ぴんぽーん
太陽が水平線に沈んで少し時間が過ぎた頃、滅多に響かない音が、6畳一間の
我が家に鳴り響いた。
誰だ?っていうよりなんだ?新聞の勧誘なら即刻お帰りいただきだ。心の中で
つぶやきながら、玄関の覗き窓に顔を近づけるとそこには
「姉さん?」
しばらくぶりに見る、姉の顔があった。
あわてて鍵を開け、ドアを引く。すると。
「トーーーーーーモーーーーーーー!」
物凄く酒くさい姉が、思い切り抱き着いてきた。多少よろめきながらもしっか
りと受け止める。
しかし。俺も結構いける口だが、姉はそれに輪をかけて酒好きだ。にもかかわ
らずゴールデンタイムに差し掛かるか掛からないかどうか、という時間帯に、こ
こまでキてる状態なのは初めてだ。
台所まで引きずって行き、冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを出
して渡す。それを一気にゴクゴクと飲み干したあと、俺の顔を睨んでこういった。
「なんでお酒じゃないの……」
完全に出来上がっている姉を風呂場に叩き込み、俺はいそいそと部屋の掃除に
取り掛かった。煎餅布団を押し入れに上げ、隅に転がっていたちゃぶ台を部屋の
中央に据える。それと……あった。タンスの奥から高校の時分に使っていた
ジャージを取り出し、脱衣場に持っていく。
「姉さ〜ん、着替え置いておくよ〜」
「ぅぃ〜」
酔っ払って湯舟に沈んでないことを確認し、脱衣場に脱ぎ散らかされた姉の
スーツと下着を拾っていく。ついさっきまで身に着けられていたそれはまだ暖かい
かんいかん。下着とシャツを洗濯機に放り込み、スーツをハンガーにかけたところ
で、ジャージを着込んだ姉が風呂場から出てきた。
「トモ、これちょっと小さい。胸苦しい」
「文句言わないでよ、姉さんの体型に合いそうなサイズってそれしかないんだから」
「いいわよ別に合ってなくて」
そう言うと、姉のスーツの横にかけてあった俺のYシャツをハンガーからむしり
取り、ジャージのトップを脱いでシャツを羽織った。そのとき俺の目に飛び込んで
きたのは、風呂上りでほんのり赤みを帯びた、下着を着けていない綺麗な背中
だった。
「あー……ごめんね、突然押しかけてきて」
熱さましにもう一本ミネラルウォーターを飲み干して、姉はそういった。
「確かにずいぶん急だね。今度はいったい何?」
「思い出したくもない。あんな脂肪どもと酒飲んだら、酒がかわいそうだ」
さしずめ、上役か営業先での接待だろう。しかし、腹に据えかねるのはわかるが、
都心から多少離れているこの家は、姉の住んでいる地域とは真反対に位置している
わけだが。
「で、何で俺の家だった訳?」
「なんとなく」
即答された。
「まぁたまにはいいじゃない。あ、晩御飯まだでしょ?迷惑かけたから何か作って
あげる」
「あ」
俺が止めるまもなく、姉は冷蔵庫を開ける。そこには
「ビールと水と、クレームドカシス。あんたもやるわね」
結局、冷蔵庫の奥に転がっていた賞味期限ぎりぎりの野菜や、つまみ用の豆腐、
冷凍庫で凍り付いていたひき肉などが発掘され、どうにかありあわせの料理が完成
した。炊き立てのご飯、インスタント味噌汁とともに、ちゃぶ台を彩る。
食卓に華を添えるのは、普段あまり会うこともなく、連絡もなかなか取り合わ
ない姉弟の、近況報告。曰く、最近姉は昇進し、それに伴い下らない雑事ばかりが
増えてきてフラストレーションがいつになく溜まっていたりだとか。俺も、この
まま進めば学校を無事卒業出来そうな単位の取得ペースだとか。
「それにしてもさ」
食事も済み、二人で洗物をしていると、ふいに姉が切り出した。
「二人とも関西出身なのに、なんで標準語で喋ったりしてるかな?」
言われてみて、納得する。二人とも関西から上京してきてそこそこの年月が
経っている。言葉など、それだけあれば変えてしまうほどに。
「戻してみぃひん?」
姉が笑いながら提案してきた。
「せやな」
俺も同意した。
久々に、姉弟に戻った気がした。
「さってと」
時計の短針が10を指したころ、姉が風呂場に干してあった下着の様子を見に
行った。確かに、そろそろ家を出ないと終電を逃してしまうころだ。
立場が、俺たちを引き裂く。
足音を立てないように、息を殺して脱衣場に入ると、既に乾いた下着だけを
身に着けた姉の後姿が見えた。ゆっくり近づいて、後から腕ごと抱きしめる。
「ひゃあ!トモ、なにすんの!?」
驚いた姉は、俺の腕の中から逃れようと体をゆするが、少しきつく抱きしめる
と、観念したのか首だけこちらに回して動きをとめた。
「離してーや。アタシ明日も仕事あんねんから……学生のあんたとはちゃうねん
で……」
「帰んなや」
「あんたとアタシは姉弟なんや!せやから、こんなんあかんむっ!?」
涙を流しながら、離してと哀願する姉の台詞を唇でふさぐ。不意のことに体を
硬くした姉を正面から抱きなおし、今度は深く、舌と唾液を交わらせるように
キスをする。数分ほど口の中を犯してから、抵抗しなくなったことを確認した後、
ようやく唇を離す。
「帰んな」
今度はもう少し強く、命令するように言い放った。
すると姉は、頭を俺の胸に埋めるように抱きしめ返してきた。
「今回だけやで……」
そういって、再び目を閉じて顔をこちらに向けた。それに応えるように、俺も
もう一度口を塞ぎにかかった。
でも姉さん気がついてる?「今回」って、いつも言ってるよね。
「んはぁっ!」
茂みと肉に埋もれていたルビーを指で押しつぶすと、姉は体を硬直させたあと
脱力した。
「イってもた?」
後から抱きしめ、少し意地悪い質問を耳朶を噛みながらする。
「そんなん聞かんといてや……」
オルガスムスに揺られながら返ってきた言葉は、少しだけ震えていた。
姉の膣に少しだけ指を刺してみると、そこは火山もかくやというぐらいに、
熱く潤っていた。
「ちょっと待っててな」
腕の中にいた姉を布団に横たえ、俺はタンスに入れておいてあるスキンを取りに
行こうとした。しかし、膝立ちになった俺の腕を姉が取る。
「今日、大丈夫やから……」
台詞の意味を理解した俺は、腕を握ってきていた姉の手を掴みかえして覆い
かぶさり、そのまま一息に挿入した。久しぶりにもぐる姉の中は、やはりとても
気持ちがよかった。
自分の分身の先端で姉の子宮口をえぐりながら、顔を寄せて精神までも
攻めていく。
「姉さん、姉さんの中すごく気持ちいいよ。そんなに俺のチ○ポおいしいんか?」
「ちゃうもん、こんなんあんたのせいやんかぁ……」
「俺のせい?」
「あたりまえやぁ。あんたがいつも強引に…」
「そうは言っても姉さんのここは俺を締め付けまくってるじゃないか。弟の
チ○ポくわえ込んで、おいしそうに涎垂らしてるじゃないか!」
「ちゃうもん!……んぁあ!ちゃうねんもん!」
「安全日だとか言って、本当は狙ってきてるんだろ!?俺とセックスしたくて
来たんだろ?ご丁寧に言い訳こさえて、弟くわえ込みにきやがって、この変態!」
そう叫んだとき、姉の体が震え、俺を締め付けてきた。それに逆らわず、
俺は自分を姉の最奥に差し込んでから精液をぶちまけた。直接子宮に注ぎ
込むように。俺と姉の新しい絆が出来るようにと願いながら。
早朝、扉が閉まる音とともに俺は目を覚ました。また見送ってやれなかった。
あの後、姉の理性を吹き飛ばし、さらに3回ほど姉に注ぎ込んだ。普段会えない
秘密の関係の二人、それぐらい交わったって罰は当たらないだろう。いや、
この関係がばれれば、罰どころではすまなくなるだろうが。
「姉さん……」
まだ布団にほんの少しだけ残る姉の温もりを、全身で抱きしめる。次はいつ
会えるかわからない。見送れば、引き止めてしまう。いつか姉も、俺から離れて
しまう。
台所の奥にしまってあるタバコを取り出し、火をつけた。瞳から流れる水に
消えないように注意しながら。