§   §   §  
 
 
 それからというもの彼女はどこか余所余所しかった。  
 キオが主人を見かけて近寄ろうにも、ジャガーの敏い感覚はたやすくヒトの存在を捉え、  
 捕まる前にそっと逃げ出していた。  
 しかし夏至祭当日の夜遅くにようやく、パシャの自室で二人は邂逅を果たした。  
「何?」  
 それはキオの努力が実ったというわけではなくて、  
「悪い? 今日はお祭り。お酒ぐらい……」  
 酒精に鈍った感覚のおかげだった。  
 例外を除いて年に三度の季節祭と一度の収穫祭だけは、戦地でも「大っぴらな」飲酒を許可されていた。  
 賊軍とて密林の民、解釈に差異はあれど同じく神を崇める。神々を奉ずるこの四日だけは休戦日だった。  
 
「あーあー……んなに飲んで」  
「キオだって、飲んでる」  
「酒弱いって自分で言ってただろーに」  
「……聞いてないし」  
 窓際に座り込んだパシャは月光を浴びている。  
 酒精によって潤んだ瞳が輝き、小さく開いた唇からは酒気を帯びた吐息。  
 周辺に散らばった酒瓶をキオが集めると、半分以上はチチャ酒を薄めるための果実水だった。  
「俺も一緒していいか?」  
「……」  
 無言を肯定ととったキオは、彼女のすぐ横に座り込む。  
 そして祭り騒ぎの主会場となった大広間から失敬してきた食べ物を広げ始めた。  
 油紙に包まれた数々の料理やら菓子やらは、パシャの好物と呼べる物が揃っていた。  
「食べながらじゃないと胃が荒れるぞ」  
「……私といてもつまらない。サキトハとかチタラと一緒にいていい」  
 口ではそう言いつつも、ヒクンニャの乳を発酵させた乾酪を手に取ったパシャは一口だけそれを齧る。  
「もう充分騒いだ。静かなのも悪くねーだろ」  
 足を投げ出したキオも壁に背を預けて酒杯を傾けている。  
「そう……。おつまみ、ありがとう」  
 カランと涼やかな音を立てた氷が、月光を反射して天井を一瞬だけ朧に照らした。  
「パシャに謝らねーとって思ってな」  
 キオの言葉は唐突だった。  
 ここは森の奥だが山の奥ではないというのに、パシャの背筋は冷気に触れたように震えた。  
 
「キオは……悪くない」  
 あれ以来、パシャはあの水泳会のときの気分を重く引きずっていた。  
 ――次の日、先走った行動を悔いる自分を時折思い出し、  
 ――また次の日目覚めても、ひとりよがりの自意識に心をかき回され、  
 ――そのまた次の日からは、日がな一日どうしてこうも自分はこだわっているのかと思い悩み続けた。  
「私が、悪い」  
 独り何となく酒を煽りたい気分だった。それでも考え続けたかったから、酒を割る果実水を多くした。  
 程よい酔いは普段はありえないような考えを閃かせてくれるかもしれないと思った。  
「そっかな。俺は昔っから繊細さに欠けてるらしくてなー」  
 パシャの横にいるヒトも、同じくあれこれと悩んでいたらしかった。  
 窓際で並び座る二人はお互いの顔すら見ない。時々お互いの好物を口に含みながら、まっすぐ酒を煽り続ける。  
 
「パシャがあんなことするからさ。てっきり気にしないんだろーなって」  
「少し考えなしだった」  
「おう。だから二人とも悪かったってことでよくねーか」  
「……ん」  
「なんたって俺たちは"約束"してんだからなー。気まずいのはゴメンだ」  
 視線を感じてパシャが振り向くと、キオの黒い瞳にも月光が煌いていた。  
 パシャが不器用に頬を弛ませ、キオもまた陽気に白い歯を見せた。  
「キオ。弟さんのことを聞いてもいい?」  
 約束……同じくこの世界に落ちたはずの彼の弟を探し出すこと。  
 そして主従二人を結びつける細い縄。  
 キオがこの世界で自信をつけたらすぐに引き千切られるぐらいそれは頼りない。  
 彼ならそれぐらいしても不思議ではない。  
 (あ……)  
 そう考ると、パシャの胸はきゅうと引締まった。傷痕ではなくて、胸の奥が。  
「俺よか五つ下――こっちの感覚だから十か十一下ぐらいか」  
 キオの視線は前方を探っている。ここではない何処かを月光の裏に見ている。  
 
 ヒトの一年はパシャたち密林の民が感じる半年でしかない――  
 ひと昔前まではこのように、ヒトの寿命は密林の民のちょうど半分だと信じられていた。  
 実際ヒトは短命だった。しかし近頃、長命なヒトが増え始めていた。  
 『落ちて』くるヒトの体格がしっかりしたものになり、  
 病に対する抵抗を与えてやれば、キンサンティンスーユの平均寿命よりもやや短いくらいまで生きた。  
 この事象に対してつい最近、斬新な見解がなされた。  
 「ヒトの世界が時と共に進化し、成長期の栄養状態が改善されたこと――」  
 に加えて、  
 「人間を含む全ての動物の寿命は心の臓が打つ鼓動の速さと、ある程度相関しているだろうということ――」  
 が博識で有名な現在の第九皇女によって唱えられていた。  
 この説は詳細な資料を伴い、ヒトの寿命の長命化について一定の信頼を与えていた。  
 パシャも文字を見ると痛くなる頭をどうにか抑えて、ヒト情報ということで論文に目を通していた。  
 
 
 
「――俺と違って頭よくてな。教えるのもうめーんだ。  
 弟みたいなのに初めから教わってたら俺ももっとこう、賢くなってたかもしれねー」  
 そして「それに絵も描く」と続けたキオはひどく誇らしそうだった。  
 パシャは思わず氷をカラリと揺らして口元を覆ってしまった。  
 真面目ぶったキオを想像したら、まるで彼らしくなかった。  
「んだよ。笑うことねーだろ」  
「すまない、つい」  
 キオは口を尖らせたが、そこに責めるような様子は感じられない。  
 おそらく彼が弟を自慢すると誰しも同じような反応をするのだろう。  
「似てなくても不思議じゃねーよ。母親が違うからな」  
「……ん? ヒトの世界は一夫多妻?」  
「こっちにはいねーか? 業突く張りのクソ爺みてーのが、さ。……ま、女の方が強えか」  
 小さく「パシャみたく」と付け加えたのを当人が聞き漏らすわけがない。  
 パシャはキオの方へ菓子を一つ投げつけた。  
 投手が手加減して投げたのにも気付かず、好捕したキオは暢気に手を振って得意げにしている。  
 
「金と権力に物言わせて女を何人も好き勝手する……こっちの草刈衆とやらと同じだ。  
 んで、うっかり生まれちまったのが、俺ら三兄弟ってわけ」  
「……」  
 さらりと話すキオに、パシャは黙って頷いた。  
 彼も余計なものは欲していないだろう。しかし、パシャは一つ気になった。  
「三兄弟?」  
 聞き返すと、彼は露骨に「しまった」という顔をした。  
「イヤならいい」  
「……そうイヤってわけでも。俺がクソ兄貴と、とことん合わねーだけだ。  
 俺が真ん中で、上も十離れてることになるな」  
 彼は慎重に指を折りつつ数えた。  
「もしかして、お兄さんも『落ちて』来てたり」  
 彼の弟が生死不明で『落ちて』来ているかもしれないのに、パシャは不謹慎だと思いつつ口にした。  
「げー、マジかよ」  
 キオも元気を空振りして、珍しいパシャの冗談に合わせた。  
 しかもその表情は相変わらずはっきりとイヤそうで、面白い。  
「それもいいかもしんねーな。俺らが全員いなくなったら――」  
 パシャにはそれが少しだけ羨ましく感じられるが、  
 表情がくるくると変わる自分を想像して――想像できなかった。  
 
「おい、パシャ。腹でも痛いか」  
 キオの心配するような声音は真剣だった。  
 (ほら、到底無理)  
 できもしない事を突然やるべきではなかったのだ。  
 従者がよくするように、パシャはにやりと笑ってやるつもりだった。  
「もう、いい。分かったから」  
「おーい。パシャ、自己完結すんなって」  
 パシャはぷいと顔を背け、器用に尻尾を使うと体一つ分だけキオから離れた。  
 もう杯には丸くなったいくつかの氷と溶け出した水しか残っていない。  
 チチャ酒を深さにして指一本分だけ注ぐと、果実水の瓶を取る。  
「あ……」  
 手に取った瞬間軽いとは思ってはいたが、杯の半分もいかないうちに注ぎ口は滴を垂らし始めた。  
「あいよ」  
 すかさず横から瓶が伸びる。しかし離れすぎて届かない。  
「……ん」  
 パシャは杯を押しやって従者へ注ぎ足すように促した。  
 キオも手を伸ばして瓶を傾け、確かな量の液体が流れるとくとくという音が響いた。  
 
 音が鳴り止みパシャが杯を引いた途端、  
「っと、と……ぐぇ」  
「何してるの、キオ」  
 つぶれた蛙のような声が引き継いだ。  
 瓶の下半分を片手で持ったキオが、陸に打ち上げられた魚のように床に転がった。  
 床に広げられた食べ物をかばうように倒れたので、体がぎくしゃくと曲がっている。  
 
「パシャが遠く行くからだ」  
 彼は一旦果実水の瓶を床に立て置く。両手で上体を浮かして、立ち上がろうとした。  
「実はかなり酔ってる?」  
「そこまで、じゃねーはずだが」  
 キオは酒精に強い方で、顔が赤くなったり青くなったりもしない。  
 酔い潰れた彼を見たことがないので、酒精によって平衡を崩したのかどうかパシャには判断つきかねた。  
 そうして起き上がったキオが再び窓際に腰を落ち着けると、料理が並ぶところに違和感があった。  
「これは」  
 今までは無かったそれはどうやら小箱のようだった。  
 質素な作りで、簡単に手の平に乗るくらいの黒く細長い箱。パシャは何気ない動作でひょいと掴み取る。  
「う、お! パシャ、返せ!」  
 ようやく気付いたキオが静止の声を上げたときには時既に遅く、パシャは小箱の蓋を開いていた。  
 
 その箱は倒れた弾みで彼の懐から飛び出たものだった。  
 中に収められていた物は月光を浴びてきらきらと銀色に輝く。  
 角度を変えて眺めればそれだけで、うっとりするような光の乱反射がパシャの瞳を射る。  
「綺麗」  
「そーか、そらよかった……」  
 小さなハチドリ【クェンチィ】を思い浮かべるような形の銀でできた装飾品だった。  
 月光を跳ね返していて、夜空を彩る蜂鳥座のような佇まいを見せている。  
 双面の金星神アウ・キヤに仕える司祭の召還する《蜂鳥座》と比べても見劣りしない。  
「すまない、キオ……私も酔っているのかも。自分を止められなかった」  
 思わず集中してしまった無礼を謝ると、小箱ごと突き返した。  
 いつの間にかキオはすぐ近くにまで寄っている。  
 しかし彼の白い手は手の平を向けてそれをパシャに押し戻した。  
「もともとパシャにやる予定のもんだ。綺麗だって思うんならそのまま持ってていい」  
「……?」  
 (この銀の鳥を? 私に……まさか)  
 その黒く濡れた瞳が「冗談だ」と言うのを待ち受けた。  
 しかしいつまで経ってもその瞬間は現れなかった。  
 逆にパシャの方から話しかけようとしても、詰まったように声が出てこない。  
 
 じっと見つめる彼女に痺れを切らしたのか、キオはぼそぼそと言い訳を始めた。  
「いや、さ……こないだ川で泳いだろ? 実は裏で賭けやってたんだ、誰が一位かってな。  
 んで、サッリェに「勝たせてやるから俺の分も買え」って頼んで……  
 ま、ヤツは俺の分しか買わなかったけどさ。すげー配当もらったわけ。  
 そん中に銀粒がかなりあったから鍛冶のおっさんに頼んで造ってもらったんだ」  
「……でもどうして、それを私に?」  
「パシャが俺のこと避けてたからだ。機嫌悪くしたってこれでも反省したんだ」  
 さも心外だと言わんばかりに、キオの口が不満げに尖る。  
 
「あれは――」  
「ホント、悪かった」  
 「キオのことではない、自分の浅はかさが身に沁みただけ」と続けようとしたパシャは、  
 本当にすまなそうな彼の表情に押しやられた。  
 (だとしたら、キオは何を悪いと思ったのだろう?)  
 それが当然な疑問としてパシャの心の内を横切った。  
「あん時、パシャが男どもの前で際どいところまで脱いだから……普段のパシャも飄々としてるしな。  
 だから……下衆なこと言っても平気だろって勝手に思ってた」  
「あれは、度が過ぎた」  
 今思うと顔が蒸し上がってしまいそうだった。  
 ……前しか見えていなかったパシャは後で知ったことだが、  
 「用意」の時点で下着が見えないようにと、友人たちが後ろで目を光らせていてくれたらしい。  
 
 そこでキオは大きく深呼吸した。  
「謝る、すまん。調子こいてパシャの胸のこと言ったりして、ホントすまなかった」  
「……は?」  
 キオの謝罪はまったく意味が分からなかった。  
「胸?」  
「だからっ! 泳ぎ終わった後、俺、サキトハたちとしゃべってたろ……!  
 ……最後パシャに追いつかれなかったのは、でかい胸が水の抵抗になってたからだ……ってよ」  
 一気に早口になったその内容は最後のほうで力なく細くなった。  
 パシャの記憶には無かったが彼がそう言うのならばそうなのだろう。  
「『恥ずかしい』って言ってどこか行ったきり俺のこと避けるし。  
 こらもー俺のせいだって……パシャのこと傷つけたって、思うだろ」  
 二人とも悩みつつ、その目指すところが違っていたようだった。  
 パシャが自分自身に落ち込んでいた間に、偶然キオが主人のことを不謹慎な冗談の種にしたということ。  
 さすがにその本人としては笑えない冗談だったが……彼の悔いるような様子は本気だった。  
「そう……」  
「博打で儲けた分で機嫌取りに贈り物とか、よ。それにいきなり装身具押し付けるのも迷惑かなーとか……  
 悪いとは思ってンだが、どーにもこの砦だけじゃ他に何もできそーになかったからな」  
 
 ――許してくれないか。  
 その言葉で謝罪を締めたキオは、様子を窺うようにパシャを見つめていた。  
 そのヒトの顔は凹凸に合わせて月光が影を作っている。  
 彼からみる彼女の顔もまた、淡い光が照らしているだろう。  
 パシャも本当のことを言うことにした。  
「ん、許すも許さないも、ない。私が避けてたのは自分がダメな主人だと思ったから。  
 保護者気分でキオのこと信じてなかった……自分が、恥ずかしかった。  
 私も一緒に遅く泳げば……キオがからかわれないだろうと思った」  
 あの時は勘違いをしていた。  
 キオのことを大事に思っていてもその実、価値観を押し付けていただけなような気がする。  
 心のどこかで所有意識があったのかもしれない。  
 彼だって意思を持つヒトだ。  
 道化のように笑われて、それが癪に障ったならばきちんと文句を言える…それだけの強い意志が彼にはある。  
 カニチュらしく甘んじているのは度を過ぎていないからだ。  
 
 
 キオが部屋に侵入してくるまでパシャは夜空の双月を見上げ、  
 強くもない酒を嗜みながら星々の輝きを拾っていた。  
 ――身を捻ってしまうようなもどかしさはどこから来るのだろうか。  
 ――どこまでもこだわってしまうのは、なぜだろうか。  
 身体を動かすときとは別の疲れがパシャの頭を悩ませた。  
「キオはヒトだ」  
 幸運な事に、酒精は彼女の心を幾分軽くしていた。  
 キオであることと、ヒトであることを分けて考えていたから迷った。  
 キオはヒトで……異世界の住人であることが彼の一部分。  
 そう自覚すれば答えはひどく簡単だった。  
「けれども私はキオがいなければ生きていない。  
 命の救い主にヒトも従者も関係ない。だから、大切なキオが侮られるのは耐えられない」  
 誰が何と言おうと彼はパシャにとっての勇者だ。  
 ―― もう、大丈夫だ ――  
 キオの言葉は夢にまで見て色褪せない。おそらく、これからも。  
 あの銀色の手は離したくない。もう、離せない。  
「それは……私がキオを好きだから」  
 素直な感情に偽りはない。  
 首を伸ばすと、パシャは従者の口元へとそっと一度だけ触れ合わせた。  
 
 唇を突然塞がれたというのに、キオは自分の頭の中を整理するので手一杯なようだった。  
「……怒ってねーの?」  
「ない。そもそも私の胸がどうとか聞いてなかった」  
 パシャの見つめる中、軽く握られた拳がキオの口元を覆う。  
 彼は考え込むときはいつもこのような仕草をとる。  
「さて、と」  
 キオはそのうちに状況を把握し終わり、パシャの突然な唇付けに思い至るだろう。  
 今さらだがそれが少し照れくさくなる。  
 キオが持ってきてくれた料理に覆いをかけて立ち上がろうとする。  
「私はもう寝る。だからキオも部屋へ帰って」  
 想いに気付き、伝えられたことにパシャは満ち足りた気分だった。  
 また明日から迷いなくいつも通りにキオと顔を合わせられるだろうということが、嬉しかった。  
 
 
 
 しかし、意外な衝撃にパシャは悲鳴を挙げざるをえなかった。  
「――んにっ!」  
 遠慮なく思い切り握りこまれ、山吹色の尾は驚きに撥ねる。  
 武器を扱う三本目の腕として鍛えてはいるが末端部分はかなり敏感だ。  
 不意をつかれれば当然飛び上がってしまう。  
「キオ!」  
 犯人は一人しかいないわけで、パシャは急いで振り返ろうとする。  
「あっ……」  
 悪戯な酒精の小人たちは思ったより数を増やしていた。今度は手を引かれて呆気なく身体の平衡を崩す。  
 再び腰を落としたパシャは壁に背中を預け――その温かい壁は座り込んだままだった従者の胸板。  
「いや、あれだけしといて…部屋へ帰って…はひどくねーか?」  
「んっ」  
 首筋にキオの吐息がかかり、パシャもこらえきれない吐息を洩らした。  
 低く響く声が戒めのように全身を強張らせた。  
 
「それにさ、この銀飾りも放っておいてさー?」  
「ん……キオは謝る必要がない。私は怒ってないから」  
「はあ……これ、一応パシャの為ってことで作ってもらったんだけどよ。受け取ってくれねーと俺が空しい」  
 握られたままの手の平に、黒い小箱が収められた。  
 そしてびしりと固まったパシャの腕が箱を開く方向に力が入るまで、キオの手はパシャのそれを覆い続けた。  
 
「これ。どこに付けたらいい?」  
 それは銀色の贈り物を受け取った答え。  
 羽ばたく鳥型の飾りを支える鎖はとてもなめらかで、手の平から流れ落ちてしまうようだった。  
「首ンとこだ。ちょい貸してみ」  
 首の周りを、窮屈でない程度にくるりと鎖が光る。  
 キオの指がまた首筋をかすめパシャはぴくりと肩を揺らした。  
「似合ってる」  
「……あ、ありがとう」  
 パシャは喉元やや下にある翼の感触を指でなぞった。  
 涼やかな音を立てる鎖とは反対に、それはキオの体温を丹念に吸っていて温かかった。  
 そして、散々銀の飾りを弄くりまわした末にパシャはどうにか呟く。  
「そろそろ、どいてもいい? 私、重い……から」  
 二人とも身体を寄せ合ったまま沈黙を保ち、体温を共有し続けていた。  
「へへっ」  
「何かおかしい?」  
「ああ、どきたかったら好きにすれば?」  
 主従の左手は指を互い違いに絡ませ合っている。  
 外側からパシャの手を包むキオの力は強くなく、  
 強くあってもジャガー族であるパシャが振り解けないことはないはずだ。  
 さらに抱き留められているというわけでもなく、ただ背中と胸を触れ合わせているだけ。  
「う……」  
 それなのに、パシャの身体は動きたがらなかった。  
 力を入れようとしても途中で芯が入ったように固まってしまう。  
「本音の部分では動きたくねーってことだろ」  
「んっと、こういうの、初めてではないけど」  
 この麻痺してしまったような感覚を、パシャは知らなかった。  
「男とくっつくのが?」  
「ん」  
 パシャの黄黒二色の髪が前に振れる。  
「……ま、それは置いといて、だ。ようやく実感できた。いやー、嬉しいね」  
 キオは言葉通り何か嬉しそうだ。  
 そのしみじみとした口調は、言外にも溢れるような嬉しさを一層強調していた。  
「何が?」  
「何がって。パシャが俺から離れたくねーってのが実感できて、嬉しいってことさ。  
 いきなりキスされたら混乱するだろーが、コラ」  
 キス――口付け、唇を触れ合わせること。ここ数ヶ月で加速度的に流行している言葉だった。  
 パシャの友人の一人である輸送科の娘が時折本国から持ってくる情報誌を見せてもらったことがある。  
 
「すまない。私がしたかっただけ」  
「……は?」  
「キオのことを好きだとついさっき気付いたら、自然としてた。迷惑だったら謝る。取り消せないけど、謝る」  
 とん、という重みがパシャの肩に加わった。ごつごつした感触はキオの顎の骨だろう。  
 そしてその先から大げさなため息というか、熱い料理を冷ます時のような風が吹いた。  
 
「どこをどーしたら、そんな風に思うわけさ?  
 俺が何とも思っちゃいねーヤツに首飾りをやるとか思ってんのか?」  
「キオは給金が少ない。そしてここは砦……キオもさっき、できることは限られるって自分で言った」  
「そーじゃねーって。男と付き合ったことあんだろ? 察してくれ……」  
「最長記録が十日。経験自体は少ない」  
 思い出したくはない記憶だが、キオの言いたいことが分からないのなら仕方がない。  
 白状して彼の助言を待つ……と、脱力したような重みがパシャの肩に乗せられた。  
「キオ、重い」  
「あ、悪い。しかし困ったな」  
 すぐにその重さはどけられた。  
 パシャがその元を目で追うとキオは軽く握った右手を口元に添え、眉を寄せながら考える素振りを見せていた。  
「いいか。ちゃんと言うぞ、パシャ」  
「ん」  
 キオはゆっくりと諭すように言う。  
「パシャは俺のことを好きだって言ってくれた。  
 ……な? 気にかけるくらいのいい女に言われたら、男は嬉しくなる。応えたくなる」  
 そして自由な右手をパシャのうなじになぞらせた。  
「キ、オ?」  
 そのまま頤に指をかけ、パシャはキオの方を向かされる。  
「パシャがキスしたくなったのと同じだ」  
「待って。別に私は――」  
 パシャは最後まで言うことができなかった。  
 
 一方的に受けた軽い挨拶に応えるように、ただパシャのように一度だけではなく、唇へ二度、三度と。  
「別に――何だって? まさかするのは良くて、されるのが嫌とか言わねーよな?」  
「あ、ぅ」  
 さらにそれは頬だったり、額だったり、耳元の髪の毛だったり。  
 ゆっくり、ゆっくりとキオは唇と吐息を押し当てていく。  
「ち、違…く」  
「そんな顔で言われても説得力ねーよ……」  
 実際、キオの柔らかく触診するようなキスはパシャの固い表情をくすぐったそうに崩していた。  
 彼の言う「そんな顔」は実に自分らしくない顔のことだろう、そうパシャは思った。  
 抵抗したがる理性とは逆に、身体には力が入っていかない。  
「ほー……パシャ、尻尾も嬉しそうなんだけどさ?」  
 それどころかパシャの知らない所で身体が信号を送り始める。  
 喜びに震える尾の先を抑えても、温かい感触が降るたびに枷は解かれる。  
「言わない、で……」  
 キオの右手が肩から身体に沿って降りていく。そして腰を抱きとめるようにするすると這う。  
 
 
 
 その指先が服の上から「それ」に触れた途端、パシャの身体に悪寒が伝った。  
「緊張してんのか?」  
「そうではなくて」  
 吐息が肩までの髪を揺らし、喉元をくすぐるが――切なさとは逆に焦りを生む。  
「安心しろって……こーしてるだけだから、さ」  
「キオ! 待って!」  
 彼の声はこれまでで一番優しげで、本当にそうしてくれるだろうと信じられる。  
 しかし、パシャにはパシャの問題がある。「それ」を知って、もし態度が裏返りでもしたら――いや、きっと。  
「どした?」  
 腰に回した右手をパシャに力強く捕まれたキオは素直に動きを止める。  
 
「キオ。部屋、帰って」  
「……」  
「この首飾りは大事にする。嬉しいのは本当。  
 でも、戻ろう? 無理に応えなくていい、から。主人と従者、いつも通りに戻ろう?」  
「……やーだね」  
 口調は優しげなままだったが、はっきりとした拒絶だった。  
「やめて欲しいならその……悲しげな顔と声、何とかしてみ?」  
「キオ、帰って。これは命令」  
「29点。合格には程遠いな。赤線引いてやる」  
 
 それきり主従二人は口を噤む。パシャが話さなければキオもまた、口を開くことはない。  
 パシャは押し出されるように息を吐いた。  
「怖い、から」  
 月光に浮かび上がる彼の顔を見れば、キオは既に視線を彼女に送ったままだった。  
 パシャの腰を緩くぽんぽんと叩いて先を促してくる。  
「私には……ひどい傷が残ってる、から……っ。キオだって、見たらきっと…。嫌な気持ちになる。  
 だから応えてくれなくていい。どうせ、ムダ」  
 その黒々としたヒトの瞳を見続けていられそうにもなかった。  
 微笑むというわけではないが、目の色が優しい。優しすぎて、怖い。  
 見ているとパシャの中で何かが揺らいでしまいそうだった。  
 すると、ふわりとした感触がパシャの頭を抱き寄せた。  
 キオの右手はそのまま幼子を宥めるように毛髪を撫でさする。  
「キオ?」  
「ああ……なんでかよ、こーしたくなった。これも、嫌か?」  
「……」  
 パシャに答えられるはずがなかった。意思を正確に紡ぐには語彙が不足しすぎていた。  
 もし不完全なまま口に出したとしても、キオはきっと自分勝手にいいように解釈するはずだ。  
 ……それが嬉しいのか、悔しいのか、パシャには分からなかった。  
「なんとなーくだがな、分かってきたぜ」  
 撫で終わった後も依然としてキオの右手はパシャの頭を軽く覆い続けた。  
「それなら」  
「黙って聞けって。なぁ、パシャ、『手中の賽は永遠に零【マナ】』……偽善だと思うか?」  
「決まってる。分かって、る……変わら……ない」  
 この時はじめてパシャの心の天秤は大きく一方に傾いだ。  
 キオの言うところは、これまでに覚えた感情を再び体験させるということ。  
 身勝手な好奇心と安請け合いはいくらキオでも頷けなかった。  
「昔を思い出したんなら、すまね。けどよ、そいつにできなくて、俺にならできることがある」  
 彼は続ける。相変わらずゆっくり、噛んで含めるように。  
 
 けれどもその落ち着きが逆にパシャの心をささくれ立てた。  
「何……何、がっ!?」  
 パシャはとても止められそうになかった。  
 ――キオの声の調子から少しだけ顔を覗かせる自信のようなものに対して。  
 ――いつまでたってもキオを振り解けない自分自身の情けなさに対して。  
「惨たらしい血と肉に親しんだ戦士でさえ顔を背けたのに、  
 平和に浸ってきたキオが……ヒトがどんな顔をして、そんなこと言えるの?  
 それともヒトは気持ち悪いものを見ながらでも女を抱けるような異常者ばかり?」  
 パシャが戦場以外で長々と口調を激しくするのは、記憶にないぐらい久しいものだった。  
 激しさがさらなる昂ぶりを呼ぶ。  
 
 
「……別に異常者でも構わねーよ。パシャが望むなら、な」  
「そんなこと、望まない」  
 ――孤児が手っ取り早く職につくには戦士になるのが一番だった。  
    軍養成所に引き取られ得物の扱いを学び、芋蒸かしの仕事も兼ねながらどうにか食い繋ぐ日々。  
    眠りに付くたびに恐怖に魘され、虚ろな目を光らせる日々。  
    そんな日々のさなかで士官候補生たちが話す色事をパシャは聞きつけた。  
    「天にも昇る気持ちになれること」「男は女が脱げばその気になること」  
    何より「朝までぐっすり眠れること」という言葉がパシャを惹きつけた。  
 
「なら、俺に何して欲しい」  
「だから何度も言ってる。無理に応えなくていいから、帰って」  
 ――既にサナンパを終えていたパシャの身体つきは大人の女性と比べても遜色がないほど美しく育っていた。  
    名も知らない候補生の一人を初めての相手に選ぶと、その男は簡単にパシャの誘いにのった。  
    しかし、誘いはしたものの結果は散々だった。  
    男の受け入れを果たしたところまでは良かったが、  
    胸を直に触ろうと上衣をたくし上げた男は顔をしかめ、すぐさま元に戻した。  
    その後、彼は単調に腰を振りどうにか達すると身繕いをして去った。  
    下腹部に浴びせられた精液は時とともに冷え、乾き……パシャは失敗したことを悟った。  
    それ以降も、経験が足りなかったからだろうと無理やり自分を納得させ、  
    「朝までぐっすり眠れる」ほどの相手を探した。  
    ……しかしパシャの目に適う者はどこにもおらず、最後まで抱きとおす者でさえ片手に満たなかった。  
    もっとも行為を完遂したものでさえ三日で彼女を避け始め、一週間も経つと声すらかけてこなかったが。  
    このような色事の相手選びは、  
    パシャの火傷に関する噂を興味半分に広げようとした男を医療所送りにしたのを契機に収まった。  
 
「そうやっていつまでも、悲劇の主人公やってるつもりか」  
「違う。私は……私はっ」  
 ――ありていに言うとパシャは怖い。好意を寄せるのは本能でも、釣られた男が怯むのを幾度となく見た。  
    自分の裸身はどうにも男を「萎えさせる」のだそうだ。  
    その気持ちを……パシャが分からないはずもない。  
    本人でさえ、ごく稀にどうしようもなく哀しい衝動に襲われてしまうのだから。  
 
「そこで止まるなら認めるってことだろ、結局。「私は」何だよ」  
「私は……寂しくなんて、ない。勝手に想うだけで…それだけでっ」  
 ――最後まで自覚することなかったが、パシャは寂しかった。  
    本音の部分では寂寥の思いを満たしたかった。満たして欲しかった。声無く叫び、助けて欲しかった。  
 
「だから俺も応えたいって言ってるだろ」  
「ああ、もうっ。話題の繰り返しはやめて。ムダだし、ダメ」  
「そっちこそ独りで決め付けんなよう」  
「くっ! かわいく言っても似合わないだけ」  
「ひどいなー。しかしどした、今日は。えらくぺらぺらと話すな?」  
「……っ!」  
「そこでダンマリか。そんじゃ俺だけでしゃべるかんな。いやー、今日は嬉しいことだらけだったなー。  
 怒ってないって分かったし、パシャが俺のために一緒に遅く泳ぐつもりだったとか」  
 パシャがぐっとこらえるのを傍目にキオは舌を泳がせ続ける。  
「俺のこと大切だって言ってくれたり、首飾りを嬉しいって言って――」  
「――キオの」  
 それ以上キオの一人舞台を展開させるわけにはいかなかった。  
 
 自らの言動を逐一報告されるのはひどく恥ずかしすぎた。  
「分からず屋っ!」  
 パシャの腕はようやくにしてキオの抱擁を振り解く。抵抗らしい抵抗はない。  
 彼の手はいつの間にかただ優しく添えられていただけなことに、パシャは掴みかかりながら思い至った。  
 
 
 
 それは既視感を伴う体勢だった。"約束"を交わした、あの日。パシャとキオが主従になったその日。  
 気紛れを起こせば触れ合ってしまいそうなほど近距離で、パシャはキオを床に組み敷いている。  
 いや……既に触れ合ってしまってはいるのだが。けれども近くて、遠い。  
「しつこい男は、嫌われる」  
 高揚した感情はパシャの息を僅かに荒げさせたままだ。  
「男と十日もたなかったパシャがそれを言うのかよ」  
「……っ」  
「あ、そーかそーか。俺は男じゃねーか、雄か」  
「違う。そういう意味と、違う」  
 この体勢ではあまりにも自然にキオと目が合う。  
 思うところをぶつけ合う隙間に、視線を外すことはできなかった。  
 だからパシャにはありありと理解できてしまう。  
 言葉の応酬の裏側でキオの瞳の色が優しいままだということが。彼には、とても敵わなそうだということが。  
 それでも主人が従者との戦いに降参するわけにはいかなかった。  
 
「本当にお願い、キオ」  
 ただ戦場は違えども、ヒトの従者と言えども、彼も戦士だった。  
「おいおい、主人が物を頼むのかよ。「お願い」って、さ」  
「……命令したって全然聞かないくせに」  
 そして、駆け引きでは及ぶべくもなかった。  
 
「まあな。主人の本心からの命令にだけ……従者は忠誠ってヤツを示せばいい」  
 
「それ……は」  
「俺にだけできる特権ってこと。他の男にはできないこと。さっき言ったろ?」  
 ぼかしたような言い方には不慣れなパシャでも、時間をかければゆっくりと理解していく。  
「ほら、命令してみろって……な?」  
 確かにパシャは主人で、従者のキオに命令できる立場ではある。  
「本当にパシャがさせたいと思う命令」  
 「本当に」の部分を特に強調してそう言った。  
 組み敷くキオの体は以前にも増して鍛えられてはいるが、あの時のように強張ってはいない。  
 あの時と、今この時と、確実に二人を通ったもの。  
「キオは……わがまま……わがままに過ぎる」  
 パシャはどうにか、その言葉を絞り出すのが精一杯だった。  
「わがまま結構、ご主人サマ。真の命令を理解できるのが、デキる従者だよ」  
 時間をおけばおくほど彼の考えていることが分かってくる。  
 彼の頭の中ではある一つのことがもう既に決定されている。  
 それを達成するためには、どこまでも我を通すつもりだ。  
 ……パシャの命令に偉そうに落第点をつけたのは、それが彼女の本意と真逆と感じ取ったから。  
「想像できない。今のまま……優しいままのキオを想像できない」  
 それでもパシャは頑なだった。  
 その様を思い浮かべようとしても直前で白い靄がかかる。パシャの思考は先に進むことをどうしても拒む。  
 
 
「その……ありえないと思う未来は、俺が、作る。他の誰でもない。  
 パシャが退くなら追う。たとえ一歩俺が怯んだとしても、次に二歩進む」  
 ――追う。  
「何度だって言うぞ。これは俺たちにしかできない……俺に、命じろ」  
 ――だから命じろ、と。  
 
 その時パシャの心に生まれたものが何かが分からない。色も形も匂いすら分からない、ただ温かかった。  
 けれども傾きかけていた天秤が反対のほうに手を下げて行く。  
「……もう」  
 これまでの葛藤が嘘のように、  
「仕方がないなあ、キオは」  
 パシャの口をついて出た。  
 本人でさえ耳を疑うような声音はずっと頼りないもので、それはキオを明らかに狼狽させた。  
「ンな顔されたら、調子狂う」  
「キオがこうさせた」  
 彼は嫌がっているわけではない。その証拠にさまよう瞳はちらちらと正面に焦点をかすめる。  
「自分でもびっくり……私でも……こんなに笑え、てる?」  
 キオの見上げるパシャの笑顔は正直、五分咲きというところだった。  
 それでも普段の開き始めた花びらのようなそれとは比べ物にならなかった。  
 平たく言えば、引きずり出したパシャの笑顔に目が合わせられない。  
「まだやること残ってンだろ」  
 落ち着かないようで「あー」「うー」と濁していたが、彼は最終的に主人へと押し付けた。  
「ん」  
 一足飛びに進展してしまった状況に関わらずキオはこだわる。  
 大雑把に見えて実は細かい。また新たな一面を発見することができたことに、パシャは素直に喜んだ。  
「キオ、照れてる」  
「……言うなっ」  
 顔を背けたキオの首筋がパシャの目下に露になるが、即座に沸き起こった感情をどうにか抑えこみ、  
 律儀な従者の考えに女主人は付き合うことにした。  
 
 パシャは口で言うほど「仕方がない」とは思っていない。  
 そして怖いと思う気持ちが完全になくなったわけでも、ない。  
「私はキオが好き」  
「おう」  
 しかし、今まさに自分の顔が笑みに綻んでいるその事実が何よりも確かだと信じたかった。  
 信じてみたいという気持ちになれた。  
 密着した間合いを嫌ったパシャに、頭を下げ体をねじこんだキオ。  
 その手段は強引とでも言えるものだ。しかしだからこそ、その強引さがパシャには頼れるものとして感じた。  
 ……それはきっと、彼が真剣に向き合ってくれた証拠だから。  
「だから、応えてくれると――ううん、違う」  
 苦し紛れの牽制を振り払ってくれたキオに対して今度はパシャ自身の番だった。  
 抱きしめるために、三本もの白銀は必要ない。二本の腕と一本の尾があれば充分だ。  
「応えなさい、キオ」  
 初めてする口調に、やはりパシャは慣れない。語調がぎこちなく崩れた。  
 しかしそれは大したことではないと二人とも分かっている。  
「私を受け入れ、なさい。……私を、抱きなさい」  
「……仰せのままに……」  
 間髪入れず、二種類のくすくすといった笑いが静謐を満たした。  
 

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