「キャー!理香子のやつ、男物のパンツ穿いてる!」  
この一言で、女学の名門、したたか女学院高等学校の二年一組の教室内が騒然とな  
った。なんと、クラスで一、二を争うお調子者の加藤理香子が、ショーツではなく縞模様  
のトランクスを穿いていたのである。  
 
「何騒いでんだ、お前ら」  
体操服に着替えようとしていた理香子は、顔を赤く染めて自分を囲むクラスメイトたちを  
不思議そうに見た。確かにトランクスを穿いてはいるが、だからどうだというのか。理香子  
の顔には、そう書いてある。  
「ねえ、理香子・・・それ、男の人の下着でしょう」  
「見りゃ分かんだろ」  
「やっぱり!い、いやらしい!」  
「お下劣よ、理香子!」  
 
またもや教室内は大騒ぎとなった。クラスメイトは皆、理香子を見てはいやらしいだの、  
生臭いだのと叫ぶ。ある者は頬を染め、またある者は縞模様のトランクスを食い入るよう  
に見ては、ため息を漏らすのだ。  
「いいな〜、理香子。彼氏持ちなんだ」  
「へ?私が彼氏持ち?」  
まさか、と言いかけた所で、理香子は口をつぐんだ。どうやら皆は、何か勘違いをしてい  
るらしい。縞模様のトランクスをブルマの中へ押し込みながら、理香子は曖昧な笑顔を  
作った。  
 
「そういえば理香子には、幼なじみの彼氏がいるもんね。恭平君だっけ?公立のコでしょ」  
「あ、ああ、そんなのもいたっけな・・・」  
確かにクラスメイトが言う通り、理香子には家族ぐるみでお付き合いをしている幼なじみが  
いる。名は幸田恭平といって、中々の男前だが恋愛関係に及んでいる訳ではなく、あくまで  
も仲の良い異性でしかない。  
 
当然、肉体関係はおろか、キスすらした事が無かった。ついでに言うと、理香子はまだ無垢  
である。  
 
「パンツはその彼のなんだよね?ってことは、理香子はすでに穴開きかあ・・・」  
「家も隣同士らしいよ。きっと、そのパンツは彼に命令されて、穿いてるのよ。俺の精液がこ  
びりついたパンツを穿いて、学校へ行け・・・とか、言われて」  
「いやらしい!理香子は、恭平君とやらの肉奴隷なのね!」  
クラスメイトたちが何やら怪しい妄想を始めると、理香子の顔が引きつった。  
「あの、私は別に・・・」  
そう言いかけた時、  
「理香子はクラスで唯一の彼氏持ちだから、羨ましいな〜」  
と、誰かが情感たっぷりに言うので、理香子はつい、調子に乗ってしまった。  
 
「・・・まあ、私も嫌いじゃないしね・・・そういうの」  
どこか影を帯びたように、呟く理香子。ちなみに、言いながらブルマから色々はみださぬよう  
膝を曲げて身だしなみを整える格好になっていて、それが恐ろしくみっともない。  
 
「処女喪失はいつなの」  
「小六・・・だったかな」  
「は、早い!凄いなあ、理香子は」  
「そうかな。フツーじゃないの、今時は・・・」  
もはや退けぬ。理香子は一躍、時の人となった自分に集まる羨望の眼差しに酔っていた。  
 
「ねえ、理香子。精子飲んだ事、ある?苦いって本当?」  
「うん、あるよ。苦いけど、慣れると普通に飲める。まず〜い、もう一杯!って感じで」  
「なんか、青汁みたい」  
「実際、青臭いよ。皆も飲んでみれば?」  
「あたし、絶対に飲めない。オチンチンから出る汁なんて」  
「彼氏のだったら飲めるよ。まあ私の場合、恭平に仕込まれたって感じだけど・・・ふっ・・・」  
今の理香子は、嘘に嘘を重ねる状態だった。性に疎いクラスメイトを騙すのは気が引けた  
が、どうせここは女ばかりの学院。ばれる事もなかろうと、たかを括っていたのだが──  
 
「ねえ、理香子。ちょっと、彼氏の写真、見せてくれない?」  
無邪気なクラスメイトのこの言葉に、理香子は心臓が止まりそうになるほど驚かされた。  
「しゃ、写真?」  
「うん、写真。撮ってるでしょ?ケータイとかで」  
「あ、あるよ・・・」  
理香子は携帯電話を手繰り、恭平の写真を探した。  
(確か、お正月に並んで撮ったやつがあったはず・・・)  
毎年、両家は年始の挨拶を合同でやっているので、写真ならいくらかある。理香子は背に  
冷たい汗を流しながら、なんとかお目当ての写真にたどり着いた。  
 
「はい、これ」  
幸い、ケータイにはツーショットの良い感じの写真が残っていた。向かって右に理香子、  
左に恭平が写っている。ちなみに理香子は自他共に認めるお調子者らしく、おせち料理  
の伊勢エビを頭の上に乗せながらのスマイルを写真に収められていた。  
 
「うわあ、格好良い!いいなあ、理香子」  
「羨ましい!この彼に毎晩、いやらしい事をされてるのね。ねえ、肉奴隷ってどんな気分  
なの?」  
「まあ、ご主人様に仕えるメイドみたいなもんよ。やりたい時にだけ来いって命令されて・・・  
ふふ、でも私、拒めないの。だって、恭平の事、愛してるから・・・」  
理香子は自分が悲劇の主人公にでもなったようである。本当の話をすると、恭平は理香  
子を妹のように扱う優しい少年だった。好意はあるような無いような、微妙なバランスが保  
たれており、それがまた心地良かった。しかし、今はそれを隠して、やたらと大人びた所を  
見せねば気がすまない理香子。まさにお調子者の本領発揮と言えよう。  
 
「ねえ、理香子。男と女って、付き合いが長くなるとお尻の穴でセックスしたりするって、  
本当?」  
「あ、それ、あたしも聞いた事ある。それに、縄で縛ったり、浣腸したりするって」  
「便秘気味のやつには良いね。そう言えば理香子は、便秘知らずだもんね。やっぱり、  
やってるんだ。ねえ、お尻の穴でするセックスって、どんな感じ?教えてよ」  
「えーと、それは・・・」  
クラスメイトたちの尽きない好奇心に、理香子は徐々に追い詰められていた。おまけに  
皆、女学院育ちゆえ知識に偏りがある。理香子は内心、焦りを感じていた。  
 
 
その晩、理香子は隣家の恭平を訪ねた。そして、開口一番──  
「私を肉奴隷にして下さい」  
と、土下座をしながら、頼んだ。もちろん、恭平はズッコケて座っていた椅子から転げ落ち、  
脳天をしたたかに打った。  
 
「いきなり、何を言うんだよ」  
「だって、私・・・皆に、そう言っちゃったんだもん」  
理香子は涙目になって、今日あった出来事を打ち明けた。学校にトランクスを穿いてた行っ  
た事、そしてそれが原因で自分に恭平という彼氏がいる事になり、様々な性行為を営んで  
いるという話になった事などを、包み隠さず言った。  
 
「・・・という訳なのよ」  
「ふむ。俺がお前の彼氏という話はともかく、どうしてトランクスなんて穿いて行ったんだ?」  
「フレンチパンティの履き心地が良いって聞いて、欲しくなったんだけど、高くって手が出な  
かったの。そんで、形が似てるトランクスを試してたんだ。百円ショップで買ったんだけど、  
中々の履き心地でね」  
「アハハハ!バカバカしい!アハハハハハハハハ!」  
「笑うな!こちとら、真剣なんだよ!」  
「これが笑わずにいられるかってんだ!このお調子者!アハハハハハハハハハハハハ!」  
恭平は文字通り、腹を抱えて笑っている。この幼なじみのお調子者っぷりは知っているが、  
まさかここまでとは思ってもみなかったからだ。  
 
「ひとしきり笑った所で、話を戻すわよ。ねえ、恭平。あなた、アナルセックスってした事  
ある?」  
「無いよ」  
「じゃあ、普通のセックスは?」  
「それも無い」  
「困ったわね。私のクラスじゃ今、恭平はSM狂いで女を女とも思わぬ色キチガイって扱  
いなのに」  
「おい、ちょっと待て!なんだそれ」  
 
恭平は思わず身を乗り出した。自分の預かり知らぬ所で、おかしなプロフィールが作成  
されてはかなわない。  
 
「ちなみに私は、小六の時に無理矢理あなたに処女を奪われた、可愛そうな美少女って  
事になってるの。そんで、肉奴隷。アソコの毛は剃られ、恭平専用って刺青がお尻に掘  
られてるってね。ちょっと脚色されてるけど、その設定でよろしくメカドック」  
「お、お前ってやつは・・・あのなあ、したたか女学院には、俺の知り合いだって居るんだ  
ぞ!もし、そいつがその話を真に受けたら、どうすんだよ!」  
「実はもう、同じ中学出身の連中の耳には入ってるの。嘘って怖いね。ひとつの嘘をつき  
通すために、たくさんの嘘をつかなければならないなんて」  
「大馬鹿者!」  
温厚な恭平もさすがに怒った。が、理香子はそれを屁とも思わず、話を進めるのである。  
 
「とりあえず縄とイチジク浣腸。それに、シェービングクリームと剃刀持ってきたから、これ  
でひとつよしなに・・・」  
「俺にどうしろって言うんだよ」  
「あなたドラクエとか得意でしょ。これを組み合わせて、何が出来るか考えるのよ」  
 
理香子に促された恭平は、目の前に並んだ道具を睨みつけ、考え込んだ。そして、  
「分かった!」  
そう言うや否や、まずシェービングクリームを手に取り、自分の顔に塗りたくった。次いで、  
剃刀をあごに当て、大して濃くも無いヒゲを根こそぎいく。縄はまわしのように腰に締め、イ  
チジク浣腸は頭の上に乗せ、大銀杏を気取った。そしておもむろに成った、と叫んだ。だが  
理香子は瞬きひとつせず、  
「それで面白いつもりか」  
と、怜悧な顔で言うのである。恭平の懸命なボケを足元から掬った形だった。  
 
「・・・悪かったよ」  
「真面目にやろうよ。ね」  
理香子は静かにカーテンを閉めた。恭平も観念したのか、階下にいる両親に様子を気取ら  
れぬよう、部屋の鍵をかける。  
「なあ、理香子。言っとくけど俺は、セックスなんてした事ないんだからな。お前もちゃんと  
協力しろよ。パンツ脱いで股開いて、さあ──ってのは、無しだぜ」  
「うん」  
二人とも経験が無いので、すべてぶっつけ本番である。多少の不安はあるが、なんとか  
なるだろうと理香子は思っていた。  
 
「電気消すぞ」  
恭平が室内灯を消したので、理香子の体が残光に照らされる。ちょうど理香子は上着を  
脱ぎ、恭平に背を向けたままブラジャーを外している所だった。  
 
「何か恥ずかしいね」  
「あ、ああ」  
「恭平も脱ぎなよ」  
「分かってる」  
慌ててズボンを脱ぐ恭平の目に、今度はショーツを脱ぐ理香子の姿が映る。背を丸め、  
前かがみになった理香子は膝まで下げたショーツを、左足、右足と交互に抜き、それを  
部屋の片隅に放り投げた。何かその様が妖婦じみていて、恭平は股間に激しい血の滾  
りを覚えた。  
 
「恭平、チンチン勃起してる?」  
「う、うん」  
「ちょっと見せて。味を知っておきたいの」  
理香子は跪き、恭平の前へ傅いた。そしていきり勃つ男根を手にすると、何の躊躇も無く  
それを舐める。  
「ああ・・・理香子、やばいよ」  
「うーん、特に味はしないなあ・・・匂いはあるけど」  
案外、無味に近いので理香子は落胆したご様子。しかし、本番はこれからである。理香子  
は気落ちせず、次のステップへと進んだ。  
 
「恭平、とりあえず縄で私を縛って、ケータイで写真撮ってくれない?」  
「え?なんで?」  
「クラスの友達に見せてやるんだ。ホラ、私、肉奴隷って事になってるから」  
「処女のくせに」  
「いいから早く。言われた通りにして」  
 
あまり気は進まないが、頼まれれば嫌とは言えないので、恭平は理香子の上半身を  
縄で縛り、ベッドへ寝転がした。その姿を、彼女は自分のケータイに記録してくれと言う。  
恭平は複雑な思いを胸中に秘めつつ、淫らな被写体をカメラに収めていった。  
「どう?私、エッチな顔つきになってる?」  
「うん。エロいと思うよ」  
「そうかあ・・・ふふッ、ありがとう、恭平」  
理香子は自らポーズを幾度も変え、シャッターを切ってとせがんだ。その時、恭平は理  
香子の女陰に光るしずくに気がついた。  
 
「お前、濡れてるじゃん」  
「えへへ・・・ちょっと、興奮してるかも」  
理香子は足を高く組み替えた後、体を後ろ向きにした。そして尻を高く上げ、後ろ手に  
縛られた上半身をベッドに預ける。  
「・・・恭平。オチンチン、お尻に入れて・・・で、それも写真に撮って」  
「え?お尻って、お尻の穴にか?」  
「そう。私、アナルセックス大好き女って事になってるの・・・」  
理香子は声を潜めて呟き、肩を揺らした。尻を揺らしたつもりなのだろうが、縄の戒め  
のせいで体全体が揺れている。  
 
「尻の穴にチンポコ、入るのかな」  
「大丈夫よ。私、毎朝、それよりも太いのを、そこからひり出してるんだから」  
「・・・ちょっと、それの匂いがする」  
「拭きが甘かったかな。女って、そういうもんよ」  
少し恭平の男根が柔らかくなった。男は案外、デリケートなのである。  
 
「初体験がケツって、イヤだなあ。なんか、変態っぽくて」  
「いいのよ。恭平はウチのクラスじゃ、変態以上の存在なんだから」  
「頼むから、いつか皆の誤解をあらためてくれよな。そんじゃ・・・」  
恭平はシェービングクリームを男根に塗り、理香子の菊蕾へも塗った。  
「ひゃッ!何か、変な気分・・・」  
「指がすんなり入ったぞ。これなら、チンポコも入るかも」  
「入れてもらわなきゃ、困るのよ」  
 
桃尻を割り、恭平の男根が理香子のすぼまりを狙う。男根の先はすでに半ばまで没して  
おり、あと一息で恭平は己が分身を理香子の胎内へ収める事が出来るのだ。  
「ううッ!入っていく!」  
「ああッ!入ってくるッ!」  
次の瞬間、理香子の背がぐんと反った。尻を見ると、物の見事に恭平の男根がそこを穿っ  
ている。そして、理香子のケータイはシャッター音を響かせ、秘密めいた若い男女の痴態  
を収めていくのであった。  
 
それから一ヵ月後。理香子はクラスの中で、ちょっぴり浮いた存在になっていた。  
「ねえ、アヌス・・・じゃなくって、理香子。最近、彼氏とはエッチしてるの?」  
「まあね」  
「大変でしょ。アナルセックス好きの彼氏を持つと」  
「もう、慣れたから」  
言いながら理香子は歯噛みしていた。出来れば、こんな質問をしてくるやつをぶっ飛ばし  
てやりたいとさえ思っている。しかし、つとめて冷静に振舞っていた。  
 
実は最近、クラスの中で一人、処女とオサラバした人物が現れて、その時の様子を事細  
かにクラスメイトへ報告したのである。すると、これまで唯一、男を知る(ふりをしていた)  
理香子の性癖が一般的ではない事に、皆が気がついてしまったのだ。特に、アナルセッ  
クス好きという所にツッコミ甲斐があり、理香子は肛門性交が大好きな女子高生という、  
珍妙な認定をされる羽目となる。しかも男物のパンツを穿く、変態M女というレッテルも  
頂いた。もう、フルコースである。  
 
その上、性交中の写真をケータイに収め、それをクラスメイトたちに自慢げに見せてやっ  
た事が痛い。内容はすべて、私は変態ですと言わんばかりの物で、その香ばしさは超  
高校級。精液を飲むとか、私は肉奴隷ですなどと言った事も全て、裏目に出てしまった。  
「エッチなメイドくらいにとどめておくべきだった・・・」  
後悔しても後の祭り。理香子は生来のお調子者ぶりを反省し、しばらくは大人しくして  
いようと思うのであった。  
 
おしまい  
 

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