カリ…カリカリ…カリカリカリカリカリ…、
「……んっ?」
妙な音で目が覚めた、部屋の中は…暗い、多分まだ深夜なのだろう、
闇に慣れた目は自分の部屋を映し出すが光源は何処にも見えない、
カリカリ…カリ…
何故か、車の音すらしないのにさっきからこの音が聞こえて来る、
(どこかで聞いたような……っ!!?)
うとうとしていた俺はまるでバネ仕掛の人形の様に跳び起きた、
「っ、っだっ!誰!?」
ビビってなかなか言葉に成らなかった俺のベッドの横には……
黒い格好の女性が立っていた。
「ど、どどどどちらさまですか!?」
真夜中に見知らぬ女性がベッドの横に立ってこちらを眺めていたら
テンパるのは当たり前だろ?あちらさんもいきなり跳び起きた俺に
動揺してか目を大きく見開いて驚いた様子だった、なかなか両者か
らは言葉が出ない、もちろん 俺はビビってた訳だが何も進展が無
いので多少は相手を見る余裕が出てきた、今まで黒いとしか判らな
かった格好だがどうやら着物のようだ、黒に近い紺色なのだが何故
か赤いアクセントが附いている、綺麗な黒髪は背中の中ほどまであり濡
れているかのように月の光りで輝いていた、多少切れ長の目に肌は
…暗くてよく分からないが白いようだ、そしてなにより
(すっごい美人だ…)
(…夢かなぁ…俺のベッドの横にこんな美人が居るはず無いしなぁ…)
「須木原隆之(すぎはらたかゆき)様ですね?」
あぁ、美人は声まで綺麗なのか〜、
「///あの…い、いきなりで申し訳ないのですが、ずっと昔から…すっ
…好きでした!」
なんか赤くなっちゃってめちゃくちゃ可愛いんですけど…………………
えっ!?今あの美人なっ、何て言いました!??
「あの、もし?」
好きでしたぁ!?俺を?なんで?てか昔っていつ?
「もしも〜し」
こんな美人を忘れる訳無いし…、あっ、そうか!そうかそうか、
これって夢か!そうだよな〜こんな美人が俺の事を好きなはず無いし
「あの〜」
いや〜俺の頭も程よく腐ってるな〜、
「夢なんかじゃ無いですよ、えぃ!」
「いっ、いひゃい…でひゅ」
突然の痛みにくだらない考えが掻き消される、いつの間にか美女
が考え込んでいる俺の頬を軽くつねっていた、しかもかなり顔を
近付けて…
「…!うわぁ!?」
ええ…思わずのけ反りましたとも、今まで異性にここまで顔を近
づけられたのは母親と姉以外、美容院の店員だけですとも!!
「…そこまで驚かなくても…」
「あっ、いや、いや違うんだ!」
声を落とした美女に慌ててフォローを入れる
「そっ、そういえばなんで君は俺の部屋に?」
そうだ、なぜ俺はこんな大事な事を聞かなかったのだろう??ま
ず第一に聞くべきだろう俺よ!
「やっぱり聞いていなかったんですね、」
あぁ、違うんだ!ただ、今の状況が飲み込めなくて切り出した言葉に
そんなにしょんぼりしないで!
「えっ、あ、っとその…俺の事が好きだって話し…だよね?」
無言で頷き返して来る
「じゃあ…まずお名前は?」
「あっ!言ってなかっ…コホンッ名前も申し上げてずに失礼しました、山上 桟
(ヤマガミ サン)と申します。」
名前云々の前に何か隠してません?この人…まあ名前が分かったから
そこは置いておこう
「山上桟さんか、俺は」
「須木原孝之様ですよね」
「思ったんだけど…何時何処で、
顔はまあいいとして、名前と家を調
べたんだ?」
最近は物騒だからなぁ、美人とはいえ用心…ってここまで来たらかなり
危ない人なんじゃないのか桟さんって!?
「実はお隣りさんなんですよ♪」
いや、そんなにルンルンで言われてもお隣りさんなら顔見知りだし、
こんな美人が居たら親が何も言わないはず無いし…
「ほ、本当にお隣りさん?」
「はい、すぐそこです、見えますよ?」
桟さん(言いにくいなぁ)が指さす方を見る…何も無い、夜だから見落
とすなんて事も有り得ない何故ならそっちは家の小さな畑以外、水田
そして近年できた大型スーパーとその駐車場しか無いからだ、
「あの…もしかしてからかってる?又はドッキリカメラ?」
「からかってなんかいませんし、ドッキリで告白なんかしません!」
となると、俺の脳が導き出した答えは一つ!!
「こんな事聞くのは失礼かも知れないけど…桟さんって幽霊?」
「っ!!!!!!」
あ〜、なんかかなり動揺してる、
「惜しい!!」
惜しいのかよ…
「…惜しいって…「ま、まぁそんな事良いじゃありませんか」
慌てて割り込んだな…しかも俺の肩をガシッと掴んで、
「いや、家宅侵入された俺としては「良いじゃない良いじゃない、
そ・れ・と・も、せっかくこんな美人が夜這いに来たのに嬉しく無いのぉ〜?」
と、俺の首が振り子の様にガクンガクンと振られる
よっ!?夜這いぃぃ!!いえいえ、そもそも夜這いとは男が夜に女性の
所へ行って文化を育む行為であると国語事典第八版には…いや、
問題はそこじゃ無くて!
「ちょ!ちょっと待て!ガクガク揺するなぁ!!」
彼女の手が離れていく
アブネェ、首がちぎれるかと思った、細い腕の何処にそんな力が!?
アブネェ、アブネェ匂いがプンプンするぜぇぃ、あれか!暗殺者か!色香に
惑わされてそのナイスバディーな体(目測)に溺れた所で
忍ばせた
ナイフに喉を裂かれるのか!?鮮血を撒き散らせながらベットに倒れ、
朝頃誰かに発見されるのか全裸で!
エロゲぐらいでしか有り得ない状況にテンパってる俺は、心配そうに
手を延ばしてくる桟に気付いていない、
パサッと手が置かれる…
「いぃぃやぁぁあぁぁぁー!!!!」
大絶叫半狂乱、誰が?俺が。
気付いた時には桟の手をおもいっきり打ち払っていた、
「……イタイ……」
この時俺は気付いていなかった、彼女から黒いオーラが滲み出て
来ている事に…だって…男の子だもん…
「……イタイ……」
その呟きに俺は気付かない…なんたって今の俺の頭の中は
美女暗殺者に消される!!が70%、美女と一夜を過ごす美味しい
展開!?が10%、後は、あぁ夢か…、俺の保険っていくらだっけ?、
俺ってもしかしておいしいキャラ?、堕ちて逝こう失楽園へ…etc etc
がひしめき合っている状態だから。
「…ッキカラ…イナン…、」
桟は下を向いて何かをぼやいている、目が影で隠れていて
異様な雰囲気を醸し出しているのだが…錯乱って恐いなぁ、
普段はクールで通っている俺があんな異声で叫ぶばかりか、こんな
あからさまな雰囲気にすら気付かないとは……しかし気付いた
時にはもう遅かった、
「…( ゚Д゚)ハッ…何をしていたんだ俺は…ん〜と、」
あっちの世界から戻った俺は、部屋を見渡し、異様な雰囲気を
醸し出している桟に気が付いた、
「…いや、その、(;・∀・)ダ‥ダイジョウブ‥?」
汗が頬を伝い落ちていく気がする、これが俗に言う冷や汗か、
「…いきなり痛かったんだけど…」
「ほ、ほらっ!あれだよ(なんだよ)、いきなり夜中の自分の部屋に
こんな美女が現れたらどんな人でもパニクるだろ!?」
何言ってんだか俺…、
「…始めは普通に話してたのに、途中からトリップし始めたり
…いきなり奇声を上げたと思ったら手を思いっきり打ち払われたし…」
ん〜、あれは不可抗力じゃ、いや勝手な妄想をアクセル全開で
突っ走って来たのは俺だし…、しかもそんな感情の無い怖い声で
言われたらこっちは何も言えないよぉ…
「ごめん…な…さい?」
謝りながら相手の顔色を伺う、突然、彼女が何かを思い付いた様に
口元を緩ませる、あれだ、子供が良くない事を思い付いた時の
あの屈託の無い笑みの口元、
「…そうねぇw…私の言う事を聞いてくれれば許してあ・げ・るwクスクス」
そう来ましたか、王道だな、とりあえず聞いてみるしかない、
「で、どんな事?」
変な事じゃ無きゃいいけど…無理だろうなぁ…
「簡単よ、私の番い(つがい)になって欲しいの。」
( ゚д゚)ポカーン…へ?
「番いって…夫婦?…結婚んん!?」
「人同士の言葉に直すならその通りね」
何をさらりとプロポーズしてるんだこの人!?
「い、嫌だ!!」
「そう?まぁ貴方の意見は関係無いケド!!」
関係無いのかよ!!
そう言うやいなや彼女は俺に覆いかぶさって来た。
覆いかぶさってきた彼女、押し倒された自分の身体、
……………あれ?…いつの間にこんな体勢に!?…
「あわわわ!!ちょっ!ちょっと何してるの!!」
ずいっと、彼女の顔が近づいておでこ同士がくっつく
「何って…、なかなか貴方が煮え切らないから、私がこうして…」
まてまてまてまてぇぇ!!
「煮え切らないって俺は嫌だとはっきり…と…」
俺の背中を冷たい物が伝った気がする、彼女の双眸は…一言で表す
なら ヤバイ さっきまでの彼女からは想像出来ないほど
ギラギラしている、何故か息も荒くなっている
マジか!?…クソッ、始めは大人しそうだったから話しを聞いて
やったのに…こんな事になるんだったら(考えようによればとて
もオイシイ場面だが)とっとと追い出して寝れば良かった!!
「まだそんな事言うんだ…でももう貴方の意見は…意味が無いけどねw」
ニヤリと口元を歪ませるとそのまま俺の首に近付く
んんー????
カプリッ
………へ?
「……痛いぃっってえぇぇぇ!!!!」
噛み付いた!噛み付いたよ!!
「痛いぃぃ!離せ!離せぇ!!」
両腕で力いっぱい彼女を引き離そうとするが、歯がガッチリと
食い込んでいるのか“身体しか”引きはがせない、逆に痛みが
激しくなる
「フフフフフ…泣き叫んじゃってカワイイ」
悲しいけどあまりの激痛に彼女の言う通り俺は泣き叫んでいた、
もしかしたら鼻水も流しているのかも知れない、その位痛かった…
「…アレ?」
おかしい
「あら〜?どうしたの〜、抵抗が弱くなっちゃったわよw」
口を離しクスクス笑う彼女
おかしい、腕に力が入らなくなってきている…
「何をした!?」
明らかに彼女が何かをした、俺の首に噛み付いている間に…
「貴方が抵抗すると面倒だったから、ちょっとネw」
「何をする気だ!」
「決まってるじゃない、既成事実を作っちゃおうと思ってるの」
暗い…何も見えない、
カリ…カリカリカリ
…………
カリカリカリカリカリカリ
五月蝿いなぁ…
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
五月蝿い…
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
五月蝿い五月蝿いぃ!!
突然景色が見えた、どうやら寝ていたようだ暗い天井が見え
る…
「………夢?」
だよなぁ、ハァ、俺は溜め息を一つして寝返りを打とうとする
しかし、んっ!?体が…動かない、感覚は有るのに…嫌な予感
がする、
「あっ、起きたの?」
そ、その声は!?
声のした方に目だけを動かす、そこには何故か水に濡れ艶や
かな髪と、風呂にでも入ったのか頬がほんのりと染まった桟が
って、おい!
「な、なんで裸なんだ?」
なにげにプロポーション良すぎで目のやり場に困る
「だっ、だって仮にも夫との初夜だから…身体も綺麗にしたいし///」
すでに夫婦決定かよ…此処まで(?)来たら腹を括るしかないのか?
俺まだ17の少年だぞ!?いきなり結婚とか考えられるかよ!!
まぁ、彼女は魅力的で俺はヤリタイ盛りだけどさ、
「人の家の風呂に勝手に入るなよ、しかも沸かし直しただろ?
うちは節約家族なんだ、後で母さんが何て言うか…」
そうだよ、一応二階には両親が!?これから無理矢理(やられ
る)とはいえ夜の事情を行う訳で、音や桟が声を出したりし
たら丸聞こえな訳で…
「声とか余り出すなよ、気まずい朝食時間はゴメンだからな」
朝食時に気まずいのは勘弁だ、特に母さんは根掘り葉掘り聞
いて来やがる、姉と並んで厄介だ、しかし次の言葉に俺は耳を疑った、
「それなら大丈夫、もう外には何も聞こえないから」
へ?
聞こえない?
桟が今だ動かない俺の身体に跨がり耳元でけ囁く
「ちょっと、ね? 全てを遮断したの、今この部屋は外と少し
だけ違う世界になっている、つまり、私が泣き叫んでも家族
は誰も気付かないww」
嘘かどうかは別として、もう呆れるしかない…
チュッ…クチュ…
今まで顔中にキスの雨を降らせていた桟の唇が俺の唇を割って
入ってきた。
チュク…クチュクチュ…
唇、前歯、歯茎へと動き、未だ噛み合わさっている俺の歯をノック
する、薄く開けると桟の舌が奥へ奥へと入って来た。
いつの間にか頭は抱えられ、唇と唇はすき間無く付けられている、
歯列は舐めあげられ、舌は絡めとられ、俺の口内は既に彼女の物
に成っていた。
一通り口内を味わい尽くした彼女の唇と舌はだんだんと降りてくる、
耳たぶ、顎、首すじ、彼女の舌は俺の身体に線を引いて行き、彼女の
唇は線の上に痕を残していく、まるで自分の物だと主張するように。
俺のパジャマがわりのトレーナーはいつの間にかベットの端で無残な骸を晒し
ている。
チュッ……
多少筋肉質だが、そんなに大きくない俺の胸、その胸元に、強く、
強く痕を付けられた、
「一応、俺は運動部なんだから…そんな所に付けるなよ、」
「恥ずかしいですか?」
当たり前だ!着替えの時に何か言われたらどうするんだよ?と、
続けた俺に、クスクス笑いながら 自慢しちゃえば良いんですよ なんて
言ってきた。
そんな会話の後、桟の舌は腹を越え、臍を越え、ついに下腹部へと
差し迫ってきた、
「では、失礼します//」
そう言うと桟はズボンとトランクスを引き下ろしていく、
多分、今の俺の顔はヤバイくらい真っ赤だろう、何たってこんな事
初めてだからな、
しかも身体の自由が効かずに女の子に脱がされるなんて…
「//…けっ、結構大きいんだね…///」
「///ばっ!?そんな事言わんでいい!!///」
恥ずかしいぃぃ!!死にそう…、早く次へ行ってくれ、
しかし、そんな俺の淡い期待は打ち砕かれたのか、全く動きが無い、
動こうとしない桟に堪らず声をかけた、
「ど、どうしたんだよ?」
しかし出て来た言葉は俺の全く予期していない物だった、
「ねぇ…、どうして目を開けてくれないの?どうして私を見てくれ
ないの…?」
そう、俺は行為が始まってからずっと目を閉じていたままだった、
初めてだから?恥ずかしいから? 違う、多分未だに決心がついて
いなかったから、認めたくなかったからだと思う、
卑怯な男だ俺は、
「…ッヒック…ゥゥ、グスッ、生まれた時…から、貴方の傍にいて…私…
には、貴方…しか居ないのに…どうして、ヒック、どうして私を見て
くれないのぉ…ヒック、好きな…人間(ひと)がいるの?ヒック、」
俺って本当に最悪らしい…、そうだよなぁ、夫婦の初めての夜に
目をつぶって妻を見ないなんて最悪だ、まぁ俺の知らない所でも
付き合いが合ったようだし…、
「そう…だよね…、こんな女に…突然押しかけられて…婿になれ
なんて…、元から駄目だったんだよね…」
「違う!!」
もう逃げない
「違うんだ、ちょっと逃げてる部分が合ったんだ、」
俺の両目は真っ直ぐ彼女を見上げる
「でも、もう逃げないよ、だって、」
有りったけの思いと気持ちを瞳に籠める
「だって、俺は山上 桟の夫だから」
よく言った俺、漢だぜ。
「…夫、」
桟の顔にも笑顔が戻ってきた、少しはにかんだような笑顔がとてつもなく
可愛い。
「あの〜、やっぱり身体は動かせないの?」
初めての夜ぐらいは出来る限りリードしてあげたい、
「朝までは動けません…、でも…その///」
ん?
「///私、頑張りますから!///」
あぁ〜、もうおもいっきり抱きしめたい!!