無用心なことに、窓の鍵が開いていた。静かにサッシを滑らせ、忍び込む。  
吸精鬼になって初めての狩りなのに、簡単に獲物の寝室に侵入できたので、勝ち誇った気  
分になった。  
(兎見サダユキ、ぼくのクラスメートだったことを呪うがいい)  
ところが、ベッドの方を見たら、今宵のターゲットが半身を起こしてぼくを凝視していた。  
ぼくはびくっとなった。  
(大丈夫だ。ばれるはずがない。なぜなら、ぼくは女装している‥‥)  
「何やってんだマサカゲ、そんなかっこで」  
「げえっ」  
サダユキの手の中で、携帯電話のフラッシュが光った。  
 
女装写真を盾に脅され、ぼくは吸精鬼に堕したいきさつを洗いざらい白状させられた。  
「そうか、それでオレのを吸おうと‥‥わかった、オレにまかせろ。なんとかしてやる」  
「えっホント? やったあヒューヒュー」  
 
サダユキは、ぼくが脱いだパンティを両手でつまんで引っ張った。  
「どうやってこんな小さなの穿くんだ」  
「決まってるだろ。伸びるんだよ。そんなことどうだっていいだろ」  
ぼくはサダユキに言われたとおり、下半身裸になり、ベッドの上に四つんばいになって、  
お尻を上に上げた。上は網シャツを着ているけれど、これじゃかえって変態みたいだ。  
「ほんとに大丈夫なんだろうね」  
「姉ちゃんが描いてるマンガに載ってたんだ。力を抜いて」  
サダユキは内診用の薄い手袋をつけて、お尻の穴に静かに指を入れ、中を優しく探った。  
「あっ」  
突然、ぼくは、自分でも驚くくらい激しく勃起していた。敏感なポイントを指先でこねる  
ように刺激されて、体中が震えた。  
「こ、これで普通に戻れるの?」  
「いや、それだけ気持ちよければ射精できなくても問題ないでしょ?」  
「そっちか!」  
もし、まだ睾丸があった頃なら、ぼくはシーツに精液を勢いよく浴びせかけ、べとべとに  
濡らしていたことだろう。でも、吸精鬼は、射精を迎えることは無い。そのかわり、果て  
ることなく何度も絶頂に達し、嵐のような快感に弄ばれた。  
自分がシーツを噛んですすり泣いていることを、ぼんやりと感じた。サダユキの指の動き  
に合わせるように、夢中になって体をシーツにこすり付けていた。網シャツの中で硬く尖  
った乳首と、お腹の下の熱い塊が脈打つように疼いた。  
ぼく、けだものみたい。恥ずかしい。  
心臓が破けそう。  
「ごめん、マサカゲ」  
サダユキが急に指を引き抜いた。それから別のものが入ってきて、ぼくの中ではじけた。  
 
ふと気がつくと、ベッドの上にうつ伏せに倒れたぼくのお尻を、誰かがティッシュで懸命  
に拭いていた。  
振り向くと、下半身丸出しのサダユキと目が合った。  
「‥‥ひどい」  
「‥‥す、すまん、マサカゲ‥‥」  
サダユキは何を思ったか、ぼくに向かって足をおっぴろげた。  
「せめてもの償いに、オレのを吸ってくれっ」  
ぼくは苦笑した。  
「いや‥‥童貞じゃないとだめなんじゃないかな。そんな気がする‥‥」  
それとも、物は試しで吸ってみるべきだろうか? でもぼくは、このまま吸精鬼でもいい  
かな、と思い始めていた。  
 
 

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