「おはよ」  
「ん」  
 仁の顔を笑顔で覗き込むちとせ。  
 昨夜、お互いの気持ちを打ち明け、眠りについた二人。  
「早起きだな」  
「目が覚めちゃって。仁のあどけない寝顔を見てた」  
「寝言とか言ってなかった?」  
「大丈夫だったよ」  
「そっか」  
 普段と違う朝の普段通りの二人。  
 素直な気持ちをぶつけった二人には、変わる様子は無かった。  
「朝飯作るから適当にしてて」  
「うん。ぁ」  
 仁が布団をめくるとちとせが小さな声をあげる。  
 昨夜のままの姿。つまり、二人とも何も身に着けていないのだ。  
「仁のエッチ」  
「昨日の今日でそんなこと言っても意味ないだろ」  
「ぶぅ」  
 仁はベッドを出て服を着る。  
 ちとせは、布団に包まってそれを眺めていた。  
「トーストとスクランブルエッグでいいよな」  
「うん」  
 シャツとジーンズ姿の仁がキッチンで調理を始める。  
「ねぇ」  
「ん?」  
「何も聞かないんだね」  
「何が?」  
「昨日のこと」  
「大体察しついてるし。大方、待ち伏せしてたあの男に捕まって、自分にはもう彼氏いるからとか言って俺の名前だしたんだろ?」  
「仁ってエスパー?」  
「普通はそう考えるだろ」  
「そっか」  
 トーストとコーヒーの香りが部屋に漂い始める。  
「結構本気で怒ってくれたよね」  
「まぁな」  
「私が好きだから?」  
「う……」  
 顔を赤くしてうつむく。  
「ありがと」  
 ちとせが微笑む。  
「ねぇねぇ。いつから、私のこと好きだったの?」  
「気になりだしたのは、初めて会ったころから。ちとせと一緒に居たいって思ってた。ちとせと一緒にいるとさ、気持ちが楽になるんだ」  
「一緒にかぁ。えへへ、悪くないなぁ」  
「はい、お待ちどうさま」  
 仁がスクランブルエッグとトーストの載った皿をテーブルに置く。  
「じゃあ、本格的に好きになったのは?」  
「俺がちとせのこと好きだって気づいたのは、あの日の後」  
「あの日?」  
「酔って………で、その後にちとせが彼氏だって男つれてきた日」  
 
 仁がちとせを好きだと認識するきっかけを作った日。  
 夏休みもあと2日で終わりとなった日。  
「はぁ。ごめんね」  
 水を飲んで一息つき、仁の方に向かって言う。  
「いや……いいよ」  
 夜遅くに遊びから戻った仁を待っていたのは、アパートの階段に座っていたちとせだった  
 手にはバックと缶ビールを持ち、泣いていたのか目を真っ赤にしていた。  
 以前から酔って部屋に乱入はよくあった。  
 今回も同じだろうと思い、仁はちとせを部屋に招いた。  
「大丈夫か?まだ目が赤いぞ」  
「平気平気」  
 ちとせは手でパタパタと自分の顔を仰ぐ。  
 そして、そのままベッドへ倒れこむ。  
「でも、仁くんが早く帰ってこないから、外でビール3本もあけちゃったじゃない」  
「俺のせいかよ。部屋の鍵でも無くしたのか?」  
「うぅん。かばんの中にあるよ」  
「なら、自分の部屋いればよかったじゃんか」  
 ちとせは枕をぎゅっと抱きしめると、上目遣いで仁の方を見る。  
「一人で居たくない日もあるの。一緒にいて」  
「え?」  
 仁の返事も聞かず、ちとせは起き上がるとバックから一本の透明なビンを取り出す。  
 はられたラベルには泡盛の字が書かれている。  
「さ、のも。仁くん、明日はお休みだよね」  
 そう言って、手近にあったコップに泡盛を注ぐ。  
「酒は」  
「初めて?」  
「じゃないけど。あんまり強くないし」  
「大丈夫。飲みやすいから」  
 先ほどまでの暗い表情から一転して笑顔のちとせ。  
 別なコップにも注ぎ、自分で持つ。  
「じゃあ、乾杯。ほら、コップ持って」  
「か、乾杯」  
 半ば押し切られるかたちで酒宴ははじめられた。  
 酒を飲みながら他愛のない話をして、ほどよく酔いが全身に回ったころ、ちとせがポツリと言った。  
「お見合いってしたことある?」  
「お見合い?まさか」  
「だよねぇ。私さ、この夏休みに両親のところに帰ったのね。そしたら、急にお見合い話もってきてさ。  
 親の面子だってあるし、、嫌だったけどお見合いに出席することとなったの」  
 コップの酒を一気にあおる。  
「そしたらね!相手の男って、なんかチャラチャラしててお見合いなのにアロハ着てくるのよ!!  
 こっちは美容室行って、服だって結構高いの買ったんだから。  
 しかも、なんかエロい話ばっかりしてくるし。最悪だったの。だから、持ってたカバンで引っ叩いたのね。  
 そしたら、鼻血吹いちゃって。ママに言いつけてやる!!とかなんとか言っちゃってさ、傑作だったわ」  
 爆笑しているちとせ。  
 仁もなんとなく、ちとせの立場や心情がわかってきて、階段に一人でいたのがわかった。  
「電話したらお父さんには怒られるし、もう、どうにでもなれって感じでさ」  
「それでヤケ酒?」  
「ヤケにはなってないけど。でも、そうかもね。ごめんね。私なんかにつき合わせちゃって」  
「俺は構わないけど」  
「ありがとう」  
 
 ちとせが立ち上がり仁の隣に座りなおす。  
「お見合い相手が仁くんなら、よかったのになぁ」  
 そう言って、しなだれかかってくる。  
 仁の鼻腔をくすぐるちとせの甘い香り。  
 襟元から見える白い肌とふくらみ。  
 酒のせいも相まって、仁の顔が一気に上気していくのがちとせにはわかった。  
「ふふっ。どうしたい?」  
「………抱きたい」  
 それだけ言うと、仁はちとせを抱きしめた。  
「いいよ……やさしくしてね」  
 仁がちとせの胸をたどたどしく揉み始める。  
 乱暴ではないが、どこかぎこちない。  
「仁くん。ひょっとして初めて?」  
 ちとせが耳元でつぶやく。  
 仁は照れ隠しのように、ちひろの服の中に手を入れて、直に胸を揉み始めた。  
「っん。ちょっと痛いよ」  
 仁は言葉に従うまま、包むように揉む。  
 いつの間にか、ちとせの服はめくれ上がり、白い乳房とそれを覆い隠すブラジャーが外気にさらされていた。  
「仁くん。ブラジャーとって」  
「え。えっと」  
 外し方は知っていたが、片手で外そうとしたのと酒のせいでなかなか外れない。  
「じゃあ、ちょっと離れてて」  
 ちとせは少しだけ仁を離すと、自分で手を背中に回しホックを外す。  
 ブラジャーはストンと床に落ち、形のいい乳房のすべてがあらわになる。  
「どう?」  
「綺麗」  
 その言葉に満足したのか、ちとせは笑みを浮かべる。  
 そして、自分の乳房を手に持ち首を下げて自らの乳首を吸う。  
「仁くんも吸いたい?」  
 小さくうなずき、子供のようにちとせに抱かれながらその乳首を口に含む。  
 両手のあいたちとせが、仁のペニスを握る。  
「んっ」  
 一瞬、仁がのけぞる。  
 それが気に入ったのか、ちとせは握ったそれを丹念にこすり始めた。  
 仁も胸を貪るように攻め立てる。  
 お互いの息が荒く、熱くなってくる。  
「ちとせ」  
「いいよ。挿れても」  
 仁はちとせの体をつかみ反転させる。  
 四つん這いになったちとせのお尻をつかみ持ち上げる。  
 後背位と呼ばれる体位だ。  
「いくよ」  
「うん」  
 仁は自分のペニスを握りちとせの体にあてがう。  
 勘だけを頼りに入れるべき場所を探しあて、腰に力をこめる。  
「ぁっ。仁くん、そこ、ちが」  
 ちとせの声は仁には届いていない。  
 あくまで喘いでいるようにしか見えては無い。  
「キツ」  
 奥に入れようとしても押し返される、そんな感覚を仁は味わっていた。  
 仁はさらに力をこめる。  
 ゆっくりと奥へ奥へと侵入していく。  
「ゃぁっ。ダメ、ヘンな………感じ」  
 仁の腹がちとせの尻を打つ。  
 完全に奥まで入った。  
 
「はぁ、はぁ………ちとせさん」  
「うぅぅ……馬鹿。ちゃんとよく見てよ」  
 振り向いたちとせの目には涙がたまっている。  
「え?」  
「仁くんが入れてるの、私のお尻だよ」  
「あ。ご、ごめん」  
「ぅぅ。まさか、お尻の初体験を奪われるなんて思わなかったよ」  
「痛い?」  
「今はそれほどでもないけど。なんか、気持ち悪い」  
「今、抜くから」  
 仁が腰を引いて抜こうとするが、狭くきついために一気に抜くことは出来ない。  
 ゆっくりとゆっくりと腰を引き抜く。  
「ひゃん」  
 ちとせの背がのけぞり、明らかに痛みや気持ち悪さとは違う声がこぼれる。  
「ひょっとして気持ちいい?」  
「そ、そんなわけないじゃない」  
 仁が少しだけ奥へと腰を動かす。  
「はぅっ」  
 ちとせの口からは吐息交じりの声が漏れる。  
「ちょっと」  
「ここを一緒にいじればもっとよくなるかな?」  
 右手をちとせのヴァギナのあたりへと這わせる。  
 そして、手触りでクリトリスを見つけ、それを指でつまみあげる。  
「ひっっ」  
 先ほどよりも大きくのけぞる体。  
「どう?」  
 仁の問いに、ちとせは何も答えない。  
「ぇ。ぁぁ。やぁ、ダメ」  
 ゆっくりと腰を動かし始める仁。  
 前後運動を繰り返しながら、クリトリスとヴァギナを手で攻める。  
 何度か出し入れを繰り返している間に、徐々に摩擦が少なくなり腰の動きが速くなる。  
「はっ、んっ、はっ、はっ………」  
 ちとせの声も明らかに変わった。  
 快感を感じ始めている証拠だ。  
「ちとせさん」  
「んっ、ちとせでいいよ。仁、ね、ん。もう、ダメ、あ、あ、あ、あっ」  
「ちとせ」  
「仁」  
 力を入れ、ちとせの体を持ち上げてペニスを奥まで押し込み、体内に一気に精子を放出する。  
 同時に、ちとせも震わせ脱力した。  
 ちとせはそのまま後ろに倒れこみ、仁がちとせを仰向けで抱きかかえる形となった。  
 萎縮したペニスが抜けると、アナルからは精子と腸物が混じったモノが流れ出てきた。  
「はぁはぁ………」  
 息を整え、見詰め合う二人。  
 何かを話たかったが、限界を超えた仁の体はそれを許さなかった。  
 暗転する意識。  
 仁が次に目覚めた時は部屋には誰もおらず、布団だけがかけられていた。  
「あれ」  
 テーブルの上に書置きがあった。  
『先に寝ちゃうのは男としてどうかと思うよ。でも、結構気持ちよかったから許してあげよう』  
 それだけが書かれていた。  
 それから1週間ほどは顔も合わすことが無く過ごし、久しぶりに顔を合わせた時には彼女の隣には仁の知らない男が居た。  
 
「結構ショックだったんだけどな。あれは」  
「ウソ」  
「ホントだって、顔に出さないようにするの大変だったし」  
 トーストを口に含みながら話す。  
「だったら言ってくれればよかったのに」  
「ん?」  
「だったら、それならそうだって言ってくれれば………私だってさ。本当はねあぁやって男の人と一緒にいたら妬いてくれるかなって思って」  
「へ?」  
「だって、私は仁のことずっと好きで、あの夜もすごく嬉しくて。でも、仁はあの夜、一回も好きだとか言ってくれないし、キスもしてくれないし」  
 半ば愚痴のような感じでつぶやき始める。  
「だから、ちょっと反応を確かめるためにしたのに、全然平気そうな顔してるし」  
「あ〜……やっぱ、言葉にしなきゃダメってことだよな」  
「そう。だね」  
 仁がちとせを横から抱きしめる。  
「ごめん。俺が不甲斐ないばっかりに……好きだ。愛してる」  
「私も。同じ気持ち。好きよ」  
 二人は口付けを交わす。  
「ねぇ」  
「ん?」  
「前に言った好きな人のなぞなぞってどういう意味?」  
「あぁ。ちとせは近くにいるけど、千歳って場所は北海道だから遠いだろ」  
「………寒い。寒いよ〜」  
「悪かったな」  
「でも、実はそうだったらいいなって、思ってた」  
 
「そういうちとせはいつから俺のことが?」  
「え?……教えてほしい?」  
「うん」  
 ちとせが明らかに明後日の方を向く。  
「こら」  
「だって。恥ずかしいし」  
 ちとせが立ち上がる。  
 その腕をつかんで引き寄せる仁。  
「最後までしてくれたら……教えてあげる」  
 ちとせが目をつぶり、口を差し出す。  
 唇を合わせ、仁はちとせを抱き上げる。  
「……やさしくしてね」  
 あの夜と同じ台詞。  
 仁はちとせをベッドの上におろし、ゆっくりと着ているものを脱がす。  
「ちとせ……愛してる」  
「うん」  
 ちとせのヴァギナに手を伸ばす。  
 そこはすでに湿り気を帯びており、滑り気のある液体が指につく。  
 仁はそこに顔をつけ、薄く開かれたソコに舌を這わせる。  
「んっっ」  
 たったそれだけの行為で、中から愛液があふれ出てきた。  
「仁。あのね、もう、大丈夫だと思う」  
 指を入れてみると、すんなりと入っていく。  
「ひゃっ」  
「うん。じゃあ、挿れるよ」  
「うん」  
 仰向けのちとせを上から覗き込む。  
「今度は間違えないでね」  
「大丈夫」  
 自分のペニスを握り、慎重にヴァギナへとあてがう。  
「ここ?」  
「うん。そう」  
 ゆっくりと、ちとせの中へと押し込む。  
 先を入れただけで絡みついてくるような感覚が仁を刺激する。  
「奥まで。最後まで」  
「わかった」  
 腰に力を入れ、押し入れる。  
 小さな抵抗を感じたがそれを力で押し破る。  
「ぁっっっ」  
 ちとせの目から涙がこぼれる。  
 口は歯を食いしばり、手はシーツをギュッと握っている。  
 
「ちとせ」  
「大丈夫」  
 仁が下を向き、その結合部を見ると、微かにシーツに血がにじんでいた。  
「ちとせ。初めてなのか?」  
「うん。えへへ。大学生にもなって初めてって、最近じゃちょっとヘンだよね」  
「どうして」  
「言ったよね。私は仁のことずっと好きで。仁にしかあげたくなったから」  
「でも、俺たちって今年会ったばかりなんじゃ」  
 ちとせは微笑む。  
「ううん。仁、この近くの三小行ってたでしょ」  
「え。うん」  
「私もね、小学校のころまでこの近くにいたの。  
 私が6年生のある日。友達がね、犬にほえられてて。私も助けに入ったけど、結局友達と二人で足がすくんじゃって」  
「あ。あの時の?」  
「へぇ。覚えてたんだ。うん。助けてくれたよね……あの時は本当に仁が王子様に見えたんだよ」  
「そっか。あの時の上級生って、ちとせだったんだ」  
「えへへ。驚いた?」  
「うん。でも、そのときから俺を……やば、すごい嬉しい」  
「高校のときとか、何回も当時の彼から迫られたりしたんだけどね。そのたびに、あの時の仁が思い出されちゃって  
 でも、今は、そのときにしてなくてよかったって、思ってるよ」  
「うん」  
「ねぇ。もう、痛み……ひいてきたら、動いていいよ」  
「え?でも、初めてなんだから、もう止めた方が」  
「大丈夫。ちゃんと決めてたから、初めての時も仁を気持ちよくさせてあげようって」  
「ちとせ……わかった」  
 仁がゆっくりと腰を引く。  
 ちとせからは愛液が溢れ出ているにもかかわらず、全くと言って滑らないほど膣壁が絡み付いてくる。  
「んっっっ」  
 ちとせが痛みに耐え、シーツを握る。  
 仁は少しでもそれをやわらげようと、体を倒して口付ける。  
「んっ」  
 舌をからませ、唾液と唾液が混ざり合う音が二人の耳には届く。  
「仁ぃ」  
「愛してる。ちとせ」  
 仁は腰の動きを少しだけ速くする。  
「うん。私も。ぁぁっ」  
「んぅぅ。ちとせ、俺」  
「うん。中でも大丈夫。安全日だから」  
「んっ。ぁぁぅ」  
 小さな声とともに、仁の体が一瞬震え、そのまま中に精子を注ぎこむ。  
「ぁぅ」  
「ちとせ」  
 仁はちとせの上に倒れこむ。  
「あは。何か幸せ」  
「俺も。初めてだ。こんな風に、誰かといると幸せだって思ったの」  
「私も……かも」  
 お互い見つめ合い、微笑み、口付けを交わした。  
 
「ねぇ。仁」  
「ん?」  
 ベッドで並んで寝ている二人。  
「これからも一緒にいてくれる?」  
「うん。小学生の時から待たせた分……ずっとな」  
「へぇ。仁にしてはかっこいいこと言うじゃん」  
「うあ」  
「冗談。うん。ありがとう……大好きだよ」  
 

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