ふと目が覚めた。  
カーテンは閉めたはずなのに、窓から差し込む月光で、寝室中が白く輝いていた。  
「長尾マサカゲくん(12)ね?」  
窓枠に、黒いマントに包まれて、長い金髪の女の子が座っていた。上ったばかりの月を背  
にして、たなびく髪が輝いている。  
「私は吸精鬼ニーナ。あなたの精子を一滴残らず吸い尽くしてあげる」  
「えっホント? やったあヒューヒュー」  
このあいだ初めて夢精したばかりだけど、射精させてもらうのが気持ち良いのは、知識と  
しては知っていた。  
ニーナは音も無く舞い降りるようにベッドの傍らに降り立つと、マントをするりと脱ぎ捨  
てた。  
黒いスカート、ガーターベルト、ストッキング、足首までのフェルトのブーツ。反対に上  
半身はすっぽんぽんと倒錯的なコーディネートで、白い薄い胸の、ほのかに色づく小さな  
乳首に、目が釘付けになった。  
「それじゃさっそく」  
ニーナはどこからか皮手錠を取り出し、ぼくの両手をすばやくベッドの柱に固定すると、  
パジャマのズボンとブリーフを一気にひん剥いた。  
 
「ちょ、ちょっと待って」  
「何」  
「あのう‥‥そのう‥‥その前に、おっぱいを吸わせてください」  
ニーナは鼻先で笑ったけど、突然ぼくの顔に胸を圧し付けてきた。気がつくとぼくは、自  
分でもおかしいくらい必死になって、ニーナの乳首にむしゃぶりついていた。唇で挟んで  
吸ったり、舌先で転がしたりするうち、それはぷっくり膨らんで、だんだん暖かくなって  
きた。鼓動が速くなり、息遣いが荒くなるのを、ぼくは全身で感じ取った。  
ニーナは唐突にぼくから離れた。  
「こんなちっちゃなおっぱいしゃぶったって仕方ないでしょ」  
ぼくの唾液で濡れているのと反対のを、意識してるのかいないのか、自分の指でこねなが  
ら、真っ赤な顔でニーナが言った。  
「いや、そのちっちゃいのがいいんだけど」  
「やかましい」  
いつの間に脱いだのか、口に丸めたパンティを突っ込まれた。  
それからニーナはぼくの股間に深々と顔を埋め、放出に備えて引き締まった陰嚢に、ぶっ  
つりと牙を突きたてた。  
 
 
ぼくは声も無く泣いていた。  
脚の間には、もう、しょんぼりと萎びたものしかなかった。袋は、中身を吸い尽くされて、  
空気が完全に抜けたゴム風船みたいになっていた。  
明日から何を楽しみに生きていけばいいんだろう。  
ニーナは窓辺からぼくを冷たく見下ろしながら、再びマントを身に着けた。  
「いいことを教えてあげる。あなたは私と同じ吸精鬼になるわ。でも、精通を迎えたばか  
りの男の子を百人吸い尽くせば、元通り、普通の男の子に戻れるのよ」  
ちょっと待て、ニーナ、まさか君は‥‥  
「ホルモン焼き屋で食べてもだめだからね」  
窓から跳躍したニーナの影が、中天にのぼった月の中に消えていった。  
 

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