*火と鉄とアドリア海の風・蛇足的あとがき* 
 
ここから書くのは全く蛇足なあとがきです。  
ただ、以前「この話は実話を元に…」と書いたとき「元ネタが知りたい」とおっしゃって下さった方がいらしたので、簡単に触れさせてもらいます。  
手品師があとでタネをばらすようなものですが、1〜2レスほどお付き合いください。  
読みたくない方はあぼんしてください。  
<元ネタについて>  
「火と鉄」の元になった事件は本編にも出てきた1480年のオートラント戦争です。  
1480年7月28日ゲデク・アーメド・パシャ(本編のアクメト)率いるトルコ軍が突如侵攻し、8月11日に町を占領しました。  
ナポリ王はカラブリア公アルフォンソと彼の軍に救援を命じ、同時に教皇庁にも助けを求めます。  
こうしてウルビーノ公フェデリーコ率いる教皇軍や、西欧各国が援軍を送りました。  
戦闘自体は翌年11月まで続き、最終的にはトルコがオートラントから撤退して終結します。  
以前「火と鉄…は作品内の日付で1480年10月には終わる」と書いたのは、  
「アルフォンソと教皇軍がオートラントに到着したのが1480年10月だったから」  
なのです。  
戦争の原因については、ヴェネツィアの黙認という説、あるいは当時ナポリと戦争中だったフィレンツェの政治工作という説などがあり、本編でも少し触れておきました。  
トルコ軍は「火と鉄」のように、最終的にはスルタン・メフメト二世の死去によって撤退を決意したようです。  
ただ実際はメフメト二世もあまり乗り気ではなかったらしく、早くも1480年9月には補給が絶えています。  
大将アーメドも援助を要請するため早々にトルコ本土に戻っていました。  
後世の歴史家は  
「トルコが遠征に成功するにはオートラント以外の大きな港を最初に占領するか、あるいはさらに別の港を確保して補給路を確立する必要があった」  
と判断しています。  
つまり「火と鉄」は「もしトルコがさらに攻撃の意図をもっていたら」という仮定に基づいた、一種の仮想戦記と考えてください。  
 
<登場人物のモデル>  
アルフレドのモデルは、本編にも登場したフェデリーコ・ダ・モンテフェルトロです。  
フェデリーコも私生児で、若い頃傭兵隊で修行しました。学問を好んだ点も同じです。  
ヒルデガルトは、フォルリの領主カテリーナ・スフォルツァの影響が強いキャラです。カテリーナは女でありながら領地を守るために篭城戦の指揮を取った女傑でした。  
(降伏しないと子供を殺す、と脅され『ここからいくらでも代わりを生んでやる!』とスカートをめくったという逸話があります)  
ただこの二人も含めて、大半の人物は小説や映画、ゲームなどのキャラから着想を得たものです。  
例外的にはっきりしたモデルがいるのは、鞭打ち教団の指導者フェラーラのジロラモです。  
彼のモデルは16世紀フィレンツェで神権政治を行ったジローラモ・サヴォナローラです。  
サヴォナローラもフェラーラ出身のドメニコ会士で、「泣き虫派」といわれる支持者を利用して政治的実権を握りました。  
とはいえ「サヴォナローラ=ジロラモのような狂人」というわけではありません。  
サヴォナローラの神権政治を一種の政治改革として評価する歴史家もいます。  
 
モンテヴェルデ人と『狂暴騎士団』の面々を除いて、残りはほぼ全て実在の人物です。  
しかし話の都合とリサーチ不足からほとんど創作というキャラもいます。  
一番創作の割合が強いのはアクメト・ジェイディクでしょう。  
名前も「ゲデク・アーメド」がより原音に近いようですが、書き始めたころにはトルコ読みが分からなかったので、イタリア読みのまま通しています。  
彼の経歴や習慣、性格はほとんど想像です。当時のイタリア人の記録では残忍で下劣な男とされています。  
若い頃アクメトがコンスタンティノープルの戦いに参加したかも分かりません。また、実は将軍ではなくメフメトの召使い出身という説もあります。  
ディオメデウス(Diomede Carafa)は実際は1487年まで生き、自分の戦場体験を綴った"Memoriali"という文書を残しました。  
メフメト二世は話の都合上1480年に死んでいますが、実際には1481年に亡くなりました。  
マエストロ・フランチェスコ(Francesco di Giorgio Martini,1439-1501)は当時名声を馳せた建築家/画家です。  
彼の著書はダ・ヴィンチにも影響を与えたほどですが、その足跡には不明な点が多い人物でもあります。  
1480年ごろ彼はウルビーノ公フェデリーコに仕えていました。オートラント戦争の時にはアルフォンソの要請でターラント港の防衛工事を行ったようです。  
*****  
私自身は、「火と鉄」はエロパロ板でも最も異端なSSだと思いますw  
「いつ『さっさと止めろ』と言われるだろう」と怯えながら書いていました。  
本来はもっと短いはずでしたし(アル追放編は全くない予定でした)、エロな話ももっと書きたかったのですが、あまりに長くなるので泣く泣く諦めました。  
(アルxニーナやヒルダxステラ、アル+ヒルダ+ラコニカ3Pなども考えてたんですが…)  
これほどまで長くなってしまったのは、ひとえに私の構成力不足です。  
 
ではこれで本当に最後です。最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。  
 
 

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