5.『MAD FOREST』  
 
 
 黒煙と炎が吹き乱れるビルの屋上は、まさに悪夢のような光景だった。  
 ならば、目の前にいる女も悪夢の存在に違いない。っていうか悪夢であってくれ。頼むから。  
 だが、炎の熱さが、自分が決して幻じゃないと自己主張するように、  
あの女も紛れもない現実の存在だった。  
 あたしと同じ顔、あたしと同じ姿、あたしと同じ声、あたしと同じ視線――  
 シスター・ゲルダの変身術は完璧と言えた。  
 それにしても……自分と全く同じ姿と御対面するのは奇妙な気分だぜ。  
あたしってあんなに胸が大きく見えるのか。もう少しサラシをきつく絞める事にしよう……  
「え、え? Mさんが……分裂!?」  
 人をゾウリムシみたいに言わないでよS君……  
「S君、物陰にでも隠れてな」  
「S君、あたしの傍にいらっしゃい」  
 あたしとシスター・ゲルダは同時に言った。  
「え? え? えーと……うわぁ!!」  
 まだオロオロしているS君を、とりあえず安全な所にまで蹴り飛ばす。  
そこで大人しく気絶でもしていてくれ。  
「ひ、ひどい……がくっ」  
 そのタイミングで、シスター・ゲルダは襲いかかってきた。  
 ぎいん!  
 錫杖と錫杖が交錯する。  
 鍔迫り合いの状態でにらみ合い、力の限り押しまくる。  
だが、両者の腕力も力点をずらすテクニックも完全に互角だった。  
突然、バネが弾けたように飛び離れ、同時に屋上の端に降り立つ。  
駆け出すタイミングも同じだった。  
しばらく様子見のように並走して、互いの姿が炎に隠れた刹那、  
再びあたしとシスター・ゲルダは激突した。  
下段の払いから上段の突き。  
中段の袈裟懸けから振り下ろし。  
打ち払い、柄押し、連続突き、乱れ払い――  
全て攻撃と防御が絡み合い、錫杖が相手に触れる事はなかった。  
 ちくしょう、こいつあたしの杖術まで完璧にコピーしてやがる!!  
 ならば、これでも食らえと唇を尖らせるが――向こうも同じタイミングで同じ表情をしやがった。  
 空中で激突した針同士が派手な火花を飛ばす。  
一度に数千本の針を放っても、一度撃った針が時間を置いてもう一度襲いかかる罠針を使っても、  
直接的に針に封じた魔法をぶつけても、全てが同じ結果に終わった。  
くそっ、針術まで互角かよ!?  
 それからあたしとシスター・ゲルダは激しく錫杖をぶつけ合い、隙を見て針を撃ち合ったが、  
その全てが互いに触れる事はなかった。  
 や、やり辛い……自分と同じ姿、技、能力を持つ相手と戦う事が、これほど厄介とは思わなかった。  
お互いの戦法もその攻略法もわかっているので、決定打が全然出ないのだ。くそっ、このままじゃ千日手だ。  
「中々使い勝手の良い体だ。  
体中に埋め込まれた魔法針でドーピングしているようだが、運動能力も反応速度も申し分ない」  
 右手を目の前でコキコキ鳴らしながら、シスター・ゲルダは小憎らしく呟いた。  
「だが、この格好では動くと胸が揺れて痛いぞ。ちゃんとブラジャーを身に着けろ」  
「うるせぇ、和服にブラは邪道なんだよ。これだから西洋人は無粋だって言うんだ」  
「……貴様も西洋人だろうが」  
 吐き捨てるシスター・ゲルダの瞳が、金色に輝いた……って、やばい!!  
 シスター・ゲルダが何も無い方向に向って針を放つ。  
「ぐっ!」  
 よろめいた。  
 右足の太ももに深々と突き刺さった針は、  
付与してある火炎魔法を発動させてあたしの足を内側から焼き尽くそうとしていた。  
幸いにもそれは『あたしの術』なので簡単に消す事はできたが、ダメージを受けた事には変わりない。  
 それよりも、さっきシスター・ゲルダが針を撃った地点は……あたしが10秒前にいた場所だ。  
 あのクソアマ……あたしの影踏みまでコピーできるのか!!  
 
「うむ、これは便利……というよりズルイ能力だな。実に卑怯極まりない」  
「うるせぇ!! 今度から金取るぞ!!」  
 あまり攻撃の掛け声には相応しくなかったが、とりあえずあたしも影踏みによる反撃を試みた。  
どうせ回避不能だと理解しているのか、シスター・ゲルダに妨害しようという動きは見られない。  
視界が急速に金色に濁る中、設定時間は3分前、  
ネズミの死体が乗ったドラム缶に変身しているシスター・ゲルダに、爆破の術を付与した針を撃ち放つ。  
狙い違わず命中し、シスター・ゲルダの右肩は真紅の花火と化して吹き飛んだ。  
「ぐっ!?」  
 ……あたしの右肩も、同時に。  
 なっ……なにぃ?  
 よろめきながら押さえた右肩からは、間違い無くあたしの針術による爆痕があった。  
 こいつは……まさか……  
「完璧に似ているものは完全に同じものである――変身術の基礎理論だ。  
今の私を攻撃する事は、自分自身を傷付けるに等しいと思え」  
 御親切にもシスター・ゲルダ本人が説明してくれた内容は、あたしの最悪の想像を裏付けるものだった。  
「ちょっと待て、じゃあなぜお前が攻撃した時は大丈夫なんだよ」  
「私は貴様じゃない。なぜ貴様を攻撃して私も一緒に傷付く義理があるのだ」  
「なぁにが卑怯だ!! 手前ぇの方がよっぽど卑怯じゃねぇか!! しかも何だかありがちだし!!」  
「ありがちで卑怯というのは、効果的で強いという事だ」  
 ……確かにおっしゃる通りだよ、ちくしょうめ。  
 それからのあたしは防戦一方だった。こちらからの攻撃はあたし自身もダメージを受けるのだから、  
事実上、あたしの攻撃は完全に封じられたわけだ。  
そのくせ、シスター・ゲルダの攻撃は普通にダメージとなるのだから、  
こちらはひたすら受けに回るしかない。  
 不幸中の幸いは、相手の攻撃があたしの攻撃方法そのものなので、  
見切るのは比較的容易って事ぐらいだろう。だが、このままではジリ貧必死だ。さて、どうするか……  
「ふむ……埒が開かないな」  
 突然、シスター・ゲルダの猛攻が止んだ。向こうは肩に多少の傷を負っているだけだが、  
こちらは満身創痍の天然見本だよ……くそったれ。  
「人払いもそろそろ限界だ。決着と行こう」  
 すっ……と挑発するように突き立てられた人差し指。  
その白魚のようなあたしの指(のコピー)が、皺だらけの老人のそれに変化するのを、あたしは確かに見た。  
「!?」  
 影踏みの未来予知が無かったら、間違い無く即死していただろう。  
 突然、指先から放たれた青白い電撃が、凄まじい勢いであたしを襲った。  
いや、電撃なんて生易しいものじゃない。  
一千万ボルトの電圧にも耐えられる防御用の針を全て一瞬で破壊した稲妻は、  
触れた物質全てをプラズマ状態へと分解し、  
青白いイオンの輝きを放つ巨大な稲妻の爆発を夜空に轟かせた。  
恐ろしいのは、島1つ蒸発させるほどの高出力の電撃攻撃にも関わらず、  
ビルの屋上そのものには焦げ目1つ生じさせなかった事だった。呆れるほど凄まじい魔法制御能力だ。  
「……くおぉ……お……」  
 全身から白い煙を昇らせながら、あたしは力無く片膝を付いた。  
黒袈裟は黒焦げ袈裟と化し、錫杖も半分溶けている。  
かろうじて直撃は避けられたものの、今の一撃で一気にあたしはボロボロになってしまった。  
 
 な……なんだこれは!? あいつは電撃魔法の使い手でもあったのか?  
だが、シスター・ゲルダがこれほどの力を持つ電撃使いだったなんて話は、一度も聞いた事がないぞ!!  
「これは今から80年前に活躍していた、世界最高位の雷術師の技だ。以前、彼に触れた事があってな」  
 なにぃ……いや、ちょっとまて。それは……  
「ちなみに、これは今から150年前に世界最強の名を欲しいままにした重力使いの技だ」  
 シスター・ゲルダの指が、今度はグロテスクな刺青だらけのものに変わる。  
 刹那――  
「ぐぉおおおおおおお―――!?」  
 潰れたカエルよりも惨めに床に体を広げたあたしは、呻き声を漏らす事しかできなかった。  
体の上に体重数万トンの巨人が腰を降ろしていると考えればいい。さっきの電撃使いの時も同じだが、  
こういう術に対抗する為の力を持つ呪的防御の品をあたしも装備していたにも関わらず、  
それをほとんど無効化するほど強力な術だった。  
「こ……れ…は……」  
 呻くあたしに、あたしの顔が冷たい眼差しを向ける。  
「私はかつて変身した者の力を、再びその姿に変身する事によって、いつでも再現できるのだ。  
私が今まで触れた事のある退魔師や戦闘能力者の数は千人を超える。  
私と戦う者は千人以上の退魔師達と同時に戦うのに等しい。これが変身術の極意だ」  
「……自分…の……能…力を……敵に……話…す……のは……やめ……た……方が…いい……ぜ……」  
 シスター・ゲルダは少し困ったように自分の額を突付いた。  
「ふむ……なぜわざわざこちらから、自分の力を解説してしまったのだろうか?  
やはり変身中の姿が悪いようだな」  
 やかましい、余計な事言ってんじゃねぇ。  
 あたしの悪態もそこまで。再びシスター・ゲルダの指がこちらに向けられた。  
その指先は不定形生物のようにグニグニ蠢いている。  
「さて、どうやってとどめを刺そうか……肉体を宝石にでも変えるか?  
精神を絶対零度に凍結封印するか? 面白い能力はまだまだあるぞ」  
 余裕ぶった態度にも、あたしは何も言い返せなかった。  
 ちくしょう……今度こそ、チェックメイトってやつだ。今のあたしの力では、  
あの反則的な能力への対抗策が全く無い……それは残酷な真実だった。  
 唯一、対抗策があるとすれば、“食屍鬼”になる事ぐらいだ。  
あの変身術が如何に恐るべき能力だとしても、人の身では邪神の力までは再現できないだろう。  
それが可能なら、向こうがとっくにやっている筈だ。  
 だが、こうして虫の死骸1匹落ちてない状況では、その案も空論に過ぎない。  
 ああ……どこかに死体でもあれば……  
あの地下室の時みたいに、都合良くその辺に転がっていれば全ては解決するんだが……  
 ……そう、死体があれば……  
 ……死体……  
 ……死体……  
 ……死体?  
 そうだ……確かに今は死体が無い……  
 しかし、これから死体が生まれるじゃないか――!!  
「真実に……」  
 とどめの一撃が叩き込まれたのは、次の瞬間だった――  
 
 ――が、  
「……?……ぁ……きゃぁ!?」  
 そんな可愛い悲鳴を上げるなよ。今はあたしの姿なんだぞ。  
 あたしにとどめを刺したはずの右手が、  
腕の付け根から何かに食い千切られたように消滅しているのを見て、  
シスター・ゲルダは嘘偽りの無い驚愕の表情を浮かべた。  
『……生きてるあたしは、どんな味だ?』  
 そんな姿を下から見上げているのは、死者の肌に獣の牙爪と耳尾を持つ、黒髪金目の――  
「“食屍鬼”!? バカな――」  
 
 ばくん  
 
 木の葉のように宙を舞うシスター・ゲルダ。  
 屋上の端を飛び越えた彼女は、しかしかろうじて左手で縁にしがみついて、  
奈落への落下を間一髪で止めた。  
 右手と下半身を食い千切られたシスター・ゲルダの体は、  
元の妖艶なパツキンシスターの姿に戻っている。  
 勝敗は決した。  
「バカな……どうやって“食屍鬼”に?」  
 もはや風前の灯火なシスター・ゲルダを、あたしはゆっくりと見下ろした。  
『あんたは強いな、シスター・ゲルダ……望み通り、あたしは死んだよ』  
「……っ!?」  
『あれから数秒後には、あたしは完璧に殺されていた。  
その死んだ未来の自分の死体を、影踏みの力で食べたのさ』  
「……ふん……なるほどな……  
やはり人の身で邪神と競い合おうとする事自体が……愚者の選択だったか……」  
『ほざいてろ』  
 
 ばくん  
 
 両腕と下半身の無い美しいシスターは、金髪をなびかせながら闇の中へ落下していった――  
 
「……ぐっ」  
 シスター・ゲルダが奈落の底へ消えたのを確認した直後、  
あたしは自分の体を抱き締めながらうずくまった。  
 その姿は、もう人間のそれに戻っている。  
 気持ち悪い……やはり自分の体というのは食い合わせが悪いようだぜ。  
人間1人分の死肉を食べたのに、もう“食屍鬼”モードが解除されちまった。  
そのくせ肉の疼きだけは、普段の数倍の強さであたしの身体と心を苛めてるときている。  
 さて、こんな時は――やっぱりアレに限る♪  
「Sくぅぅん♪」  
 甘〜〜〜い声で誘惑しながら、あたしはS君が倒れてるだろう瓦礫の影を覗き込んだが……  
「いないのぉ?……どこへ隠れちゃったのかなぁ〜?」  
 しかし、屋上のどこを探しても、S君の服の切れ端すら見つからない事態に、  
さすがにあたしも甘い声を出す余裕は無くなっていた。  
「S君!? 何処にいるの!! 今ならお尻を百叩きで許してあげるから返事しなさい!!  
ちなみに叩かれるのはあたし!!」  
 冗談めかしても返事は無い。  
 こいつは……マジでやばいな。  
 シスター・ゲルダが囮だったか? 第三者に漁夫の利かっさらわれたのか?  
 
 かちん ぱたん ころん  
 
 どうやら、後者だったらしい。  
 四方八方から響き渡るその音に、全身が総毛立った瞬間――  
「あははは♪ またあったねMちゃん」  
 ビルそのものが木っ端微塵に砕け散り、あたしの意識も闇の中へ消えた……  
 
 ――それは、この地方の農村ではありふれた光景だったのかもしれない。  
 文明開化の足音など、異世界の御伽噺であったような寂れた農村――  
全てが灰色の景色の中で、くたびれた農民達が力無く荒地に鍬を突き立てている。  
夢も、希望も、人間が人間である為に大切なものを、全てを忘れ去った顔で、ただ黙々と……  
 そんな農民達に、頭の欠けた地蔵の前に捨てられている赤子を気にする余裕など、  
心の何処を探してもあるわけがない。  
 赤子は死にかけていた。  
 それは、この地方の農村ではありふれた光景だったのかもしれない。  
 雪混じりの冷風が吹く中、肌着すらまとわずに、泣く事も忘れて、赤子は死にかけていた。  
 どんな名医も匙を投げ、神も仏も黙って首を横に振るだろう。  
それくらい、赤子の魂はか弱く、か細く、儚かった。  
 それは、この地方の農村ではありふれた光景だったのかもしれない。  
 最期に、赤子は、それが自分が生きていた最期の証とばかりに、  
小さな瞼を動かして……そっと、閉じた。  
 それは、この地方の農村ではありふれた光景――ではなかった。  
 魂の消えかけた哀れな赤子を、その猛禽類の如き鉤爪で摘み、肉食獣の牙を鳴らしながら、  
金色に濁った瞳で見つめるその影は、全ての人間が呪いと恐怖の言葉で語る、邪神の眷属たる、あの――  
 
 暑い……  
 肌にまとわり付くような熱気と湿気。僅かに聞こえる羽虫の音。  
あたしの意識を夢の中から覚醒させたのは、その異様な熱気だった。くそっ、懐かしい夢を見ちまったぜ。  
 周囲の景色は、うっそうと木々が生い茂る原始のジャングル――  
草木の植生から見て東南アジアかインドの辺りらしいが、  
少なくともさっきまであたしがいた日本じゃない事は間違いない。  
そんなジャングルの真ん中に、ぽっかりと開けた広場があって、  
その中にあたしがいる……らしいな。少なくとも見える範囲内では。  
 闇夜の中でも妙に明るいのは、広間の周囲をぐるりと取り囲むように円柱が立ち並び、  
その円柱に掲げられた巨大なかがり火が何本も燃え盛っているからだ。  
あたしはそのかがり火の1本に拘束されていた。道理で暑いわけだぜ。  
服も装備も全て剥ぎ取られ、全裸のまま鎖で後ろ手に縛られて、生贄よろしく吊るされている。  
このままバーベキューにでもするつもりか?  
 だが、そんな自分の運命を考える心理的余裕は無かった。  
広場の中央に築かれた、石造りの巨大な祭壇――常人なら一目見ただけで発狂しかねない、  
尋常ならざる角度で構成された奇怪な祭壇は、ただそこにあるだけで、  
圧倒的な威圧感であたしを押し潰そうとしていた。  
 そこで初めて、今あたしが流している汗は暑さの為ではなく、恐怖に浮かぶ脂汗だと気付いた。  
ううぅ……情けないけど無茶苦茶怖いよぉ。  
 よく見れば、あたし以外のかがり火円柱にも同じように吊るされた全裸の女達がいるが、  
それらは全て生首を切り落とされて、ドクドクとどす黒い血を滝のように垂れ流している。  
流れ落ちた血は石の溝にそって祭壇の中央へ導かれて、  
祭壇の中央にある巨大なオブジェの根元に吸い込まれていた。  
そして、その高さ10mはありそうな卵型のオブジェから放たれる不気味な波動こそが、  
先程からあたしを恐怖させているものの源泉なのだ。  
 な、なんだあのわけのわからん祭壇と、モ○ラでも生まれそうなタマゴは?  
一応は邪神の眷属であるあたしを、ここまで戦慄させる物が、あのオブジェにあるというのか?  
「あれは一体……」  
「かみさまだよ」  
 !?  
 目の前で能天気に笑う小便臭そうな絶世の美幼女は、言うまでもなくドミノのクソガキだ。  
 いつのまに目の前にいたんだ!? 声をかけられるまで全く気付かなかったぞ……  
 だが……  
「……お前、ドミノだよな?」  
「しつれいだなぁ。こんなにかわいいおんなのこは、ドミノしかいないよぉ」  
 この性格はドミノに間違いない。  
 しかし、その格好はあたしの知るドミノとは全く違っていた。  
生き血で染めた真紅のドレスどころか、身に付けているものは何も無い全裸姿……  
それだけならロリコン野郎が泣いて喜ぶだけだろうが、  
今のドミノは素肌の上に全身余す所なく、刺青のような異様な紋様が浮かんでいるのだ。  
その紋様の不気味さときたら、前述のロリコン野郎も絶対に触れようとはしないだろう。  
 そして……あたしには、その紋様に見覚えがあった。最悪な事に。  
 あれは、マレーシアやビルマ奥地のスン高原に巣くう邪悪な矮人族――  
「てめぇ……“チョー=チョー”の民だったのか!!」  
 “食屍鬼”の牙を食らっても再生できる不死性。通常の吸血鬼を遥かに上回る圧倒的な戦闘能力。  
ついでにロリロリな外見。全ての理由がこれで説明できる。  
 あいつも、邪神の力を持つ者だったのか。  
「ぴんぽ〜ん! だいせいかい〜♪」  
 嬉しそうに手を叩きながらピョンピョン飛び跳ねるドミノに、あたしは全力でガンを飛ばした。  
 
「その“チョー=チョー人”がここで何をする気だ!? S君は何処だ!!」  
 しかし、ドミノは全然動じる様子を見せない。余裕たっぷりだ。  
「もう、あれからいっしゅうかんもスヤスヤねむっていたんだから、  
ねおきにそんなおおごえだしちゃうとぉ、あたまのけっかんがきれちゃうよぉ?」  
 くそっ、そんなに時間が経っていたのか……じゃあS君は!?  
「さいしょのしつもんはねぇ、ドミノのかみさまをふっかつさせるつもりなんだよ」  
 ドミノの神様? “チョー=チョー人”の崇める邪神は数多い。  
有名所ではツァール神とロイガー神などだが……いや、あいつは吸血鬼……すると――!!  
「まさか、てめぇが復活させようとしている邪神は――!!」  
 叫び声は途中で飲み込んだ。  
「つぎのしつもんはねぇ……“星の精”ちゃんはここにいるよ」  
 ドミノが背後の何も無い空間から取り出したもの……それは、あたし達と同じように一糸纏わぬS君だった。  
 だが、その瞳は何も写していない。表情は虚ろで、今にも倒れそうなくらいやつれている。  
それなのに、その小さなペニスだけが固くそそり立っているのが奇妙だった。  
「S君!? Sくぅん!! しっかりしろ!!」  
 あたしの声にも何の反応も示さない。唇の端から一筋のよだれが垂れるのを見て、あたしは天に咆哮した。  
「てめぇ!! S君に何しやがった!!!」  
「もぉ、おんなのこがそんなかおしちゃダメぇ。いちゅうのあのこにきらわれちゃうよ?」  
「ふざけるな!!」  
「この“星の精”ちゃんには、ちょっとじゅつをかけているだけだよ。  
きずつけるようなことは、なにもしてないからあんしんしてね」  
 こんな状況なのに、思わず出た安堵の溜息を――  
「このこは、かみさまふっかつのためのだいじないけにえだもんね♪」  
 ――あたしは戦慄と共に飲み込んだ。  
「S君を生贄にするだと!!」  
「もぉ、まえにもドミノいったよ? さいきょうのきゅうけつそんざい――  
ドミノのかみさまをふっかつさせなきゃいけないの。  
そのためには、さいきょうのきゅうけつきのいきちがひつようなんだよ」  
 ドミノは無邪気に笑った。邪気に満ち満ちた無邪気さだった。  
 それから、周囲の円柱に吊るされた首の無い女達を指差して、  
「あのこたちも、ぜんいんロードクラスのバンパイアなんだよ。  
あとは、“星の精”ちゃんのいきちをささげれば、『吸血神』はふっかつするの」  
 虚ろなS君の背後に回り、ドミノは愛しそうにその胸元を撫でた。  
「これからぎしきをはじめるね。かみさまがふっかつしたら、  
Mちゃんをかみさまのさいしょのおしょくじにしてあげるから、そこでたのしみにまっててね♪」  
 楽しく待てるか!!  
 あたしは知る限りの語彙を駆使してドミノに罵詈雑言を浴びせたが、  
ドミノは完全にそれを無視して、S君の唇に自分のそれを重ねやがった。  
 あっ!? まてコラ!! それはあたしのだぞ!!!  
 
 子供同士の小鳥が啄ばみ合うような可愛らしいキス――ではなかった。  
舌をねっとりと絡め合い、歯の一本一本まで舐め回し、  
互いの唾液をたっぷり飲み干す、見てる方が息を飲むくらい濃厚な口付けだ。  
「うふふ、おいしぃ♪」  
 ようやく離れた唇同士に銀色の橋を繋げながら、ドミノはまた笑った。  
無邪気な子供っぽい笑みではなく、伝説の女吸血鬼に相応しい、邪淫に満ちた妖艶な笑みを。  
「でも、こっちはもっとおいしそうだよね」  
 ドミノの小さな手が、こちらも小さなS君のおちんちんに触れる。  
淫猥な動きで指が蠢くと、S君の呆とした顔に赤みと切ない吐息が見て取れた。  
 こここここ……この泥棒猫〜〜〜!!!  
 ギャーギャー喚き散らすあたしを完全に無視して、ドミノの執拗な愛撫は続いた。  
ふっくらとした頬でペニスに頬擦りしては、小さな舌でシャフトをチロチロ舐め回し、  
爪先で包茎をつるんと剥いていく。そのテクニックは娼婦も顔負けだ。  
「あはぁ♪ ちっちゃくてかわいいね。でも、ドミノはちいさなおちんちんだいすきだよ」  
 まるで子供が――実際に子供だが――大好きなアイスキャンディーを頬張るように、  
S君のおちんちんを美味しそうに口に含むドミノの顔は歓喜に満ちていた。  
 こ、この女……見た目は子供だが、中身はとんでもない淫乱女だぜ……  
「んはぁ……はむっ……んちゅぅ……あはぁ……おいしぃ……んふぅ」  
 ピチャペチャと唾液がペニスと舌でかき混ぜられる音が、あたしの耳にまで届いた。  
無表情なS君の呼吸が段々荒くなっていく。  
口一杯にペニスを頬張るドミノの顔は、淫猥な歓喜に満ちていた。  
 数分後、ちゅぽんっと勢い良く小さな口からペニスが飛び出すと、  
S君のおちんちんは、もはやおちんちんとは言えない大人の風格でギンギンに漲っていた。  
あのクソガキ、何か術を使ったな? ああ、S君の可愛かったおちんちんが……  
 目の幅涙をだーっと流すあたしを尻目に、ドミノはS君の頬を指先でそっと撫でた。  
「あはぁ♪ おっきくなったねぇ」  
(…………)  
「もっときもちよくなりたい?」  
(こくこく)  
「ドミノのなかにいれたい?」  
(こくこく)  
「それじゃあ、ドミノもうけいれられるようにしてね」  
 S君の惚けた顔がドミノのアソコに導かれていく。  
本来は、白くほんのりピンク色でスジにしか見えない可愛い性器だったのだろうが、  
今はグロテスクな紋様が浮かんで不気味さを醸し出している。  
 特に命令された訳でもないのに、S君は自分からそこに舌を這わせた。  
「んひゃあん♪ お、おじょうずぅ……」  
 子猫がミルクを舐めるような音が、密林の中に小さく響く。  
「あはぁ……ああん♪ ねぇ……ドミノのあそこ、おいしい?」  
(こくこく)  
「はぁあん……う、うれしいなぁ……ねぇ…もっとぉ……んんっ……もっとしたをいれてぇ♪」  
 歓喜の表情でS君の頭を股間に押し付けるドミノの姿は、  
同性のあたしですら息を飲むくらい妖しく、美しい……あぅ、見ているあたしの方がぼうっとしてくたかも……  
 しばらく卑猥な音が続いていたが、やがてS君の顔がドミノの股間から離れると、  
ドミノの女性器は唾液とも愛液ともつかない液体でしとどに濡れ熟していた。  
「はぁ……はぁ……ねぇ、そろそろいれてみようかぁ?」  
 もう返事を聞く事もせずに、ドミノはS君を石畳の床に寝かせた。  
固く天を向くペニスの上に、ゆっくりと腰を落として――  
「んはぁああああああんっ♪」  
 甘い声が夜空に響き渡った。  
 
 とても幼女とは思えない動作で、腰をピストンさせるドミノ。  
時には削岩機のように激しく、時にはねぶるようにゆっくりと。  
8の字に腰をくねらせ、小刻みに振動するように……娼婦も真っ青な腰使いだ。  
「きゃうぅぅん♪ うぅぅん……サイズもぴったりでぇ……きもちいいよぉ!!」  
「ん……ぁあ……あああ……」  
 ドミノの喘ぎに合わせて、下のS君も快楽の反応を見せてきた。  
ううう……やっぱりまともにセックスができるのは羨ましいなぁ。  
あたしにはS君じゃサイズが小さ過ぎるから、S君自身はともかくあたしが肉体的に満足するには、  
色々な道具の助けが必要だし……ちくしょうめ。  
 そんなあたしの思いが顔に出たのか、ドミノの顔が急にこちらに向けられるや、  
「Mちゃん、たいくつしてる? じゃあ、このこたちとあそんであげてね」  
 子悪魔っぽく、いや本物の悪魔のように目元を綻ばせた。  
「な、何を考えていやが――ひゃん!?」  
 突然、乳房を搾るように絡みついてきた『何か』に、あたしは思わず甘い声を出した。  
蛇のようにうねくりながら、あたしの柔肌に絡むそれは、  
蔓草――じゃない。蛸の足でもない。これは、触手!?  
 植物の蔓のような見た目で、軟体動物の脚のようにヌメついた、  
植物と軟体動物の双方の要素を併せ持つ明らかに未知の生物だった。  
見れば、周囲の円柱の死体にも別の触手が絡みついて、  
引き摺り下ろしてはジャングルの中に引き込んでいる。  
あたしの足元に開いた小さな穴から生えた“それ”も、獲物を狙う蛇のように鎌首をもたげて見せた。  
「こいつは!?」  
「むかし、はくじんにしいたげられたこくじんがしんこうしていた、  
じゃきょうのかみさまのおとしごだよ。コンゴおくちからとりよせたの」  
「てめぇ……なんてものを取り寄せやが――」  
 台詞が途中で中断したのは、目の前の光景に絶句したからだ。  
足元の地面をボコボコ突き破って出てきたのは、何十本もの、さっきの触手!!  
「じゃあ、そっちはそっちでたのしんでねぇ♪」  
 ドミノの掛け声が合図になったのか、粘液を垂らした緑色の触手の群れは、一斉に襲いかかってきた――  
「んひゃあああっっっ!! や、やめろバカぁ!! んああぁ!!」  
 身体中を触手の群れが這い回るおぞましい感触に、あたしはたまらず悶絶した。  
抵抗しようにも、人間の身では邪神の落とし子であるこの触手に何かできる筈もない。  
数十人の肉に飢えた男に全身を愛撫されるような、おぞましくも的確な責めに、  
自分の理性がドロドロに溶解していくようだ。こ、これが『人外の快楽』かよ……  
「あはぁああっ!! あぐぅうう……く、苦し…ぁあぅうう!!」  
 ぜ、全身が絞めつけられて…苦しぃ……んはぁあ……そ、そんなにおっぱいを搾っちゃダメぇ……  
うなじがぁ…腋の下もぉ…足の指までぇ…ヌルヌルの触手が弄くり回して……ひゃあうっ!……  
今度はザラザラの葉っぱがぁ…アソコをぉ…乳首を……はぁうぅぅ!!  
 かつて体験した事の無い未知なる快楽に、あたしは嬌声をあげる事しかできなかったの……  
無理矢理足をM字開脚させられて、そこに触手の束がにじり寄るのを見て、  
あたしは迫り来る陵辱の予感に、恐怖と期待で身を震わせた……  
 でも、そこからの責めは、あたしの想像を遥かに超えていた。  
 一際細くて鋭い触手が、束の中からアソコに伸びてくる……  
クリトリスや陰唇を愛撫されるのか、いきなり挿入されるのか、それともアヌスを……  
「きゃぁん!?」  
 どれも違った……尿道に突き刺さった触手が、  
狭い穴を無理矢理こじ開けながら奥へ突き進んでくる……!!  
 あぐぅぅぅ……痛い、いたい、いたぁああい!! そ、そんなにグリグリしながら……ねじ込まないでぇ!!  
もう入ってきちゃやだぁ!! ぁあああああっっっ!!!  
 
「ひぐぅ!!」  
 うぐうぅぅ……き、急に抵抗がなくなったぁ……先端が膀胱の中に入って――ひゃあん!?  
 ちょろろろろ……  
「ひゃあうっ!? な、なにか入って…冷たっ! あああぁううううっっ!!」  
 膀胱に挿入された触手の先端から、ホースのように水が注入されていく。  
たちまち高まる尿意に、下半身に痺れるような刺激が走る。  
でも、膀胱が液体で一杯になっても触手からの注入は止まらなかった……  
「んぐぅぅぅ……ダメぇ!! もう入らないぃぃ……!! と、とめてぇぇぇ……ぁああっ!!!」  
 限界を超えた尿意に悶えるあたしを、ドミノの嘲笑が見つめている……ああ……  
あんな奴の前で……お、おもらしするなんてぇ……ううぐぐぅ……  
絶対に……絶対にぃぃ……だめ……ダメぇ!! でちゃうっ!!でちゃうよぉぉ!!!  
「んはぁああああああっっっ!!!」  
 信じられないくらい大量のオシッコがぁ、あたしのアソコから吹き出しましたぁ……  
ぁぁあああぅうううう……触手でズタズタにされた尿道にオシッコが染みてぇ……  
くやしいけど…気持ちいいのぉ……ううぅ……ドミノが笑ってるぅ……軽蔑の目で笑ってる……  
ああぁ…S君までそんな目で……あはは……あはははは……  
見て……見て見てぇ!……あたしの恥ずかしいおもらしもっと見てぇ!!  
 屈辱と開放感の入り混じった排尿の快感に、あたしは涙を流しながら痙攣しました……  
でも、まだ終わりじゃなかったの……  
「あはぁあああ……っううう……あうぅ!? と、止まらない……オシッコが止まらないぃ!?」  
 そう、触手から膀胱に注がれる液体は、止まるどころかどんどん量が多くなっていくの……  
もうあたしの尿道口からは壊れた噴水みたいに黄色いオシッコが吹き出しっぱなしです……  
……んひゃああっ!?  
 突然、視界が回転しました。足に絡みついた触手が、  
あたしを高く持ち上げて逆さ吊りにしたのですっ……んぷああっ!! お、溺れるぅぅ……  
 びしゃびしゃびしゃびしゃ……  
「あははっ♪ じぶんのおしっこかおにあびちゃって……Mちゃん、そんなにおいしいの?」  
 M字開脚のまま逆さ吊りにされたあたしの顔面に、ちょうどオシッコが注がれます……  
ビシャビシャと勢いよく当たるオシッコは、口にも鼻にも耳の中にまで入ってくるの……  
顔も髪の毛もオシッコまみれになったあたしは、もう涙とオシッコの区別もつきません……  
あはは……あはははは……あがぁ!!  
 いきなりアヌスに走った激痛――!!その痛みにヴァギナと尿道口が一瞬キュっと締まりましたが、  
アヌスだけは閉じられませんでした。  
(ふぁあああ……やめてぇ……お尻がぁ……ぁああっ!! 裂けちゃうぅぅぅ!!)  
 細い4本の触手がアヌスをX字に無理矢理広げています……その限界を超えた拡張に、  
あたしは悲鳴をあげる事すらできませんでした……  
「あひぃぃ!! や、やだぁ!! ほじくら…ないでぇぇ!!」  
 しかも、そのぽっかり開いたアナルの中に、先端が先割れスプーン状になった触手を突っ込んで……  
1週間分のあたしの宿便を……腸壁をゴリゴリこすりながら、ほじくり出していくのぉ……!!  
「いやぁああああああっ!!! あぐぁああああああっ!!!」  
 そのあまりの激痛とおぞましさに、あたしは夜空へ絶叫を轟かせました。  
な、何をする気なのぉ……なぜこんな……ああぐっ!!  
「そのこはきれいずきだから、ウンチはたべないの。  
でも、それいがいはちゃんとたべてくれるからあんしんしてね」  
「……い、一体なにを言って……うぁあああっ!! あはぁあああああっっっ!?」  
 なぜそんな事をするのか……その理由はあたしの想像を遥かに越えるものでした……  
アナルを掘り進んでいく触手の束は、宿便を全て掻き出しても進行を止めずに、  
直腸から大腸の奥へ、大腸から小腸へと、どんどん入っていくのぉ……!!  
「あひゃあうううううっっっ!! ぐぅうううう……あはぁあああっっ!!  
た、たすけ…くぅっ!! あがぁああああっっっ!!!」  
 
 内蔵を直接犯される――この激痛と嫌悪感……  
そして快感は、体験しなければ決して味わえない凄まじさでした……  
うぇえええ……気持ち悪いよぉ……痛い、いたいよぉ……それなのに……  
どうしてこんな酷い事されてるのに……なぜ気持ちいいのぉ……うぐぅ!!  
い、胃の中で触手が暴れてるぅぅ……んんっ!? んんんんんっっ!!  
い、息ができな……んぶぁあああっっっ――!!!  
「んぐぅぅぅぅぁぁああああぐぅ!!!」  
 口から飛び出した胃液まみれの触手は、あたしを嘲笑うかのように揺れ蠢き、  
その度にあたしはビクビクっと痙攣しました……  
 でも、まだまだ終わりじゃなかったの……  
「んぁああああああ……おお……おっひぃぃぃ……んぶぅ!!」  
 新しい触手の束が、今度はヴァギナへの挿入を開始したのです。  
腸の中まで触手で一杯になっているあたしのお腹には、  
その極太触手なんて絶対に入れそうもなかったのに……  
今までの触手責めでしっかり熟し切っていたあたしのアソコは、  
ちゃんと触手の束を受け入れてしまったのぉ……んはぁあああ……苦しい……それなのに……  
気持ちいいよぉ……あああっっ!! もっと、もっとグリグリしてぇ!!  
んふぅぅぅ……子宮口に触手の先が当たってるのぉ……ッ!?  
 つぷっ  
「あぐぅぅぅ!?」  
 まさに、その子宮口に走った衝撃に、思わずあたしは口から生えた触手を噛み千切った。  
途端に内臓の中で触手が暴れ出したけど、それを気にする余裕は無かった。  
本来は素麺一本入る大きさもない子宮口に、  
極太の触手の先端から更に伸びた極細の触手が直接侵入したのだ。  
「んひゃああああぅぅぅ!! な、なにこれぇ!? やめてぇぇぇ!!!」  
 子宮の中を何百本もの極細触手が蹂躙しているのがわかる……  
今まで誰も体験した事のない、発狂しそうな快感の嵐……  
んぁあああ……や、やめてぇ……やだぁああ……そこはダメなのぉ……あぐぅ!!  
卵管を通って卵巣にまで触手がぁぁ……ひゃぐぅ!! ごめんなさい! ごめんなさぁい!!  
 泣いても喚いても、触手の陵辱は止まりません……  
尿道に内臓、そして子宮まで犯されちゃった……あはは……あはははははははぁ♪  
「あひゃあああん♪ はひぃ!! あうあぁああ……  
もっとぉ!! もっと身体中滅茶苦茶にしてぇぇぇ!!!」  
 あたしの叫びが触手に通じたのか……今までで最大の痛みと快楽が走ったのは、  
やっぱりあたしのおっぱいにでしたぁ……あの子宮を犯してくれた極細触手の束が、  
あたしのぷっくり膨らんだ乳輪と痛いぐらいに勃起した乳首へと伸びていきます……  
ああぁ……今度は何をしてくれるのぉ……ひゃあああぅううん♪  
「ひゃあああぅううん!!」  
 乳首に突き刺さった触手の束がぁ、ずぶずぶと中に入ってきますぅ!!  
あふゃあいいいいぃん!! あふぁあああっ!! あぁあああん!! 乳腺がぁ……乳腺がぁ!!  
乳腺がグチャグチャにかき回されてぇ!! 母乳が止まらないのぉぉぉ!!!  
「ふみゃああああん!! あぁああっっ!! あふぁああああ!!  
もっとぉ!! もっとおっぱいグリグリしてぇ!!  
おっぱいが一番感じるのぉ!!もっとおっぱい犯してぇぇぇ!!!」  
 あははははははは♪ あたし、壊れちゃった♪ おぞましい触手に犯されて壊れちゃった!!  
あはぁあああああ……あははははは……ほらぁ、もっと身体中を舐め回してぇ♪  
全身の骨が折れるくらい絞めつけててぇ♪ オシッコ飲ませてぇ♪  
アナルからウンチほじくりだしてぇ♪ 内臓を全部犯してぇ♪ 子宮をメチャクチャにしてぇ♪  
おっぱいをグチャグチャにしてぇ♪ もっともっとあたしを壊してぇぇぇ!!!  
「じゃあ、ほんとうにおっぱいをこわしてあげるね♪」  
 そして、母乳が吹き出す乳首に向って、また新しい触手が伸びて、その触手の先端が、  
金属製のドリルみたいになっていて、高速で回転しながら、あたしのおっぱいに突き刺さって――♪  
「あぐぅうううううぁぁあああああああぁぁぁっっっ!!!」  
 鮮血と肉片と母乳をおっぱいから噴出しながら、あたしの魂は真っ白になりました――  
 
 ぐりぃ!  
「んきゃあああぅううう!?」  
 でも、あたしには気絶すら許されませんでしたぁ……  
「ほらほらぁ、かってにイっちゃだめだよぉ」  
「……M…さん……Mさぁ…ん……」  
 全身を触手に貫かれて、絶頂しながら気絶しているあたしのヴァギナとアナルに、  
無邪気に微笑むドミノと虚ろなS君がぁ、自分の拳を挿入したのですぅ……!!  
 みちみちみち……  
「あぁうううううぅぅぅぅぅ……裂ける!! 裂けちゃうよぉぉ!! あがぁあああああ……!!」  
 ただでさえ触手で満員になっていたヴァギナとアナルは、その容赦ないフィストファックに――  
 みちみちみちみち……ぶちぃ!!  
「ひぐぅ!!!」  
 ――ついに、裂けちゃいましたぁ……  
「あははっ♪ アナルにある“食屍鬼”ちゃんの手とあくしゅできるよぉ」  
「Mさぁん……えむ…さぁ……ん……」  
 もう、S君の自我は完全に喪失しているのでしょう……  
ガクガク痙攣するあたしのアナルに、ただ機械的に拳を突き入れるだけのS君……  
 そして――  
 ずぶっ!!  
「――ッ!?」  
「……あ……がぁ……」  
「あははっ♪」  
 突然、胸元に走った冷たい激痛――  
その金属的な痛みの鋭さは、あたしの意識を取り戻させるのに十分だった。  
いや、それよりも、目の前の光景こそが、あたしを正気にした原動力だったのかもしれない。  
 胸の谷間から股間へと流れ落ちる、生暖かい鮮血の感触――それは、あたしの血だけじゃなかった。  
「え……S…くん!?」  
「え……M…さぁん……」  
 どこから取り出したのか、ドミノの持つあたしの錫杖――  
それが、S君の背中からあたしまで串刺しにして……!!  
 それは、正確に心臓の位置を貫いていた。  
「S君……Sくん? Sくぅぅぅん!?」  
「……え……む……さぁ……ん……」  
 自分の胸も貫かれているのを忘れて、あたしは必死にS君に呼びかけた。  
その華奢な身体を突き刺す錫杖を抜きたくても、全身を拘束する触手がそれを決して許さない。  
どくどく溢れ出る鮮血の量に比例して、ただでさえ青白かったS君の顔が蒼白になっていく。  
 そして……  
 
「……ぇ……さ……」  
 人形のゼンマイが止まったかのように、かくんとS君の頭が垂れて――  
それっきり、もう動くことはなかった……  
「S……くん?……S君!? おい、ちょっと……冗談はやめてよ……  
え……す……くん? えすくぅぅぅぅん!!!」  
 全身が爆発しそうだった。体中の血が沸騰して、絶叫は密林を焼き尽くしてもおかしくなかった。  
「てめぇええええええ!!!」  
 手首が鈍い音を立てた。手を吊るしていた鎖を思わず引き千切ったのだ。  
代償として手首が骨まで見えるくらいズタズタになったけど、知った事か。  
 それなのに――触手の拘束は微動だにしねぇんだ!! くそったれぇええええええ!!!  
「もぉ、そんなコワイかおしちゃだめぇ♪」  
 それだけで人が殺せるだろう視線を浴びても、ドミノの余裕はまるで変わらない。  
それがますますあたしの怒りに火をつけて、  
全身が触手でズタボロになるのも構わずに、あたしは悶え狂った。  
 あたしの血とS君の血が混ざり合い、床石にぼたぼたと垂れて、そこに掘られた溝にそって流れていく――  
 ――そして、その先には――  
 びしりっ!!  
 灼熱の炎を放つあたしの怒りが、一瞬で凍結した――それは、そんな音だった。  
 S君の事もドミノの事も一瞬忘れて、あたしの目がその音の発生源に吸い込まれる。  
 ひび――  
 ひびが――  
 あの石にひびが――  
 祭壇にある巨大な石のタマゴに、一筋のひびが入ってる――  
 ぴしぴしぴし……  
 細かいひびは徐々に大きくなり、稲妻のように広がって、そして――  
「ついに、時は来れり!!」  
 ドミノが両手を天に掲げながら絶叫した。  
「血を、血を、血を、血を!! 最も清き神の血を、最も汚れし神の血を!!  
我、森羅万象の腐肉と腐汁を贄に、鮮血の王に赤き命の全てを捧げん!!」  
 その瞳には確かな狂気が宿り、絶叫は混沌の渦のようだ。  
「目覚めよ!! 我が愛しき『吸血神』!!!」  
 ――そして、ついに石の卵は粉々に砕けて――  
 ――『邪神』は目覚めた――  
「『吸血神』……“チャウグナー・フォーン”!!」  
 
 
続く  
 

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