あれから二ヶ月たった。  
 あの晩、あたしはお兄ちゃんをおもちゃにして、なぶってなぶってなぶり尽くした。  
 お兄ちゃんは最後には、子供みたいに泣きじゃくって許しを乞うたけど、あたしは朝までイカせてあげなかった。  
 あの時のお兄ちゃんの顔・・・・・・外で鳥が鳴き始め、夜明けの空の、美しい青に染め上げられた窓を背に、お兄ちゃんはあたしに屈服し、あたしはお兄ちゃんを征服した。  
 そして、その朝から、お兄ちゃんはあたしに逆らえなくなった。  
 カノジョとは、その日のうちに別れさせ、志望校も地元の大学に変更させた。そして両親に頼んで、あたしたちの部屋を防音にした。親は驚いて反対したけど、よがリ声がうるさくて勉強に集中できない、お兄ちゃんがそう言うと、二人は何も言えなくなった。  
 それから、あたしたちはやりまくった。  
 毎晩毎晩、ひたすらエッチをしまくった。  
 あたしとお兄ちゃんの身体の相性は、ますますよくなる一方で、一晩に十回以上イクのは当たり前。生理の日は、肉体的というより精神的な飢餓感で死にそうになるほどだった。  
 でもあたしは、一度たりともお兄ちゃんをイカせてあげなかった。  
 インサートの段階では必ず生でやらせてあげる代わりに、フィニッシュの段階では、絶対に自分の手で、あたしの見ている前でやらせた。  
 
 いつも泣きそうな顔で、あたしの前にひざまずいて、一生懸命ペニスをしごくお兄ちゃん。  
 こらえきれずに発射し、あたしの十回分のエクスタシーを、一度の射精でまかなおうと、大量のスペルマを泣きながら放出するお兄ちゃん。  
 その涙も乾かないうちに、畳や布団、それにあたしの身体に飛んだスペルマを、舌で清めさせられるお兄ちゃん。  
 そういう羞恥の極限の姿をさらしながら、なおも勃起し、見方によっては、お尻を振って誘っているようにすら見えるお兄ちゃん。  
 誰も知らない、あたしだけが知ってるお兄ちゃん。  
 
 そういうお兄ちゃんを、あたしは無言で見下ろす。  
 この瞬間、世界は二人だけのものとなり、あたしは、その世界に君臨する神となる。  
 あたしは、この瞬間が大好きだった。  
 
 
 おれは妹が怖い。  
 
 朝、いつものように睡眠不足の目をこすりながら、朝食のテーブルにつく。おれは妹の左隣。  
 あの夜まで、朝晩ずっと右隣に座ってたんだけど、妹が言って席替えさせられた。アイツが何をこだわっているのか正直分からなかったが、やがてすぐ分かった。  
「ぐぅっ・・・!」  
 まただ。分かっちゃいても、思わず小さな悲鳴をあげてしまう。妹が右手でトーストをかじりながら、左手でおれのペニスをまさぐり始めたのだ。  
 ファスナーを開け、指を突っ込み、トランクスの小便用の切れ込みから直接ペニスにたどりつく。テーブルから左手を下ろして数秒とたたない。まさに熟練の職人芸だ。  
「あんたたち、早く食べちゃわないとバス出ちゃうわよ」  
「はーい。・・・・・・ちょっとお兄ちゃん、食べないんだったらコレもらうよ」  
「おい待て、それは・・・・・うぅっっ・・!」  
 おれが最後に取っておいたハムエッグが、あっというまに横取りされてしまう。それも、ペニス操作でおれの口をふさぎながら、だ。   
 
 はためには、おれと妹の仲は、ほぼ変わっていない。  
 妹は、相変わらずおれにふざけかかってくるが、当然、男女関係を匂わせるような、べたついた甘え方ではない。今までと同じようなさっぱりした、コンビ漫才のツッコミのようなコミュニケーションに見える。そう、あくまで、はた目には。  
 しかし、そのセクハラっぷりは、筆舌に尽くしがたいレベルになった。  
 周囲の人間の目を盗んでのキスやおさわりは序の口で、ズボンの中に手を突っ込んでのアナルいじり・ペニスいじり、服にシミが残るほどの乳首吸い、それもところかまわずにだ。  
 果ては女子トイレに呼び出されてのフェラなどやられた日には、もう何も言えなくなる。  
 しかし、この説明だけでは十分ではない。多分、童貞の頃のおれが、似たような相談を受けても、うらやましさ以外の感情は感じないだろう。  
 問題があるとすれば、妹は決しておれをイカせてくれない、ということだ。  
 そして、いまも・・・・・。  
「・・・くはっ・・!」  
 妹の左手が、するりと股間から去っていく。あと数秒弄られればいってしまう、というタイミングで。  
 妹は、何事も無かったかのように、母と昨日の韓流ドラマの話をし続けている。世間話をしながら、おれのペニスの具合を測っていたのだ。  
 
 おれは妹が怖い。怖くて怖くてたまらない。  
 
 
 朝食を食べて、あたしとお兄ちゃんはバス停に走る。  
 すでに長蛇の列が出来ている。  
 あたしたちの通う公立高校のとなりには、名門の女子進学校があり、二校分の通学をこの路線一本でまかなっているわけで、時間帯によってはバスは殺人的な混雑となり、学校に着くまでの数十分間、学生たちは毎朝、お盆の帰省ラッシュに匹敵する拷問を味わう。  
 それがいやな者は、早起きして時間帯を変えたり、自転車通学に切り替えたりする。あの日まであたしたち二人は、自転車通学だったが、あたしが言ってバス通学に変えさせた。  
 まあ、あたしたちには、どうでもいいことだ。  
 バスが来る。  
 後ろから押され、前を押し、あたしたちはバスに乗り込む。  
 車内はすでにすし詰め状態だが、あたしたちは、なるべくはぐれないように、車内の中央部に身体をねじ込む。  
 
「お兄ちゃん」  
「・・・・・・・・ん?」  
「昨日、友達に借りたCDなんだけどさ、今日中にRに焼いてほしいんだけどさ」  
「今日中って、えらくまた急ぐんだな」  
「うん、そう思うでしょ? だって、あいつったらさ・・・・・」  
 
 何気ない雑談をしながら、お兄ちゃんの身体が緊張でこわばっていくのが、手にとるように分かる。そろそろ慣れてもいい頃なのに、まだ怯えが抜けないみたいだ。・・・・・・だからこそ、いじめ甲斐があるというものなんだけど。  
 お兄ちゃんの背後から話し掛けるようにしながら、ベルトを緩め、ズボンの中に手首を突っ込む。さっき、さんざん苛めてあげたペニスに。  
 
「・・・・・でね、聞いて聞いて、その時あたしってばさ・・・・」  
 
 お兄ちゃんの背中が期待と不安と快感で身をよじらせる。かわいい。かわいくて仕方が無い。だから、もっともっとかわいくなってもらう。  
 ペニスをしごきあげ、タマタマをもみほぐし、うなじに息を吹きかける。  
 あたしの一つ一つの動作に、全部お兄ちゃんは応えてくれる。それが嬉しくてたまらない。  
 でも、そろそろまずい。お兄ちゃんの限界はもう、すぐそこまで来ている。あたしはタイミングを計り始めた。  
 
「・・・・・・うん・・・そうだね、たかみ・・・・くぅっ・・・!」  
・・・・・・・ここだ!!  
 
 限界ギリギリ、あと1ミリでイッてしまう。そのタイミングで手を止める。お兄ちゃんが全身であたしに屈服する、この瞬間。背筋に電流が走ったようにゾクゾクする。  
 前のカレシと付き合ってた頃のあたしなら、絶対に信じられなかっただろう。自分には指一本触れずに、ただ相手を苛めるという興奮だけで、軽くイってしまうことが出来るなんて。  
 
 気分は最悪だった。  
 焦らされるという行為が、人間の精神にどれほどの苦痛を与えるか。あの晩までおれは理解してなかった。そして、この状態がもう二ヶ月も続いている。  
 
・・・・・・・・地獄だ。 一体いつまで続くんだ。  
 
 そう思わずにはいられない。  
 いや、もう、その答えも、おそらく出ている。とっくのむかしに分かっている。  
 あいつ自身がことあるごとに、おれにささやく、あの言葉。 おれに誓わせる、あの言葉。  
 
・・・・・・・・お兄ちゃんは、永遠にあたしのおもちゃなの。これまでも、これからも。  
 
 
 バスが、いつもの急カーブで激しく揺れる。  
 おれは吊り革につかまって、必死にふんばって横揺れをこらえる。  
 同時に遠心力で、おれの左後ろの乗客たちが、どっとこっちにもたれかかってくる。  
「ぐうぅ!!」  
 その瞬間、妹がおれのアナルに指を突っ込んできた。それも、横揺れの混乱に乗じて。  
 やつの攻撃が、ペニスから撤退した直後だっただけに、完全に不意を突かれた。  
 いつからだろう、妹はおれのアナルに執着するようになった。  
 おれはまだ、そこで感じるようにはなっていない。が、不意に思い出した。あの晩、妹がおれに訊いたあの一言。  
 
「・・・・・・・お兄ちゃん、処女?」  
 
 おれも、いずれは妹に尻を差し出して、女のように犯してくれと哀願するようになるのだろうか・・・・。  
 アナルに突っ込まれた指など、正直なところ気持ちよくも何ともなかった。  
 でも、必死に吊り革につかまりながら、自分の、そんな姿を想像しただけでペニスは痛いくらいに硬度を取り戻していた。  
 
 
 あたしは学校が嫌いだ。  
 相変わらず退屈な授業。口を開けば同じような話題しか持たないクラスメート。コンクリ色の校舎に狭苦しいグラウンド。  
 楽しみは昼休みだけ。  
 無論、そんな友達たちとハシャギながら、さめた弁当をつつき合うためじゃない。お兄ちゃんに会えるからだ。一緒に並んでお弁当を食べる。まるで恋人のように。  
 そして当然、食べるのは弁当だけじゃ済まさない・・・・。  
 
「・・・・・ぐすっ・・・・ひっく・・・・ああ・・・あああ・・・・!!」  
 
 旧校舎の音楽準備室。今は使われていない、校内で二つしかない防音設備のある部屋。  
 お兄ちゃんは、靴下と上履きだけの姿で、あたしの足元にうずくまって、女の子みたいに泣いている。  
 あれからお兄ちゃんは、あたしの前じゃとっても泣き虫になった。  
 あたしが苛めれば苛めるほど、お兄ちゃんの身体は感度がよくなり、多分その気になれば、乳首だけでもイカせることが出来るだろう。イカせてあげないけど。  
 
「・・・・・・イカせてください・・・・お願いします・・・・・何でもします・・・・・・ですから・・・・ああ・・・・!」  
 
 その涙にあたしは、ひややかな沈黙をもって答える。  
 数秒前まで、お兄ちゃんのペニスは騎上位の形で、あたしにインサートされていた。  
 でもペニスがイキそうだと思った瞬間、あたしは渾身の力を込めて、お兄ちゃんの耳に噛みついていた。もう計算じゃない。無意識の行動だ。  
 その結果、お兄ちゃんはまたもイキそびれ、あたしだけが無限に近いエクスタシーを感じることが出来る。  
 そして、みじめに取り残されたお兄ちゃんを上から見下ろす。・・・・・・この楽しみに比べれば、授業も友達も弁当も、どれほどの価値があるだろう。  
 
 あたしは学校が嫌いだ。  
 このあたらしい、あたしの人生をかえるほどの玩具、「おにいちゃん」というおもちゃを手に入れたことで、今までの人生がいかにツマラナイものだったか、いやでも意識してしまうからだ。  
 このコンクリートの檻・学校ではとくに・・・・。  
 
 おれの成績が下がってきている。  
 夏までは、学年トップ10のランキング入りくらいは果たしていたはずだが、こないだの中間テストは、かなり悲惨な結果だった。  
 
・・・・・・・・そんなもん、当たり前だろ。  
 
 心の中で自嘲する。四六時中、妹に身体をいじられ、まさぐられて、頼むからイカせてくれと土下座する毎日。以前のおれなら予想だにしない日々。   
 
・・・・・・・・何故こうなってしまったんだろう?   
 
 あいつの、貴美のせいだ。そう思う。思いたい。  
 でも、違う。本当はおれにも分かっている。これは多分、おれ自らが望んだことなんだ。おれ自身の心の中に、こんな風に扱われたいという願望があったんだ。そうとでも考えない限り、ここまで妹に逆らえない自分に納得がいかない。  
 
「どうしたの、お兄ちゃん?」  
 
 妹が、乳首に指を這わしながら、おれの顔を見上げる。  
「なっ・・・・何でも・・・ないよ・・・・」  
「ほんと? 何だかすごく思いつめた顔してたよ」  
「たぶん・・・・腹でも・・・へったんだよ・・・」   
「なによそれ、ちょっとタンパク質の出しすぎじゃないの? まったく健康なんだから、お兄ちゃんは」  
・・・・・・・・なに言ってやがる。出しすぎどころか、コチトラため過ぎで発狂寸前だってのによ・・・。  
「じゃあさ、帰りにタコ膳寄ろうよ。お兄ちゃんのおごりでさ」  
 
 帰りのバス、相変わらずの満員御礼の混雑の中で、妹の指芸は容赦なくおれを襲い、かと思えば、おれの表情の曇り一つ見逃さない。たいした女だ。おれは思わず舌を巻いた。  
「次の停留所は、@@公園前ー。 お降りの方は早目に両替をお済ませ下さい」  
 人の群れが動く。  
「いい?タコ膳、約束だからね」  
 妹が、ようやくおれから身体をはなす。表情こそ変わらないが、未練たっぷりなのがバレバレだ。   
 帰りのバスは、バス停ごとに人が減っていく。だから朝のラッシュのような無茶はあまり出来ない。  
 分かっちゃいるが、正直、開放されてホッとする。  
「でも貴美、おれぁ今25円しか持ってねえぞ」  
「ちょっと、何それ!?信じらんない!」  
 
 その時だった。その女と目が合ったのは。  
   
 
 お兄ちゃんの様子が変だ。  
 今までだって、あたしを時おり怯えた目で見たり、うるんだ目で背を向けたり、そういうことはよくあった。  
 そういう時のお兄ちゃんは、たいがいイジめてオーラ全開で、思わず、後ろからレイプしてやりたくなる。  
 まあ、もともと根が不器用なお兄ちゃんに、あの日以前の関係性を演技しろって言っても、出来るわけ無いんだけどさ。  
 でも違う。なんか微妙だけど、そういうのともまた違う、そう思わせるぎこちなさがある。  
 
・・・・・・・・・何かあったんだろうか。 あたしの知らないところで。  
 
 そう思うとたまらなくなる。胸の奥が苦しくて、眉間がきりきり痛くなって、じっとしていられなくなる。  
 誰かが言った。愛情の究極は殺意であると。愛人を殺し、ペニスを切り取った阿部定の気持ちが、あたしには痛いほど理解できる。  
 あたしは24時間お兄ちゃんのことを考えている。24時間お兄ちゃんの傍にいたい。  
 そしてあたしは、お兄ちゃんと同じ部屋で目覚め、同じ学校に通い、同じ家に帰る。でも足りない。お兄ちゃんの全てを取り込むには、まだ全然足りない。  
 
「・・・・・貴美、ちょっといいか?」  
「ん、なぁに?」  
 
 裸エプロンで食器を洗いながら、お兄ちゃんが声をかけてくる。最初の30分は猛烈に嫌がっていたけど、もう開き直ったらしい。  
 もっとも、その30分間あたしがイジメ倒して、お兄ちゃんから抵抗の気力をむしりとったせいもあるだろうが。  
 むきだしになったかわいいお尻。その上でリボンのように結ばれたエプロンのひも。着衣と言えば靴下とスリッパだけ。そんな背中を見ながら、あたしは今晩のこれからのメニューを考える。  
 今夜は両親の帰宅が遅い。今でもラブラブなあの二人は、週に一度は子供に食費を渡して、二人だけの外食日を楽しむ。そういう時あたしたちは、当然のように自炊して、カネを懐に入れる。  
 でも、一体なんだろう?お兄ちゃんの背中から微妙な緊張が伝わってくる。  
 
「今日はさ、別の部屋で寝ないか・・・・・?」  
 
「・・・・・・え?」  
「いや、だからさ、今晩は、その・・・お互い別々の部屋で・・・・・だな・・・・ひうっ!!」  
 
 妹の指が無言でおれのアナルに侵入してくる。これが返事だと言わんばかりに。  
「ちょっと、・・・・・何いってんの、お兄ちゃん。あたし、よく聞こえなかったなあ?」  
「・・・だ、から・・・今夜・・・・はああっ・・・・そこはっ・・・・・・やめ・・・・・!!」  
 背骨のラインを指でなぞり、うなじに息を吹きかけ、耳を甘噛みされる。それだけでもう、膝に力が入らなくなる。  
「被告人、発言の意味がわかりません。もっと大きな声で、意味を明確に発言して下さい」  
 
・・・・・・・・何が被告人だ!それ、さっきメシ時に観た火サスじゃねえか! くそっ!くそっ!何でおれの身体は、こんなに力が入らねえんだっ!!  
 
「どうしました被告人?このまま意図不明な発言を続けるようですと・・・・・・」  
 妹の指が、エプロンの隙間から乳首に伸びてくる。  
「あっ・・・・・あああああああ!!」  
「発言の権利を放棄したものと見なし・・・・・」  
 乳首から指が離れる。どこだ?次はどこにくる? ペニスか!?内ももか!?それとも・・・・・・。  
「かはっ!!!」  
 アナルだった。肛腔で暴れていた指と、フリーになった手を使って尻をひろげ、じかに舌をねじ込んで来た。  
「ふふっ・・・・・予定どうり刑を執行しますわよ・・・・・!」  
 ぴちゃっ、ぴちゃっ・・・・世にもいやらしい音が、空間に響き渡る。  
 もう、全身に力が入らない。おれはシンクに肘を着き、かろうじて身体を支える。  
「たのむっ・・・・・たかみっ・・・・おれの・・・・・・ひふっ!・・・・はなしを・・・・あああっ!」  
 そうなのだ。分かっていたことなんだ。妹が素直におれの言うことを聞くわけがない。こいつは、口でなんだかんだ言っても、ちゃんと自分の行為に後ろめたさを感じている。だからこそ、こんなにも一方的におれをいたぶるのだ。  
 何の事はない。妹の本質は、むかしから全然変わっていない。おれの知ってるあいつのままだ。  
 
 おれは、実の妹に尻を責められながら、そんなことを考えていた。  
 
 あたしは依怙地になっていた。  
 お兄ちゃんのハナシってのが何なのか、あたしには分からない。聞いてあげた方がいい。そうも思う。  
「うっ!はああああっ!!」  
 でも、あたしの手と舌は止まらない。  
 
・・・・・・・・・聞いてあげない。聞いてなんかやるものか・・・・!!  
 
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・・たかみ・・・・・・」  
 あたしの胸の奥で、怒りとそれ以上の恐れが渦巻いていた。とうとう、お兄ちゃんがあたしと別行動をとろうとし始めたのだ。  
 毎日毎日、あたしがこんなに可愛がってあげているのに、何でそんなことを言い出すの?  
 聞いてみれば、案外何でもないことなのかも知れない。別々に寝ようと言うのも、今晩のことだけかも知れない。  
 でも、あたしには、それを確認する勇気はなかった。  
 
 もう、そろそろいいだろう。  
 お兄ちゃんのお尻から口を離す。  
 髪をつかんでシンクから引きはがす。  
 お兄ちゃんはもう足腰が立たなくなっている。おあつらえむきだ。そのままダイニングに押し倒す。  
 エプロン越しに、お兄ちゃんのペニスが痛いほど勃起しているのが分かる。  
 うれしい。お兄ちゃんがアナルで初めて感じてくれてる。  
 そうだ、忘れさせてあげよう。お兄ちゃんの身体に新しい快感を刻み込んで、一晩たりともあたし抜きで眠れないようにしてあげよう。もう、二度とあんなことを言えないように。  
 
「お兄ちゃん、これ何だかわかる?」  
 
 あたしはポケットから、イチジク型の物体を取り出した。  
 
 最近、特にあの女がおれを見ているのが分かる。  
 あの帰りのバスの中、初めてあいつと目が合った。  
 
・・・・・・・見られた!?  
 
 そう思った。あの時は。  
 そいつはクラスの女。おれと滅多に話もしない。というより、あの時まで名前も忘れていた。  
 そういや、そんなやついたな。おれにとっては、その程度の存在。   
 その女と、最近おれはよく目が合う。  
 特に非難がましい目でもなく、うさんくさい目でもなく、目が合うと顔を真っ赤にして伏せるでもない。気が付けば、ただ、見られている。それだけ。  
 だがその目線は、おれの背筋を冷静にさせるには充分なものがある。  
 もし、こいつがあの時のことを見ていたとする。  
 ガールフレンドとバスの中でふざけあってた。それはいい。  
 でも、その相手が実の妹だと知られたら、こいつは文字通りシャレにならない。おれが、というより、あいつのために、だ。   
 おれは妹と、もう一度距離をとろうと思った。耳を貸してくれるとは、あまり思えないが。  
 
「今夜は別々に寝ないか?」  
 
 やはり聞いてはくれなかった。  
 
 
 お兄ちゃんの顔色が、ソレを見て真っ青になる。  
 あたしは、お兄ちゃんが逃げられないように、エプロン越しにペニスを握り締める。  
「・・・貴美、お前・・・・・本気か・・・・!?」  
「んっふっふっふっふ。どう思う?」  
「冗談・・・・・・・だよな?」  
「んっふっふっふっふ。そう思う?」  
「・・・・・おも・・・わ・・・ない・・・・」  
「んっふっふっふっふ。ぴんぽーん!」  
「たかみ・・・・むぐぅ・・!」  
 まだ何か言おうとするお兄ちゃんの口を、あたしはとっさにキスでふさぐ。  
 おいしい。思わず我を忘れそうになる甘さだ。あたしは舌を伸ばして口内をねぶりまわし、お兄ちゃんの唾液を猛烈な勢いで吸い上げる。  
 ここにいるのは人じゃない。お兄ちゃんの姿をした、とっても甘いケーキなのだ。  
「ああっ・・・・!」  
 お兄ちゃんのエプロン越しのペニスから緊張が伝わってくる。キスだけで感じてくれている。それが素直にうれしい。  
 いつまでもこうしていたい。そういう思いを押さえ込み、あたしは口を離す。  
 今日のメインディッシュは、別にある。もっともっとおいしい、いやらしい青い果実。  
 
「お兄ちゃん、今日は予定を一つ繰り上げるね?」  
「・・・・・・え?」  
「今日はね、もらっちゃうことにしたから。お兄ちゃんのバージン」  
「たかみっ・・・・・ちょっ・・・・まっ・・・・!!」  
「だーめ。もう、決めたの」  
「・・・・・・決めたのって、おれの意見は・・・?」  
「本当はもっともっとじらせて、楽しませてあげてから、もらおうって思ってたんだけど、もうやめたの」  
「・・・・・・・・・・」  
「お兄ちゃんが悪いんだからね・・・・・・あんな事言い出すなんて・・・・・!」  
 
 妹が、わき腹と肩に手をかけて、おれの身体をうつ伏せにひっくり返す。  
「ちょっと待っ・・・・・・ああっ!!」  
 おれの中に何かが差し込まれる感覚。  
「もういわない!もう、あんなこといわない!! だから・・・・・」  
 おれの中に何かが入ってくる感覚。  
「だから・・・・だから・・・・・」  
 おれの中から何かが抜かれる感覚。  
「・・・・・もう、ゆるして、ください・・・・・」  
 おれの中にまた何かが差し込まれる感覚。  
「ひぃっっっっ!!」  
 おれの中にまた何かが入ってくる感覚。  
「っはぁぁぁぁぁぁぁ!!!」  
 おれの中からまた何かが抜かれる感覚。  
「・・・くはっ!!」  
 
 ぐぅきゅるるるるるる!!!!  
 
「はあああああ・・・・・・!!!」  
 おれの下腹部が猛烈な悲鳴をあげた。  
 浣腸など、思えば小学生のとき以来だ。仮病で腹痛を訴えていたら、保健の先生はプラスチックの浣腸器を取り出した。  
「仕方ないわねえ・・・・・。」  
 
 腹痛が便意に切り替わった。こらえきれない。思わず妹を見上げる。  
 妹が、いかにも楽しそうな、うれしそうな目でおれを見下ろしている。  
「仕方ないわねえ・・・・・。」  
 
 そういえば、あの時の先生も、今のアイツと同じような目をしていたような、そんな気がする。  
 
「・・・・たかみ・・・トイレに・・・・トイレに・・・・」  
 お兄ちゃんは顔を赤くしたり青くしたりして、うめいている。  
 かわいい。お兄ちゃんをこのまま見ていたい。ずーっと最後の、決壊の瞬間まで。  
 でも、いくら何でもそんなわけにはいかない。ダイニングキッチンで粗相をぶちまけるような真似は出来ないのだから。    
   
「いいわよ。トイレいかせてあげる」   
「・・・はぁっ、はぁっ・・・・あ・・・りがとう・・・・・・」  
 お兄ちゃんは、苦しげにふらふらと立ち上がる。  
「ただし」  
 あたしは、お兄ちゃんの膝をカックンして、ふたたび体勢をくずす。  
「なっ、何だよ、たかみっ・・・・!!」  
「トイレには、お馬になって行くの。いい?」  
「だって・・・・さっき、おまえ・・・・ひぃっ!!」  
 お兄ちゃんが生意気に言い返そうとするが、あたしは、そのお尻を一発ひっぱたいて黙らせる。  
「いやならいいんだよ、ここですれば?」  
「そっ・・・んな・・・・。ぐすっ・・・ひどいよ、たかみ・・・・」  
 お兄ちゃんの顔色は、もう青いのを通り越して白くなっていた。くすくす、よっぽど痛いみたいだね、お腹。  
 お兄ちゃんは相変わらず泣きながら、のろのろと四つん這いになって、廊下に向かう。  
 お尻と背中がカタカタ震えてる。何度見てもいやらしい身体だ。見ているあたしも泣きそうになってくる。  
 あたしは廊下を出たところで、お兄ちゃんの背中に飛び乗った。  
「がはっ!!!!」  
 思わずつぶれそうになるお兄ちゃん。あたしが代わりに支えてあげる。  
「たかみっ・・・・あに・・・すんだよっ・・・!!」  
 お兄ちゃんが血を吐くような叫びをあげる。あたしは、お兄ちゃんの髪をつかんで無理やり前を向かせる。  
「決まってるじゃない。ウマには騎手がいるでしょ」  
 
「ひっ・・・ひどいよぉっ・・・・・たかみぃ・・・・」  
「こおら、違うでしょ、お兄ちゃん!ウマはしゃべっちゃダメでしょう」  
「な・・・・?」  
「ひひ―んでしょ、ウマならひひ―ん。ね?」  
「・・・・・・そ・・・・・んな・・・・・」  
「ほら、はーやーくー!!」  
 妹がおれの尻をべしべし叩く。  
 
 こいつがサディストだとは知っていたが、ここまでとは思わなかった。  
 おれを責めながら、すさまじいまでに股間が濡れているのが、背中越しに分かる。  
 いつもいつも、おれをイジメるのに必死で、おれからの行為はほとんど求めたこともなかった。だから、妹の濡れ具合が分かるのは、いつもインサートのときだけだった。  
 つまり、おれに奉仕させるよりも、おれをイジめるほうが興奮する。そういうことなのか・・・・?  
 
 ぐりゅりゅりゅりゅりゅ!!!!  
 
 さらなる激痛がお腹を襲う。もうだめだ。グズグズしてられねえ・・・・・。  
「ひっ、ひひーん!ひひーん!!」  
「きゃはははは!!ほおら、ハイドォ、ハイドォ!!」  
「ひひーん!・・・・・ひひーん!!」  
「そうそう、なかなかいい乗り心地だよ。お兄ちゃん!」  
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、・・・・・・・・」  
「ほらっ! もっと鳴くのぉ!!」  
 
 ようやくトイレのドアが見えてきた。  
 腹痛のあまり、目がかすんでくる。こんなに腹筋と背筋を使ったのは、部活の現役のとき以来だ。   
 このまま、素直にトイレに入らせてくれるだろうか?  
 そういう恐怖がチラリと背中に走る。  
 
 
・・・・・・このままトイレの前で、最後までイジめるのもいいかな?  
 
 ちらっとそうも思ったけども、結果的にあたしは、お兄ちゃんをトイレに入れてあげた。  
 だって浣腸責めは、あくまでもオードブルであって、メインディッシュではないんだから。  
 
 トイレの水の流れる音がする。   
 やがて、お兄ちゃんが消え入りそうな、穴があったら飛び降り自殺してしまいそうな、そんな顔で出てくる。もっとも、穴に入れるのはあたしなんだけどね。  
 あたしは、そんなお兄ちゃんに優しくキスをすると、エプロンをめくった。  
「んふふふふっ、あんだけオナカ痛い、オナカ痛いって言ってて、まだこんな・・・・・」  
 お兄ちゃんのペニスは、トイレの後なのに、まだ硬度を失ってなかった。  
「興奮したのはお浣腸? それともお馬さんごっこ?」  
 お兄ちゃんが顔を真っ赤にして、そっぽを向く。  
 
・・・・・・・・・無理しちゃって、ホントかわいいんだから。  
 
 あたしには分かっている。お兄ちゃんの身体は、イジメられて感じるようになってきている。  
 ゆっくりとだけど確実に、あたしが求める理想のおもちゃになりつつある。それがうれしくてたまらない。  
 あたしはペニスを一舐めすると、エプロンを下ろし、さらにまたエプロン越しにペニスをつかんだ。  
「こっちよ、お兄ちゃん」  
 最愛の人をあたしの部屋まで連行する。逃がさないように、しっかり捕まえたまま。  
 でも、焦ったりはしない。どうせ朝までたっぷり時間があるんだから。  
   
 
 部屋に入るとあいつはドアをロックし、カーテンを閉め、エアコンをいれた。  
 ここまではいつもと同じだったが、そこから妙な事を始めた。  
 押入れの引き戸を開けると、ごそごそ何かを取り出し始めたのだ。  
「貴美・・・・・・?」  
「んふふふふっ・・・じゃんじゃじゃーん!コレなーんだ?」  
 あいつが押入れから取り出したのは、世にも醜悪な模造ペニス・バイブレータ―やピンクローター、さらには双頭のペニスバンドといった類いだった。  
「どぉお?コレ全部お兄ちゃんのために買ったんだよ」  
「・・・・・・・・・」  
 
 もう、おれは声も出なかった。  
 いや、正直、アナルバージンをもらうと宣言されたときに、この展開は予想しなかったわけじゃない。  
 だが、それでも眼前に放り出された、このまがまがしい器具の放つオーラは、おれから言葉をうばった。  
 
・・・・・・・・これが・・・バイブか・・・・。AVで見るのとじゃ、全然違う・・・・!  
 
 おれは思わず妹を見る。まるで天使のように無垢な笑顔をしたアイツが応える。  
 
「どお?これがぜーんぶ、これからお兄ちゃんの中にはいるんだよ」  
 
 
・・・・・・・・・ふふっ、驚いてる、驚いてる。  
 
 お兄ちゃんがバイブを見てすごい顔をしている。  
 待っててね、お兄ちゃん。今すぐ気持ちよくしてあげるから。  
「さあ、お兄ちゃん、お布団布いて。早く早く」  
 あたしは、お兄ちゃんが逃げられないようにドアにもたれて、ジェル状のローションを取り出し、まず指にまぶす。  
「・・・・貴美、おわったよ」    
 お兄ちゃんが、怯えた声でこっちを振り向く。そのアナルに・・・・・・・。  
「ぐあぁっ!!」  
 あたしの中指が、お兄ちゃんの中に根元までズッポリ入ってる。ここまではいつもの通り。でも、ここからは・・・・・・。  
 もう一本、人差し指をさらにねじ込んでみる。さすがに固い。指二本は初めてだから、無理もないかな?  
「お兄ちゃん、力を抜いて・・・・・・!」  
「そっ・・・・んな・・・・」  
「ぬーく―の!」  
「・・・・・・む・・・り・・・だよっっっ」  
 
 問題は、お兄ちゃんの前立腺なのだ。ここさえ押さえてしまえば、どっと快感が発生するはず・・・・・。  
 二本の指を前後だけでなく、上下左右あらゆる角度・速度をかえて、ときにはひねりすら加えて試してみる。  
「はあああぁぁぁぁぁっっ!!」  
 お兄ちゃんの反応が変わった。  
 ここ?ここなの!?  
「たっ・・・かみっ・・・・そこ・・・・や・・・め・・・」  
 お兄ちゃんの身体から力が抜けた。  
「気持ちいいの!?気持ちいいんだね、お兄ちゃん!?」  
「・・・・は・・・・ひ・・・・」  
「そうよ!もっともっと気持ちよくなって!」  
 あたしは残った手で、お兄ちゃんのお尻を、思い切りぶってあげる。  
「いぎぃっっ!?」  
「痛いの!?」  
「・・・・・は・・・い・・・い・・たひ・・・・・れす・・・・」  
 痛いのは本当だったらしい。でも、すぐにお兄ちゃんの声はとろけてしまう。  
 
・・・・・・・感じてくれてる!お兄ちゃんが、お尻で感じてくれてるんだ!!  
 
 あたしは自分が泣いている事に気が付かなかった。  
 
 ずるりっ。  
 妹の指がおれの尻から、音を立てて抜ける。  
 腰に力が入らない。いや、力が入らないのは膝だけじゃない。  
「お兄ちゃん、これを見て」  
 妹が、ビーダマが数珠状につらなった棒状の物体を近づける。  
 アナルバイブ。AVでもよく見かける、おなじみの器具。もちろん実際に目にするのは初めてだ。  
 
「・・・・・・次はコレだよ、お兄ちゃん」  
 
 妹がバイブにローションを塗りたくりながら、やはり天使のような無垢な笑みを浮かべる。  
 おれが知ってる、あの小悪魔的ないやらしい笑顔とは違う。  
 いつからだ。いつから妹はこんな顔が出来るようになった?  
 
 その瞬間、ずしりと衝撃が走った。  
「んんんんんんん!!!!!」  
 数珠状のボコボコが、おれのアナルに次から次へと吸い込まれていく。  
 おれのアナルは、いつからこんなにゆるゆるになっちまったんだ!?  
 
 しっ・・・しかも・・・気持ち・・・・いい・・・・・?  
 うそだ・・・・・おれは・・・・・感じて・・・・・ない・・・・!  
 ・・・・・・おれは・・・・・おんな・・・・・・じゃ・・・・ない・・・・。  
 
 お兄ちゃんが泣いている。  
 まるでいきなりレイプされた少女のように、全身から力を抜いて、むせび泣いている。  
 でも、お兄ちゃんは分かっちゃいない。本当にあたしがお兄ちゃんを泣かせたいのは、これからなのに。  
 あたしは、双頭のペニスバンドを取り上げた。  
「お兄ちゃん、これを見て」  
「・・・・・た・・・・・か・・・・み・・・・・」  
「お兄ちゃんはこれから、あたしにバージンを捧げるの。分かる?」  
 ペニスバンドの片方をあそこにあてがうと、あたしは一気に自分の中に突っ込んだ。  
「はぁうううう!!」  
 快感で腰がくだけそうになる。あたしのものはもう、ローションなど必要ないほどに濡れそぼっていた。  
 クリトリスに突起物が当たるように調節し、それをバンドで固定する。  
 
「さあ、お兄ちゃん、しゃぶって・・・・」  
 
 あたしは、腰に手をあてて、仁王立ちになる。  
 お兄ちゃんがぐずりながら、のろのろとペニスに舌を這わせる。  
「はうっ!!!」   
 その瞬間、あたしは腰から電流が全身に走るのを感じた。  
 まるで本物の自分のペニスを舐められたかのようだ。  
   
・・・・・・・・これが、フェラチオ・・・・・・すごい。すごく、きもちいい・・・・。  
 
 
 もう、何が何だか分からない。  
 妹は、立て続けに達している。  
 どういうことだ?おれは、あいつが装着してるゴムのディルドゥに舌を使っているだけなのに。そんなことを考える理性も、もうおれには残っていなかった。  
 ただ、眼前にそびえるその物体が、無性にいとおしかった。  
   
 その時、妹がおれの髪をつかんだ。  
「もっと!もっと!べろべろしゃぶって!もっとぉ!!」  
 ゴムのペニスがおれの口の中に無理やり押し込まれる。   
「おいしい!?あたしのおちんちん、おいしい!?ねえ、お兄ちゃん!?」  
 のどの奥まで突っ込まれたディルドゥ。普段なら、容赦なく吐き気を催すはずなのに、興奮のせいだろうか、もう何も感じない。  
 おれはディルドゥをくわえると、むしろカウンター気味に、あいつのヴァギナに叩き返してやる。  
「ああああああああ!!!!」  
 妹が、絶叫をあげて崩れ落ちる。  
 
 もう、腰から下が液状になってしまったようだ。  
 立て続けにイッたおかげで、あたしは息も絶え絶えになっていた。  
 でも、まだだめだ。まだ終わっていない。だって、あたしとお兄ちゃんは、まだ一つになってない。  
「ごほっ、ごほっ、ごほっ、ごほっ・・・・・!」  
 お兄ちゃんが激しくむせ返している。  
「お兄ちゃん・・・・・・・・・・大丈夫?」  
 目と目が合う。  
「・・・・・・大丈夫だ。気にしてないよ」  
 お兄ちゃんはそう言うと、あたしを抱き寄せ、優しくキスをした。  
「お兄ちゃん・・・・・?」  
 どうしたんだろう、お兄ちゃんが自分からキスしてくれるなんて・・・・・でも、お尻にも背中にも、いつもの怯えが消えた・・・?  
「いいよ貴美。おいで」  
「お兄ちゃん・・・・・」  
 お兄ちゃんは顔を真っ赤にして、消え入りそうな声でこう言った。  
「・・・・・おれを・・・・・気持ちよくして・・・・」  
 
 あたしの身体にはもう、その一言でエネルギーが充填されていた。  
 
 あたしはお兄ちゃんに跳びかかり、そのアナルにディルドゥを一気に突き刺した。  
 
 
 妹のディルドゥが、一気にアナルをつらぬいたとき、おれは声すらあげられずに、射精していた。  
 眼前が真っ白になった。  
 まるで光の渦の中に叩き込まれたようだった。  
 失神?いや、意識はあった。あったはずだった。  
 妹が狂ったように腰を振って、ディルドゥをおれにたたきつける。  
 もう、どこが気持ちいいのかすらも、よく分からない。  
 アナルを突かれるたびに、ペニスをしごかれるたびに、乳首を舐められるたびに、おれは達していた。そんな気すらする。  
 
 いままで妹は、どれだけ自分がイっても、ほとんどおれをイカせてくれることはなかった。  
 おれが射精を許されるのは一日一回。それも、妹の夜の相手をつとめ終わった、そのさらにあと。無言の妹の眼前で、自らの手でなぐさめ、しぼり出す。おれの一日をしめくくる最もみじめな儀式。  
 それにひきかえ妹はというと、朝のバスから昼休み、帰りのバスから晩飯前、さらには夜のお相手と、つまり食事中と授業中以外のほとんどの時間、おれをいじりまわし、焦らしまくる。  
 当然、自分のエクスタシーには貪欲で、おれのペニスをインサートしても、おれだけがイキそうになったときは平気で寸止めだが、自分がイキそうなときは、まず動きを止めない。おれに苦痛を与えて、射精感のみを破壊する。  
 あるいは、体毛をむしり取り、皮膚をつねり、乳首に爪をたて、髪を引っこ抜いたり、という具合に。  
 そのタイミングといい、手練といい、もはや、痴女というより魔女に近い。  
 その妹が、今おれと一緒にイキ狂っている。それが素直にうれしい。  
 
 もう自分がどんな体位なのかもよく分からない。  
 おれの全身は何十本ものディルドゥがインサートされ、何十本もの指になでまわされ、何十枚もの舌に舐めまわされている。  
 ここはどこだ?  
 いまはいつだ?  
 おれはだれだ?  
 
 めくるめく光の洪水に翻弄されながら、おれはとりとめもなく、そんな事を考えていた。  
   
 
 
 

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