『1章:変わった運命』  
 
(どこだ、ここは?)  
俺は今、とても暗くとても狭いとこをいる。なぜ、こんなとこにいるのだろう。  
考えても俺には分からなかった。一体どうしてよいのか分からず、俺はその場に座り込んでしまった。  
これからどうすれば、いいか考えてると目の前に蒼白い光が目の前に現れた。  
「なんだ、あれ・・・?」  
光はだんだん人の形を成してきた。  
(ん、俺?)  
それはとても俺によく似ていた。彼は俺に向かって何かを言った。  
「・・・頼む・・・・」  
「えっ?頼む?何を・・・」  
 
 
 
「杉原!起きろ!!!」  
俺は頭を思いっきり殴られた。  
「痛てぇ・・・・何?」  
目の前は暗闇から教室へと変わっていた。そして、俺の前にはもっとも居て欲しくない人が立っていた。  
「杉原。私の授業で寝るとはいい度胸だな。まぁ、寝るってことはもちろん分かってるからだよなぁ・・・・」  
やっぱり、こういう展開かと、俺は田中の出してきた問題を解くために黒板の前に立たされた。  
「微分の定義の導出ですか・・・・」  
「わかるよなぁ。杉原」  
こんなもん、公式しか覚えてない俺に出来るはずもない。俺は取りあえず公式だけ書くことにした。まぁ、案の定・・・・  
「公式書いてどうする!!来週までにP112〜114宿題だからね。」  
やっぱりかと、思いながら俺は机に戻る。俺が座るとちょうどにチャイムがなる。  
「まったく誰かのせいで終わらなかったじゃないの。次回はP110からやるからちゃんと予習しとくように!」  
そういいながら、田中は教室を後にした。  
 
「まったく、お前も田中の授業で寝るとはいい度胸してるな。」  
隆史が俺に絡んできた。  
「うっせ、しかたないだろ。寝ちまったんだから。だいたい誰か起こしてくれてもいいんじゃないのかよ。  
園村、俺の後ろなんだからさ。背中叩くとかあるだろ」  
「叩いたわよ、ちゃんと。それも三回も!」  
(俺、そんなに鈍感なのか・・・)  
「まぁ、完全に良司が悪いな。諦めな」  
「宿題分からないところあったら手伝うよ」  
彰と斉藤もどうやら、俺が悪いと判断。まぁ寝た俺が間違いなく一番悪い訳ではあるのだが・・・  
「まぁ、取りあえず。帰ろ、みんな」  
唯の一言でみんなが自分の席に戻り、自分の荷物を片付けで帰る準備をした。  
 
俺たちは6人は幼稚園の頃からの幼なじみ。そして小、中、高と同じで二年になった今年に至ってはクラスまで同じ。  
さすがに、ここまで揃うことも珍しいだろう。俺たちはちょっとした運命みたいな物を感じていた。  
「しかし、田中のやつ見た目はマジ綺麗なのになぁ。中身鬼だもんなぁ。」  
隆史がいつものように先陣切って、話し始める。  
「でも、ほんとはすごくいい人よ。この間、テストの前残って勉強してたとき質問しにいったら、わかるまでずっと教えてくれたよ」  
唯が得意げに話した。  
「上原さんだからじゃ無いの?隆史がいったら無視されたかもなw」  
「あはは、かもねぇ〜〜」  
彰と園村がいつものように、隆史をちゃかす。  
「ちょっ、お前!!そりゃ・・・かもな_| ̄|○ 」  
「まぁまぁ、止めなさいって。まったく、もういつもこうなんだから」  
斉藤の一言に2人はへいへいと従う。  
 
「でもよ、田中先生も昔はあんな風に厳しくなかったらしいよ、何でも教師一年目にクラスで虐めにあったらしくてね。  
ほら、女子って結構、美人の先生とかに嫉妬して、シカトとかするじゃん」  
「え〜、私たちそんなことしないよ。」  
「するやつもいるんだよ。とにかくそれで悩んだらしくてさ。今のような鬼教師タイプになったんだってよ。」  
「へぇ〜〜。。。で、おまえは何でそんなこと数年前話を知ってるんだ?」  
「そりゃ、あれだよ。」  
「OGの先輩と付き合ってて教えて貰ったとか?」  
「そそ。・・・ってなんで知ってるんだよ!」  
「実話なのかよ・・・・」  
そんな、いつもようなたわいもない会話をしていた。そして、俺たちは『運命』に出会った。  
もっとも、あのときの俺たちは誰一人としてそんなことに気づいてなどいなかった。  
「どこの制服だろうね。前の子。見たことないなぁ」  
園村の一言で、皆が前から歩いてくる少女を見た。  
「ホントだ、知らないなぁ。どこのだろ?」  
目の前の少女が顔を上げた。俺は彼女と目があった。彼女は俺の顔を見て立ち止まった。  
声を掛けようか躊躇ったが、俺はそのまま歩き続けた。  
「似てるっ・・・」  
彼女がそんな風に言った気した。  
 
 
 
たわいもない話をついてるうちにみんなそれぞれ家の方向に向かい、一人また一人といなくなって、俺と唯だけになった。  
唯の家は俺の隣。つまり、ご近所で幼なじみ。  
まるで漫画のような状態で、クラスのやつにはうらやましがられているが、周りの人間が妄想するようなことは実際にはないわけで・・・  
「じゃあ、また明日ね」  
「おう、じゃね」  
いつものように、二人とも自分の家に向かうのだった。  
「ただいま。」  
「おかえり。」  
「おかえりぃ。」  
我が家は、40歳の父、38歳の母、10歳になる妹の4人家族。実にありふれた家庭。  
家族の中はよく、なんでも話せるような家族で俺は自分の家がすごく好きだ。  
父も夕食にちゃんと間に合うように帰ってきて、4人で食事をし、そのあと談笑をして、テレビを見たり、トランプをしたりする。  
理想の家族なのかもしれない。 そして、ずっとそんな家族でありたいと思う。  
 
「じゃ、いってきます。」  
「いってらっしゃーい。」  
いつものように、朝を迎え母に送り出される。そして俺が外に出るのと同じく  
「良ちゃん、おはよー」  
「おはよ。」  
唯も家出て俺たちは、いつも一緒に登校する。こんなことが、もう子供の頃からずっと続いてたりする。  
そして、俺たちは他愛もない話をしながら、学校へと行く。  
「おはよう」  
「おはようー」  
いつものような朝。しかしそこには奇妙な光景があった。  
(あれっ、園村の話してる子・・・昨日の子。転校生なのか?)  
その子と俺の目が合った。彼女はにっこりと俺に微笑む。  
「おはよう。杉原君、上原さん」  
(なんなんだ、この子??昨日の子・・・だよな?)  
「えっ?あ・・・」  
「おはよー、吉田さん」  
俺は、唯の顔をのぞき込む。  
(なんで??吉田さん??)  
「どうしたの、良ちゃん?」  
「えっ、いやっ。だってなんで?知り合い?」  
「えっ?なにが??」  
唯は俺の言動に困惑を示した。いや、唯だけじゃない。みんなが困惑した顔をしている。  
ただ一人吉田さんと呼ばれた彼女だけが、すべてを見透かしたような目で俺を見ていた。  
「ん?良って吉田さんと話したことないんだっけか?でもそんな驚かなくても。同じクラスになって2ヶ月経つんだし」  
(2ヶ月・・・ばかな。昨日は確かにいなかった・・・)  
「吉田さんって、どこ中だったの?」  
「私は、桜花中学だよ」  
「あ〜、あそこ制服かわいいよね〜」  
みんなの素振りには、俺をだまそうとしてるようには見えないとても自然な物であった。  
(俺がおかしいのか・・・いやそんなことは・・・)  
チャイムがなり、HRが行われる。しかし、生徒、先生誰もが彼女に対して違和感を覚えた者は居なかった。  
俺一人を除いては。しかし、彼女は席はちゃんと存在し、机、ロッカー、名簿にも名前はある。俺は自分が分からなくなる。  
(すべてが正しいのなら・・・俺が正しくない?)  
 
そんなことを考えながら俺の1日は終わってしまった。そしていつものようにみんなで下校をする。  
その間も俺はしゃべることなく一人考えていた。  
「今日、杉原元気ないねぇ〜。どうしたの?」  
園村が心配して話しかけてきた。もっとも俺の疑問を投げかけた所で帰ってくる答えは決まっている。  
俺は適当に、はぐらかしてその場を終わりにした。  
「じゃあね、良ちゃん」  
「うん」  
唯も俺を心配そうな顔で俺を見ていたが、これは特に何をするわけでもなく家に入ってしまった。  
「ただいま。」  
「おかえりなさい」  
「おかえりぃ」  
(我が家はいつも道理か。)  
そんなことを考えてしまっている自分がいるのに俺は妙な気分を覚えた。  
「おかえり。」  
(はっ!?)  
聞き慣れない声がした。いや、有る意味ではもっとも頭の中に響き考え続けていた声が。  
俺は急いで、リビングへと向かった。  
「どうしたの、そんな慌てた顔して」  
母が俺に問いかけた。しかし、質問したいのはむしろ俺のほうだ。  
(なぜ、彼女がいるんだ・・・・)  
俺の目の前には、母と妹、そして吉田さんがいた・・・・・  
 
 

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