昨日、意識が残っている時に予想した通り、元旦は二日酔いで一日を過ごすことになった。  
その次の日、俺たちは帰りついでに、列車に乗って帰るという琢磨氏たちを、駅まで送ることにした。  
山の近くまで送っていってもいいと言ったのだが、琢磨氏たちの住んでいる山は、  
俺たちが住んでいる町とは正反対になってしまうため、琢磨氏たちに丁重に断られたのだ。  
 
「本当にすまなかったな、信幸殿。家族水入らずの場所に、突然邪魔した上に長々と」  
「いえ。そんな、いいんですよ。また、いつでも遊びに来てください」  
駅に到着し、車から降りた琢磨氏が、俺たちに向かって頭をさげてきた。  
すっかり恐縮してしまった俺は、思わず手と首を一緒に振りながら、琢磨氏に答える。  
「うむ、また機会があれば、な……で、佳乃よ」  
「は、はいっ」  
と、琢磨氏は鷹揚な表情から、不意に厳しい顔つきになり、佳乃へと向き直った。  
その気配に押されたのか、佳乃は幸乃を抱えたまま、一歩後ずさりながら畏まる。  
「お前には暇を言い渡す」  
「……は、はあっ!?」  
厳しい表情を崩すことなく、ゆっくりと琢磨氏は佳乃に向かって言った。  
佳乃はひどく動揺し、驚きの声をあげたかと思うと、ただ口をパクパクさせていた。  
……というか、暇? そ、それって……。  
「うむ。信幸殿と一緒になり、幸乃まで産まれた上に、儂に何の断りもなく人里で過ごしておるのだ。  
かような状況で、絹代の目付けなど果たせるはずがなかろう?」  
「そ、それは、俺が無理矢理……」  
「信幸殿は黙られよ。父上は佳乃に話しかけておるのだ。……どうだ、佳乃?」  
うつむく佳乃に代わって、琢磨氏に話しかけようする俺を、  
やはり厳しい顔つきの絹代が押しとどめながら、佳乃をじっと見据えて言った。  
……おい、それじゃあ佳乃があんまりだろ。だいたい、絹代だって……。  
「………その………お、仰せのとおりで、ございます……」  
「よ、佳乃……」  
と、思わず絹代に詰め寄ろうとする俺だったが、佳乃の震えるような声に思わず振り返った。  
佳乃は幸乃を抱いたまま、神妙な面持ちで、深々と頭を下げている。  
「面をあげよ、佳乃!」  
「は、はいっ!」  
そんな佳乃に向かって、琢磨氏は錫杖で地面をズンと突きながら、声を張りあげる。  
佳乃は体をビクリとすくませながらも、顔をあげていた。  
思わず俺は、我を忘れて琢磨氏の前に立ちはだかろうとしたが、  
それを絹代がそっと押しとどめ、無言でゆっくりと首を振ったかと思うと、軽く頷いた。  
――まるで、俺に向かって『大丈夫だ』と言っているかのように――  
「では改めて、佳乃には暇を言い渡す。……その代わり」  
「………は、はいっ」  
俺と絹代のほうを一瞥したかと思うと、琢磨氏はゆっくりと佳乃に向かって話し掛け、そこで言葉を切った。  
佳乃はふたたび深々と頭をさげ、次の琢磨氏の言葉をじっと待っている。  
 
「その代わり。これからは信幸殿の妻として、また幸乃の母として、しっかりとその役を果たすのだぞ?」  
「は、はいっ! 琢磨様、絹代様……本当に、ありがとうございました……っ」  
と、琢磨氏は不意に相好を崩し、佳乃に向かって優しく語りかけてきた。  
感極まったのか、佳乃は涙声になりながら、二人に何度も何度も頭を下げる。  
「な、何も泣くことはないであろう、佳乃よ。まったく、大げさな……。  
それはそうと……なあ、幸乃よ。今度会うときは、もう少しわらわに愛想良くしてくれよ? ん?」  
「き、絹代様……」  
そんな佳乃に、絹代は呆れ返ったようにため息をついたかと思うと、  
幸乃の小さな手を軽く握り締めながら、くちびるを尖らせて言った。  
すると、佳乃の腕の中でじたばたしていた幸乃は、ピタリと動きを止め、  
自分の手を握り締めている、絹代の顔をじっと見つめ返していた。  
 
 
「どうも、お待たせしました。もうすぐ、列車が出発するみたいですよ」  
と、そこに3人分の切符を手にした薫さんが、腕時計を見ながら戻ってきた。  
「うむ、そうか。それでは、信幸殿……御母堂にもよろしくな」  
「あ、は、はい。琢磨さんたちも、お元気で……う、うわっ!?」  
琢磨氏は、薫さんの言葉に軽く頷いたかと思うと、再び俺に深々と頭を下げてきた。  
俺は琢磨氏に返事をして、足元に置いてあった薫さんの鞄を手に取ろうとして、  
そのあまりの重さに、思わず悲鳴をあげてしまった。  
……そういえば、一昨日の宴会の酒を、お袋からどっさり貰っていたっけか。  
「あ、あらあらすいません。……それでは信幸様、どうもお邪魔いたしました」  
「え……あ、いえ……」  
薫さんは例の笑顔のまま、あっさりと鞄を片手で持ち上げたかと思うと、ペコリと礼をしてきた。  
俺はぽかんと口を開けたまま、お辞儀をするしかなかった。  
……薫さん。本当に、あなたは一体何者なのですか?  
 
「……っと、幸乃ちゃん。また、遊びに来るからね〜」  
顔をあげた薫さんは、さっきの絹代と同じように、幸乃の手を軽く握り締め、優しく語り掛ける。  
幸乃は、薫さんの顔を目にした途端、嬉しそうに笑みを浮かべ、手足をばたつかせだした。  
……本当に幸乃って、薫さんには懐いているな。  
産まれてきたときに、薫さんに取り上げてもらったの、覚えている? ……まさかな。  
「その頃には幸乃ちゃん、お姉ちゃんになっているかもしれませんね〜」  
「か、薫姉!」  
などと思っていると、薫さんは佳乃の顔を上目遣いに見やりながら、  
悪戯っぽい笑みを浮かべ、いきなりとんでもないことを口走る。  
見る見るうちに顔を真っ赤に染まらせた佳乃は、薫さんに向かって抗議の声をあげていた。  
「ふふっ。……佳乃も、元気でね」  
「か、薫姉……まったく……」  
抗議の声から逃れるように、軽く後ろに跳び退りながら、佳乃に声を掛ける薫さん。  
そんな薫さんに、憮然とした顔で、ため息をつく佳乃。  
……薫さんって、こんなに表情豊かだったんだ。初めて知った。  
 
「お〜い、薫! もう列車が出てしまうぞ!」  
「あ、はいはい。今参ります。……………信幸様」  
「え? あ、は、はい」  
と、絹代が列車の窓から顔を出して、こちらに向かって声を掛けてきた。  
薫さんは、首だけを絹代のほうに向けて返事をしたかと思うと、再びこちらへ向き直る。  
俺は薫さんの、突然の真剣な表情と醸し出す雰囲気に押され、どもりながら身構えてしまった。  
 
「……佳乃と幸乃ちゃんのこと、これからもよろしくお願いいたしますね」  
「は、はいっ」  
しばしの間、息をするのも苦しいくらいの重苦しい沈黙が、辺りを漂っていたが、  
薫さんが不意に柔らかい、慈愛に満ちた笑みを浮かべながら、深々と頭を下げてきた。  
俺はまるで、その笑みに吸い込まれるかのように、元気よく返事をしていた。  
 
 
「……ふう、疲れた……」  
「ふふっ。どうもお疲れ様でした。今、お茶をお煎れしますね」  
「ん? ああ」  
無事家に戻り、ソファーにもたれ掛かる俺に、幸乃を揺りかごに寝かしつけた佳乃が、  
微笑みを浮かべながら話しかけてきた。俺は天井を向いたまま、佳乃へ生返事を返しながら、  
一昨日の日、宴会中に薫さんから言われたことを、思い出していた。  
 
――お腹を大きくさせた佳乃が、いったいどんな気持ちでいたか、考えたことがおありですか!?――  
 
この言葉が、どうしても頭から離れなかった。  
そしてまた、実際に佳乃がどう思っていたのかが、気になって仕方がなかった。  
 
「さ、どうぞ」  
「ああ、ありがと。……佳乃、すまなかったな」  
と、佳乃がテーブルの上にお茶が入った湯飲みを置きながら、にっこりと微笑む。  
俺はお茶を一口すすってから、佳乃のほうへ向き直り、頭を下げた。  
「はあ?? ど、どうしたのですか?」  
「いや……あれから、幸乃がお腹にいたっていうのに、ずうっと会いに来れなくて、その……」  
目を丸くさせて、こちらを見返す佳乃に、俺は湯飲みをテーブルに置き、声を詰まらせながら答える。  
「は〜あ……。もしかして、薫姉の言葉を真に受けられていたのですか?  
あんな、酔っているときの戯言など、お気になさることなど、ありませぬのに……あ、あなた?」  
佳乃はため息をつきながら、軽く首を振っていたが、俺が両肩を掴みあげると、  
驚きに目をぱっちりと見開き、俺の顔をじっと見つめてきた。  
「……正直に教えて欲しいんだ。俺がふたたび山に来るまで、何を思っていたんだ?」  
俺は佳乃の両肩を抱いたまま、出来るだけゆっくりと話しかけた。  
「お知りに……なりたいですか?」  
「あ、ああ」  
佳乃は俺の手をそっと両肩から振りほどき、優しく手を握り締めたまま、  
じっと目を閉じていたが、やがて神妙な面持ちでこちらを見据え、小首を傾げながら口を開く。  
そのあまりに真剣な表情に圧倒されながらも、覚悟を決めた俺はゆっくりと頷いた。  
「では……何も言わずに、目を閉じていただけますか?」  
佳乃の言葉どおりに、無言で目を閉じた。  
しばしの沈黙の後、くちびるに柔らかい何かが触れた感触が伝わる。  
目を開けると、そこには佳乃の顔があった。佳乃はそっと、俺にくちびるを重ねてきたのだ。  
 
「……っ、んんっ……よ、佳乃?」  
「もちろん……ずうっと、あなた様と幸乃ちゃんのことを、思っていましたよ」  
突然の佳乃の行動に不意を突かれた俺は、驚きに目を見開いたまま、くちびるを離した。  
佳乃はそんな俺を見て、にっこりと微笑みながら、俺に体を預けてくる。  
「よ、佳乃……っ……」  
胸にじわりと熱いものがこみあげてきた俺は、佳乃をそっと抱きしめ、自分からくちづけを交わしていた。  
「……ん、んっ」  
「…んふ……っ」  
さらにくちづけを交わしたまま、佳乃をゆっくりと床へと押し倒す。  
少しずつ、お互いの鼻息が荒くなってくるのが分かる。  
「……あ、あんっ」  
パーカーのジッパーを脱がし、そっとブラウスの隙間に手を潜り込ませてみた。  
下着を通り越し、じかに佳乃の胸の感触が、指へと伝わってくる。  
指が触れた瞬間、佳乃はピクリと体を震わせ、甘えた吐息を漏らす。  
「……へえ。下着着けてないんだ。もしかしてこうなるの、期待していた?」  
「! ち、違いま…あっ、ああ……っ…」  
佳乃の耳元で、そう囁いてみる。すると、佳乃はゆっくりと首を振り、否定の言葉を口にし始めた。  
が、俺が指先で、胸の頂を撫で回していると、その言葉が途切れ途切れになってしまう。  
「違うって言われてもな……ここまで感じられてると、信じられないよ」  
「あっ! ああんっ……。そ、それは…ゆ、幸乃ちゃんに、おっぱいをあげやすいように……ああっ」  
言いながら、ブラウスのボタンをほどき、露わになったもう片方の胸を撫で上げる。  
佳乃は、顔を真っ赤に染まらせながらも、ぽそぽそとつぶやいていたが、  
そのつぶやきも、俺が胸の頂に吸いつくとともに、たちまち喘ぎ声へと変わってしまう。  
……まあ、実際の理由はそんなとこだろうと、薄々感じてはいたが、そこはそれ、ということで。  
「あ、あは! ああっ! あんっ!」  
右手と口で、佳乃の両方の胸を堪能しながら、残った左手を佳乃の下腹部へ這わせる。  
途端に、佳乃は歓喜の声とともに、俺の指へと――さすがに、こちらは下着を着けてはいたが――  
自らの股間を擦りつけるように、腰を浮かせてきた。  
「んっ! あっ! あああんっ!」  
下着越しに、佳乃の割れ目を撫で回し続けると、佳乃はさらに腰を浮かせてくる。  
俺は佳乃の胸を吸いあげたまま、胸を愛撫していた右手を佳乃の下腹部へと向かわせた。  
今日の佳乃の下着は……指先から伝わる感触で、紐で結わえるタイプの下着だと分かる。  
「ああっ! あんっ! っ!」  
片方の結び目だけを解き、露わになった佳乃の割れ目へと指先を潜り込ませた。  
指先の動きに合わせ、カクカクと腰を振る佳乃。  
そんな佳乃を目にした俺は、舌先を佳乃の胸から離し、ゆっくりと下腹部へと移動した。  
「あっ! あんっ! あひいっ!」  
割れ目の付け根にある肉芽を、くちびるで咥えながら、軽く吸い上げてみる。  
それだけで、佳乃は上半身を仰け反らせながら、歓喜の悲鳴をあげだす。  
「はああっ! あっ! ああっ! ああああっ!」  
さらに、割れ目に潜り込ませていた指をうごめかせながら、菊門を舌先で撫で上げてみると、  
佳乃は全身をビクビク震わせながら、あっさりと絶頂に達してしまった。  
 
「あ…ああ……あ……」  
「んん? もうイッちゃったんだ。じゃ、今日はこれで止めようか?」  
「……あ。い……嫌、です……」  
絶頂に達し、肩で息をする佳乃に、そっと問いかけてみた。  
すると佳乃は、うつろな目で俺の腕をとり、弱々しく首を振りながら、否定の言葉を口にする。  
「嫌? 何が嫌なのかな?」  
「あ、の……あなた様の…あなた様のを、中に……」  
「え? 俺の何?」  
「あなた様の、お…おちんちんを、おちんちんをわれの中に、くださいいっ……」  
軽く首を傾げながら、佳乃にさらに問いかける。  
……本当は俺自身が、こんな佳乃の艶姿を目にして、我慢など出来るはずがないのだが、そこはそれ。  
本番に入る前の儀式みたいなもの、だ。  
「そうなんだ。俺のちんぽが欲しいんだ。で、前と後ろのどっちに?」  
そっと佳乃の菊門を、指先で撫で回しながら問いかける。勿論、佳乃は後ろをせがんでくるはずだ。  
「あんっ。う、うし……あ。…ま、前に……前にくださ……い……」  
「……え?」  
佳乃は腰を軽くよじらせながら、俺の予想――というか期待通りの――返事をしようとしてきたが、  
その言葉が一瞬止まったかと思うと、思い直したかのように、前のほうへとおねだりをしてくる。  
予想外の答えに、今度は俺の思考回路が止まってしまった。  
「………あ、あなた?」  
「あ、いや……なんでもない…なんでもないよ、佳乃……っ」  
佳乃の怪訝そうな声を耳にして、現実へと戻ってきた俺は、  
誤魔化すように軽く首を振りながら、佳乃のくちびるをそっとふさいだ――  
 
 
「綺麗だよ、佳乃……」  
「あ、あなた……は、恥ずかしい、です……」  
服を脱ぎ捨て、産まれたままの姿で俺を見上げる佳乃を見て、そっと感想を漏らす。  
佳乃は顔を赤らめ、目線を俺から逸らしながら、ぽそぽそとつぶやく。  
「恥ずかしい? そんなことないさ……いくよ?」  
「……………」  
そんな佳乃の姿に、いよいよ我慢出来なくなってきた俺は、  
ゆっくりと佳乃の両足を広げながら、いきりたったモノを佳乃の割れ目へとあてがった。  
顔を赤らめたままの佳乃は、口元に手を添えながら、無言でコクリと頷いた。  
「よ……佳乃……っ」  
「あっ……あなた……、あ、ああっ……」  
モノを突きたてた途端に、痺れるような快感が二人を包み込む。  
「ああ……いい…。いいよ……佳乃……」  
「……あっ、ああ、あ…ああっ……あん…ああっ!」  
あまりの快感に、俺は我を忘れ、夢中になって腰を前後に動かし続ける。  
俺の腰の動きに合わせるかのように、佳乃の喘ぎ声もまた、少しずつ甲高くなっていった。  
「佳乃……っ…ん、っ……」  
「あはっ! あっ! ああっ! ああんっ!!」  
佳乃の甲高い声に、ほんの少しだけ意識が戻ってきた俺は、  
腰の動きに合わせて揺れ動く、佳乃の胸へとむしゃぶりついた。  
途端に上半身をよじらせ、歓喜の声を漏らす佳乃。  
「んむ……ん、っ……ん……」  
「……ん、んっ、んふ…ん、んんっ……」  
軽く頂に歯を立てながら、胸を吸い上げると、たちまち口の中に甘い味が広がる。  
それを口に含ませたまま、俺はそっと佳乃のくちびるを奪った。  
「んっ……っ……」  
「んっ! んんっ! ん! ん〜んっ! んふ…っ、んんっ……」  
佳乃のくちびるを舌先でこじあけ、口に含んでいた甘い味を佳乃の口中へと送り込む。  
その味が気に入ったのか、佳乃の咽喉からゴクリという音が聞こえたかと思うと、  
佳乃は俺の後頭部に手を回しながら、口先をすぼませ、俺の舌を吸い上げてきた。  
 
「……んっ、んん………ぷは…よ、佳乃……イ…イク…イクぞ……」  
「はあ……あ…あっ、あ…ああっ! ああっ! あんっ! の、信幸様! 信幸様っ!」  
しばらくの間、まさにお互いの舌先を絡めあうような、深い口づけを交わしていたが、  
限界が近づいてきた俺は、半ば無理やり佳乃からくちびるを離し、  
最後のスパートとばかりに、腰の動きをさらに激しくさせる。  
同時に佳乃の口から、堰を切ったように次々と喘ぎ声があふれだす。  
「……っ、よ、佳乃っ!」  
「あ、あああーっ!」  
それからほどなくして、俺たちは嬌声とともに、絶頂に達していた。  
 
 
「……はあ、はあ……はあ…よ、佳乃…っ……」  
「はあ…っはあ……っ……」  
絶頂後の脱力感に襲われた俺は、繋がったままゆっくりと、佳乃の上に覆いかぶさる。  
肩で息をさせたまま、そっと佳乃とくちづけを交わそうとして――  
「え? よ、佳乃?」  
「の、信幸様……うむ…ん、んふ、ん……んんっ……」  
佳乃は、不意に体の上下を入れ替え、俺のくちびるを奪ってきたかと思うと、  
おもむろに腰を動かし始めた。達した直後で敏感になっている、下腹部を襲う刺激に、  
思わず四肢をよじらせようとするが、佳乃がしっかりと抱きついているため、それもままならない。  
「ふむ……っ、あっ、ああっ、ああんっ!」  
「くっ……佳乃っ……」  
さらにくちびるを離した佳乃は、上半身を起こして腰を激しく上下にゆさぶりながら俺の手を取り、  
自らの胸を荒々しく揉みしだかせる。するとたちまち、佳乃の胸から白い液体があふれ出す。  
あふれ出した佳乃の母乳は、見る見るうちに俺の手や指を白く染め上げていく。  
「あっ……ああ……んっ、んふ……ん、美味し……っ……」  
「よ…佳乃……っ…」  
佳乃は、母乳まみれになった俺の手を、半ば強引に自分の胸から引き剥がしたかと思うと、  
舌を伸ばして、手についた母乳を舐めすくっていた。  
「ん、っ……ん、んんっ……んむっ……」  
「あ……ああ、よ……佳乃……」  
さらに、俺の指を一本ずつ口に含ませ、ちゅぱちゅぱと音を立てながら、丹念にしゃぶりあげる佳乃。  
一方の俺はと言えば、下腹部から伝わる刺激と、他人に自分の指をしゃぶられるという、  
生まれて初めての刺激に、ただひたすら為すがままとなっていた。  
 
「ん……んっ…。はあ……あ…あむ……っ、ん…っ……」  
全ての指を舐め終わったと思ったら、その手をふたたび自らの胸にあてがい、  
代わりに今まで胸を揉みしだいていた手を口元に運ぶ。  
もちろん、その間も腰の揺さぶりは止まってはいない。  
「ああんっ、あんっ! の…信幸様……信幸様っ……あっ、ああっ!」  
どの位それを繰り返したか、不意に佳乃が俺の指を離し、  
天を仰いで喘ぎ声をあげだしたかと思うと、腰の動きがさらに激しさを増してきた。  
「イっ、イイっ! 気持ちイイっ! 気持ちイイのっ!」  
「よ、佳乃、イク……イクぞ、うううっ!」  
恍惚とした表情の佳乃が、不意に俺の胸の頂を摘まみあげてきた。  
予想だにしなかったその刺激がとどめとなり、俺はあっさりと2度目の絶頂に達していた――  
 
「あ、あう……よ、佳乃……」  
「はあ……はあ。の、信幸様……っ……」  
立て続けの絶頂を何回も繰り返し、俺は完全に脱力しきっていた。  
だが佳乃は、恍惚とした表情のまま、俺にくちづけの嵐を浴びせながら、ゆっくりと腰を動かし続ける。  
「ちょ、よ、佳……あ、あう…っ…」  
……さ、さすがにこう休まずに連続だと……ちょ、ちょっと……い、意識が……。  
そんな俺の気持ちとは裏腹に、佳乃がふたたび上半身を起こして、腰を揺さぶり始めた。  
……だ、誰か助けて……こ、このままじゃ……。そう思った次の瞬間――  
「おぎゃーっ、おぎゃーっ」  
「あ……ゆ、幸乃ちゃん……」  
不意に揺りかごの中で眠っていた幸乃が、大声で泣き始めた。  
その途端、佳乃はピタリと腰の動きを止め、うつろな目で揺りかごのほうを仰ぎ見たかと思うと、  
ゆっくりと俺から離れ、四つんばいで幸乃の元へと向かっていく。  
……た、助かった。幸乃よ、何て親孝行な娘なんだ。  
 
「よい……しょっと……」  
佳乃が優しく幸乃を抱き上げる。その表情は、多少赤く火照ってはいるものの、  
先ほどまでの恍惚とした表情は微塵も無く、ただ穏やかな母親の顔がある。  
……本当に、見事なまでの変化だな……女は怖い。  
「んぎゃあ、んぎゃあ、んぎゃ〜あっ!」  
だが、いつもは佳乃に抱かれただけで、ピタリと泣き止むはずの幸乃が、まったく泣き止む気配がない。  
……いったい、どうしたというんだ? 目の前でエッチするのがまずいのか? いや、今さらそれはないか。  
「ん、よしよし……あらら。おもらししちゃったの〜? ん〜、気持ちわるいですね〜」  
「……んっ、ぐず、ん…んぎゃあ、んぎゃあっ!」  
と、佳乃は幸乃のおしりを軽く撫で回したかと思うと、小首を傾げながら幸乃に向かって話し掛ける。  
「……そっか、おもらししちゃったのか……なら仕方ないよなあ」  
「ええ……。さ、幸乃ちゃん。お父さんお母さんと一緒に、きれいきれいしましょうね〜」  
俺は鉛のように重たい体を、どうにか上半身だけ起こしながら、つぶやくように言った。  
佳乃は、そんな俺に向かって軽く頷き、幸乃に軽く頬擦りしながら、優しく語りかける。  
……へ? い、一緒に?  
 
「ん? あ、あれ?」  
というわけで、家族3人で風呂に入ることになり、幸乃の体を洗うことになったのだが……。  
「ど、どうしたのですか? 幸乃ちゃんに、何かありましたか?」  
俺の言葉を耳にして、湯船に浸かっていた佳乃が、身を乗り出して尋ねてくる。  
「い、いや……幸乃の背中に……棘みたいなのが、生えているんだけど……」  
俺は幸乃を抱きかかえ、背中を指差した。そこには確かに、黒い棘みたいなものが生えている。  
大きさは、幸乃の手の爪と、同じか少し小さいくらいかなのだが……何なんだ、これは?  
前に幸乃を風呂に入れたときはこんな物、生えて無かったぞ?  
「ああ……そう、なのですか。幸乃ちゃんも……」  
「え? 幸乃も、って?」  
途端に、佳乃は視線を落とし、消え入るような声でつぶやく。  
まじまじと幸乃の棘を見ていた俺は、その言葉にぱっと顔をあげ、佳乃のほうを仰ぎ見た。  
「実は……われにも、同じものが……」  
「そ、そうなの?」  
うなだれながらの佳乃の告白に、俺は目を見開いて問いかける。  
……今まで、何度も佳乃の背中を見たことはあったけど、全然気がつかなかったぞ?  
「はい……自分の意思で出し入れ出来ますので、ずっと出さないようにしていたのです……」  
口にしなくても、俺の疑問を感じ取ったのか、そうつぶやきながら、ゆっくりと俺に背中を見せる佳乃。  
そこには確かに、親指くらいの大きさの、黒い棘が生えている。  
「あ……ほ、本当だ。でもいったい、何なんだろう?」  
俺が佳乃に生えている棘を、軽く擦りながら疑問を口にする。  
……まあ、よく考えたら佳乃って天狗だし、人間と違うものが生えていても不思議はない、か。  
「さあ……。少なくとも里では誰も、こんなものを持っている者は、いなかったですし……」  
などと思っていたが、佳乃は寂しそうな顔でゆっくりと首を振りながら、ぽそぽそとつぶやく。  
……て、天狗でも、いない? そういえば、すっかり忘れてたけど佳乃って、  
かつては男のモノも生えていたっけか。それも何か関係があるのか……? って、まさか幸乃も……?  
「そ、そっか……まあ、大したことでもないし、気にする必要も無いよ。  
それに皆、本当は生えているけれど、お互い黙っているだけなのかもしれないし、ね?」  
「……で、でも……われはかつて……」  
俺は、頭の中に芽生え始めた疑問を押し殺し、出来るだけ平静を装って佳乃にそう話し掛けた。  
だが佳乃もまた、俺と同じことを思っていたのか、弱々しく首を振りながら口を開きかける。  
「佳乃、こっちを向いて」  
「は、はい……」  
そんな佳乃の言葉を遮るように、俺は佳乃の肩に手を添えながら、じっと見据えた。  
佳乃は蚊の鳴くような声とともに顔をあげる。その可愛い顔は、今にも泣き出しそうに歪んでいる。  
「誰が何と言おうと、佳乃は俺の大事な嫁さんで、幸乃は俺と佳乃の大事な娘だ。  
それ以上でもそれ以下でもない、そうだろう?」  
「あ……あなた…っ………」  
感極まったのか、佳乃は口元に手を添え、肩を震わせる。  
俺は何も言わず、ただひたすら佳乃の頭を優しく撫で続けていた。  
 
 
「ふう……。幸乃ちゃん、お風呂は気持ちよかったですか〜?」  
風呂をあがってから、俺たちは幸乃を真ん中に、親子3人で川の字になって布団に入った。  
布団に入った佳乃は、幸乃のお腹を軽く撫でながら、優しく語りかける。  
その表情からは、さっきまでの憂いは微塵も感じさせず、俺は心の中でほっと胸を撫で下ろしていた。  
「……しかし、幸乃もいつかは、嫁に行くことになるんだろうなあ……」  
「まあ、あなたったら……。いったい、いつの話をしているのですか。  
この前やっと、寝返り出来るようになったばかりで、這い這いもまだこれからですのに……」  
安心した俺は、幸乃の手をそっと握りながら、ぽつりとつぶやいた。  
そのつぶやきに、佳乃が俺のほうを見て、呆れ顔を見せる。  
「ん、そうも言うけれど、過ぎてしまえば、あっという間だと思うんだよねえ……。  
なあ幸乃、お前は初対面なのに無理やりエッチするような男とは、一緒になるなよ……」  
佳乃の問いかけに返事をした俺は、自嘲気味に苦笑いを浮かべながら、幸乃に語りかけた。  
……俺自身が、そういうヤツだったから、なあ。  
「……ふふっ。それは、難しいかもしれませんですね」  
「えっ!? な、何デ!?」  
などと思っていると、佳乃が笑いながら、とんでもないことを口走った。  
思わず俺は、声を裏返させながら、佳乃の顔を仰ぎ見た。  
「お忘れですか? この子は、そんな殿方と一緒になった女の娘、なのですよ?」  
「え……あ、そ、それ…は……その……」  
俺のリアクションに、少し寂しげに顔を傾げながら、佳乃は言った。  
……そ、そういえばそうだった。  
反射的に固まってしまった俺は、何と答えて言いか分からず、しどろもどろになってしまう。  
 
「うふふっ。でもわれは今、すごく幸せですよ。……あなた」  
「え……あ、う……。と、ところでさ、何で唐突に俺のこと、『あなた』って呼ぶようになったの?」  
そんな俺の仕草が面白かったのか、コロコロ笑いながら、そっと俺の手を握り締めてくる。  
何だかすごく照れくさくなってきた俺は、視線を泳がせたまま、  
話を逸らすように、少し前から思っていた疑問を口にした。  
「………お嫌ですか?」  
「いや、そんなことはないさ。急にそう呼ばれたから、かなり驚いたのは確かだけど」  
佳乃は軽く眉をしかめ、不安げに問い返してきたが、俺はゆっくりと首を振り、そう答えた。  
……それにしても本当に、唐突だったよなあ。最初に聞いたときは、我が耳を疑ったくらいだし。  
「そうですか。……花嫁衣裳の着付けを手伝っていただいているとき、薫姉に言われたのですよ。  
夫婦なのに、様付けのままだと他人行儀に聞こえてしまう、と」  
「そっか……薫さんが、ねえ……」  
「あ、あなた……?」  
俺が天井を見上げながらつぶやくと、佳乃が不思議そうな顔をして問いかけてきた。  
「え? いや、薫さんって何だか随分、人間慣れしてるなあ、と思ってね」  
……携帯電話やらデートやらカメラやら、あの里だと耳にすることないぞ、多分。  
「人間慣れ、ですか。それはそうかもしれないですね。薫姉ってお若い頃は、  
かなりおきゃんな方だったそうで、しょっちゅう人里に下りてらっしゃったそうですし……」  
「あ、なるほどねえ……でもそういえば、エッチのときはいつもと同じ、様付けだったようだけど?」  
佳乃の答えに納得した俺は、返事をしながらニヤリと笑みを浮かべ、佳乃に向かって問いかける。  
「え? ……あ、そ、そうだった……ですか?」  
「ああ。最初はそうでもなかったけど、段々……ね」  
見る見るうちに、顔が真っ赤に染まる佳乃。俺は大げさに肩をすくめ、ウィンクしながら答えた。  
「そ、それは……その…」  
「まあ、それはそれで、すっごく可愛いかったけれど、ね……」  
「あ、あなたったら……もう……っ……」  
しどろもどろの佳乃の手をそっと握り締め、優しく微笑む。  
佳乃は苦笑いを浮かべ、軽くくちびるをとがらせながらも、俺の手を優しく握り返してくる。  
二人が握り締め合っている手を、幸乃が嬉しそうに、自らの手をばたつかせながら、見上げていた――  
 
おしまい  
 

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