──夜中に奇妙な電話が来た。  
 
「もしもし。今、私、駅にいるよ」  
 
え?  
と思ったらぷつんと切れる。  
──怖い。そして、これは例のアレか、と思う。  
さらに電話が来る。どんどん近付いてくる。そして最後には、  
『もしもし。私、君の家の前にいるよ』  
『もしもし。私、君の部屋の前にいるよ』  
『……もしもし。ねえ、私、今、君の後ろにいるよ』  
で振り向くと、心臓麻痺で死ぬのだ。メリーさんってやつだ。  
怖い。怖いから電話線をはずす。  
──すると携帯が鳴った。  
 
「もしもし。今、私、君の家の前に……」  
「ちょっと待った!!」  
 
はっ?──電話の向こうのメリーさんが一瞬息を飲むのが聞こえた。  
俺は急いで言葉を繋げる。  
 
「だめだめ! それ、もう知ってるから怖くないよ!そんなんじゃ心臓麻痺しないっつーの!  
俺が怖いのは……年齢が近付いてくるのが一番怖いし死ねるって!!」  
 
適当にうそを言ってみた。  
とにかく会いたくなかった。  
 
「……へー、そっちの方が怖いのね……?」  
メリーさんが小さく笑った気がした。  
──ああ、怖い。怖すぎる。  
俺の頭の中は真っ白になっていた。どのみち死ぬな俺、そう思った。  
 
そして、「こほん」  
とメリーさんは小さく咳払いし、声を低くして言う。  
「君、13歳だね?私、元は24なんだけど、今、20歳です」  
 
……え!?あ、それだけなのか……。  
全然怖くなかった。というか、ちょっと萌えてしまった。  
 
しばらくして、また電話が来た。  
「もしもし。今、私、15歳だよ」  
 
そうですか、としか言いようがない。なので、そうですか、と言おうとしたら電話を切られた。  
ふと気付いて携帯のバッテリーをはずしてからまた布団に潜った。  
 
──朝になった。  
意外と爽やかな目覚めだった。昨日のアレは夢だったのかもしれないな。そう思った。  
ふと顔を横にすると、可愛らしい少女が俺をじーっと見つめていた。  
 
「おはよう。私、今、13歳だよ」  
 
朝日を背にしたメリーさんはとても幻想的で、まるで天使のように見えた。  
メリーさんの黒目がちな瞳がいたずらっぽく輝いていた。  
ちょっと照れているようにも見えた。  
 
俺は惚れた。  
 

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