――夜、俺はぱっちりと目が覚めた。あたりを見回すと……ここは絹代の庵、だ。
やはり昨日の出来事は夢じゃなかったか。時計は……夜の2時を指している。
窓からは異様に大きい月が見え、風の音に混じって虫の音が聞こえる。
「まったく……半端な時間に目が覚めやがって……」
ため息とともに独り言が漏れ出す。そりゃあそうだ、寝る時間が早すぎたんだからな。
何せ娯楽どころか、照明すらまともに無い山奥だ。日が暮れると、何もすることがない。
おかげで、睡眠サイクルが狂ってしまったんだよな……。
ん…っ……んんっ…
何だ? 一体何の音だ? …………隣の部屋から何やら聞こえてくる。
隣には俺がこんな場所に泊まる原因となった、絹代と佳乃がいるだけのはず……。
放っておいてもいいのだが、どうしても気になる。俺は出来るだけ音を立てないように襖を開けた。
「ん…は……ああっ………」
音の正体は、佳乃の口から漏れ出すあえぎ声だった。
俺のほうからは背中を向け、上半身を起こして自らの胸と股間に手を添えている。
月明かりにぼんやりと映し出された佳乃の裸身は、ぞっとするくらいに美しい。
まるで、その声に惹かれるかのように、俺は音も無く佳乃のほうへと忍び寄った。
ふと見ると佳乃の隣では、絹代が布団をめくらせ、足を露出させたまま、すうすうと寝息を立てている。
へーえ、絹代のすぐそばでオナニーとは、主従関係もあったもんじゃないな。
半分呆れ返りながらも、滅多に見ないシチュエーションに、胸の鼓動が高まる。
「あ……ああっ……あ……ああっ…き………」
すぐ背後まで来たが、佳乃はまったく俺に気がついていない。
その一方で、押し殺したあえぎ声は少しずつ甲高くなっている。
「……ああっ……き…絹代……様…あ…は…あっ……」
絹代だって? まさか絹代のことを考えながら、オナニーしていたのかよ?
で、その対象を目の前にしてのオナニーとは…いやはや、可愛い顔して中々やるねえ。
俺は佳乃が自ら添えているのとは逆側の胸と股間に、それぞれ手を伸ばした――
「……あ…ああっ!?」
「な、何だっ!?」
佳乃と俺の叫び声が重なった。佳乃は、突然自らの体にまとわりつく手が増えたことに驚いて。
俺は、股間に伸ばしたときに感じた手の感触に驚いて。……これは……まさか…生えている!?
だが……胸には男とは明らかに違う弾力があって…え? 何だって?
「……き…さま……ああうっ!?」
驚愕の表情を見せ、佳乃がこちらを振り返った。
が、思わず俺が佳乃から生えているモノを軽く擦りあげた途端、
全身をビクンと震わせて、モノから白い液体を噴き出させていた。
「あ……く…き…さま……あっ…あ……ああっ!」
佳乃は俺に向かって拳を振り上げるが、俺がモノをしごきあげると吐息を漏らして床に倒れこんだ。
俺はそのまま、佳乃の両足をがばっと押し広げてみた。そこには……女性の部分もしっかりとある。
これは……いわゆるふたなり、というやつか? だとすると、絹代も本当に生えてくる、のか?
「は…あ! あっ! ああっ!」
冷静に考える俺の理性を破壊したのは、目の前で悶え続ける佳乃の声だった。
ちらちらと絹代の方を身ながら、両手を押さえて必死に声が漏れ出すのをこらえている。
………何だか…たまらないな、この光景。俺は佳乃のモノをしごきながら、そのまま胸に舌を這わせた。
「ぐ…ん……んふ! ん! んんんっ!!」
絶頂に達したばかりのせいか、頂はすでに硬く張り詰めていた。舌を引っ込め、頂を軽く吸ってみる。
もちろん、モノはしごいたままで。それだけで佳乃は顔を紅潮させ、必死に身をよじらせる。
そんな佳乃の艶やかな姿に魅かれ、俺はひたすらに舌を這わせ続けた。
「き…さま……こ、これいじょ……」
「おいおい。そんなに暴れると、絹代が目を覚ましてしまうぞ」
モノをしごくのを止めて顔をあげると、佳乃は再び拳を振り上げながら、抵抗の意思を見せる。
そんな佳乃の耳元に顔を寄せ、俺はポツリとつぶやいた。
俺としては、何の気なしに言っただけのつもりだったが、佳乃にとっては効果てきめんだったようで、
たちまちピタリと体の動きを止め、振り上げた拳を下ろす。
「それとも、一緒に参加して欲しいのか? それはそれで構わないがな」
「ば…ばかや……あ! ああっ!!」
昼間に見せた表情とのギャップがどことなく楽しくて、俺は笑みを浮かべながらさらに言った。
声を震わせて抗議しようとする佳乃だが、モノをしごき始めるとたちまちあえぎ始める。
ふうむ……絹代といい、佳乃といい、天狗ってのは感じやすいのかな?
俺はそんなことを考えながら、モノをしごいたまま、佳乃の下腹部に顔を埋めた。
改めて、佳乃の秘部をしっかりと目で確認しながら思った。――うん、やっぱり割れ目がある。
ただ、女性ならば割れ目の合わさる頂点には、小さな肉芽があるはずだが、
佳乃の場合は、それがそのまま大きく伸びて、立派な男根になっていた。
また男性とも違って、袋や玉が無い。……じゃあ、さっきの白い液体は何だったんだ?
そんなことを考えながら、俺は佳乃の割れ目に舌を這わせた。
「は! ああ! くう! んんっ!!」
先ほどの行為の成果か、割れ目からはしとどに蜜があふれ出している。
俺はあふれ出す蜜を咽喉を鳴らして飲み下しながら、舌を割れ目の中へと潜り込ませた。
「んふ! ん! んんんっ!! くううっ! あはあっ!!」
舌先が何か丸いモノに触れた瞬間、佳乃は下半身をうごめかせ、くぐもった悲鳴をあげたかと思うと、
割れ目の締まりが増し、モノはビクビクと震え、白い液体を再び噴き出させた。
2回目にも関わらず、1回目とほとんど変わらない勢いで噴き出す白い液体は、
見上げた俺が見ると、月を背景にしたせいもあって、どこかしら幻想的な雰囲気を醸し出していた。
「は…あ……あ…ああ…あ……」
全身をピクピクと震わせ、虚ろな視線は宙をさまよい、肩で息をする佳乃。
あれからさらに、2回ほど佳乃は射精していた。……いや、俺がさせていたというべきか。
だが、モノは萎えることなく未だに勢いを保ち続けている。……すげえ持久力だな。さすが天狗。
「あ……あ?」
お互い、生まれたままの姿になってそっと肌を合わせた。佳乃の温もりが、じかに伝わってくる。
その佳乃は抵抗するでもなく、俺のなすがままになっている。
「くは……あっ……」
……そろそろ…俺も我慢できねえな。つーか、絹代とは結局出来なかったわけだし。
俺は佳乃の左足を肩にかつぎ、右足にまたがるようにして、モノの先端を佳乃の割れ目に添えた。
「い……や…そ…それ…だけ…は……」
モノを添えた途端、それが何かのスイッチだったかのように、佳乃は弱々しく抵抗の声をあげる。
目を潤ませ、弱々しく首を振る佳乃を見たとき、罪悪感がちらりと頭をかすめたが、
それも一瞬のことで、俺はゆっくりとモノを佳乃の中へと潜り込ませた。
「あ…はあ……あああっ!!」
「……う…くうっ…」
言葉とは裏腹に、熱い液体で満たされていた佳乃の割れ目は、難なく俺のモノを受け入れる。
モノが潜り込んだと同時に、佳乃と俺は叫び声をあげていた。
「ふあ…あ……ああっ!」
ずぶずぶと音を立て、俺のモノが佳乃の中へと吸い込まれていく。
それとともに、襞と割れ目の入り口近くにある丸いモノが、俺のモノに刺激を送り込んできた。
「くっ………佳乃、もう完全に俺のモノを飲み込んじゃってる、よ」
「い…いやあ……。……! ああっ! あはあっ!!」
とうとう、モノが根元まで佳乃の中へ潜り込んだ。俺は佳乃の耳元でそっと囁いてみる。
佳乃は涙をボロボロこぼしながら、押し殺した声で拒否の言葉を口にするが、
俺が再びモノをしごき始めると、耐え切れずに身をよじらせてよがり始めた。
同時にモノへの締めつけが増し、中の襞がまるで別個の生き物のようにモノをなぞる。
その感触をもっと味わいたくて、俺は腰と手の一斉に動かし始めた。
「ああ…いい……いいよ…佳乃………」
「あ! はああっ! おかしく! おかしくなっちゃう! おかしくなっちゃううっ!!」
無意識のうちに、繋がっている相手の名前を口走る。もちろん、相手のモノをしごきながら。
その佳乃は、片手で口元を押さえもう片方の手で畳をかきむしりながら、必死に堪え続けていたが、
とうとう甲高いあえぎ声を漏らし始めた。……本当に、絹代が目を覚ましたらどうしよう?
本能に従った行動の中、一瞬だけ理性的な思考が脳裏をよぎった。
が、襲い来る快感には到底抗えず、腰の動きを早めだす。もう…もう、限界だ……。
「も………だめ! もうだめえっ!!」
「よ…佳乃おっ!!」
悲鳴とともに、モノが千切れるのではないかと思えるような勢いで、
佳乃の中が収縮したかと思うと、佳乃のモノは5回目の絶頂を迎える。
同時に俺は、襲いくる快感に抗うことも出来ずに、佳乃の中に射精していた。
「はあ…はあ…はあ…はあ……」
「………………」
肩で息する俺を、佳乃はひと言も発せずにじっと見つめている。
俺は視線を離すのが怖くて、かと言って話しかけることも出来ず、こちらも無言で見つめていた。
永遠と思えるくらいの長い時間が経過して、佳乃はおもむろに上半身を起こし始める。
やはり、ひと言も発することなく、凄くゆっくりとした動作で。
ふと見ると、股間からモノが無くなり、女性のそれとまったく同じ状態になっていた。
「あ、それって………」
どうなってるんだ? と言おうとしたが、出来なかった。
何故なら、佳乃の鉄拳が俺の顎に見事に炸裂し、そのまま俺は気を失ったからだ――
「信幸殿、朝ですぞ。起きてくだされ」
翌日――俺は絹代に揺り起こされて目が覚めた。……ここ…は?
「寝ぼけておられるのか? 今、佳乃が朝餉の支度をしておる。顔を洗ってくるがよろしかろう」
怪訝そうな顔をしている俺を見て、小首を傾げながら絹代は言葉を続ける。
「えーっと……あ、いやそうか…そうする……いつつ……」
首を巡らせながら今の状況を確認する。ここは……昨日最初に寝た部屋で…寝巻きも着ている?
そうか……昨日の出来事は夢だったか……と思いたかったが、顎に響く鈍い痛みが、
昨日の佳乃との情事が現実であったことを、何よりも雄弁に物語っている。……うう…まだ痛え……。
「だ、大丈夫か信幸殿? 慣れない寝所ゆえ、寝違えられたか?」
「いや…大丈夫、大丈夫だよ……」
下顎を押さえる俺を見て、絹代が不安げに問い掛けてくる。
俺はまさか本当のことを言えるはずもなく、顔を洗うためにゆっくりと立ち上がった。
囲炉裏のある部屋を抜け、土間に出ると、朝食の支度をしている佳乃の後ろ姿が見える。
………うう…どうしよ。後ろを通り抜けるのにシカトはおかしいし、かと言って気楽に話し掛けるのも……。
「あ、おはようございます、信幸様。ゆうべはお休みになれましたか?」
「え? あ、ああ。お、おはヨウ」
などと考えていると、鍋を抱えながら振り返った佳乃が、俺に気づいて挨拶をしてきた。
不意を突かれた俺は、思わず声を裏返しながら返事をする。…………待てよ? 今俺を何て呼んだ?
「ああ、顔を洗われるのですね。扉を出ましてすぐ右手に井戸がございますので、そちらでどうぞ」
ぽかんとしている俺を見て、にっこりと微笑みながら、首を巡らせて案内する佳乃。
昨日とは打って変わって優しい口調で、表情も皮肉混じりの笑みではなく、優しい微笑みで、だ。
えーっと………これは……どうしたものか………。
「ささ、お待ちしてますからお早めにどうぞ。でないと、せっかくのお味噌汁が冷めてしまいましてよ」
「あ、ああ分かった。どうもありがと」
顎の痛みに、やっぱり夢じゃないと思った俺は、戸惑いながらも礼を言った。と、
「信幸様」
「え? な、何!?」
佳乃が俺の名を呼び、慌てて振り返る。…………何で、何で「信幸様」になってるの?
「今日はこの山の天狗の長である、琢磨様にお会いなさるのです。
偽りの婚姻相手とはいえ、くれぐれも粗相はなさらないようにしてくださいましね」
「う、うん。そ、そうする」
突然の佳乃の豹変に、背筋に冷たいものが走るのを感じながら、俺は井戸へと向かった。