都内にあるアパートしおれ荘には、関西から出てきた一組の姉弟が住んでいる。姉、  
梅田裕美は大阪在住時、ゴボ天のおひろと呼ばれるほどのうどん食いで通った女傑  
で、上京してからは関西風セルフうどん店で雇われ店長をしていた。  
 
そして弟の久樹は、近くの大学に通う学生である。たとえ姉弟とは言え、年頃の男女  
が一緒に住むのはいかにもまずい感じがするのだが、二人は家賃の節約のために  
と、他人の目も気にせず共に暮らしている。  
 
「姉ちゃん、ソース取って」  
「あいよ」  
六畳一間のアパートの中で、姉弟はちゃぶ台をはさんで昼食を共にしていた。ちなみ  
にメニューはお好み焼きとご飯、それに味噌汁である。大阪では炭水化物をおかずに  
して炭水化物を食すのは当たり前の事で、何も受けを狙っている訳ではない。  
「姉ちゃんは今日、仕事ないんか?」  
「うん。有給休暇もろてん。休んで金貰えるんやで。ええやろ?」  
「メチャ得やな」  
「おまけにな、お店の残りモンもろて帰れるしな。ええ仕事やで。東京モンは味にもうる  
さないしな」  
姉弟は顔を突き合わせて笑った。  
 
「ま、ウチらはこの東京に一旗上げる気で来たんや。慎ましい生活せんとなあ」  
裕美は昼食を平らげると、すぐさま横になった。食後、体の右側を横にして寝転ぶと消化  
が良くなると聞き、それを実践しているのである。そして、今が土曜の午後という事もあり、  
裕美はテレビを何となくつけてみるのだが──  
 
「あーん、こっちの方、吉本新喜劇やってないのがかなわんなあ」  
「スカパー入れれば、見えるんちゃう?」  
「アホ。そんな金使うくらいやったら、中華なべアンテナにしてBS見たるわ」  
裕美は今時の若い娘には珍しく、かなりの吝嗇家である。とにかく、金を無駄遣いする事  
が嫌いで、平素から慎ましい生活を好んでいた。もちろん、それは弟の久樹にも強制して  
いる。  
 
「あー、東京に出てきた芸人はみんなおもろないし。大人の絵本も見られへんなんて、か  
なん!(かなわない)」  
「姉ちゃん、大人の絵本なんてもうとっくに終わってるで」  
「・・・お前は、ホンマにお笑いのセンスないな。終わってるのは分かってるんや。けど、姉  
ちゃんの溢れるリビドーを沈めるようなギャグのひとつでも言えてこそ、芸人といえるんや  
で。今のお前は、面白い事を言った時の村上ショージと同じやで。凡人や」  
裕美が呆れ顔で言うので久樹は、  
「そんなん言うても、俺、芸人ちゃうし」  
と、口をとがらせるのであった。  
 
食後、三十分ほどしてから久樹が不意にこんな事を言った。  
「なあ、姉ちゃん。携帯、買うてエエ?」  
「なに、携帯?携帯言うと、アレか。電話かけるやつか」  
「それ以外に、何があるっちゅうねん。そうや。正式名称は携帯電話や」  
自分も大学生になり、携帯電話が欲しいと久樹は懸命に姉を口説くのだが、裕美は首  
を縦には振らなかった。  
 
「携帯なんて、買うモンと違う。借りるモンや。無駄遣いはやめとき」  
裕美は携帯なんぞ、必ず友達や知り合いが持っているだろうから、買う必要は無いと  
言う。しかし、それでは人づきあいに支障も出よう。久樹は食い下がった。  
「なあ、頼むわ。俺だけなん・・・携帯持ってへんの。俺かて友達とメールやお喋りした  
いんや」  
「あかん。ウチらは東京で一旗上げて、大阪に錦を飾るんや。いつか通天閣のド天辺  
に梅田裕美、久樹の旗をなびかせたるて誓ったやないか。我慢しとき」  
頑なに願いを退ける裕美を見て、ついに久樹は泣き落としで篭絡する事にした。浪速人  
は情に訴えかけられると弱い。そこを突こうとしたのである。  
 
「実は俺、彼女できてん・・・そんでな、その子がメアド交換しよう言うねん・・・」  
久樹が涙ながらに言うと、  
「ハア?」  
裕美は顔を歪め、さもくだらないとでも言いたげな表情を見せたのであった。  
 
「彼女なんて金のかかるモン、携帯以下や。すぐ、別れて来るんや」  
裕美が語気を荒げてそう言うので、久樹は目を丸くした。何という言い草だろう。わが姉  
ながら、その物言いに久樹は驚いた。  
 
「携帯以下て・・・姉ちゃんだって、彼氏おったやないか」  
「確かにおったけど、ウチはデートの時でもビタ一文、銭払わんかったで。しかもエッチ  
するたび、一回につき二万円もろてたし」  
「姉ちゃん、それ、援交と違うか」  
「援交違うわ!デートして、たまたまお金貰ってただけや!」  
ああ言えばこう言う。まことに裕美は弁の立つ女である。またこういう性格だからこそ、  
久樹はなかなか抗う事も出来ないのだ。  
 
「俺の彼女、エッチの時、金なんて取らへんよ。姉ちゃんの恋愛観は間違ってるで」  
「それは人の勝手や。ウチは貰えるモンなら、何だってもろとくで」  
裕美の恋愛観、いや人生観は独特すぎて、久樹には理解が及ばない。まあ、理解でき  
るのは、世界でも数人程度と思われるので、それも止むを得ないことだろう。  
「でも久樹、お前も結局、エッチがしたいだけなんやろ?だったら、姉ちゃんがさしたるわ。  
だから、彼女なんて作るのやめとき」  
と、言うと裕美は部屋のカーテンを閉め始めた。その姿を見て久樹は呆然としている。  
 
「じょ、冗談やろ?」  
「ウチが冗談言った事あるか?久樹、お前も脱ぐんや」  
薄暗くなった部屋の中で、まず裕美が着ている物を勢い良く脱ぎだした。何故か大阪の  
人々がよく着ているスウェットの上下、そしてブラジャーとショーツもその身から脱ぎ捨  
て、あっという間に生まれたままの姿になる。  
 
「うわあ、姉ちゃん洒落にならんて!」  
「洒落と違うわ。お前もはよ脱ぎ」  
「お、俺、近親相姦は嫌や!」  
久樹は這いつくばって部屋から逃げようとしたが、それを阻止すべく裕美が背後から  
襲い掛かった。  
 
「逃がすか、アホ」  
「勘弁してえな」  
「お姉ちゃんも最近はご無沙汰だったし、ええタイミングやと思ってたんや。さ、はよポコ  
チン出し」  
裕美は久樹のズボンから無理矢理、一物を取り出した。しかし、禁忌の交わりに恐怖し  
たのか、それはぐにゃりと萎えたままである。  
「えらい元気ないな。ペレか、お前は」  
「姉ちゃん、もうやめてえな」  
「しゃあないな・・・」  
裕美は弟の股間に顔を近づけると、萎えた肉棒をそっと唇で包んでやった。  
 
「姉ちゃん・・・」  
温かな舌先で肉棒が優しげに撫でられると、久樹はそこへ血が流れ込む事を感じ取っ  
た。比べては悪いが、その技術は彼が今、付き合っている彼女よりも格段に上である。  
 
「久樹、どや?気持ちエエか?」  
「・・・うん」  
「現金やな。もう固なってきたで」  
口唇愛撫を受けるとすぐ、久樹の肉棒は硬化し、天を突かんばかりに反り返った。若さ  
溢れる、素晴らしい剛物だった。  
「恥ずかしいくらい、大きいな」  
裕美は弟の肉棒を手にしながら嘆息する。実際、久樹のそれは茎の部分が野太い上  
に、肉傘がばっと開いて、まるで松茸を思わせる風貌だった。  
 
「これ、彼女は喜ぶやろ」  
「うーん、どうやろ・・・初めは何だか、大変そうな顔しとったけど・・・」  
「女だったら、これにやられたらもう、メロメロに決まってるで。たとえ処女でも、一月もす  
れば風俗嬢やれるようになる」  
「俺は女衒かいな」  
「まあ、それだけいいモン持ってるってことや。おとんとおかんに感謝しい」  
裕美は肉棒を持ったまま久樹を畳の上に寝かせ、自分はそこに覆い被さった。騎乗位  
で交わろうというのである。  
 
「入れるで」  
「もうどうでもいいけど・・・姉ちゃん、ゴム着けんのか?」  
「今日は安全日やから、いいわ」  
裕美は屹立した肉棒の上をまたぎ、片膝をつきながら徐々に腰を落としていく。  
 
「あ、ああ・・・アソコがぐっと開かれる・・・」  
「ああ、俺・・・ホンマに姉ちゃんとするんか・・・ケダモノや」  
姉弟はそれぞれの思いを持ちながら、体をひとつにした。裕美が両膝を突いた瞬間、久  
樹の肉棒はずずっと奥まで入っていったのである。  
「ううッ・・・」  
目を半開きにさせ、裕美は弟と交わす肉の契りを深く味わった。花弁が捲られるような感  
覚の後は、襞が肉傘で抉られていく。  
 
「姉ちゃんのココ、むっちゃキツイで。俺の彼女より、狭いわ」  
「狭いけど、吸い付くやろ?」  
「うん。なんか、不思議」  
裕美の女穴はすでにぬるんでいたが、野太い肉棒が出入りするには、そこはあまりにも  
狭く感じた。しかし、中で奥へ奥へと送り込まれるような蠢きが断続的にあって、しっかり  
と包み込んでくれている。特に肉傘を刺激する動きがたまらなかった。  
 
「なあ、姉ちゃん。出したくなったら、どうしよう」  
「出せばええやろ。別に金は取らへんから・・・」  
「そういう事やなくて、子供出来たらとかの話や」  
「さっきも言うたけど、今日は大丈夫な日やから・・・遠慮せんと出しいな・・・」  
裕美は少し仰け反って、ハアハアと息を荒げながら腰を使った。弟にまたがり、自ら腰を  
振る姉の姿は久樹にとって、何とも淫らな感じだった。  
 
薄暗い部屋の中に姉弟の息遣いと、肉の混じりあう音が響く。いつしか姉は腰砕けになり、  
弟に身を任せるようになっていた。  
「あ、あかん・・・少し、休ませてえな」  
裕美は柔肌に汗を浮かせながら、なおも挑んでくる久樹の胸板を押し返そうとする。もう二  
人は幾度目かの交わりだった。  
「なんや、姉ちゃんから誘っといて」  
「お前がこんなに強いとは思わんかったんや。そろそろ、勘弁して・・・あッ!」  
裕美は座位で女穴を貫かれていた。そのため、逃げようにも逃げられず、久樹の肉棒で  
田楽刺しにされたまま、いやいやと頭を振るだけであった。  
 
「ああ・・・久樹、もう堪忍してえな」  
「いやや。俺はまだ、出来るで」  
細い姉の体を抱きしめ、逃げる事を許さない弟。ただ、彼自身も裕美が嫌だと言いつつも、  
肉棒を咥え込んで離さない矛盾には気がついている。姉もまた、満更ではないのだ。  
 
「ああ、もう知らん・・・ウチ、どうなっても知らんから」  
裕美はうわ言を繰り返し、久樹の頭を小突いたりした。しかし、手に力はこもっておら  
ず、その姿は甘え上手な女が駄々をこねているようにしか見えない。  
 
「どうなるもこうなるもないで、姉ちゃん。これからはずっと、姉ちゃんにエッチさせても  
らう事になるんやからな」  
久樹は座位から正常位に移り、体重をしっかりかけて姉の中をかき回した。次の絶頂  
は淫らに歪む姉の顔を見ながら果たすつもりだった。  
「あ・・・あんッ・・・ウチ・・また・・・」  
「いくんやろ?何回でもいけばええで」  
裕美も高みに達すると見て、久樹は激しい肉棒の抽送を開始した。  
 
「あ・・・ひんッ・・ひッ、ひッ・・・あんッ・・・いくうッ!」  
弟に引導を渡され、姉は官能の坩堝にその身を溶け込ませていく。この時、久樹は激  
しく射精する肉棒が、禁忌の関係に打たれた楔のようになっている事を感じていた。  
 
おしまい  
 

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