海の花女学園が消滅して16日目の日本。 
 
マスコミは飽きることなく学園消滅を取り上げ続けている。 
日本いや全世界がこの事件に注目し、その解明に躍起になっていた。 
そんな中で最も辛い日々をおくっているのは生徒や教師ら学校関係者の家族達であり・・・・・そして巻き込まれた幼い兄妹の両親であった。 
 
朝。 
学園跡地より少し離れた場所にある仲岡家では勇介と美咲の父・英志(エイジ)が仕事に出かけようとしていた。 
あの日、息子と娘が帰ってこず必死に心当たりを探したが見つからず、待ち合わせをしていたという子供たちの友人達による証言もあり、結局は最もあってほしくはないと思っていた「学園消滅事件に捲き込まれた」という事を認めざるをえなかった・・・・。 
 
英志はあの日より仕事も休んで手がかりを探すために狂奔していたが、さすがにいつまでも休んでいるわけには行かず今日から仕事に復帰することにしたのである。 
「なあ・・・燈子(トウコ)。やっぱり俺が居ない間はお義父さんたちのところに居たら良いんじゃないか?」 
英志はうつろな目をしてキッチンの椅子に座っている妻に向かってそう言った。 
兄妹の母・燈子は子供たちが消えて以来、心のバランスを崩してしまっていた。 
ぼんやりとしていたかと思うといきなり「あの子達は生きている!だから早く助けないと!」と叫び声をあげたりしていた。 
そんな妻を見かねた英志は自分が留守の間は実家に戻ることを薦めたのであるが・・・・。 
「いいえ、私はこの家にいます。あの子達が帰ってきた時、誰もいなかったら困るでしょ」と、それについて燈子は頑として聞かなかった。 
しかし英志は妻が心配だった。 
5日前(学校消滅から11日目)の午後3時頃にはいきなり「あの子達が危ない!」と叫んだかと思うと家の外に走り出たりしていた。 
英志は妻を入院させるべきなのかと悩んでいたが、妻の「あの子達は生きている」という気持ちは自分の気持ちでもあり痛いほどわかるので踏ん切りがつかないでいた。 
 
ちなみに燈子が狂乱した5日前の同時刻、異世界では兄妹たちが上級淫獣「フール」に襲われていたのであるが・・・・そのことを英志が知るはずもなかった。 
 
※ 
 
夕方。 
東京・イギリス大使館。 
ジョージ・アンダーソンは大使館の庭に出ていた。 
娘のエリザベスが学校もろとも消えてしまったという到底信じがたい事態に直面してから4日後には職場に復帰し、彼は内心の動揺を抑えて職務に精を出していた。 
同僚や上司たちは長期休暇を取ることを薦めたが彼は断った。 
事件を聞いた彼は直ちに学園跡地に駆けつけたのであるが、自分はこの事件に関してはまったく役に立たないと知ったのだった。 
ならば仕事をしていたほうが心が落ち着くと思っていた。  
 
その時背後から「・・・・お父様・・・・」という小さな声が聞こえた。 
「!・・・・ベッ、ベス!?」 
振り返ったジョージの視線の先には学園の制服を着たエリザベスが立っていた。 
「ベス?・・・お前!」 
あわてて駆け寄ろうとした父親の前で娘の姿はスゥーと消えた。 
「・・・・・・!!!」 
ジョージはその場に膝をつきへたり込んだ。 
理由はわからない・・・しかし彼ははっきりと感じていた。 
今、娘が死んだのだということを・・・・。 
 
※ 
 
夜。 
黛家。 
 
皐月の父・黛順也は剣術の稽古場で灯りもつけずに座っていた。 
娘が学校もろとも消えてから2週間以上がたった。 
(またか。・・・またなのか・・・) 
彼の脳裏には三人の人間の顔が次々と浮かんでいた。 
父・竜一郎。 
姉・葉月。 
そして娘・皐月。 
三人とも彼が心より愛し、そして自分よりも剣の腕が立った人物であった。 
達人と呼ばれ自分に剣を教えてくれた父は言うまでもなく、姉の葉月も自分より強かった。 
そして皐月。 
成長するにつれますます葉月に容貌が似ていく彼の愛娘は、剣の腕でもすでに自分を上回っていた。 
順也は家族の中で自分が一番剣の腕が劣っていることは理解していたが、そのことで家族を憎んだことはなかった。 
彼はそれだけ家族を愛していた・・・・さらに幼いうちに大好きだった姉を行方不明という形で失った事も劣等感のあまり家族を憎むという感情を彼から奪っていたのであった。 
(皆俺より強かった・・・・なのに、なぜだ・・・・) 
順也は立ち上がり、思わず声に出した。 
「なぜ、俺より腕の立つものは皆俺を置き去りにして、どこかに行ってしまうんだ」 
父は去年死んだ。 
姉は行方不明になってから27年がたった。 
父は死ぬまで葉月は生きていると言っていたが、彼はそれも望みは薄いと思っていた。 
もちろん姉が生きていればこれほどの喜びはない・・・しかし27年という年月はその望みを失わせるには十分すぎる長さであった・・・・。 
・・・・・だが、と彼は思う。 
皐月はせめて無事でいてくれと。 
思わぬことで家族を失うのは姉のことで十分だと。 
 
順也は庭に降り空に浮かぶたった一つの月を見上げてつぶやいた。 
「皐月・・・頼む、無事でいてくれ。そしてこの家に戻ってきてくれ・・・」と。 
 
〜残された者たち〜おわり  
 

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