衛たちへの感謝の念しか湧かなかった。  
不思議と、ラコニカの顔もヒルダの顔も浮かばなかった。  
 
「突撃――!」  
アルはそう叫ぼうとして、言葉を失った。  
後ろから、地鳴りのような音が近づいてくる。  
アルには信じられない音だった。だが間違いない。  
馬の蹄の音だ。  
しかも、多い。五騎や十騎ではない。  
アルは面を跳ね上げる。  
 
振り向いた彼の視線に飛び込んできたのは、完全武装の騎士の一団だった。  
先頭の一騎が巨大な軍旗を掲げ、その背後には数十騎の騎士が続いている。  
それは襲歩のまま避難民の間をすり抜け、こちらに向かっていた。  
「道を開けよ!!」  
雷鳴のような声に、思わずアルは馬を道の端に寄せた。  
そこを数十騎がわき目も振らず駆け抜けてゆく。  
 
「しんがり、引き受けた――――!!」  
たくましい声がアルの耳に届き、そして遠ざかってゆく。  
アルはそれを呆然と見送るしかなかった。  
騎士たちは一斉に槍を構え、トルコ軍へと突撃していく。  
待ち構える、数倍の敵の中へと。  
先頭の騎士が掲げた、巨大な軍旗が一瞬翻り、その図柄がアルの目に飛び込んだ。  
それは「山に導きの星」、モンテヴェルデ公の紋章だった。  
 
 
3.  
夜はトルコにもモンテヴェルデにも、等しく平穏をもたらした。  
だが今夜はいつもと様子が違う。  
何か闇の中で静かに蠢く音が――あるいは胎動のような音と言ってもいい――が絶えない。  
その音は城の内部から、そして壁を通して城下町の方から絶えず聞こえてくる。  
のたくるような音に、ヒルデガルトは耳を塞ぎたくなる。  
ざわめきは彼女の部屋にまで伝わってきていた。  
腰掛けていた椅子から立ち上がり、町の様子を伺うために窓際へと歩く。  
 
窓の向こうには廃墟となったモンテヴェルデの町が広がっていた。  
くすぶる住居。あちこちで瞬く紅の火、闇に徘徊するトルコ兵……  
時折廃屋を引き倒す音や指揮官たちの叱責が、風に乗って聞こえてくる。  
そして、かすかに混じる死体の臭い……。  
 
五指城への撤退は、大きな被害を出して終わった。  
兵の三割、市民や近郊から逃げてきていた農民の半数は見捨てられた。  
彼らは城に逃げ込んだ人々が見守るなか、殺されるか、辱められ奴隷にされた。  
嘆きと怒りが城に満ち、誰もが復讐を叫んだ。  
しかし、同時に今を生きのびた人々も、自分の運命を悟るには十分だった。  
 
千人を超える人々が、かろうじてこの城の中に逃げ込むことが出来た。  
とくに軍隊は、あの混乱の中にあってはほとんど無傷であったと言ってよい。  
しかし同時に、撤退の成功はより速やかな敗北を決定づけるものだった。  
五指城は普段五十人ほどの兵士と百人の居住者を抱えるに過ぎない。  
井戸も倉庫もそれに合わせたものしか備えていないのは当然だ。  
そこへ、十倍近い人間が逃げ込んだのだ。  
井戸はたちまち干上がり、明日朝食を配給すれば、もう倉庫は空だ。  
彼らには寝る部屋もなく、通路といわず納屋といわず、あらゆる所に人がひしめいている。  
体も洗えず、着の身着のまま逃げてきた人が体を寄せ合って眠っているのだ。  
そして飢えと汚れはたやすく病を引き起こす。  
ちょっとした病が流行れば、手を打つ間もなく全員が倒れてしまうだろう。  
 
一方トルコ軍は、野営地を守る僅かな兵力を残して、全てを市内に投入してきた。  
今は夜を徹して攻撃の準備に取り掛かっている。  
幸運なことに、五指城は丘の上にそびえる城だ。  
しかも、陸と接するのは町側のみ。三方は海と崖に守られている。  
トルコ軍の大砲はまだ城外の泥の中。斜面では大掛かりな攻城機械も持ち込めない。  
そうなると高所にあり、城壁に頼れるモンテヴェルデ軍は有利だった。  
明日は掴み合いにも似た血なまぐさい戦いとなるだろう。  
だが勝ったとしても。  
モンテヴェルデに二日目の太陽は昇らない。  
 
「……まだ寝ないの? 明日は早いよ」  
「あなたこそ。寝ることも戦士の仕事と習わなかったの、アル?」  
開け放たれた扉の影にアルフレドの姿を認め、思わず突き放したような言葉を放つ。  
一瞥を向けただけで、ヒルダはまた窓の外に目をやった。  
「君にも色々と言っておかなきゃならないことがあるから」  
アルの声がすぐ真後ろで聞こえ、ヒルダはまた振り返った。  
月明かりと、燃える町の明かりに照らされた少年の顔が映る。  
それは既に死人のように青ざめていた。  
 
「伝えておきたいこと……って?」  
艶やかな笑みを浮かべつつ、ヒルダは問う。  
ため息に似たアルの吐息が聞こえた。  
「最後の突撃に使えそうな軍馬は、せいぜい百といったところだ。  
必要な道具の準備はマエストロ・フランチェスコに頼んである。明日の朝、発つよ」  
「……そう、みんな食べてしまったものね」  
多くの騎士は自分の軍馬を食べなくてはならなかった。  
戦いで共に死ぬために育てた愛馬を、自らが生きるために食わねばならない。  
それは誇り高き戦士の心に、砂を噛むような苦痛を与えていた。  
 
「……父上……大公陛下の部屋は、からっぽだった。それに近衛小隊の兵舎も」  
アルがそう告げると、ヒルダの肩が一瞬、びくりと吊り上がった。  
「死体は見つかっていない。多分乱戦だったろうから……」  
「それじゃアル、あなたが見た一団は、やっぱり」  
アルフレドが頷き、ヒルダはそっと窓の外に向かって十字を切った。  
大公マッシミリアーノと近衛小隊の決死の突撃は、多くの人命を救ったのだ。  
アルフレドも含めて。  
 
「ヒルダ」  
「まだ、何かあるの? 早く彼女の元に帰ってあげなさいな……最後の、夜なんだから」  
ヒルダは振り向かなかった。  
「……君はそう思ってるの? これが最後の夜だって」  
投げつけられた言葉に、ヒルダは驚く。アルは怒っているようでもあった。  
少年は、鎧も剣も帯びず、ゆったりとした服に身を包んでいる。  
まるで野遊びにでも出かけるかのような、くつろいだ格好だった。  
「僕はそう思わないし、ラコニカも思わない」  
 
「……私は、弱いの」  
食いしばった歯から、ヒルダの嗚咽が漏れた。  
「私は……私はラコニカさんみたいに、アルのこと……信じられないの。  
あなたといると、どんどん不安になってくるの! もう……もう、二度と……」  
駆け出したヒルダの体が、アルの胸に飛び込んできた。  
よろめきつつ、アルはそれを受け止める。  
「アルに、アルフレドに会えなくなりそうな気がするの……だから……もう……。  
行ってよ、私の前から消えてなくなってよ! そうしたら……」  
言葉とは裏腹に、ヒルダの手はアルの服をきつくきつく握り締めた。  
「あなたのこと、忘れられるのに……」  
 
アルフレドは、いたわるようにヒルダの唇を覆っていた。  
一瞬おびえたように強張るヒルダの体を、さらに優しく抱きしめる。  
腕の中で少女の強張りが消え、全てを委ねるようにヒルダもアルを抱く。  
重なった唇を、少年の舌がぎこちなく割っていく。  
驚き、目を見開いたヒルダと、アルの視線が合う。  
初めて知った大人の交わり。  
少女の雌としての本能がそれを受け入れていく。  
絡まった舌同士がお互いを舐め、つつき、絡み、くちゅくちゅと淫靡な音を立てた。  
 
どちらともなく、二人はお互いを寝台へと誘う。  
軽い音を立ててヒルダの体が仰向けに倒れこむと、その上にアルは静々と覆いかぶさった。  
暗がりの中で、二人の目だけがはっきりと互いを捉えていた。  
「……するの?」  
「…………嫌なら……」  
ヒルダが首を横に振る気配がした。  
「ラコニカさんに、申し訳ないような気がする」  
アルの体が、動きを止めた。  
 
「でも、私はして欲しい……アルに」  
白い手がアルの耳元に触れ、そのまま頭を引き寄せる。  
されるがままに顔を寄せるアルに、ヒルダはやさしく口づけた。  
「今日だけの秘密、ね?」  
いたずらっぽく笑うヒルダに、アルはまだ少しためらう。  
「私が悪いんだから、アルが気に止むことないわ」  
そう言いながら、ヒルダはアルの服のボタンを一つずつ外していく。  
胸元が開かれ、白い肌着がそこから覗く。  
「私の服は……アルが脱がせて」  
少年が唾を飲み込む大きな音が、暗い寝室に響いた。  
 
 
4.  
裸になった二人は、お互いをまさぐりあっている。  
アルの唇と指はヒルダの唇を、頬を、そして首筋や乳房を念入りに解きほぐしていく。  
ヒルダは自分を菓子のように味わう少年のなすがままに、時折小さく苦悶の声を挙げた。  
片手はおびえたようにシーツを握り、もう片方の手でアルの髪をかき乱す。  
紅潮した二人がふとした拍子に見つめあうと、それは必ず長い口づけへと変わった。  
そして再び互いを抱きしめる。  
 
アルの執拗な愛撫に、ヒルダの体は次第に熟れていく。  
小さな桃色の蕾は、芽吹きを待つように固く膨らんでいる。  
少女の下腹は、かっと熱を持ったように熱くなり、苦しいほどだった。  
苦痛をこらえるように歯を食いしばり、身悶えながら内股を擦り合わす。  
泉が潤っていくのを、ヒルダは止めようと思うことすら出来なかった。  
茂みの奥に隠された部分をアルの指がかき分けていく。  
その指先は、叢の下に潜む滑りを確かに捉えていた。  
 
「あっ……!」  
触れたことすらない場所に最愛の男の愛撫を感じ、思わずヒルダは声を出して叫んだ。  
アルの手が、ぎくりとして止まる。  
もしかして、女によって扱いが違うのだろうか、ラコニカはこうしてあげると――  
 
「今、ラコニカさんのこと……考えた?」  
ヒルダが見透かしたように笑い、アルは言葉に詰まった。  
「……仕方ないよね。大事な人だもんね」  
寂しそうに呟く少女の頭を、アルは軽く抱きしめた。  
ヒルダの手は、アルの背中でしっかりと組み合わされる。  
火照った体同士が、お互いの熱を伝えていた。  
アルはヒルダのつく荒い息から、彼女が男を受け入れる用意が出来ていることを知る。  
ヒルダもまた、アルの硬く張り詰めた肉を、腹の上に確かに感じていた。  
 
互いに黙りこくるだけで、二人は理解しあっていた。  
覚悟を決めたように下唇をかむヒルダ。  
アルの手にうながされるまま、彼女は両の脚を静かに開いていく。  
湿り具合を確かめるようにアルの指が何度か谷をなぞる。  
「……さあ、怖がらないで」  
ほんの束の間ためらった後、アルは自分自身でヒルダを引き裂いた。  
 
苦痛の叫びは高く、そして短かった。  
ヒルダの体をいたわるように、アルは波のように体を動かす。  
その動きにつれて、ヒルダは低く、そして高く苦痛を訴えた。  
「きず……つけて……」  
言葉にならない声の端から、ヒルダは精一杯それだけを告げた。  
アルは無言で、ひたすらヒルダの体へ楔を打ち込んでいく。  
男の体が高まっていくのを、初めてであっても女は気づいていた。  
荒々しく叩きつけられる体をさらに密着させるように、ヒルダの脚がアルに絡む。  
まるで今この一瞬、アルの子供を成すことが彼女に課せられた義務であるかのように。  
そしてそれは人間以上に、動物としての本能的な動きのようでもあった。  
 
アルの体が振るえ、そして跳ねた。  
ヒルダの中で弾けたほとばしりが、彼女の胎内を浸していく。  
最後の雫が吐き出され、アルはのろのろと力を失った自らを引き抜く。  
そして、重なるように二人は倒れ伏し、抱きあった。  
 
「アル、不思議な気分ね」  
けだるい疲労と下半身を覆う痛みに、ヒルダはまだ寝台の中で横たわっている。  
アルは、既に恥じ入るように彼女に背を向け、服を着付けていた。  
「……あなたと私が、こんなことになるなんて」  
もう、アルは答えてくれないのだろう。  
それを知って、ヒルダは一人話し続けた。  
「憶えてる? 小さい頃、二人で結婚式ごっこをしたでしょう」  
天井の模様を見つめながら、ヒルダはくすくすと笑った。  
たわいもない子供の遊びが、まるで昨日のことのように思い出されるのだった。  
「やっと『ごっこ』じゃなくなったわね」  
 
「……でも、あのとき僕は司祭の役だったよ。  
ヒルダの相手は犬のジュゼッペだったじゃないか」  
アルがそう呟いたので、ヒルダは驚いた。  
その口調は、ヒルダを少し責めているようにも聞こえた。  
「そうね。でも、仕方ないじゃない。  
結婚式の最後に、新郎と新婦は口づけしなくちゃいけないのよ?  
私は、アルと口づけするのが恥ずかしくて恥ずかしくて。  
――どうしてもあなたに夫の役をお願いできなかった」  
 
ヒルダの告白にも、アルは無言だった。  
衣擦れの音が途絶え、アルは服を再び着終わったようだった。  
「あの時、アルに口づけをしておけば、こんな風にはならなかったのかも」  
さばさばとした口調だった。  
もう、城の中庭で遊んだ、あの遠い日は帰っては来ないのだった。  
「……遅すぎたのね、私たち。何もかもが」  
アルは振り返らなかった。  
部屋の扉を開け、廊下の闇へと姿を消そうとする。  
「お休み、ヒルダ」  
姿を消す刹那、アルは低く、しかしはっきりとそう呟いた。  
「ええ。お休みアル」  
ヒルダの声と、扉が閉じる音が重なり、部屋に静けさが戻った。  
そして――遠ざかる足音に、ヒルダは一人泣いた。  
 
「おかえり、ステラ」  
「まだ、お休みじゃなかったんですか、姫さま」  
悪戯を見とがめられた子供のように、ステラは主人の前で身を固くする。  
だが、ゆったりとした夜着に身を包んだヒルダは、やさしく微笑んでいるだけだった。  
「ルカは優しくしてくれたかしら?」  
「ひ、姫さまっ」  
顔を真っ赤にする侍女を、ヒルダは愛しげに見つめる。  
もう何日も前から、ステラが夜こっそり部屋を抜け出すことにヒルダは気づいていた。  
 
「……ねえ、ステラ教えてくれない? 初めてというのは、こんなに痛いものなの?」  
「ひめさま……?」  
その時初めてステラは、部屋に立ち込める淫を含んだ臭いに気づいた。  
それが、ヒルダの言葉と結びついたとき、その答えは一つしかなかった。  
彼女は既に城内で無数の同じ例を目撃していたから。  
最後の夜を惜しむ男女の姿を。  
 
「……私も、そうでしたよ」  
「そう、良かった。では私だけがおかしいのではないのね」  
まるで他人事のように笑い話めいて語るヒルダに、ステラも思わず吹き出す。  
「はい、それが普通です」  
よほど自分が世間知らずなことを言ってしまったことに気づいたのか、ヒルダが振り返る。  
その目は、言い訳を告げるようでも、抗議しているようでもあった。  
「だって『デカメロン』には『彼女はその夜何度も飛んだ』とか  
『それが大変素晴らしいものだったため、たちまち彼女は虜になった』  
なんて書いてあるじゃない? びっくりしたわ。あんなに痛いなんて」  
百年も前の小説集に向かって、ヒルダは芝居がかった様子で怒って見せた。  
 
それでも、ステラは笑いを隠せない。  
思わず、ヒルダの目に非難がましいものが宿る。  
「姫さま、あれを書いたボッカッチョは所詮男です」  
「……それもそうね」  
ヒルダがそう言うと、二人の少女は笑った。  
心の底から笑いあい、沈黙した時、二人の心に何のためらいもなくなっていた。  
「ステラ、はさみを持ってきてちょうだい。しなくてはならないことがあるの」  
ステラは主人の命令に、黙って従った。  
 
 
5.  
次の日。出撃を前に、アルフレドは困惑していた。  
目の前では、これ以上ないほど不機嫌な顔の女性が気ぜわしく働いている。  
黙々と自分の武具甲冑を取り出しては、身につける手伝いをしてくれている。  
だが、その間彼女は一言も口を聞かなかった。  
その口を不満そうに尖らせ、アルの弱りはてた視線すら無視していた。  
 
「ラコニカ、怒っているんだろう」  
「……」  
むっつりと黙ったまま、ラコニカはアルの鎧のベルトをきつく締め上げた。  
その思わぬ力強さに、アルの顔が歪む。  
それで、鎧の装着は完了だった。  
腰にはすでに愛用の長剣と短刀があり、兜は自分で被ればよい。  
 
用意が整ったのをちらりと横目で確かめただけでラコニカは背を向けてしまった。  
外では、部下の百騎がアルを待っている。  
だが、このまま別れることはどうしても出来なかった。  
「怒ってるんだろう」  
「怒っていません」  
振り向きもせずそう言い放つラコニカの言葉には、明らかに苛立ちが感じられた。  
昨夜遅く戻ったアルの様子を一瞥して以来、彼女はずっと機嫌が悪い。  
ぷいと顔を背け、すぐに寝台に入ってしまったのだ。  
仕方なくアルは石畳の床に毛皮をひいて寝るしかなかったほどだ。  
 
もちろん、女の勘はアルの異変などたちまち見抜いていた。  
しかしラコニカは、アルが謝ることすら許さなかった。  
――このまま彼女を放っておいて、出て行ってしまおうか。  
アルの頭にそんな投げやりともとれる考えが浮かぶ。  
だが、彼女の背中はやはり泣いているようだった。アルは頭を振って思いなおす。  
「ラコニカ、せめて謝らせて欲しい」  
「……聞きたくありません」  
アルを恐れるように、ラコニカは部屋の隅へと逃げていく。  
甲冑をならし、アルはそれを追った。  
 
「僕の気持ちも分かってくれ。このまま謝りもしないまま、もし……」  
「言わないで!」  
突然大声で遮られ、アルも言葉を失う。  
ほんの一歩先にいるラコニカの姿が遠く、かける言葉も見つからない。  
そんな彼女の肩は、小刻みに震えているようだった。  
「もし、なんて言わないで下さい。アルフレドは、絶対帰ってくるんです。  
だから、今日喧嘩しても、絶対明日仲直りできるんです。  
だから……だから、私、絶対アルフレドの謝罪なんか聞きません!」  
アルは後ずさった。  
ラコニカの背中から立ち上るような気迫。  
アルから見えはしなかったけれど、彼女は泣いていた。  
体全体で泣いていた。  
 
「……帰ってきてください」  
すがるような思いで吐いたのだろう。  
その言葉はか細く、震えていた。  
「うん……約束する」  
ようやく答えた言葉に、ラコニカは初めて振り向いた。  
まっすぐにその視線はアルを見つめている。  
怒っているような、泣いているような、笑っているような。  
そんな顔のまま、ラコニカは小さく手を振る。  
「帰ってきてから、ちゃんと謝るよ」  
「じゃあ私、許してあげる言葉をいっぱい考えておきます」  
顔が強張る。  
少しでも気が緩めば、互いに涙が溢れて止まらなくなるのは分かっていた。  
アルが背を向け、部屋の扉を開ける。  
二人は、手を触れ合うこともなく別れた。  
 
まだ薄暗いうちから、モンテヴェルデの人々は五指城の中庭に集まっていた。  
誰に命じられたわけでもない。  
ただ自然と、兵士も、子供も、女も、老人も、自分の意思で集まっていた。  
中庭はそんな人々で立錐の余地もないほどだった。  
そして彼らはただ一人の人物を待っていた。  
最後の戦いを前に彼らに何かを語るであろう、あの少年を。  
戦いを前に演説を行うのは、古代ローマ以来将軍の務めである。  
そして今日がモンテヴェルデ最後の日になるかもしれないことは、皆理解していた。  
 
アドリア海の向こうから朝日が顔を覗かせ、中庭に差し込んだとき、その人は現れた。  
城館から姿を現すと、中庭に面した城壁の上をゆっくりと歩いていく。  
やがてその人影は、朝日と向かい合うところで立ち止まり、全員を見渡した。  
――すでにその人が現れた瞬間から、ざわめきが人々の間に広がっていた。  
その人物に対するかすかな違和感。  
甲冑に身を包んだ人物が城壁を歩くうちに、それはますます強くなっていった。  
その顔立ちも、金の髪も、あの少年にそっくりだ。  
だが違う。  
その人は、アルフレドではなかった。  
 
「皆さん」  
その人物が口を開いた時、天啓が走ったように、全員がその正体に気づいた。  
その甲高い声は、女のものだった。  
「わたしたちは、今日最後の戦いを行います」  
ヒルデガルトは、戸惑い顔を見つめ合う兵士や領民に、はっきりとした声で語りかけた。  
「それは富や名誉のためでなく、わたしたちがここに生きていくための戦いです」  
ざわめきは次第に大きくなっていた。  
だが、ヒルダはそれにまるで構うことなく、静かに言葉を続けた。  
「わたしたちがここで畑を作り、布を織り、子を産み、育て、静かに年老いていく……  
それはこれまで絶えることなく、ずっと続いてきた営みです」  
それはまるで戦いの前の演説としてはふさわしくなかった。  
まるで子供に昔話をするように、ヒルダの声は低く、優しかった。  
 
「あなたたちが、驚いているのは分かります。  
私は教会法、つまり神が定めた掟に背き、鎧をまとい男の髪をしているのだから」  
ヒルダの肩をいつも覆っていた、あの豊かな金髪は消え去っていた。  
それは耳の後ろでざっくりと断ち切られ、短い髪の毛は潮風にあおられている。  
だが、なぜ。  
集まった人々は、ヒルダの次の言葉を聞こうと、水を打ったように静まり返った。  
 
「ここにいるのは、あなたたちの知るヒルデガルトではない」  
ヒルダの声は力強く、しかし荒ぶることもなかった。  
一つひとつ言葉を選ぶように、ヒルダは何度も人々を見渡した。  
「――私は昨日の夜、私もまた女であることを知りました」  
思いがけない告白に、誰もが言葉を失う。  
もとより、未婚の娘が口にするようなことではなかった。  
だが、ヒルダは笑っていた。  
「私は、人を好きになるということを知りました。  
私は、愛されるということを知りました。――それは、とても素晴らしい」  
ヒルダはそこで一呼吸をおいた。  
 
「誰だい誰だい、その果報者は!」  
その途端、中庭の端からしわがれた女性の太い声が飛んだ。  
絶句していた聴衆が、一斉に笑う。  
「あんまりびっくりさせないで下さいよ、姫さま!」  
「姫さま、その運のいい男の名前を教えちゃくれねえか」  
「そんなこと口にしちゃ、坊主どもが気を失うぜ!」  
「気にすることはねえよ。なーに、こんな時だ、神様だって目をつぶってくれらぁ」  
人々は口々にはやしたて、口笛を吹き、歓声を挙げた。  
誰一人、ヒルダを非難するものはいない。  
朗らかな笑いが、城全体を包んだ。  
 
笑いが収まったところで、ヒルダは言った。  
「もう、私は女に未練はない。だから、私は女を捨てたのです。  
……女では、この国を守れないから」  
一転、人々は押し黙った。  
この城より先に、逃げる場所はない。  
背後にあるのはアドリア海の青だけ。自分を守るのは、自分たちだけだった。  
 
「私は決して逃げない。  
今日この戦いが終わるまで、あなたたちを見守りましょう。  
もし死ぬのが私の定めならば、あなたたちの間で死にましょう。  
でも、私は生きていたい。  
生きのびて、この戦いが終わった時……その時がきたら。  
私は再び女に戻り、子を産み、育てていきたい。  
この国を築いた人々がそうしてきたように。  
私の願いはそれだけです。  
……モンテヴェルデの地に、自由と平和がいつまでもあらんことを。  
Ascortaci, Signore.(神よ、聞き届け給え)」  
ヒルダは、静かに言葉を終えた。  
 
人々が一斉に唱和する。  
『Ascortaci, Signore』  
そして皆がそう願った。モンテヴェルデに自由と平和があらんことを、と。  
 
 
(続く)  
 
 

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル