俺はその後、佳乃と別れて、絹代の屋敷へ戻った。
本当は佳乃と一緒にいたかったのだが、夜が明けてからだと、
村人たちに、あらぬ疑いをかけられかねない、と佳乃にたしなめられたからだ。
まあ、実際そのとおりの関係になってしまったのだが、
まだ一応、琢磨氏へのお芝居は続いているので、仕方なく戻ることにした。
幸い、というか、さすがに草木も眠る丑三つ時。絹代の屋敷へは、誰にも会わずに戻れた。
用意されていた布団に潜り込んだ俺は、ゆっくりと佳乃に出会ってからのことを思い出す――
確か、あのときは絹代に庵に案内されて、絹代に手を出そうとしてたんだよな。
で、そこに佳乃が入ってきて、危うく殺されそうになったと思えば、
絹代から、琢磨氏相手にお芝居をして欲しいと頼まれ、了承して一泊することになって、
夜中に佳乃がオナニーしているのを見て、堪えきれずに押し倒してしまって……。
そう、佳乃が俺に対して優しくなったのは、あれからなんだよな。
翌日、絹代の里では、琢磨氏から試練として、白菊を手に入れるように言い渡されて………
旅の疲れが一斉に襲ってきたのか、その辺りで俺の意識はすっかり途切れていた―――
「信幸様、朝餉のお仕度が整いましたよ」
「ん? あ、はい……」
翌朝、障子の向こうからの、薫さんの声で目を覚ます。
「おはようございます。さ、どうぞお掛けになって」
「あ、ど、どうも、おはようございます。すみません、薫さん」
障子を開けると、朝食のお膳を持った薫さんが、部屋に上がりこんできた。
俺は薫さんに挨拶をしながら、布団をどかして部屋の真ん中に座り込む。
「それにしても、白菊を手にされたときのお話といい、琢磨様の呪いを解かれたお話といい、
本当に、ご苦労をなされたそうですね。私も感服いたしました」
「い、いや、それほどでも」
ご飯を盛った茶碗を俺に手渡しながら、薫さんは俺に向かって微笑む。
……本当のことを知ってしまったら、そんなこと言ってられないだろうけど、な。
「まあ、そんなご謙遜なさらずとも。私もあと10年若かったら……、あ、あら嫌だ。
私ったら、何を言っているのかしら? ど、どうぞ聞き流してくださいまし……ほほほ……」
「あ、はは……」
手を口元に添えながら、照れくさそうに笑い出す薫さん。……か、勘弁してくれ。話がややこしくなる。
でも見た目、佳乃よりちょっと上くらいだし、まだまだ十分、魅力的だとは思うけどな。
「そ、それでは、ご飯はこちらにございますので、お代わりはご自由にどうぞ。では、これにて……」
「ど…どうも………」
そんなことを考えていたら、薫さんは照れくさそうにしながら、部屋をあとにした。
……あの人もあの人で、結構可愛いとこあるんだな。いや、手を出す気はさらさら無いんだけどさ。
よく考えりゃ、絹代の炊事洗濯を教えるのって、佳乃でなくて、薫さんじゃダメなのかよ?
昼過ぎ、荷物をまとめた俺たち3人は、琢磨氏と薫さんに見送られ、里をあとにすることにした。
絹代は引き続き修行を続けるために、佳乃はそのお目付け役として、
俺と一緒に、例の庵まで戻ることになったのだ。
「それじゃ、どうも。長々とお邪魔いたしました」
「なんの。こちらこそ、信幸殿を長いこと、お引き留めいたしたのだ。申し訳ない」
俺が礼を述べ、頭をさげると、琢磨氏もまた、手を左右に振りながら、頭をさげてきた。
いやまあ…半分、自業自得なんだけど。などと白菊の柄頭を指で軽く撫でながら思った。
で、その白菊に関しては、最初は固辞していたのだが、結局は、俺が持つことになってしまった。
琢磨氏が、手に入れたのは俺だから、俺が持つのは当然だと言っていた。
もっとも、佳乃に頼んで、庵に置いといてもらおうと、腹の中で決めていたのだが。
……下手に家に持って帰っても、銃刀法だとかなんとかで、ややこしいことになりそうだし。
「い、いやそんな……そ、それじゃこれで」
「うむ。またいつでも、遊びに来られるがよい。歓迎いたすぞ。
絹代、たまには顔を出すのだぞ。それと、修行だけでなく、家事もしっかり身につけないとな。
でないと信幸殿が、愛想を尽かしてしまわれるぞ」
「あ、は……はは………」
「ふ、ふん、わかっておる。……父上も達者でな」
……お芝居がバレても怒らないのなら、遊びに来ます、はい。
絹代は絹代で、仏頂面で頷いている。……にしても、そんなに家事が嫌なのか。
「佳乃、絹代のことで苦労をかけるが、くれぐれもよろしくな」
「そんな、勿体無いお言葉。……ありがとうございます」
佳乃は琢磨氏の言葉に、深々と礼をする。……ま、昨日あんなふうに言ってたし、なんとかなるだろ。
「お三人とも、どうぞお気をつけて」
「あ、ありがとうございます。薫さんも、お元気で」
最後に、にこにこ微笑む薫さんから挨拶を受け、俺たちは歩き始めた。
「ふう。正直言って、家よりもここのほうが、よっぽど落ち着くの」
「ふふっ、そうですか。お疲れ様でした。さて、お茶でもお煎れしますね」
「えっと……俺は、そろそろ帰らないと……」
庵に戻るや否や、絹代は畳の上に大の字に寝っ転がる。
そんな絹代を優しく見つめながら、佳乃は洗い場のほうへと向かった。
俺は荷物を背負ったまま、白菊を部屋の隅に立てかけながら言った。
「はあ? まだ日は高い、少しくらい休んでいってもよかろうに」
と、俺の言葉を聞きとがめた絹代が、むくりと起き上がり、俺を見つめて言う。
「ううん、そうしたいのはやまやまだけど、長いこと連絡とかしていないから……」
よく考えれば、一週間も山の中にいたんだ。多分、会社に戻れば机は無いだろう。
さらに遭難ということで、捜索隊とか出されていたら、どうしようか? 捜索費用なんて出せないぞ。
……そういう観点からしたら、ここで一生を暮らすのも、ひとつの手かも知れないが……。
でも、そんなわけには、いかないよなあ。心の中でため息をつき、思った。
俺が天涯孤独の身なら、それでも構わないのだが、一応俺お袋がいるわけだし、なあ……。
「そ、そうか……よ、佳乃。信幸殿はもう、帰られると仰っているぞ?」
「ああ、そうですか。信幸様には信幸様の、御都合がありますものね。
でも、お茶の一杯くらいは、召し上がっていかれても遅くはないのでは、無いですか?」
「えーっと……じゃ、じゃあお言葉に甘えようか、な?」
俺の言葉に、絹代は洗い場の佳乃に向かって声を掛ける。
佳乃は、ひょっこりとこちらに顔を出し、俺に向かって優しく微笑んできた。
その笑みに、吸い込まれるかのように、気がつくと俺はそう返事をしていた。
「さて、と。それじゃ、そろそろ帰りますわ」
しばしの間、お茶を飲みながら雑談を交わしていた俺は、時計を見て立ち上がった。
これ以上長居すると、本当にきりがなくなってしまう。
結局、俺の目論見どおり、白菊はここに置いといてもらうことになった。
ま、刀なんて、今の俺に使い道は無いし、な。
でもって、ここへ立ち入ることが出来るお守りも、もらった。
何でも、ここら一帯には人間が立ち入れないように、霧の結界みたいなものを張っているらしい。
だが、このお守りがあれば、結界を気にすることなく、この庵へ辿り着くことが出来るとのことだった。
これで佳乃には、会いたいと思ったときは、いつでも会いに来れるわけだ。
「そうか。いろいろと、本当に世話になったな。礼を言うぞ」
「い、いや……そんな」
と、絹代はあらためて、俺に向かって頭をさげてきた。
……そういや俺の正体、言いそびれちまったな。ま、いいか、な?
「それでは、われは信幸様を、お見送りいたしますので……」
「そうかそうか、何だかそうしておると、早くも本当の想い人同士みたいだのう」
「き、絹代様!」
佳乃の言葉に、絹代は嬉しそうに手を叩く。
そんな絹代を見て、佳乃は顔を赤らめながら叫び声をあげた。
「わはは、冗談じゃ。わらわはお邪魔のようだから、ここでお別れじゃ。
達者でな、信幸殿。また、いつでも遊びに来るがよい」
「あ、ああ。こちらこそ、ありがとうな。それじゃ、また」
頬を膨らませる佳乃をよそに、絹代は俺に向かって微笑みを浮かべながら、話しかけてきた。
俺はそんな絹代の笑顔に見送られながら、佳乃とともに、庵をあとにした。
「信幸様……お名残惜しゅうございますが……。それでは……ん、んんっ?」
登山道に戻った場所で、佳乃は憂いを帯びた顔をして、立ち止まる。
立ち止まり、ペコリとお辞儀をしてきた佳乃を、俺は抱きしめながらくちびるを奪った。
「佳乃、佳乃……」
「の、信幸様! こ、こんな、こんなところで……あ、ああんっ……」
そのまま、俺は佳乃の名をつぶやきながら、胸元へと手を潜り込ませた。
佳乃は、驚きの表情を見せたものの、すぐに艶っぽい声を漏らし始める。
「佳乃……もう、しばらく会えないと思うと、俺…俺……」
「はあ…あっ……。で、でも、だ、誰か来たら……。の、信幸様…っ……」
「大丈夫だよ、気にするなって」
「で、でも……あ! あはあ! あっ! あんっ!」
俺の手を振り払うでもなく、愛撫に身を委ねながらも、あたりを伺い、遠慮がちな声を漏らす佳乃。
当然のことながら、そんな佳乃の言葉を気にするような俺ではなく、それどころか、
かえって調子づいてきた俺は、一旦胸から手を離し、服の裾をめくりあげ、下腹部に手を伸ばす。
たちまち、佳乃の口からは、悶え声があふれ出す。……それにしても、こんなに反応よかったっけ?
「……佳乃、押さえててくれ」
「え? あ……は、はい…あ、ああっ……んっ……」
さらに俺は、佳乃に服の裾を押さえるように命令し、佳乃の前にしゃがみこんだ。
うつろな目で、コクリと頷きながら、素直に服の裾を押さえる佳乃。
俺は佳乃の割れ目に沿って、舌を這わせてみた。
すると佳乃は、ビクンと身をすくませながらも、ぶるぶる震える両足を、わずかだが開き始めた。
……ある意味、期待以上のリアクションなのだが。
「なあ、何だかんだ言って、佳乃も興奮しているんだろ? もうぐしょぐしょだぞ?」
軽く、佳乃の割れ目に指を潜り込ませてみた。すでに湿り気を帯びている割れ目は、
難なく俺の指を飲み込んだ。多少呆れ気味に、俺は佳乃に問いかけた。
「そ! そんな! し、知りませ…! あっ! ああっ! あっ! あっ! ………の、信幸様……?」
途端に、佳乃は顔を真っ赤にさせて、否定の言葉を口にしようとしたが、
俺が指をうごめかせると、あえぎ混じりの悲鳴を次々とあふれさせる。
……これは、もう少しいじめたほうが、いいかな? そう思った俺は指を引き抜いた。
突然、刺激が遠ざかったせいか、佳乃が怪訝そうな顔で、俺を見下ろしている。
「ん〜? 興奮していないなら、もう止めたほうがいいのかな? と思ったんだけど?」
「あ…ああ、そ、その…………」
「え? よく聞こえなかったけど?」
俺の言葉に、佳乃は見る見る顔色を変え、ぼそぼそと口ごもる。
もちろん、俺自身が中止する気は、さらさら無かったりするのだが、
佳乃がとまどう様が面白くて、俺はさらに問いかけた。……実際、語尾はよく聞き取れなかったし。
「………つ、続けて…ください………」
「続けて、か。じゃ、どっちがいい? このまま指と舌でイッちゃうのと、俺のちんぽでイッちゃうのと」
もはや、佳乃は顔から火が出るのでは無いかというくらい、
顔を真っ赤に染め上げながら、それだけを口にした。
しつこいようだが、俺はその程度で容赦する人間では無かったりするわけで、さらに佳乃に問いかけた。
「…………………で……」
「へ? 聞こえないってば?」
本当は口の動きで、佳乃が何を言いたいのかは分かったが、声が聞こえなかったので、問い返す。
「……お、おちんちんで、信幸様の、おちんちんで、続けてくださいっ……」
「そっか……じゃ、指にしよっと」
「は…あ? の、信幸様? あ、ああっ! あっ! あ! ああっ! 信幸様っ! あっ! ああっ!
も、も…ダメ! も……は! あっ! ああ………あ、ああ…っ?」
全身をプルプル震わせながら、佳乃は俺に懇願してきた。
そんな佳乃の顔を見て、俺はそっけなく答え、言葉どおり、指を割れ目に潜り込ませた。
佳乃は、驚きの表情を見せながらも、刺激には逆らえないようで、身体をもぞもぞとよじらせながら、
断続的に、歓喜の声を漏らし続ける。その声が、ひときわ甲高くなり、感覚が短くなった途端、
俺はふたたび指を割れ目から引っこ抜いた。
佳乃は泣きそうな顔――実際、その目からは涙がこぼれていたが――で、俺をふたたび見下ろす。
その目は、刺激を中断されたせつなさと、俺に対する疑問の色に染まっていた。
「な、何故……?」
「いやあ、ちんぽでイキたいって言ってたのに、指でイキそうになってたからさ、
佳乃って、どっちでもいいのかなあ、と思って、ね」
切なげな声で、俺に問いかける佳乃。だが俺は肩をすくめ、平然とした顔で答えた。
「そ…んな………信幸様…、わ、われは……」
「ん? なんだい? 自分は指でも、ちんぽでもどっちでもいい、イヤらしい女ですって言いたいの?」
涙をぽろぽろと流しながら、佳乃はいやいやをするように、首を振りながらつぶやく。
俺はゆっくりと立ち上がり、両手で佳乃を抱きすくめながら、耳元でささやいた。
「あ、ああ……われは、の、信幸様……信幸様と、い…一緒に……イ、イキたい…です……」
「そうなんだ……でもさ、俺のはまだ、イキそうにないけど、どうする?
佳乃は今にも、イッちゃいそうに見えるけどさ?」
「ああんっ! ………わ、われが…われが、の、信幸様のを………い、いたしますから……」
俺の耳元で、ぽそぽそつぶやく佳乃に問いかけながら、ふたたび割れ目に指を這わせた。
佳乃は、嬌声をあげながらも、俺の下腹部に手を伸ばす。
「俺の? 俺の何を、どうするわけ?」
俺はその手首を掴み上げ、首を傾げながら佳乃に問いかけた。
……まあ実際、この状態から、佳乃は何をどうしたいのかは重々承知していたけど、
それでも、あえて口にしてもらうのがある意味、醍醐味なわけだしな。
……というか、俺ってここまで、容赦ない性格だったっけか?
いや、佳乃が従順だから、こんなことをしているだけだ。そうだ、きっとそうだ。そう思うことにしよう。
「わ、われの手で……信幸の…お、おちんちんを……その………て、手前まで………」
「ふうん。じゃ、これからどうすればいいか、わかるよね?」
俺が一瞬、妙な葛藤を頭の中で浮かべていると、佳乃がかすれた涙声で話しかけてきた。
そんな佳乃の健気な声を耳にした途端、葛藤は脳から消し飛んでいた。
……しかし、都合がいいというかなんというか、我ながらある意味、便利な脳みそだな。
「は、はい……え…っと……あ、あれ?」
全身の血液が、すべて顔に集まってしまったのではないか、というくらい、
顔を真っ赤に染めている佳乃は、俺のモノを取り出そうとしているが、どうも巧くいかないようだ。
……まあ、ファスナーなんて知らないだろうから、当たり前といえば当たり前かもしれんがな。
「どうしたんだい? やっぱり、止めたほうがいいのかい?」
「ああ……い、いや、です……」
思い切り、心にも無いことを言ってみると、怯えるように、
ビクンと身体をすくませながら、佳乃は必死に俺のズボンを両手でまさぐる。
早くしないと本当に、俺が途中で止めてしまうのではないか、と思っているくらいに必死な姿だ。
……正直、モノがパンツの中で擦れて、それはそれで結構気持ちイイし、
ズボンの上からでも分かるくらい、モノが勃ちあがっているのに、途中で止めれるはずがないのだが。
「……っと……。……あ」
「く……っ…」
と、ようやくファスナーのスライダーに、佳乃の手が当たった。
佳乃は嬉しそうな顔で、ファスナーをおろしながら、その隙間に手を潜り込ませた。
さらに、パンツの隙間に手を突っ込み、モノを直接握り締める。
その刺激に、思わず俺の口から声が漏れ出してしまう。
「あ…あ……っ。い、イイぞ……佳乃…」
「はっ、はい………あ…っ…」
俺のモノをズボンから取り出し、いとおしそうに撫で上げる佳乃。
たちまち溢れる快感をこらえ、俺はあえぎながらも佳乃に声をかけつつ、割れ目に指を這わせた。
佳乃は俺の言葉を受け、モノのしごく加減を強めだした。
「さ…さすが、自分ので慣れてるだけあって、上手いものだな……」
「な! そ…そんな……」
「そんなことはない、って? じゃあ、初めての晩の出来事は、いったい何だったのかな?」
何の気なしに俺がそんなことを口にすると、佳乃は驚いたような顔をして、身をすくめる。
よほど動揺してしまったのか、思い切り俺のモノを握り締めてきた。
俺は一瞬の痛みに、思わず腰を引かせながら、佳乃に問いかけた。
「あ……あれ…は、そ、その………ひ、昼間の、絹代様のあられもないお姿に、
そ、その…お、おちんちんが……反応して……あっ! ああ…あんっ……あっ……」
佳乃は、俺から視線を逸らすように顔を背けながら、ポツポツと喋りだす。
……そういえば、本当に佳乃のモノは、どこに消えたんだ?
俺は、モノをしごいてもらっているお返しとばかりに、割れ目に指を潜り込ませ、出し入れを始めた。
途端に割れ目からくちゅくちゅと音が響き、佳乃の口からは、嬌声が次々と漏れ出す。
「なるほど……ね………。あ…っ……よ…佳乃…お、俺も、もう……」
「あ、は…はい……」
顔を背けていても、俺のモノをしごく、佳乃の手は止まっていなかった。
いや、それどころか、むしろピッチが早まっているかもしれない。
俺は理性を総動員させて、このままイッてしまいたい衝動をこらえながら、佳乃に話しかける。
佳乃はうつろな表情で、モノから手を離し、ふたたび服の裾をまくりあげながら、両足を開いた。
「よし……い、いくぞ……」
「………」
腰をかがめ、モノの先端を佳乃の割れ目にあてがう。
佳乃は俺の言葉に返事もせずに、ただ恍惚とした表情で、繋がろうとしている場所を凝視していた。
「あっ! ああんっ!」
「…っ! くっ…」
そんな佳乃の表情に魅かれるように、俺は腰を突き上げた。
お互い、こらえることが出来ずに、口から歓喜の言葉が漏れ出す。
「あ…ああっ……の、信幸様……」
「よ…佳乃……」
佳乃は裾から手を離し、俺に向かって両手を回しながら、甘えた声であえぎだす。
俺はさっきまでの余裕はどこへやら、夢中になって腰を突き上げ続けていた。
「あ、ああっ! ああっ! ああんっ! の、信幸様! 信幸様! あっ! あっ!」
「佳乃…佳乃………も、もう、お、俺……」
二人とも、挿れる前の前戯で、すでに興奮していたせいか、早くも絶頂が近づいていた。
「信幸様! わ、われも…も、もう……あっ! ああんっ! ああああっっ!!」
「くっ……よ、佳乃、佳乃おっ!」
痙攣するような快感が全身を襲い、叫び声とともに絶頂に達した俺たち二人は、
抱き合った姿勢のまま、ゆっくりと地面にへたりこむ。
「信幸様……」
「佳乃……」
絶頂の余韻の中、俺たちはどちらからとも言わず、お互いの名を呼びあい、くちづけを交わしていた。
「信幸様……それでは、お気をつけて」
「ああ。佳乃も、元気でね」
「はい、ありがとうございます……」
佳乃は穏やかな顔で、別れの言葉をかけてくる。その目には、うっすらと涙が浮かんでいる。
と、俺の言葉に感極まったのか、涙声になってしまった。
「なあに、ヒマが出来たらまた来るさ。愛してるよ、佳乃」
「の、信幸様……! わ、われも信幸様を、ずっと、ずっとお慕い申しております……」
俺は、佳乃の頬に手を添えながら、諭すように言った。その手を両手で握り返し、コクリと頷く佳乃。
手を添えているのとは反対側の頬に、そっとくちづけをしてから、俺はゆっくりと離れた。
「それじゃ、またな」
「……は、はい!」
俺はようやく佳乃から離れ、後ろを向いたまま、山道を下り始めた。
佳乃は、お互いの姿が見えなくなるまで、ずっと手を振り続けてくれていた――