最後の一枚を脱ぎ捨てる。  
 
 そして私は全裸になった。  
 
 ほぼ同時に聞こえる呻き声。  
 
 優しい私のお兄ちゃんの声。  
 
 大切な私のお兄ちゃんの声。  
 
 
 「うっ…ぐっ…こ…これは……?」  
 
 身悶えしながら目覚めたばかり・何故なら転寝している間に  
ビニールテープで両手を拘束しておいたから。  
 
 あらかじめこんな事を企んでいたワケではない。  
 
 ただ…最近疲れているようなので  
 
 "今までの御礼に何かしてあげたい"  
 
 と思っただけ。強いて言うならきっかけはソレぐらいだろう。  
 
 
 偶然にも今日の夕食は刺激物を避けて尚かつ疲れた身体に特化  
させた献立・ソレは通常以上に眠気を誘発するモノ。  
 
 そしてこの日、お兄ちゃんは業務用の幅広いビニールテープ  
を持ち帰っていた。しかもソレをテーブルに置いたたまま私の  
前で部屋にも戻らず炬燵に潜り眠ってしまった。  
 
 本当はそのまま起こさずに部屋に連れて行こうと思っていた。  
 
 しかし…こういった要素が重なったせいで私の中に潜む"何か"  
が覚醒したのだろう。  
 
 「おい…何の冗談だ…なぁ…早く…」  
 「お兄ちゃん、眼が覚めた?心配しないで…余計な事は考えなくて  
イイから…そのまま楽にして…。」  
 
 何時もと変わらぬ口調で私は歩み寄る。  
 
 少し苦しそうな体勢なのでとりあえずゆっくりと上半身を起こして  
あげる。そして私はそっと口付けする。  
 
 「うわっまさかっ…ん…んぅ…ぐ…く…ん…んぅ…」  
 
 素早く唇の奥目掛けて舌を滑り込ませ反論させる隙を与えない。  
そのまま私は貪欲にお兄ちゃんの唾液を貪る。  
 
 「ん…んぅ…コレがお兄ちゃんの…味…。」  
 「おまえ…一体どうしたって…あ…そんな…」  
 
 次に上着のボタンをゆっくりと外し胸を露にする。筋肉質で逞しい  
胸に頬を擦り寄せ乳首を舌先で弄ぶ。  
 
 「くっ…悪い冗談は…あっ…止め…ろ…あぁ!」  
 
 お兄ちゃんは普通の人より少しばかり力が強い方だ。身を仰け  
反らせる度に振り飛ばされそうになる。しかし私は決して負けない。  
しっかりとその身体を掴み離さない。  
 
 そうこうしている内に肌が少しずつ汗ばんできた。一旦動きを止め  
頬と耳をピタリとくっつけてみる。湿り気と温もり・そして激しい  
心拍音が私に伝わる。  
 
 「お兄ちゃんの身体…温かい…。」  
 「な…なぁ…お…落ち着け!何をしているか判ってるのか?もう…おい  
今度はな…あ痛たた…」  
 
 やや強引に首を掴みお兄ちゃんの目をじっと見つめる。  
 
 いけない…動揺している…私はこんなのを望んではいない。  
 
 お兄ちゃんを落ち着かせなければ…改めて少し強めの力でお兄ちゃんを  
抱き寄せる。  
 
 「御免ね…でも…いいんでしょ?さっきも言ってくれたよね…。」  
 「謝らなくていい!それより…この状況を説明しろ!!なぁ…お前  
は何を望んでるんだ???」  
 
 私は率直に答える。  
 
 「もちろん…お兄ちゃん。お兄ちゃんの身体…お兄ちゃんの精神  
(こころ)…お兄ちゃんの全て…ソレ以外に何が有るの?」  
 「ある意味喜んでイイのかもしれないが…おまえ…ソレがどういう  
事か判っているのか?」  
 「うん。本当は許されない事よね…でも…コレだけは譲れない。」  
 「頼む!もう一度考え直せ!!」  
 「嫌!そんなの嫌!!ねぇ…私達…兄妹だけど…そんなの…理由  
にしたくないの!!」  
 
 今度は逆に私が興奮してしまう。  
 
 このままでは事態は悪い方に進む…何かイイ方法は…私が本気  
だって事を確実に証明しなくては…。  
 
 そうなると…やや時期尚早だが次に進めるしかない。中途半端な  
説得はかえっていけない。我が身で証明する事にしよう。  
 
 「嘘じゃないよ…そうでないと…こんな事…出来ないよね…。」  
 「うわぁあぁ!駄目だぁ!!ソコは…あ…頼む…もう…」  
 
 再び抵抗されるが構う事無く私はベルトを外しファスナーを下ろす。  
 
 「お兄ちゃん…もう…大きくなってる…あぁ…よかった…。」  
 「見るな…あぁ…コラッ…イイ加減に…あ…あぁ…触るな!」  
 「ちゃんと…私を一人の女の子だって…見てくれてたのね…。」  
 「馬鹿!そんなんじゃ…」  
 「嘘だ!じゃあ…何でこんなになってるの?ねぇ??私…未だココは  
全然触ってなかったよねぇ???」  
 
 お兄ちゃんは反論と同時に足をバタつかせる。だが私はソレを想定して  
ジーンズを全て剥ぎ取らずに途中までズラす程度に留めておいた。お陰  
で両足を束縛された状態になり非常に都合がいい。  
 
 「じゃあ…始めるよ…ん…んぅ…」  
 「んぁあぁ…そんな…汚い…止め…あ…止めてく…う…んぉ…おぉ!」  
 
 躊躇いは無い。そのままゆっくりと付け根まで銜えてみる。満遍なく唾液  
で濡らしてから一旦口を離す。  
 
 「平気よ…お兄ちゃんのだったら…。それに…汚いのなら尚更…私が綺麗  
になるまで舐めてあげる。」  
 
 言い終わってから各箇所を丹念に舌先で舐め回す。時折お兄ちゃんが大きな  
声を挙げて反応するのを確認してから再び別の場所を攻めてみる。  
 
 幾度かソレを繰り返し何処でどう反応するか一通り頭の中に叩き込む。  
 
 「これで判った。お兄ちゃんの気持ちイイ場所は…先ず…」  
 「んあぁ!」  
 「どう?コレでイイの??じゃあ…次は…」  
 
 再び亀頭をゆっくりと口で包み込む。付け根に唇が届くようにグッと全てを  
口腔内部に納める。  
 
 「んおぁあぁ!は…離せ…んぁ…馬鹿…んぅ…ぐぉ…お……くっ…」  
 
 念の為に銜えたまま先ほど記憶しておいた場所を舌先で緩やかに撫でて  
みた。いい具合にお兄ちゃんは全身で答えてくれる。決して言葉で返事して  
くれるワケではないが時折身体をピクリと仰け反らせてくれる。  
 
 ソレは下手な褒め言葉よりも私にとって嬉しい事だ。  
 
 このままお兄ちゃんの両足を掴み往復を開始する。  
 
 「がぁ…駄目だ…動くな…あ…う…こんな事…お…あっ…」  
 
 定期的にその動きを中断・時折チラリと表情を伺ってみる。同時にお兄ちゃん  
と目が合う。ソコで私は改めて表情を読み取り、そして動きを再開する。  
 
 「お…お願いだ…もう…うおぉ!く…ん…んあぁ!!」  
 「ん…お兄ちゃん…気持ちいいのね?」  
 「違う!違う!!こんなの…ふぁ…あ…ソコを突くな…あぁ!」  
 
 私は一旦口を離す。お兄ちゃんが必死に否定するのでついついコチラも意地悪  
をしたくなり尿道口を指先でグリグリと撫でてみた。  
 「嘘だぁ…じゃあ…何でこうなってるの?ほら…ソコからでも見えるよね??」  
 「知らん!俺には何の事だか…あ…そんな…」  
 
 既に先端から滲みでた液体を掬い上げ、お兄ちゃんにも見える位置まで指先を  
近づけてからゆっくりと捏ねてみる。  
 
 「コレ…私のツバじゃないよね…じゃあ…一体…何かなぁ?」  
 「言うなぁ!!」  
 
 必死に目を反らし絶叫するお兄ちゃんに再び身を乗り出して私は耳元で囁く。  
 
 「恥ずかしがらなくていいの…もっとリラックスして…。」  
 「そんな…何で…何で俺なんだ…頼む…もう…」  
 
 既に瞳から数滴の涙が溢れている。  
 
 ちょっとやりすぎたかな…。少しだけ後悔する。でも決してお兄ちゃんを虐げる  
つもりは無い…だからこそ…中断するのはかえっていけない。  
 
 とりあえず今は中途半端な言葉を模索するのは止めよう。純粋にこの気持ちを  
伝える為に私はお兄ちゃんの首筋に軽くキスをして呟く。  
 
 「お兄ちゃん…大好き…。」  
 
 そして私は全身を後退させて目的の行為を再開する。  
 
 「うっ…く…くそっ…う…あ…」  
 
 抵抗は尚も続く。だが私はめげない。  
 
 「くあっ…あ…ソコは…あぁ…駄目だ…頼む…」  
 「どうして…何で…こんな…」  
 「止めろ…俺の言う事が聞けな…あぁ…」  
 
 何度も懇願してくるが、やがてその声も弱まっていく。そろそろなのか…。   
 
 私は徐々に動きを加速させる。  
 
 「もう…持たない…くそぉ!」  
 
 一際大きな声での絶叫・ソレが合図になりお兄ちゃんは私の中で射精する。  
 
 大きく腰を痙攣させるが私は決して離れないように必死にしがみつく。  
 
 不快な味と臭気が私を襲うが大丈夫・屈する事なく全てを飲み干した。  
 
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  
 
 お兄ちゃんが肩で大きく呼吸している。もう一度私はその逞しい胸に  
ベッタリと張り付くようにして抱きしめてみる。  
 
 先ほど以上の激しい心拍が聞こえる。  
 
 「いっぱい出したね…お兄ちゃん…。」  
 「違う…違うんだ!こんなの…違うんだ!!」  
 「お兄ちゃん…泣かないで…じゃあ…続けるよ。」  
 
 私は起き上がり今度はお兄ちゃんの胸に腰掛ける。  
 
 「うっ!」  
 「あっ御免!体重掛けちゃった?」  
 「いや…そうじゃない…一体…あ…そんな…」  
 「ほら…。」   
 
 既に充血した秘所を指で軽く拡げる。  
 
 「この角度なら見えるでしょ?」  
 「う…うぅ…」  
 「ねぇ?コレで判った??本気じゃなきゃ…私のココ…こんな風には  
ならないでしょ???」  
 「くっ…駄目だ…コレ以上は…」  
 
 お兄ちゃんは視線を反らすが私はすかさず首を掴み再び顔を近づける。  
 
 「お兄ちゃん、ずるいなぁ…今度は私の番でしょ?」  
 「こんなの…おかしい…うぷっ!」  
 
 反論を遮る為に強引に鼻先を密着させる。お兄ちゃんが呻きながら必死  
に顔を離そうと悶えるせいでグチュグチュと下品な音が周囲に響く。  
 
 仕方がないので一度忠告しておく事にする。  
 
 「お兄ちゃん、終わらないと…離してあげないよ…。」  
 「う…く…ほ…本当だな?終わったら…俺を解放してくれるんだな??」  
 「うん、嘘じゃないよ。さぁ…続けて…。」  
 
 そのまま何も言わずお兄ちゃんは私の秘所に吸い付く。  
 
 「ん…あぁ…そう…そのまま…あぁ…」  
 
 舌先が恐る恐る陰唇に触れる。掬い上げるようにして入り口を舐め始めた。  
 
 私の感じる場所が判らないのか…ぎこちない動き。正直に言えば自分自信  
で触っている方がもっと気持ちいい。  
 
 だが…  
 
 “今…私は恥ずかしい所をお兄ちゃんにしゃぶられている…”  
 
 そう思うだけで快楽は倍増する。今にも気が遠くなりそうな感覚に襲われ  
倒れそうになるが、体勢を整え必死に堪える。  
 
 「イイの…もっと…中も…あぁ…」  
 
 舌先が内部に侵入する。  
 
 「あぁ!ソコも…あん…んぁ!!」  
 
 その刺激に耐えきれずついに私は倒れ込む。  
 
 「わぁ!お…おい…大丈夫か?」  
 
 気遣う声に即答するかのように私は素早く起きあがる。  
 
 私も息切れが激しい…少し立ち眩みがする。  
 
 だが…終わりではない…早く続けなければ…私の我儘で始まった事とは  
いえどお兄ちゃんをコレ以上焦らすつもりはない。  
 
 「未だよ…さぁ…」  
 「うわ…頼む…ソレだけは…あ…握るな…」  
 「駄〜目!もう遅いの!!」  
 「止せぇ!いけない!な…何で…俺なんだ???」  
 
 私は満ち足りた笑顔で答える。  
 
 「何でって…お兄ちゃんだからイイのよ。」  
 「そんな…おまえ…どうしたんだ…おかしくなっちまったのか…。」  
 「そうかも…もしかしたら私…もう狂っているのかも…でもイイの…絶対後悔  
なんかしない…。私…ずっとお兄ちゃんの事を見ていた。もしかしたら…もっと  
前からこうなる事を望んでいたのかも…。」  
 
 答える間にも私は準備を進める。先端を宛い挑発するかのようにグリグリと  
膣口周辺を弄び先ほど同様の下品な液音を大きく立ててみる。  
 
 「お兄ちゃん…私を見捨てず…ずっと育ててくれて…ありがとう。」  
 「そんなの当たり前じゃないか!」  
 「私はずっと何も出来なかった…けれど…今なら…」  
 「馬鹿、な…何を言い出すんだ?俺は見返りを求めてお前を養っていたワケ  
じゃない!頼む…頼むから…もう一度考え直すんだ!!」  
 
 尚も抵抗の言葉が続く。しかし私の決意は変らない。  
 
 「お兄ちゃん…さっきも言ってくれた筈よ…。」  
 
 ゆっくりと挿入を始める。ソレに気付いたお兄ちゃんの悲鳴染みた反論は更に  
激しくなる。   
 
 「あ…あれは…こんな事を言ったワケじゃな…あぁ…駄目だぁ!」  
 「んぅ…あ…あぁ…はぁ!は…入っちゃたよ…」  
 「うぁあぁ!と…とうとう…やっちまった…くそ…くそぉ…俺は…何を…」  
 
 付け根まで飲み込んだ瞬間に痺れるような感覚が全身を貫く。私は陶酔した  
まま暫く動けない。  
 
 「う…嘘だ…こんなの…」  
 「い…言ったでしょ?終わるまで離さないって…さぁ…」  
 「く…くそぉ…早く…終わってくれ…お願いだ…」  
 
 少しづつお兄ちゃんが動き始める。私もその動きに合わせる。お互いに“始めて”  
だという事は充分承知している。そのせいか今ひとつ緩慢な往復・ココまできて  
未だ私に気遣ってくれているようだ。  
 
 いけない…安心させなくては…もっとお兄ちゃんに楽しんでもらわなくては…。  
 
 「んぅ…だ…大丈夫…もっと動いて…イ…イイのよ…」  
 「そんな…痛くないのか…。」  
 「御免ね…お兄ちゃんの事想像しながら…触っていたら…破けちゃった…だから  
もう…遠慮しないでイイの…もっと…動いて…。」  
 
 事実だ…決して嘘ではない。どうしようもない気持ちを紛らわせる日々が幾度と  
なく続いていた。  
 
 だがソレも今日でお終い・夢が叶ったのだ。  
 
 嬉しさに泣きそうな気持ちを堪えながら改めて確認してみる事にした。  
 
 「どう…気持ちイイの?」  
 「そんな…事な…い…んぁあぁ!は…早く…早く…く…うぅ…」  
 「ねぇ…答えて…隠さなくてイイのよ。」  
 「もう…言うな…おかしくなりそうだ…あ…あぁ…早く終わらせ…んおぉ!」  
 
 私には判っていた。お兄ちゃんは決して覚悟したワケではない。あくまでもこの  
許されない行為を“終わらせる”事に専念したいらしい。  
 「お兄ちゃん…何か勘違いしていない?」  
 「ど…どう…いう…事…だ…あぁ…うぁっあぁ…」  
 「終わらせるのは…私じゃなくて…お兄ちゃんの方よ。」  
 「うわぁ!そ…そんな…話が…違う…うぅ…」  
 
 やはりお兄ちゃんは勘違いしていた。  
 
 「御免ね…紛らわしい言い方で…。」  
 「謝らなくてイイ!そ…それより…離せ…ソレだけは…いけない…」  
 「駄〜目!私だけ何回イッても…お兄ちゃんが“終わる”まで…絶対に止めない  
からね!!」  
 
 「ゆ…許してくれ!妹に膣(なか)出しなんて…頼む…なぁ…あぁ!!」  
   
 再び大きく全身を揺さぶり抵抗が始まる。すかさず私はしがみつく。  
 
 「いいの…そんなに深刻にならないで…ねぇ…ソレより…」  
 「頼む…何も言うなぁ!あぁ…駄目だ…身体が…もう止まらねぇ…何でだ…」  
 「良かった…気持ちイイのね…」  
 「もう…許してくれぇ!気が狂いそうだ…あ…あぁ…くそぉ!!」  
 
 動きが激しくなる。  
 
 そろそろお互いに限界に近づいている。  
 
 「さぁ…お兄ちゃん…」  
 「も…もう…限界…だ…離せ…このままじゃ本当に…んぅ…くぅ…」  
 
 唇を遮り、そしてお互いの繋がった場所が離れないように抱きしめた両腕の力を  
更に強くする。  
 
 「お兄ちゃん…好き…大好きなの…あっあぁあぁ!!!」  
 「うっ…あぁっ…あぁあぁ…あぁあぁ!!!」  
 
 激しく二人は下半身を痙攣させる。  
 
 そして…。  
 
 
 
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  
 
 
 
 「お…おい!どうしたんだ???」  
 
 唐突に現実世界に戻される。  
 
 「え…お兄ちゃん…あ…あれ…?」  
 「何だ…悪い夢でも見ていたのか?」  
 
 事態を把握すると同時に虚無と嫌悪が私を襲う。羞恥に耐えられず顔を両手で  
覆い尽くす。  
 
 「待たせて悪かったな。スケジュールの手違いで急な残業させられてな…って  
お前に仕事の話してもしょうがないか…ソレより…わざわざ待っていてくれたん  
だな?」  
 「え?う…うん!あ…あ…」  
 
 炬燵から這い出すと同時に下着に不快な湿り気を感じる。  
 
 「わ…私…シャワー…」  
 「あぁ…そうした方がイイな。寝汗が酷いようだし…。」  
 
 
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  
 
 
 「よりによって…あんな酷い夢…うわぁ…大変な事になってる…。」  
 
 恐る恐る下着を脱ぎ捨てる。念の為にあらかじめ放り込んでおいた洗濯物の奥  
深くへソレをねじ込み見られないようにしておく。  
 
 全身の火照りを早く鎮めたい…一度は手がアソコに伸びたが、今は優先するべき  
事が有る。我慢して早々とシャワーを済ませる事にした。  
 
 
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  
 
 
 「あれ?未だ食べてなかったの?」  
 「何言ってるんだ?おまえも未だなんだろ??」  
 「え…でも…お腹減ってるんでしょ?無理して合わせなくても…」  
 「せっかくお前が待ってくれたのに今更そんな事出来るか?そういうお前だって…」  
 
 
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  
 
 
 何年も前から続いている二人っきりの夕食の一時。  
 
 「そろそろ給料日だし…なぁ、何か欲しいモノは有るか?」  
 「う〜ん…そろそろお米が残り少なく…」  
 「馬鹿!そうじゃなくて…お前自身が欲しいモノだよ。タマには贅沢したってバチは  
当たらないって!!」  
 「えぇ?でも…今はイイ。」   
 「まぁ気が付いたら言ってくれ。妹らしく俺に何かお強請りしてみるのも悪くないぞ。  
まぁ…俺が出来る範囲でだがな…。」  
 「そんな…未だ私も養ってもらっている身だし…」  
 「そんなの気にしてどうするんだ?はぁ…お前って…全く欲が無いな…。まぁ…ソレ  
でこそ何時ものお前なんだが…引っ込み思案で謙虚なだけじゃ社会に出ても損する  
からたまには我儘を言ってみろ。」  
 
 
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  
 
 
 「Q熱患者発生…ほぉ…」  
 
 お兄ちゃんは今朝読みそびれた新聞に目を通していた。  
 
 「急熱?」  
 「急な発熱の方じゃないぞ!Query Fever…クェリー熱の略語だ!!」  
 「何…ソレ…聞いた事無い…。」  
 「まぁ症例が少ないからな…ペットやダニから感染するリケッチア性の熱病だよ。  
死亡する事は滅多に無いそうだが…最近じゃ国内でも患者が出ているそうだ。」  
 「ちょっと怖いなぁ…ソレって…そんなに簡単に感染するの?」  
 「ハッキリした事は判らない。俺も医者じゃないし…ただ…過剰なペットとの触れ  
合いには要注意だとか…。」  
 「う〜ん…“過剰な触れ合い”ねぇ…こぉ〜んな風なのも?」  
 
 ココぞとばかりに私はお兄ちゃんに抱きついてみる。  
 
 「うわぁ!ちょっと…あ…んぁ…脇腹は…止せ…ぬおぉりゃ!!」  
 「きゃあ!もぉ…今度は…ココだ!!」  
 「くそ…コラッ…イイ歳して…わぁ!」  
 
 ひとしきり騒いだ後に二人で仲良く床に寝そべる。  
 
 「全く…こういう事はなぁ…他に誰かイイ男を見つけて…」  
 
 「そんなの…やだ…。」  
 「え?」  
 「いやぁ!そんなの…いやぁあぁ!!!」  
 
 私は自分でも信じられない大きな声でお兄ちゃんの言葉を拒絶する。  
 
 「お…おい…何だ…」  
 「え…あっ…ご…御免!」  
 「いや…イイんだ…。」  
 
 気まずい空気を振り切る為に台所に向かい漬け置きしておいた食器を洗う事にした。  
 
 
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  
 
 
 作業終了後、改めて居間に向かう。  
 
 するとソコには炬燵でリモコンを握り締めたまま転寝しているお兄ちゃんがいた。  
   
 「あ〜あ!まただ…もう…。」  
 
 さすがに今日は人の事は言えないが…頻繁に見かける光景だ。  
 
 そして…次に目にしたモノは…。  
 
 ビニールテープだ…。  
 
 お兄ちゃんが持って来た…先ほどの悪い夢に出てきたのと全く同じ形状。   
 
 胸が高鳴る。  
 
 いけない…そんなの…駄目…流されては…。  
 
 「と…とりあえず…」  
 
 気恥ずかしさに囚われ私はソノ場を離れる。  
 
 使用中の洗濯機と給湯器を停止する。お兄ちゃんが静かに眠れるように雑音を  
可能な限り減らす…僅かに可能な私なりの気遣いだ。  
 
 そのままお兄ちゃんの隣に鎮座してその寝顔を暫く眺める。  
 
 束の間の…代え難い幸せな一時だ。  
 
 
 「お兄ちゃん…決めたわ…。」  
 
 
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  
 
 
 次に気が付くと私は仏壇の前に立ち両親の遺影を眺めていた。  
 
 
 
 「許してくれるよね…私…お兄ちゃんに…何か御礼がしたいの…けれど…コレしか思い  
浮かばないの…。私は大丈夫、お兄ちゃんも…ちゃんと“許可”してくれた…。」  
 
 
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  
 
 
 私は剥離音を殺すようにそっとビニールテープを引き伸ばす。  
 
 
 
 
 「お兄ちゃん、さっき言ってくれたよね?“我儘を言ってみろ”って…。」  
 
 
 
 
 
 −−−THE END−−−  
 

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