僕が“その子”に気付いたのは、あの独特の匂いが鼻に付いたからだ。  
 そう、子供の頃に拾った、雨に濡れた野良犬の匂い――  
 匂いの元を探ってみると、ベッドをどかした部屋の隅に――部屋の『角』に、その子がいた。  
 泥と得体の知れない緑色の粘液で、グチャドロに汚れたその子は、一見、犬科の動物に見えた。  
ビーグルやレトリバーのように垂れた犬耳が顔を隠し、長くフサフサした尻尾に包まっている。  
でも、それ以外の部分は普通の人間と変わらない様に見えた。年齢は10歳前後か。  
このくらいの外見年齢では、男の子なのか女の子なのかよくわからない。  
服は着ていない代わりに、ボロ布を申し訳程度に体に巻いて、首には文字通りの首輪まであった。  
 そんな子供が、部屋の隅で震えながらうずくまっているんだ。  
 はぁ……やっぱり、この子も“つぁとぅぐあ”さんや“いたくぁ”さんみたいに、人知を超越した存在なのだろうか。  
「何処から来たの? お名前は?」  
 僕が声をかけると、その子はビクっと小さな体を大きく震わせた。  
「……きゅぅん」  
 緑色に輝く泣きそうな瞳で、じっと僕を見つめている。  
「僕の名前は赤松 英、なぜか渾名のひでぼんと呼ばれる事が多いんだ。君のお名前は?」  
 できるだけ優しく笑って見せても、その子はただ震えるだけだった。  
 困ったなぁ……と、そこでその子の首輪に金属製のドッグタグが付いていることに気付いた。  
怯えるその子を刺激しないように、静かにそれを手に取る。  
『Hound of Tindalos』  
 ええと、『“てぃんだろす”の猟犬』? 猟犬って事は、やっぱり犬系の子なんだろうか。  
 
「“てぃんだろす”が君の名前なのかな?」  
 何気なく呟いた呼びかけだったけど、その子の――“てぃんだろす”の反応は劇的だった。  
 ぴくん、と犬耳が跳ね上がるや、嬉しそうに尻尾を振って、  
「わん、わん!」  
 って満面の笑みを浮かべて喜び、あまつさえ抱き付いてきたんだ。  
「うわっ!……つまり、君の名前は“てぃんだろす”なんだね」  
「わん! わわん!」  
 よくわからないけど、名前を呼ばれる事が嬉しいみたいだ。  
寂しがり屋の子供に、そういうタイプがいるって話を聞いた事があるけど、この子もその類なのかな。  
ともあれ、嫌われなくてよかった。  
 ただ、懐かれたのはいいけど……  
「あーあ、僕もドロドロになっちゃったよ。君、しばらく風呂に入ってないだろう?」  
「きゅうん?」  
 不思議そうに首を傾げる“てぃんだろす”は泥と謎の粘液でドロドロに汚れていて、  
それに抱き付かれた僕もドロドロに汚されてしまったのだ。  
 仕事が終わって一風呂浴びたばかりだけど、また入り直すしかないようだ。  
 ついでに、この子も洗ってしまおう。こう言ってはなんだけど、部屋に匂いが移りそうなくらい臭いんだ。  
「というわけで、一緒にお風呂入ろうか」  
「くぅん?」  
 きょとんとする“てぃんだろす”をひょいと担いで、僕は風呂場に足を運んだ。  
 
 突然だけど、僕にも恋愛や性愛の対象とする異性のタイプ、いわゆる『女性の好み』というものがある。  
どちらかと言えば“つぁとぅぐあ”さんみたいな、濃厚に女の匂いを漂わせるお姉さんタイプが好みだ。  
少なくともロリコンじゃないし、間違ってもショタコンではない。  
だから、“てぃんだろす”と一緒にお風呂に入るという行為も、家族が幼児と入浴するようなもので、特に他意はない。  
 それがちょっとぐらつきかけたのは、きゃんきゃん鳴きながら抵抗する“てぃんだろす”を、  
石鹸で泡だらけにしながら洗っている時だった。  
 汚い泥や得体の知れない緑色の粘液を洗い落とす度に、  
醜い蛹を破って美しい蝶が羽根を広げるように、輝く肢体が現れたんだ。   
鼻の頭に泡の塊を乗せてきょとんとする“てぃんだろす”は、息を飲むくらい美しかった。  
 深緑色の髪はお湯に濡れてしっとりと身体に貼り付いている。  
 くりくりと大きな瞳は、髪より明るい色に輝いて、呆然とする僕の姿を写していた。  
 小さな鼻に小さな唇は触れれば壊れてしまいそうに繊細だ。  
 健康的に焼けた肌は、お湯を玉状に弾いている。  
 やや痩せ気味の身体は脈動感にあふれ、無邪気な若さをアピールしていた。  
 胸元に咲いたピンク色の乳輪が可愛らしい。  
 ある趣向の持ち主が、幼女を至上の美として愛でる気持ちが、今の僕には十二分に理解できた。  
「……ただ、なぁ」  
 僕は“てぃんだろす”にたっぷりのお湯を浴びせて石鹸を落とし、風呂に入れようと抱き上げて――“それ”を見た。  
 股間に揺れる、ペニスと呼ぶにはあまりに可愛らしい、幼少期の僕にとっても見慣れたモノを。  
「お前、男の子だったんだね」  
「わんっ?」  
 そこ以外はどこをどう見ても完璧美少女な“てぃんだろす”は、  
湯船に浮かぶアヒルのおもちゃと戯れながら、不思議そうに僕を見上げた。  
 
 
 その日から、僕の奇妙な生活に“てぃんだろす”が同居する事になった。  
 あまり深く考えなくても、突然部屋に出現した謎の犬耳&尻尾美少年と一緒に暮らすなんて、  
正気の沙汰ではないかもしれない。しかし、ここ最近の様々な不思議体験で、  
僕の常識感覚は完全に麻痺してしまった。毎日僕は供物を捧げに“つぁとぅぐあ”さんに会いに行くし、  
“いたくぁ”さんもあれから毎日のように僕の部屋を訪れては、特に何かするまでも無く、  
勝手にお茶を入れて飲んだり、お茶菓子を食べ漁っては、  
いつのまにかいなくなっているという行為を繰り返している。  
今更『謎のわんこ』が生活に紛れこんでも、特に気にする物ではなかった。  
 一見、犬耳と犬尻尾が生えた美少女に見える“てぃんだろす”だけど、  
その生態は犬っぽい部分もかなり多い。犬の鳴き声みたいにしか話せないし、  
直立二足歩行ができるくせに、普段は四つん這いで歩く。食事もいわゆる犬食いだ。  
ただ、情緒は見た目通りのお子様とはいえ、知能はかなり高く、人間の言葉はほとんど理解できる。  
途中でギブアップしていたジグゾーパズル『闇夜のカラス 100万ピース』を  
1時間足らずで解いてしまった。ああ、人間の尊厳カムバック。  
 やはりこの子も、人知を超えた存在なんだ  
(この子は『旧支配者』ではなく『独立種族』というらしい。“いたくぁ”さんに教えてもらった)。  
 “てぃんだろす”は僕によく懐いている。どこに行くにもついてくるし、  
ちょっと構ってやるだけで、尻尾をぱたぱた振って喜んでくれる。  
僕が無下にこの子を追い出さなかったのも、あまりに懐かれ過ぎて情が移ってしまい、  
引き離すのも不憫に感じたからだ。犬耳っ子を保健所に送るわけにもいかないし。  
 ちなみに、いくら犬っぽいとはいえ、全裸のままうろつかせるわけにはいかないので、  
服は僕が子供の時分に着ていたお古を着せている。  
死んだ父母が僕の服をこの家に取っておいてくれた事を、今更ながら感謝した。  
今度墓参りにでも行こうかな。  
 
 しかし、困る事もあった。  
 僕に懐いてくれるのは構わないけど、あまりに懐き過ぎるんだ。  
仕事は自宅でやってるし、インドア派であまり外を出歩かないとはいえ、  
全く外出しないわけにはいかない。  
そこに犬耳幼子が四つん這いで後を付いてくるのは、世間体がヤバ過ぎる。  
寝ている時にこっそり抜け出しても、いつのまにか街中にある『角度』のある物体から煙のように出現して、  
きゃんきゃん鳴きながら僕に跳び付いてくるのだからたまらない。  
仕事の打ち合わせで担当の人が自宅を訪れる事も多いし、その度に誤魔化すのに一苦労だった。  
“いたくぁ”さんが遊びに来てくれている際は、彼女に相手してもらっているのだけど  
(“てぃんだろす”は、彼女にもよく懐いている)、  
必要な時にいつも彼女がいてくれるとは限らない。  
 尻尾をゆっくりと振りながら、膝の上で幸せそうに眠る“てぃんだろす”を、  
僕はどこか疲れた調子で撫でて――ピンと閃いた。  
「そうだ、あの方に頼めばいいんだ」  
 
「――という訳なんですよ。お願いできますか」  
「ん〜……いいですよぉ」  
 “つぁとぅぐあ”さんは眠そうに目を擦りながら、僕の頼みを即答で承諾してくれた。  
さすが“つぁとぅぐあ”さん、度量が広い。単に何も考えていないように見えるのは気のせいだろう。  
「……きゅぅん……」  
 その凄まじいまでの美貌と威厳に恐れをなしたのか、“てぃんだろす”は僕の背中に隠れて震えている。  
「ほら、大丈夫だよ」  
 カタカタ震える“てぃんだろす”を抱えて差し出すと、  
“つぁとぅぐあ”さんは『にへら〜』と笑って手を差し伸べて――  
 かぷっ  
 その手に、必死の形相で“てぃんだろす”が噛みついていた。  
「痛たたたたたぁ……痛いですよぉ〜」  
 あまり痛くなさそうな悲鳴を上げながら、  
“つぁとぅぐあ”さんは“てぃんだろす”が噛みついたままの手をぶんぶん振った。  
“てぃんだろす”はがじがじ歯を立てたまま、離そうとしない。  
「こら! 旧支配者を噛んじゃダメだろ!!」  
 押さえつけて引き剥がし、頭をペンと叩くと、“てぃんだろす”はしゅんと大人しくなった。  
「すいません、普段は旧支配者を噛まない子なんですが」  
「きっとぉ、ボクが美味しそうに見えたのですねぇ」  
 それは違うと思いますが、“つぁとぅぐあ”さんはのほほんと許してくれた。  
 もう一度、“てぃんだろす”を“つぁとぅぐあ”さんに手渡すと、今度は何事も無くその腕の中に収まった。  
 “つぁとぅぐあ”さんが小さな子をそっと胸に抱く姿は、わが子を慈しむ聖母のように清らかに見える。  
しばらくして“てぃんだろす”も安心したのか、怯えるのを止めて豊満な胸に顔を埋めて甘えていた。  
なかなか絵になる2人だなぁ、と頷きながら、僕は“つぁとぅぐあ”さんに念を押した。  
 
「ところで、“つぁとぅぐあ”さん」  
「なんですかぁ?」  
「食べちゃダメですよ」  
「え〜」  
 ピキッ、と“てぃんだろす”は硬直した。  
「半分くらい残しますからぁ……ダメですかぁ」  
「ダメです。その分供物の量を増やしますから」  
「はぁい……残念ですねぇ、美味しそうなのにぃ」  
「わ、わん! きゃん!」  
 ジタバタ暴れる“てぃんだろす”を爆乳で挟むように押さえ込みながら、  
「それではぁ……ちょっと味見するだけぇ」  
 “つぁとぅぐあ”さんは微笑んだ。  
 いつもの『にへら〜』ではない。あの艶然とした魔王のような笑みを。  
 もがく“てぃんだろす”の首筋に、そっと唇が押し当てられた。  
「――ぁん!?」  
 その一瞬、“てぃんだろす”の動きが硬直する。  
 首元から鎖骨へ唇が移動するに従って、“てぃんだろす”の抵抗が弱々しくなった。  
身体をふるふる震わせながら、切なげに吐息を熱くする。尻尾がへちゃっと垂れた。  
 あの“つぁとぅぐあ”さんの攻撃は実に効くんだよなぁ。唇の触れるどんな場所も性感帯みたいに感じるんだ。  
「うふふ……可愛いですよぉ」  
 淫猥な唇の間から、赤く濡れた舌が伸びて、トップとアンダーの差が無い平坦な胸を舐めまわす。  
『ぺろん』じゃない。『べろ〜〜〜ぉん』って感じだ。  
「きゅぅん……きゃん、きゃぁん……」  
 胸の先端に咲いた桜色の乳首をついばまれて、“てぃんだろす”は小さな身体をわななかせた。  
 いつのまにか、“てぃんだろす”の服は全て脱ぎ捨てられていた。  
いつ、どうやって脱がせたのか――僕には全くわからない。  
ただ、その可愛らしい全裸姿に、僕はどこか違和感を覚えた。  
どこが変だと明確にはいえないけど、何かがおかしい……  
 
 全身をくまなく舐め尽くした“つぁとぅぐあ”さんは、一人前に勃起したペニスをそっと摘んで、  
「あらぁ……これも美味しそうですねぇ」  
 ちゅるん、と唇で先端を包んでいた皮をむいた。  
その瞬間、敏感な先っぽが熱い吐息に触れて、限界が来たらしく、  
「わぉん!!」  
 “てぃんだろす”が一際高く吠えるや、“つぁとぅぐあ”さんの淫麗な美貌に白い粘液が勢いよく飛んだ。  
「きゃぁん……ふふ、この味は精通の精液ですかぁ」  
 美しい顔を汚すザーメンを拭おうともせず、口元に垂れた白い粘液をペロリと舐めると、  
「ではぁ、綺麗にしましょうねぇ」  
 “つぁとぅぐあ”さんは“てぃんだろす”のペニスを、ほとんど一口で根元まで咥え込んでしまった。  
「きゃん!わぁん!……あ…あぉん!きゅぅぅん!!」  
 そのモゴモゴと蠢く口の中で、どんな超絶舌技が繰り広げられているのか。  
“てぃんだろす”は涙を流しながら悶え、身をよじり、痙攣しながら“つぁとぅぐあ”さんの頭を抱き締める。  
 やがて、唾液と精液を滴らせながら、ずるりと“てぃんだろす”のペニスが  
“つぁとぅぐあ”さんの口から抜き取られた――  
「え!?」  
 僕は唖然とした。勃起しても大人の指くらいだった小さなオチンチンが、  
カリも立派な太く長くたくましい漢のペニスに様変わりしているんだ。  
「このくらいの大きさの方がぁ、ボクと楽しめると思いますよぉ」  
 爆発しそうなペニスを指先で撫でると、小さな身体がビクンと震える。  
 
「もっとボクと気持ち良くなりたいですかぁ?」  
 精液を顔に垂らしながら、瞳に妖しい光を宿して、あまりに官能的な表情を浮かべる“つぁとぅぐあ”さん。  
「きゃん……きゅぅん……」  
 全身を火照らせながら、涙目ではちきれそうなペニスを押さえて哀願する“てぃんだろす”の頬を、  
ついと撫でる“つぁとぅぐあ”さんの姿を見て、やっぱり彼女はあらゆる意味で“支配者”なんだなぁと再確認した。  
温厚で、優しく、のんびり屋で、エッチな……そして禁断の暗黒世界を支配する女王様。  
「それならぁ、キミを受け入れられるようにしてくださぁい」  
 ころん、と仰向けになった“つぁとぅぐあ”さんが手招きすると、  
砂漠でオアシスを見つけた遭難者のような勢いで、“てぃんだろす”は彼女の魔乳に飛び付いた。  
 あの子の気持ちはよくわかる。あの時の僕も同じ反応をしたのだから。  
「あぁん……ふふ、甘えん坊さんですねぇ」  
 赤子のように乳首をしゃぶる“てぃんだろす”の頭を、優しく撫でる“つぁとぅぐあ”さん。  
一見母性愛にあふれた微笑ましい光景に見えるが、その美貌には白く濁った精液がたっぷりと絡み付き、  
開いた手でゴシゴシとペニスをしごいている。その背徳的に淫猥な親子像に、僕は生唾を飲み込んだ。  
 やがて、彼女の両手がそっと“てぃんだろす”の頬を挟み、  
名残惜しそうに舌を伸ばす口から、ちゅぽんと勃起した乳首を引き離した。  
「次はこっちをお願いできますかぁ」  
 そのまま、“てぃんだろす”の頭を自分の下半身に持っていく。  
濃い目の茂みに隠された赤い真珠と、女の匂いを濃密に漂わせる濡れた淫肉、  
ひくひく口を覗かせるアヌス――極上の秘所が目の前に広がり、  
“てぃんだろす”は餓えた獣と化してはぁはぁと舌を伸ばしている。  
「……ひゃぁん♪」  
 ぱっと頭を離した刹那、“てぃんだろす”は無我夢中で秘所にむしゃぶりついた。  
「んん! はぁあ……あぁん! 上手っ…ですねぇ…んくぅ!」  
 さすが犬っ子だけあって、舐めるのが上手いらしい。  
舌が秘肉を這い、愛液をすすり、アヌスを突つき、クリトリスを舐める度に、  
“つぁとぅぐあ”さんは自分の髪を握り絞め、喜びの嬌声を漏らした。  
 
「ふぁあぁん!!」  
 その時、一際大きな淫声が上がり、“つぁとぅぐあ”さんが背中が折れそうな勢いで腰を浮かせたので、  
何事かと思ったら――何と“てぃんだろす”の右手が肘の近くまで、彼女の膣穴に入ってるじゃないか。  
多分、自分が何をしているのかよくわかっていないのだろう。  
“てぃんだろす”は遠慮無く乱暴に右手を差し動かしている。愛液がぴゅっぴゅと僕の足元まで飛んだ。  
 いくらあの子の手が小さいからといっても、さすがにこれはマズイと止めようとした――が、  
「んはぁ! ひゃぁん! は、激しくてぇ……イイですぅ!!」  
 “つぁとぅぐあ”さんは官能と歓喜に満ちた笑顔で、“てぃんだろす”の行為を受け入れているのだ。  
 さすが“つぁとぅぐあ”さんのアソコ。指1本でも痺れるくらい締め付けるのに、  
フィストファックまで受け入れるとは!!  
包容力のある人だなぁと感心する僕は、何か壮絶に勘違いしているのかもしれない。  
「……くぅん」  
 切なそうな声に引かれて“てぃんだろす”を見てみると、  
何もしていないのにペニスはビクビク震えて、先走り汁が先端からぽたぽた垂れている。  
もうあの子も限界みたいだ。  
「はぁ……はぁ……それではぁ、そろそろ童貞喪失してみましょうかぁ」  
 “つぁとぅぐあ”さんは“てぃんだろす”のペニスを優しく掴み、己の秘所に導こうとして――  
ふと僕の方に振り向いて、  
「ひでぼんさんもどうですかぁ?」  
 とんでもない提案をしてくれた。よかった、てっきり忘れられていると思った……じゃなくって。  
 
「僕も混ざっていいんですか?」  
「1人より2人がいいさぁ。2人より3人がいぃ……と言いますよぉ」  
 どこかで聞いたような言葉で誘ってくれる“つぁとぅぐあ”さん。  
確かに先刻からの刺激的過ぎる光景に、僕はいつでも戦闘開始可能な状態にある。  
 ……うん、せっかくだから混ぜてもらおう。  
「ええと……口でしてくれるのですか? それともお尻で?」  
 服を脱ぎながら尋ねる僕に、  
「いいえぇ、ボクじゃなくってぇ」  
 彼女は肢体の上で息を荒げる“てぃんだろす”を指差した。  
「え!?」  
 さすがに僕は慌てた。いくらあの子が可愛いからって、僕にそっち系の趣味は無いんですけど……  
「ほらぁ、これを見てくださぁい」  
 “つぁとぅぐあ”さんは“てぃんだろす”の両足を持って持ち上げた。  
いわゆる子供にオシッコさせるポーズだ。そして……僕は信じられない物を見た。  
 勃起したペニスの下に、スジのように細い――しかし、確かに女の喜びに濡れた女性器が存在するのを。  
「え!? これって……あの、その……えぇ!?」  
「この“てぃんだろす”さんはぁ、男の子だけど女の子でもあるのですよぉ……  
……と言うよりぃ、女の子が基本で男の子の部分もあると言う方が正しいかもしれませんねぇ」  
 ……冷静になれ、僕。  
 H系のマンガやゲームでしか聞いた事が無いけど、  
この“てぃんだろす”は男性器と女性器が同時に存在する、いわゆる『ふたなり』って奴だったんだ。  
さすが人外の存在、人知を超えた肉体を持っているんだなぁ。  
 今更ながら、僕はあの子に感じた違和感に気付いた。  
男ならあるはずの、ペニスの下にぶらさがる陰嚢、いわゆる『玉』が無かったんだ。  
 それにしても、今までその事に全く気付かなかったとは……  
まぁ、他人の性器をまじまじと観察するような変態的趣味は持ってないとはいえ、  
自分の鈍さにちょっと自己嫌悪。  
 でも……あんな小さな子に、いいのかな?  
 
「くぅん……ぁぅん」  
 その時、潤んだ瞳で僕を見つめていた“てぃんだろす”は、  
両手で自分のスジのような性器を左右広げて――切なそうに笑ってくれたんだ。  
 その瞬間、あの恐怖すら覚えるような情欲が、僕の理性を粉々に粉砕した。  
そう、“つぁとぅぐあ”さんや“いたくぁ”さんを抱いた時と同じように。  
 飛びかかるように抱き付く僕を、“つぁとぅぐあ”さんと“てぃんだろす”は、  
優しく、そして淫猥に受け止めてくれた――  
「――ぅん……いいですかぁ」  
「何時でもどうぞ」  
「くぅん……」  
 ――“つぁとぅぐあ”さんが仰向けになり、その上に“てぃんだろす”が正上位の体勢でのしかかり、  
最後に“てぃんだろす”をバックで犯す構えに僕が立つ。  
僕と“つぁとぅぐあ”さんが“てぃんだろす”をサンドイッチする体位で、僕達は交わろうとしていた。  
「それではぁ……あふぅ!」  
「きゃぅん!!」  
 “てぃんだろす”のペニスが“つぁとぅぐあ”さんの秘所に突き立ったのと同時に、  
僕の怒張は“てぃんだろす”の処女を奪っていた。  
「あぉん!! きゃふぅん!! ひゃぁん!!」  
 童貞と処女を同時に失った“てぃんだろす”は、狂ったように悶え、  
“つぁとぅぐあ”さんの乳房に爪を立てた。赤い筋が美しいふくらみに刻まれる。  
 
 僕は頭の中が真っ白だった。あんな小さな子の処女を奪ったという背徳感もさりながら、  
その僕のペニスが食い千切られそうな凄まじい締め付けに、  
苦痛と快楽が一体化して僕の脳をシェイクしている。  
「わぉおん!! くぅうううん!!」  
 そして、痛みと快楽の渦に翻弄されているのは“てぃんだろす”も同じらしかった。  
その苦痛の叫びには、明らかな嬌声が混じっている。  
「はぁあぁ……うふふ、こういうのもぉ……くぅ……いいですねぇ」  
 “つぁとぅぐあ”さんだけは純粋な喜びの声を漏らし、自ら腰を跳ね上げた。  
その度に強い振動が“てぃんだろす”の腰を通して僕のペニスを刺激して、  
お返しに僕も勢い良く腰を叩きつける。尻尾が勢いよく踊った。  
「あぁああああん!! きゃおおおおおん!!」  
 前後からの激しい快感に、“てぃんだろす”は失神寸前のようだ。そして――  
「あぉおおおおおおん!!!」  
 ほとんど悲鳴と化した絶叫と同時に、“てぃんだろす”は大量の精を“つぁとぅぐあ”さんの中に放ち、  
同時に膣を痙攣させながら締めつけた。  
 たまらず僕も射精する。精液が子宮の奥まで叩きつけられる。  
 痺れるような射精感から覚めた時には、“てぃんだろす”は小さな身体をビクビクと震わせながら、  
微笑む“つぁとぅぐあ”さんの上で幸せそうに気絶していた。  
 
 しばらく夢見心地で、僕は“てぃんだろす”を抱き、“つぁとぅぐあ”さんに抱かれていたけど……  
「……あー!?」  
 僕は慌てて飛び起きた。  
 そういえば、仕事の打ち合わせがあったんだ!  
思えば、それが理由で“てぃんだろす”を預ける為に、ここに来たんじゃないか。  
つい一時の誘惑に惑わされてしまった。  
 きょとんとした表情で僕を見つめる“てぃんだろす”を、“つぁとぅぐあ”さんに押し付けて、  
「というわけで、その子をお願いします!」  
 僕はダッシュで靄の奥に消えた。  
「いってらっしゃいませぇ」  
「わん!」  
「それではぁ、ボクと一緒に寝ましょうかぁ……痛たたたたたぁ〜お尻噛まないでぇ〜」  
 
 
 数日後――  
「うーん」  
「わぉん?」  
「……何を見ておる……若造……」  
 僕はコタツでミカンを剥きながら、ネット検索をしていた。  
 隣では“てぃんだろす”が不思議そうに画面を覗き込み、  
なぜか部屋にいる“いたくぁ”さんが勝手にお茶を煎れて飲んでいる。  
「いや、ちょっとホームヘルパーを雇おうかと……」  
 今までは男寡の気楽な独身生活だったから別に構わなかったけど、  
扶養家族も1人増えて、仕事も忙しくなってきたので、最近家の事まで手が回らなくなってきたんだ。  
で、家事をサポートしてくれる人材派遣会社を探していたんだけど――  
「……?」  
 奇妙な五芒星マークが目に止まり、マウスを動かす手が止まる。  
 画面には、こんな文字が踊っていた。  
『家政婦派遣サービス会社 メイドハウス“狂気山脈”』  
 
 同時刻――人の知らない時間、人が触れられない空間の狭間で2つの超存在が戦っていた。  
 全身を拘束具で縛った美少女――  
 長刀を構える袴姿の美女――  
 2人の『旧支配者』によって、また新たな“奇妙な世界”に巻き込まれる事を、  
 今の僕は知る由も無かった。  
 
 続く  

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