戦艦カイゼルツェッペリン。
ドイツ第三帝国海軍が総力を上げて建造した艦であり、当時欧州最強の戦艦だった。
だが1944年10月6日、大西洋で英潜水艦の目撃情報を最後に消息を絶った。
戦後50年を迎えた今も、カイゼルツェッペリンの行方はわからない。
「・・・・・・」
1944年11月23日。カイゼルツェッペリンは今だに霧の中を漂っている。
この霧の中を何ヵ月彷徨ってるのだろうか。もう機関を回す程の重油もなく、食料もいずれ尽きる。
「不沈戦艦カイゼルツェッペリンねぇ・・・。中の人が死ねば単なる鉄クズじゃねえか。」
ただでさえ陰欝な雰囲気な霧の海をもう何ヵ月も漂っていると、考えまで陰欝になる。
観艦式の空気にも、艦隊戦のときの空気にも似ない、淀んだ空気が自分を含むカイゼルツェッペリン中に充満している。