「良彦くん」  
と、呼ばれて振り向いた川瀬良彦の前には、素行が悪い事で有名な同級生が二人い  
た。ノッポで痩せぎすな野田と、がっちりとした体格を持つ塩野。この両名が、優等生で  
通っている良彦を呼び止めたのである。  
 
「な、なにかな」  
良彦は逃げたい気持ちを抑えて、二人に向き直った。どちらも嫌な顔の持ち主だ。粗野  
で下卑てて醜い奴等である。これでも自分と同じ高校生なのか。良彦はよっぽど怒鳴っ  
てやりたかった。しかし、教師も恐れを抱く不良少年の二人を相手に、啖呵など切れる  
はずも無く、良彦はただ、曖昧な笑顔を見せるにとどまっている。  
 
「あのさあ、良彦。今日、お前ん家に遊びに行っていいか?」  
野田がへへへ、と嫌な笑いを見せながら言った。次いで塩野が、  
「いいだろ?まさか、嫌とは言わないよな」  
そう言って、握り拳を作る。遊びに行っていいかと尋ねておいて、その実、有無を言わさぬ  
態度である。もし断れば、こいつをお見舞いされるに違いない。  
「う、うん・・・別にいいけど」  
暴力に弱い良彦は、うなだれながらもそう答えざるを得なかった。  
 
「おい、良彦。姉ちゃんに電話しとけよ」  
「う、うん」  
野田にせっつかれ、良彦は携帯電話を取り出した。かける相手は、姉の知代である。  
 
「あ、お姉ちゃん?僕だけど・・・うん、今日も友達が一緒なんだ。・・・そう・・・ごめんね」  
良彦は目を瞬かせながら、落ち着かない様子で電話をしている。それを野田と塩野が  
いかつい顔で見つめていた。  
「良彦、姉ちゃん家に居たか?」  
「・・・うん。待ってるって」  
「そうか。じゃあ、急がなきゃな。おい、タクシー拾おうぜ」  
塩野が大通りまで走って行き、流しているタクシーを拾った。ずんぐりとした体格の割に  
は足が早い。いや、良彦の家へ遊びに行くのが楽しみで仕方が無いので、つい足早に  
なっているのかもしれない。それに対し、良彦の足は遅々として進まなかった。出来れば  
帰りたくない。そんな風に見えた。  
 
タクシーは間も無く、良彦の家へ到着した。その料金は、良彦が払う。不良二人は、金  
など持ち合わせていないのだ。  
「おかえりなさい」  
玄関の前に知代がいた。良彦より三つ年上の二十歳で、地元の有名大学へ通ってい  
る。細面の美しい女性で、今年の学園祭ではミスキャンパスにも選ばれた。  
 
「良彦、自分の部屋に行きなさい。あなたは、勉強があるでしょう?」  
知代が良彦に一瞥だけくれて、野田と塩野に近づいた。この二人は美貌の友人の姉  
に迫られ、柄にも無く相好を崩す。  
 
「へへへ、お姉さん。また遊びに来ました」  
「俺たち、もうすっかり知代さんのファンで・・・」  
お世辞を述べる野田と塩野をちらと見遣った後、知代は踵を返した。  
「二人は、あたしの部屋へ」  
あまり感情を込めない物言いだった。知代は薄手のドレスシャツにジーンズという姿で、  
量感たっぷりのヒップを揺らしながら、玄関の中へ消えていく。  
 
「お姉ちゃん!」  
たまらず、という感じで、良彦が叫んだ。すると知代は見返して、  
「・・・お姉ちゃんに任せなさい。もう、誰も良彦をいじめないようにしてあげるからね」  
と言って、僅かに微笑を浮かべた。  
「お姉ちゃんは、良彦が顔にあざを作ってきたり、泣いて帰ってくるのを見るのが、もう  
嫌なの。いい?すべてお姉ちゃんに任せればいいのよ」  
凛とした知代の声を聞いて、良彦は言葉を詰まらせる。すると、野田と塩野の両名が、  
「そうそう。お姉ちゃんの言う事は、ちゃんときかないとな」  
「くれぐれも知代さんの言いつけは守れよ」  
そう言いつつ、知代の後を着いていった。  
 
知代の部屋は二階の奥。外に面した窓には厚いカーテンが引かれ、もう夕暮れも近い  
というのに、灯かりが落とされていた。  
「どっちからやるの?」  
六畳ほどの部屋に、知代と不良少年が二人、ベッドに腰掛けている。知代はすでに服を  
脱ぎかけ、ジーンズのボタンを外していた。  
 
「へへへ、いつもの通りでお願いします」  
野田がへらへらと笑った。いつもの通りと言われると、知代は衣服を脱ぐのをやめ、ベッド  
の上に身を投げ出した。  
「・・・好きにするといいわ」  
「へっへっへ・・・そうこなくっちゃ。おい、塩野。あれを出せ」  
「よし」  
塩野が野田に言われ、懐から油でなめしたような縄を取り出した。ずいぶん使い込まれて  
いるようで、縄は浅黒く変色している。  
 
「すいません、お姉さん。今日も縛らせてもらいますね」  
野田がしずしずと知代の背後に回り、後ろ手を取った。そして手首から順に、肘、そして鎖  
骨から胸元へ、縄を滑らせていく。  
「女ひとりとするのに、縛らなきゃできないわけ?」  
「いえ、これは、単なる俺たちの趣味です」  
呆れ顔の知代に、塩野が言い訳がましく答えた。そうしている間に、知代は着衣のまま、荒  
縄でみっしりと縛られていく。  
 
「ちょっと、失礼。おっと、お姉さんノーブラですか」  
「・・・どうせ、すぐに脱がされるから、外しておいたのよ」  
「そうですか。ご配慮に感謝します」  
野田の手が、ドレスシャツの胸元をはだけさせた。縄を打たれているので脱げはしない  
が、ブラジャーを着けていない生の乳房が半分くらいはお目見えする。野田はそこに手  
をやり、つんと上向いた乳首を指で摘んだ。  
 
「お姉さん、今、どんな気持ちですか?」  
「・・・知らないわ」  
知代の顔は、見る見る紅潮した。若い女性が胸元をはだけさせられ、乳首を摘まれれば  
どんな気持ちか分かろうものだが、野田はあえてそこが聞きたいのだろう。醜い顔をさら  
に歪ませ、いやらしく乳房も揉み始めた。  
 
「あッ・・・」  
「ふふ、いい声で鳴く」  
上半身を縛られた知代の背後に回り、野田は執拗に乳房と乳首を弄んだ。時に強く、時  
に優しくと緩急を使い分け、恥らう知代を心身ともに追い詰めていく。  
「い、いやッ・・・」  
「乳首が硬くなってきましたね」  
親指と人差し指で揉むように、野田は乳首を責めた。この男、女性の胸に執着があるよう  
で、知代の豊かな乳房は顔と同じく、肌を赤らめていった。  
 
「俺は下半身を責めるぜ」  
今度は塩野が身を乗り出し、知代のジーンズを引っぺがした。ジーンズの下は白いショ  
ーツ一枚のみで、真ん中のあたりにうっすらと若草が透けて見える。塩野は生唾を飲ん  
だ後、一気にショーツを引き降ろしにかかった。  
 
「おや、知代さん。パンティ、糸引いてますよ」  
下着を毟り取った塩野が、その中央にある股当てを指差して笑った。確かにそこには粘り  
気のある液体が染み、布地のねじれを辿るように糸が引いている。それを見せられ、知代  
はいよいよ身を焦がすような羞恥にかられた。  
「感じたんですね、知代さん。野田の乳首いじりで」  
「・・・だからどうしたって言うの?女だったら、当たり前よ、そんな事」  
気張って言ってはみたが、知代の体は震えている。縄で自由を奪われ、乳房と乳首をしつ  
こく弄ばれた挙句、女を濡らしてしまった。その事が、彼女の心を追い詰めている。  
 
「いい加減、可愛い女になった方が、いいんじゃねえのか?知代さん」  
塩野が知代の股を割った。そして二本の指で若草を掻き分けて、恥ずかしい涎を垂らした  
女の中を抉る。  
「ひッ!ああッ!」  
ひときわ高い知代の悲鳴が響いた。指は第二関節の辺りまで、容赦なく埋められている。  
その上、塩野は指を回転させ、女穴をねちねちと掻き回し始めた。  
 
(お姉ちゃん・・・)  
良彦は自室で、間断無く響く姉の悲鳴を聞いていた。知代が二人と部屋に消えてから、  
もう三十分は経つ。その間、美しい姉は、ああ、いや、と、甲高い声で泣き続けた。  
(ごめんね・・・僕がもう少し、しっかりしてたら・・・)  
良彦は落涙しながら思う。自分にもっと力があったら、不良に脅され、姉を供奉しなくて  
も良いのにと。しかし、良彦はあまりにも非力で、且つ、弱い心の持ち主だった。  
 
 
時は流れても、知代は相変わらず二人の慰み者になっていた。体に打たれた縄は解か  
れたが、前からは野田、後からは塩野と、まるで淫獣さながらに犯されている。  
「おお・・・いいフェラだぜ。チンポが蕩けそうだ」  
「ンン・・・ンッ」  
野田は痩せぎすな割には剛物の持ち主で、知代にそれを舐めさせるのが好きだった。  
一方、塩野は四つん這いになった知代を背後から犯し、尻の穴を指で弄るのを、最上の  
喜びとしている。興が嵩じれば、このまま知代はその後穴まで犯される事になる。  
 
「オマンコもすげえ締まるぜ。ああ、やっぱり生チンで犯るのはいいな」  
塩野が背後から知代の体にしがみつき、乳房を握り締めながら腰の動きを早めた。もう、  
幾度目かの射精が近づいてるようだ。  
「あ、ああ〜・・・」  
野田の剛物を咥えていた知代は、背後から凄まじい勢いで抜き差しされる塩野の責めに  
音を上げ、身を伏せた。そして、頭をいやいやと振りながら、今際の時を待つ。  
 
「出るぞっ!知代、こっちを向け!」  
女穴から男根を引き抜き、塩野は知代の髪を掴んだ。そして、美しい顔に子種を放出  
する。  
「俺もイクぜ。ダブル顔射だ」  
野田も自ら剛物を扱き、知代の顔へ子種を浴びせ掛けた。生臭い不良少年の男液は  
大量に飛び、知代の顔だけではなく肩や乳房にまで及んだ。  
 
 
それからしばらくして、秋が深まったある日の事。夕方近い時間に、良彦は知代と帰り  
が偶然、一緒になった。  
「良彦、今、帰りなの?」  
「うん。お姉ちゃんも?」  
「ええ。一緒に帰りましょう」  
そう言って寄り添う姉は、少し痩せたような気がする。しかし、美しさには一層、磨きがか  
かっていた。  
 
「良彦、もう学校でいじめられることは無くなった?」  
「・・・うん」  
「そう、良かった」  
最近の知代は、帰宅時間が遅くなっている。親や良彦には、アルバイトを始めたと言って  
いるが、本当の所は分からない。  
 
たまに、野田と塩野が良彦に話し掛けてくる事がある。その時、二人は上機嫌でこんな  
事を言うのだ。  
「今、お前の姉ちゃん、俺たちの間を回ってるんだ」  
「すげえ人気者だぞ。毎日、予約殺到ってところだ」  
良彦も校内に巣食う、不良少年たちのグループは知っている。二人はきっと、その事を  
言っているのだろう。そして美貌の姉は──  
 
(やられてるんだ。僕のために)  
この頃の良彦は、以前のように顔にあざを作ったり、泣いて帰宅するような事はない。  
もし、良彦がいじめられれば、野田と塩野が黙ってはいないからだ。実際、良彦を少し  
からかったある少年が、手ひどく痛めつけられていたりもする。そう言った所で言えば、  
良彦の学生生活は安穏としている。  
 
「お姉ちゃん」  
良彦が声をかけたとき、知代の携帯電話が鳴った。短く三回ほどコールをすると、電話  
はすぐに切れた。まるで、何かの符号のごとく。  
「ごめん、良彦。先に帰ってて。お姉ちゃん、アルバイトが入っちゃった」  
知代は薄く微笑んで、良彦の傍から離れていく。そして、薄闇の中へと姿を隠してしま  
った。  
 
僅かに残った陽が逆光となり、知代の輪郭をかたどった。もう秋も深まったのに、知代  
は薄めのトレーナーを着ている。しかも、丸みを帯びた乳房の先端が尖っていた。ボト  
ムは白のミニスカートで、たっぷりとした桃尻が歩くたびにブルブルと震え、一見して、  
ノーブラ、ノーパンだと分かるほど、その姿は軽装だった。  
 
姉を見送った後、良彦は懐から写真の束を取り出した。今日、帰り際に野田と塩野がく  
れた物だった。  
「これでマスでもかけよ」  
そう言われて手渡された写真には、何人もの男の中で身悶える姉の姿があった。何日か  
に分けて撮られた写真のようで、知代はシャッターを切られるたびに、相手が変わってい  
る。  
 
背景は薄汚いアパートの一室だ。知代はそこで素っ裸にされ、幾人もの不良少年たちと  
体を重ねているようだった。美しいと評判の顔を淫らな笑いで歪め、嬉々として男を受け  
入れる姉の姿が、良彦にはたまらなく刺激的である。  
(お姉ちゃん)  
気がつけば良彦の股間は熱く滾っていた。姉を想い、自然とそうなった。そして家へ向か  
って歩き出す。足早に、しかし、気持ちはゆっくりと。  
 
おしまい  
 

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