「なぁ、今日が何の日か知ってるか?」
「久しぶりに会えたと思ったら……いきなり何よ。バカにしてるの?」
「いや、そういう訳じゃないんだが。で、さっきの答えは?」
「12月25日と言ったらクリスマス以外ないじゃない」
「そうだ。そんな日位、そっと寝かせろ。…大体こんな時間に、まして一人身の男の部屋に訪ねるなんて常識的に」
「そんな話をしてどうしたの? あっ!もしかして私にプレゼントでも」
「欧州のサッカー選手のようなスルー技術だな。……言っても無駄か、しょうがない。君にはコレを差し上げよう」
「あ、ありが…って。何ですかこの油ギトギトのチキンは」
「バイト先の残り物。昨日貰ってきた奴だから良い感じに油が浮いてる訳だ。多分うまいぞ?」
「嫌がらせかっ。いや、貰うけど。…あれ? あんた確か、引越しのバイトしてなかった? バイト変えたの?」
「……いや、そっちもやってるよ」
「ふーん。ところで。こんなおいしいモノを私に食べさせて一体どうするつもり!?」
「なんか、この時機が来る度に聞いてる気がするよ。そのセリフ。つーか、これ以上痩せる必要ないと思うぞ?」
「えっ本当? ……はっ。そういう甘言吐いて、私をブクブクと太った豚にして嘲笑うつもりね!恐ろしい子!」
「いやいやいやいや。今日はどうした?テンションがいつも以上におかしいぞ?」
「そっそんな事ない! というか普段もおかしくない! きっと!」
「……まぁ別にいいけど。 お前さ、他に誰か出歩く相手居ないの? 去年も一昨年も俺んちで寝てたけど」
「勘違いしないでよね! たまたまっ! そうっ、たまたま暇なだけなんだからっ!」
「おー、そっかそっか。 それより何か俺にプレゼントとか持ってきてないの?」
「も、持って来て……ない。」
「デジャヴュか? 毎年ソレも聞いてる気が。まぁいいや。はい、本当のプレゼント」
「何これ? ……指輪?」
「うん。バイト増やして金作って買った」
「…うれし」
「って、彼氏でも無い奴からこんなの貰っても気持ち悪いだけだよな。」
「なっ、人の話聞かないで何言ってるの!」
「ごめん、やっぱそれ返し」
「やだ! もうっ! 人の話を聞けっ!」
「へ?」
「……私も、毎回毎回、渡そうと思っていた、モノが、あって」
「え? ちょっ、おまっ、何脱いでんのっ? はうあ! 黒なんて大胆な!」
「よかった……4年前に、あんたの、ために…恥ずかしい、思い、して買った甲斐が、あったわ。」
「うおっ? ほんとに一体どうしたのだね? おちついて!おちついて!おっ、おれの下半身もおちついて!?」
「ブクブクは、太ってないけど……もう、少し。すりむな体を、あんたに見せ、たかったん、だけど」
「待て待て待て待て。思考が追いつか」
「ぷ、ぷれぜんとは、あっ、あたし、とか、言って、みたり、して……」
「!」
「さめない、内に、めしあがれ?」
――――メリー、クリスマス。