「さて…………着きました。この奥に、白菊が祀られている社があります」  
翌日、俺たちはぽっかりと開いた、洞穴の前に辿り着いた。  
佳乃が緊張しきった声で、振り向きながら俺に向かってつぶやく。  
「ここ……が?」  
洞穴は完全に草木に覆われ、かろうじて一部分が見えるだけだった。  
多分、あると知らなかったら、そのまま通り過ぎていただろう。  
伝説にまでなったというのに、ここまでぞんざいにしていて、いいのだろうか………?  
「驚いてますね」  
「え? ええっ!?」  
まるで、俺の心を読んでいたかのように、佳乃が言った。  
「まあ、それも無理はありませぬ。白菊を我が手にしようとここを訪れた者は、  
信幸様の前となると、今からざっと100年は前のことらしいのですから」  
ということは、100年間ほったらかしだったのか。それにしても、たまには草刈りくらいはしても……。  
「それともうひとつ。ここに誰も訪れないのは、ここは長いこと、禁忌の場所とされてきたから、です」  
「な、何で?」  
佳乃は肩をすくめながら、言葉を続けた。……本当に、心を読んでない?  
「さあ、そこまでは。何せ、今のわれらの里では、『白菊は、持ち主に力を与える』ということと、  
『ここに白菊がある』ということ、そして『この場所はわれらにとって、禁忌の場所である』という  
言い伝えしかないのです。かつては白菊の由来だとか、ここが禁忌の場所に定められた理由も、  
ちゃんとあったとは思うのですが、ね」  
「じゃ、じゃあさ。白菊を祀ったのは、この里の連中ではないってこと?」  
「どこにも文献が残ってない以上、そうかも……しれませんね」  
ゆっくりと首を振りながら答える佳乃を見て、俺は考え込んでいた。  
 
理由はともかく、禁忌の場所に祀るということは、封印と同じ意味なのではないのか?  
あくまで推測でしかないのだが、今まで誰も戻ってきた者がいないという現実が、  
推測が事実であると、告げているような気がする。  
それに何故、『ここに白菊がある』という言い伝え”だけ”は、残っているんだ?  
 
「………信幸様」  
「へ!? あ、ああっ?」  
佳乃の声に我に返った俺は、思わず声をうわずらせていた。  
目の前に、心底心配そうな顔をした、佳乃の顔がドアップであったからだ。  
「だ、大丈夫ですか? ………ご無理はされないほうが、よろしいですよ」  
「ああ、大丈夫。ただ……ちょっと気になっただけ、さ」  
俺の額に手を当てようとする、佳乃の手首を優しく握り締めながら、俺はそう答えた。  
そう、ここに来ると決めた時点で、多少の危険は覚悟していたんだ。今さら引き返すわけにもいくまい。  
「そ、そうですか。………あ、あの……われも、中へ御一緒して、よろしいでしょうか?」  
「え? い、いいの……かな?」  
手首を握り締めている俺の手を、佳乃はもう片方の手で擦りながら、俺に尋ねてきた。  
確かに、一人で社に行け、とは言われなかったけどさ……。  
「構いませぬ。もともと、われは信幸様が白菊を手にするのを見届けよ、と言われたのです。  
なれば、われも中に入るのが道理でしょう。……それに、ここまで来たのです。  
伝説にまでなった白菊の社、我が目でしかと、見てみたいのです」  
戸惑う俺を見つめ、手首を掴まれている手の人差し指をピンと立てながら、にっこりと微笑む佳乃。  
………ううん、そう考えるとそうかもしれない。  
それに、ここが禁忌の場所なら、ここに残るほうが危ないかもしれないし。  
「わ、分かったよ。でも、危険なことがあったら、すぐに逃げ出してね」  
「了解しました。われとて、命が大事なのは一緒です。さあ、まずは周りの草を払いましょう」  
俺の返事に、佳乃はぱっと身を翻し、背中にしょっていた薙刀をゆっくりとかざした。  
……薙刀の使い方って、それで合っているのかなあ……?  
 
「さて、と……。これが社、か?」  
「社……ですね。………多分」  
洞穴の中へ入ってしばらく進むと、急に辺りが開け、畳が敷いてある東屋が見えてきた。  
中央には行灯の明かりが灯っていて、奥には立派な神棚のような物が見える。  
「なあ、何だかおかしくないか?」  
「そうですね。まるで、誰かが毎日手入れしているような……」  
そんな目の前の光景に、思い切り違和感を感じた俺は、隣の佳乃に話しかける。  
佳乃もまた、俺と同じことを考えていたようで、小首を傾げながらつぶやく。  
「ああ。それに、祀っているはずの白菊は、いったいどこにあるんだ?」  
目を凝らしてみても、神棚に刀のような物は置かれていなかった。  
もっとよく見てみようと、足を踏み出したそのとき――  
「何がおかしいのだ。わらわが社を手入れして、何か悪いことがあるのか?」  
「な、何だ!?」  
不意に甲高い声が背後から聞こえ、俺たちは思わず振り返った。  
そこには、いつの間に現れたのか、手桶を持った巫女装束の女が、憮然とした表情で立っていた。  
……年の頃は、絹代よりも上、佳乃よりも下、であろうか。  
まさに烏の濡れ羽色、という言葉がピッタリくる、黒くて長い髪の毛を、真ん中で二つに分け、  
それぞれの耳の上あたりで結んでいる。……いわゆるツインテールという髪型、だ。  
ぱっちりした目と相まって、綺麗というより可愛い、という魅力に溢れている。  
……憮然とした表情を除けば、だが。  
 
「ふん……大方おぬしも、わらわを我が物にせんとして、ここに来たのであろう?  
であれば少しは、わらわに敬意を払ってしかるべきだろうに……」  
「ま…まさか………」  
「あ、あんたが…白菊、なのか……?」  
女はブツブツつぶやきながら、東屋へあがりこんだ。  
佳乃は驚きに目を丸くして、両手で口を押さえながらつぶやき、俺がその言葉を繋げた。  
「いかにも、わらわが白菊だ。それにしても、いきなり押しかけておいて、好き放題に言ってくれるわ。  
今まで色々な連中が、わらわを我が物にせんと現れたが、おぬしらが一番無礼な連中だな」  
「そ、そりゃどうも……」  
俺たちを見下ろしながらつぶやく女――白菊。異様な威圧感に押された俺はそう答えていた。  
「ふむ。まあいい、久方ぶりの客だ。今、茶を煎れる。適当にかけてくれ」  
「え……」  
「あ………は、はい……」  
そうつぶやきながら、竈に向かう白菊を見て、あっけにとられる俺と、どうにか返事を返す佳乃だった。  
 
「………ところで、あんたを手に入れるには、試練が必要だと聞いたんだが?」  
「試練? ああ、そんな大層なものではない。今まで、わらわの目に適う者が来なかっただけ、だ」  
3人で顔を合わせながら、東屋の中央でしばらくの間、お茶を飲みながら雑談を交わしていたが、  
このままでは埒があかないので、俺は白菊にそう尋ねた。  
白菊は手をヒラヒラと振りながら、笑いをかみ殺すように体を震わせる。  
というか、本当に彼女が妖刀なのか? さっきから様子を見ていると、とてもそうは見えないのだが……。  
「それで、白菊…殿の目に適うには、どうすれ……ぐ! ぐううっ!?」  
「な!? よ、佳乃!? ど、どうし……あ、あれ!?」  
突然、佳乃が胸元を押さえ、苦しそうに喘ぎだしたかと思うと、  
そのまま畳に倒れこみ、ピクリとも動かなくなった。  
俺は佳乃に声を掛け、手を伸ばそうとしたが、体がまったく動かせなかった。  
長い間正座すると、両足が痺れてしまうが、そんな感覚に全身が包まれていたのだ。  
「ふふふ、聞くだけ野暮だな。わらわを満足させてくれれば、喜んでおぬしの物になろう。  
………もっとも、今までわらわを満足させてくれた者は、いなかったのだがな」  
とんっと俺の体を、白菊が押した。力はこもっていないのに、  
俺の体はまるで糸の切れた操り人形のように、畳の上に崩れ落ちた。  
「な、何をしたと言うんだいったい!? ま、まさか今のお茶に!?」  
「うむ、一服盛った。大丈夫だ、こちらはちゃんと、殿方としての役目を果たせるから……なっと」  
「うあ! ああっ!」  
俺は仰向けに倒れた姿勢のまま、白菊に向かって叫んだ。  
白菊は、あっさりと答えながら、俺の下腹部をそっと撫であげる。  
服の上からでも強烈に感じる優しい刺激に、思わず俺は悲鳴をあげていた。  
「どうやらあの薬は、催淫効果もあるらしくてな。かなり興奮してきたであろう? こうするとどうだ?」  
「ぐ! ぐああっ! ああっ!!」  
下腹部に両手を添え、上下左右に揉みあげる白菊。  
それだけで、狂ってしまうような刺激に包まれ、思わず身をよじらせようとする。  
が、思うように体を動かすことが出来ずに、そのもどかしさが悲鳴となって口から溢れてしまう。  
そんな俺を面白そうに見下ろした白菊は、ゆっくりと俺の服を脱がし始めた。  
 
「んん? それにしてもお主、今までの連中とは着ている物がだいぶ違うな?  
勝手が……違うと…なかなか……上手く……脱げ…ない……な……。  
……ほほう、これは面白い。これで、ここだけを出すことが出来るわけか」  
上半身はあっさり裸に剥かれたが、下半身はベルトの外し方が分からないようで、そのままだった。  
だが、ベルト下のファスナーの存在に気づき、嬉しそうにジージーと上下に動かし始める。  
次の瞬間、白菊はファスナーを全開にさせて、その白い手をズボンの中へと潜り込ませてきた。  
「あ…ああっ! ああっ!!」  
さっきよりも、より強い刺激に悲鳴が漏れ、目からは涙が零れる。  
「ふむ。これは……ここを……こうして…っと……。これで…よしっ」  
「う! うああっ! ああっ!!」  
そのままパンツの隙間から、強引にモノを引きずりだそうとする白菊。  
白菊に握られる感触、パンツやズボンと擦れる感触――  
これらすべてが耐え難い刺激となり、俺の口から悲鳴をあふれさせていた。  
「ふふふっ……かなり、楽しめそうな…ん……あ……ああっ……あああんっ……」  
「く! う! っ! ……」  
やがて露わになった俺のモノは、既に痛いくらいに膨れ上がってビクビクと震え、  
先端からは透明な液体があふれ出し、亀頭全体を濡らしていた。  
白菊は俺にまたがって、袴を捲りあげながら、自らの割れ目を俺のモノに擦りつけてくる。  
あ……彼女、パンツ穿いてないや……。こみあげる刺激に反応して、  
わずかに動き始めた指を小刻みに震わせながら、俺はそんなことを考えていた。  
 
「はあ…あ……ああっ…あっ……ああんっ……」  
「くう…う……ううっ……」  
モノをまたいで上半身を前後に動かしながら、白菊はあえぎ続けていた。  
袴を握り締めている手が、プルプルと震え、ツインテールもゆさゆさと揺れている。  
いっぽう俺のモノは、既にどちらのものともいえない液体で、濡れそぼっていた。  
だが不思議なことに、ここまでされててもなかなかイケそうでイケなかった。  
まるでモノの先端に、何か栓でもされているかのように。  
「ん…ひさ…びさの……殿方…だから……、き…気持ちイイ……」  
「う……っ…く………」  
恍惚とした表情で、白菊はつぶやいている。だが俺の耳には、半分も届いてはいなかった。  
イケそうでイケない違和感が、また違った快感となり、俺の全身を包み込み、  
他の感覚を鈍らせていたからだ。……もう、もうイキたいっ……。  
「はあ、はあ……もう、もう我慢出来ない……あなたも…あなたも、そうでしょ?」  
「あ、ああっ……」  
白菊が上半身の動きを止め、俺の耳元でささやいた。  
刺激が伝わるのが中断されたおかげで、今度の声は、はっきりと耳に届いた。  
俺は快感の余韻に打ち震えながら、かろうじて首をガクガクと上下に動かした。  
「んふ……っ…。ん………凄い、立派……」  
「あああ……ああっ………」  
俺の返事に、満足そうに頷いた白菊は、ゆっくりと上半身を起こし、モノをそっと握り締め、  
5本の指でさわさわと撫で回しながらつぶやいた。  
 
「ん……んんっ! あ…はああっ!」  
「はうっ! うああっ! あああっ!」  
しばらくの間、白菊が指でモノをなぞっていたかと思うと、ひと息に腰を落とした。それも突然。  
ずぶっという音とともに、俺のモノが白菊の中へと飲み込まれていく。  
その途端、俺のモノはまるで堰をきったかのように、ドクンドクンと脈動しながら射精していた。  
「あっ! ああっ! イイッ! 気持ちイイっ!」  
「うぐあはっ! くああっ!!」  
俺が果ててしまったのにも一切構わず、白菊は腰を上下に動かし続けた。  
射精直後で敏感になっているモノは、さらなる快感を全身に送り込んでくる。  
「はああ……ああっ! イッちゃうっ! イッちゃううっ!」  
「く…う…っ……も…お、俺も……もう…もう…っ…!!」  
やがて、白菊はツインテールをなびかせ、叫び声をあげながら、絶頂に達した。  
俺は全身をビクビク震わせながら、快感の嵐に悶えていた。  
――いつの間にか、自分の体が動かせていることにも、気がつかないくらいに――  
 
 
「………はあ…はあ……。凄いよかった……でも…でも、まだこれから………」  
「う…くっ……」  
しばらくの間、俺に覆いかぶさるようにして、肩で荒く息をしていた白菊はゆっくりと体を起こし、  
妖しく微笑んだかと思うと、再び腰を動かし始めた。  
繋がりっぱなしだった俺のモノに、たちまち刺激が伝わる。  
まだこれから!? こんな……こんなの、続いたら死んでしまう……。  
白菊の”試練”に挑んだ連中の末路が、何となくだが見えた気がしてきた。  
でも…このままこうして死ぬのなら、男として本望なのかもな……。  
そんなことを考えながら、快感に打ち震える俺の手に、何かが当たった。これ…は?  
ゆっくりと顔をそちらに向けた。それは一昨日の夜、絹代から受け取った首飾りだった。  
 
『お守り代わり、じゃ。だがな…信幸殿にあげるわけではない、貸すだけじゃ。必ず、返しに来るのだぞ』  
『ん……どうもありがと。約束する。必ず返しに戻ってくるよ』  
『信幸殿…………いえ、何でもない。……必ず、無事に戻ってきてくだされ…………では………』  
 
同時に、絹代から首飾りを受け取ったときの情景が、走馬灯のように頭をよぎった。  
……そうだ……俺はもう一度、絹代に会うんだ……。会って首飾りを返すんだ……。  
こんな……こんな場所で、死ぬわけにいくものかっ……。  
俺はちらりと芽生えた、誘惑と刺激をこらえようと、歯を食いしばりながら、必死に目を閉じた。  
 
「ふあ…あ……ああっ!?」  
突然、白菊の悲鳴が聞こえ、刺激が中断された。……何だ? 何があったんだ?  
恐る恐る目を開けると、衣服をはだけた佳乃が、両手で白菊の腰を押さえつけていたのだ。  
あ……そういえば、佳乃がいたんだっけか。………正直言って、すっかり忘れてた。  
いや、白菊がそこまで凄かった、と…いや、多分催淫効果があると言ってたから、そのせいだろう。  
などと心の中で言い訳をしていたが、佳乃の様子を見て、我に返った。……何か、おかしい。  
「う…あ……あ、ああ……」  
佳乃は、あえぎ声を漏らしながら、自らの腰を白菊の腰に打ちつけてきた。  
モノの先端が俺の下腹部に当たって、絶妙な刺激となってこみあげてくる。……って、ちょっと待て!  
「な、何!? 何なの? お、おなごは動くことなど、出来ないは…ひ、ひいいっ!?」  
佳乃の突然の行動に、怪訝そうな顔をする白菊だが、佳乃の下腹部を仰ぎ見て、悲鳴をあげた。  
………そりゃそうだよな。俺もあのときは驚いた。……っと、これはチャンス……かも。  
俺は白菊のお尻に両手を伸ばし、撫で回し始めた。えっと……確か………この辺、か?  
「あ、ああんっ。な、何を………?」  
たちまち白菊は甘えた声で、俺に声を掛けてくる。あ…あった。  
「よ……佳…乃……こ、こっちに……」  
そんな白菊の声を無視した俺は、両手で白菊のすぼまりを押し広げながら、佳乃に向かって言った。  
佳乃は無言で、モノの先端を白菊のすぼまりに押し当てる。  
「え? ええ? い、いや…ま…まさか、そんな……あ! い、いやあっ! いやああっっ!!」  
俺の意図を悟った白菊は、必死に逃れようと身をよじらせるが、俺と繋がっている上に、  
二人でしっかりと腰を押さえつけていたため、逃れようが無かった。  
「くう……っ…。す、すげえ…締めつけ……だ………」  
「うぐあはあっ! い、痛い! 痛っ! や、止めてえっ! 動かさないでっ!」  
佳乃のモノが、白菊の中に入り込む感触が、皮一枚を通して俺のモノに伝わってくる。  
同時に白菊は、涙をボロボロこぼしながら、首をブンブンと振り乱す。  
だが、そんな白菊の哀願を無視して、佳乃は自らの腰を動かし始めた――  
 
「ふ、二人のが、二人のが中で! 中でぶつかって……こ…こんな、こんなのって……」  
「く……ううっ……」  
少しずつ、白菊の反応が変わってきた。  
最初は、ただひたすら泣きじゃくるだけだったのだが、段々声が甲高くなってきた。  
かく言う俺自身も、佳乃が腰を突き動かすたびに、快感が全身を駆け巡っていたのだが。  
「……イイッ! 気持ちイイッ! こんなの! こんなの初めてえっ! あ、ああっ!!」  
「う……ううっ……」  
とうとう白菊は、上半身を仰け反らせながら、歓喜の声をあげ始めた。  
同時に自らも、佳乃の腰の動きに合わせるかのように、腰を左右に揺さぶり始める。  
つられるように、俺も白菊を突き上げるように、腰を動かし始めた。  
「ふああっ! ああっ! あああんっ! あ、ああっ、あああっ! もっと、もっと激しくうっ!」  
白菊のあられもない声に応えたのかどうか、佳乃は背後から白菊の肩を抱え上げ、  
さらに腰の動きを激しくさせていた。  
「ああっ! もう、もうダメッ! イッちゃうっ! イッちゃうううっ!!………」  
ひときわ大きな悲鳴をあげながら、白菊の顎がガクンと落ちる。  
俺と佳乃はゆっくりと、白菊を横に寝かせた。ぐちゅりという音とともに、二人のモノが白菊から抜けた。  
と、ぽっかりと開いたままの、白菊の割れ目とすぼまりから、白濁した液体がどろどろと流れだしていた。  
………ううん、これこそまさに”白菊”か。……いや、俺はここまでオヤジではない。  
多分、同僚の影響だ。などと、訳の分からない言い訳を、頭の中で行なっていた――  
 
 
 
一方その頃、某会社では……  
 
「ひえっくしょいっ!」  
「おいおい、風邪かあ?」  
「いや……何だか急に、寒気がして……」  
「頼むぞ。山内もいない今、お前が休んだら、僕が死を見ることになるんだからな」  
……そう。昨日は予想通り、深夜2時に帰っても、アイリスは起きて待っていた。  
そして、その後はこれまた予想通り……。正直言って一週間、体が持つ自信が無い。  
「ああ…分かってる、分かってるよ……へえっくしょいっ!  
……えっと、確か一回は気のせい、二回は噂、三回は風邪……だっけか?」  
「だったらここで切れ。もうくしゃみすんな。そうすれば、噂で終わる」  
「ううん……でも、誰が噂なんてするんだか。する相手いないから、もう一回くしゃみするかな?」  
「…………明日から僕が休むぞ。というか、片山の噂をするったら、彼女しかいないんじゃないの?」  
「えへ、そおかな?」  
最後は惚気に走る男、片山だった。というか山内、早く帰って来い! 僕は心の中で叫んでいた。  
 
 
 
「はあ…はあ……はあ…。よ、佳乃………佳乃…っ……」  
「あ…ああっ……あ、ああっ………」  
佳乃をゆっくりと横に寝かせ、両手で佳乃の膝を押し広げた。  
カエルのような姿勢になった佳乃の股間には、そそりたつモノと、濡れそぼっている割れ目がある。  
俺は生まれたままの姿になり、佳乃のモノを優しく握り締めながら、自らのモノを割れ目に添えた。  
佳乃は抵抗する様子もなく、あえぎ声をあげながら、じっと俺を見つめている。  
「く…っ……、佳乃……佳乃おっ!」  
「…あ……ああっ…、ああっ……」  
そんな佳乃の目に、まるで吸い寄せられるかのように、俺はモノを佳乃の中へと潜り込ませた。  
途端に、白菊の中とはまた違った、痺れるような刺激が背筋を伝って、快感となって脳に響く。  
あまりの快感に、思わず歯をカチカチ震わせながら、俺は腰を動かすと同時に、佳乃のモノをしごき始めた。  
上半身をビクビクと震わせながら、佳乃は艶っぽい声であえぎ声をあげている。  
俺は半ば条件反射のように、佳乃のあえぎ声に合わせて、腰と手を激しく動かし続けていた。  
「佳乃……も、もう俺っ……俺っ……よ、佳乃っ……」  
ものの5分も経たないうちに、早くも限界が近づいてきた。  
無意識のうちに声が漏れ、目の前が真っ白になる。  
「うっ! くああっ! ああっ!!」  
「はああっ! ああっ!」  
俺が絶叫とともに佳乃の中で果てると同時に、  
佳乃のモノもまた、ビクビク震えながら、白濁した液体を俺に向かって噴き出させていた。  
 
「佳乃……佳乃……。………」  
心地よい脱力感の中、俺はゆっくりと佳乃の上に覆いかぶさった。  
覆いかぶさったとき、胸に飛び散っていた佳乃の白濁液が、ねちゃりと音を立てたが、  
気にはならなかった。俺はそのまま、佳乃にくちびるを重ねようとして……  
「な!? よ……佳乃!?」  
「はあ……あ…わ…われは…われは……でも…でもおっ……あっ! ああっ! あああっ!!」  
突然、佳乃が俺の上に馬乗りになったかと思うと、ブツブツつぶやきだした。  
戸惑う俺を他所に、いきなり佳乃は自らのモノをしごきながら、腰を上下に揺さぶり始めた。  
たちまち襲い来る刺激に、俺の体は痙攣したようにビクビク震えだす。  
「く……よ…しのおっ……」  
「あ…イイ…でも……われは…われは、あ……ああっ! あああっ!」  
佳乃はひたすら、自らのモノと胸を荒々しく揉みしだき、腰を揺さぶっている。  
その恍惚とした表情が、俺が意識を失う前に見た、最後の光景だった――  
 
 
「ん? こ、ここ……は………? よ、佳乃!?」  
「信幸様……お目覚めになられましたか……」  
意識を取り戻し、顔をあげると部屋の隅で、壁を向いて正座をしている佳乃がいた。  
俺の叫び声に、ビクンと身をすくませた佳乃は、ゆっくりとこちらを振り向きながらつぶやく。  
はたしてその声は、俺に語りかけているのか、それともただの独り言だったのか……?  
「あ…いや、あの……。よ、佳乃が……服を………?」  
「………………」  
「そ、そうか。あ、ありがと………」  
頭をボリボリと掻きながら、俺は佳乃に語りかけた。  
佳乃は無言でコクリと頷くが、俺と目をあわそうともしない。……うう…すっげえ気まずい空気……。  
 
 
「の……信幸様…」  
「え?」  
しばらくの間、沈黙があたりを包んでいたが、佳乃がゆっくりと顔をあげながら、ポツリとつぶやく。  
そのときの佳乃の顔は、怒っているのか、悲しんでいるのか――  
多分その表情を、俺は一生忘れることが出来ないだろう。それくらい、俺の心に焼きついていた。  
「わ…われ……は…」  
佳乃が、再び口を開きかけた、その途端――  
 
「ああんっ……。あ、姉君様あんっ……」  
「へ?」  
「な、なな?」  
甘えた声とともに、白菊が佳乃の首にしがみついてきた。  
突然のことにあっけにとられる俺と、目をパチクリさせながら口をパクパクさせる佳乃。  
「わ…わらわは……わらわは…お二人様に、ついていきまする……っ……」  
「し……白菊、殿?」  
「あの……その…えっと…これって……」  
佳乃の胸に顔をうずめながら、つぶやき続ける白菊。ううむ、羨ましい……いや、そうじゃねえ。  
白菊の言葉に我に返ったのか、佳乃が白菊を見つめ返しながら、戸惑い気味に白菊に声を掛ける。  
てっか、これは……佳乃が白菊を手なずけた、ということでいいのか?  
「そんな……殿なんて、勿体無いお言葉。姉君様……白菊と、白菊と呼んでくださいまし………」  
佳乃の言葉に、白菊はゆっくりと首を振りながら答えた。  
「あ……姉君って…わ、われは………」  
「な? よ、佳乃っ!? う、うわっ!?」  
白菊の肩を抱きながら、心底困った表情で俺を見つめる佳乃。  
その表情がおかしくて、思わず吹き出しそうになったが、次の瞬間、俺は我が目を疑った。  
白菊と佳乃の体が透けて、向こう側が見えているのだ。俺は慌てて叫びながら、  
佳乃に向かって手を伸ばすが、何か見えない力にぶつかったかのように、後ろへ弾き飛ばされた。  
 
「い、いかがされたのだ? 信幸……様」  
弾き飛ばされた格好で、顔だけをあげて見ると、そこに白菊の姿は無く、  
代わりに一本の太刀が転がっている。そう…か。あれが、白菊の本当の姿、か。  
そんなことを考えている俺を、佳乃が助け起こそうとする。でも何だか、佳乃の様子がおかしい……。  
「よ…佳乃?」  
「………な、何故わらわを姉君様と? ……え? な…ななな…なっ!?」  
俺に声を掛けられた佳乃は、妙なことを口走りながら、怪訝そうな顔で辺りを見回すが、  
床に転がる白菊を見て、目を真ん丸に見開き、驚きの表情を見せる。  
「何故!? 何故わらわが、わらわがここにおるのだ!? この、この体は……姉君様っ!?」  
「ま、まさかお前、白菊っ!?」  
刀の白菊を手に取りながら口走る佳乃を見て、今度は俺が驚きの声をあげていた。  
 

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