断言する。俺はクリスマスなんて嫌いだ。
降りしきる雪の中で俺は心の底から思った。
「彼女もいないしな・・・。」
浩介も剛も滝本も悟志も彼女作りやがってあの裏切り者共。
そう言うわけで俺には一緒にクリスマスを過ごす人は誰もいない。
しかもこういうときに限って(バイトの給料が入ったばかりなので)金は有り余っている。
「いっそ嫌がらせでもしに行こうか・・・。」
「やめといた方が良いわよ、恨み買うし。」
「うわああああああああ!!」
突然すぐ近くで聞こえた声に驚いて俺は思わず後ずさった。
声のした方に目を向けるとそこには見慣れた顔があった。
「・・・なんだまどかか。お前も独り身か?」
「う゛。」
目の前の少女―まどかは嫌なところを疲れたようで顔を引きつらせた。
「・・・それはお互い様でしょ。」
「・・・まあな。」
同時にため息をつく。
「――――あのさ。」
「ん?」
長い沈黙の後、唐突にまどかが切り出してきた。
「どうせ暇ならさ、どっか遊びに行かない?」
「えー。」
「何よその反応はー!」
あからさまに不満の声を上げた俺にまどかは抗議する。
「だって毎年同じパターンだしー。」
「いや語尾あげても可愛くないし。」
チッ。可愛げの無いツッコミしやがって。
と、さっきの舌打ちに反応してかまどかが悲しげな顔をしてうつむき、
「・・・そんなに私といるのが嫌なの?」
「違う違う!そうじゃなくて――」
「じゃあ大丈夫ね?」
顔を上げて笑顔を見せた彼女の姿に俺は自分の敗北を悟った。
「・・・しょうがないな。」
嘘だ。
本当は照れくさかった。
本当は自分から言いたかった。
本当は――
「じゃ、まずは遊園地行こっか?」
「―っておい!?」
俺の返事を待たずしてまどかは俺の手を取って歩き出した。
意外と速い彼女の速度に何とかついて行く。
――いつもこうだ。
彼女が常に俺の先に行って俺を引っ張っていく。
だけど――
俺は速度を上げてまどかの隣に行く。
すぐ横にいる彼女の顔が嬉しそうに微笑む。
――今は追いつくので精一杯だけど、
いつか俺が君より前に行く。
その時は――
「――私はいつでも良いんだけどね。」
「え?」
「何でもない。」
そう言うとまどかは俺から顔を背けた。
「変な奴。」
「お互いにね。」
違いない、と二人で笑う。
周囲の視線も気にせずに、俺たちは寄り添って雪の降る街を歩いていった。