その日は、魔女裁判の開かれる日でした。  
 舞台となる中央広場には、朝から群集が引きもきらぬほどにと詰め掛けています。  
 ようやく日も高くなってきたころ、裁判を開始する鐘の音が高く鳴り響きました。  
「これより、裁判を開始する!」  
 槍を掲げた屈強な体格の兵士が、そう宣言します。  
 その声に、広場全体から歓喜の声が沸き起こりました。  
「本日の裁判における担当官を発表する……」  
 衛兵が続けて読み上げ、それに続けて数人の大神官が入廷します。とはいえ、現在の裁判とは異なり、あくまでもそれは宗教的形式に過ぎません。  
「では、魔女を入廷させよ!」  
 その言葉に、またどっと広場が沸きます。  
 その歓声のなか、幕で覆われた向こうから、四人の衛兵に囲まれた小柄な少女が姿を現しました。  
 おびえと羞恥の入り混じった表情の美少女。首輪をつけられ、その鎖を衛兵に握られています。  
 少女は衣服をすべて剥ぎ取られ、色白の素肌を容赦なく陽光に照らされています。  
 かすかに震えながら、両手で胸と下腹部を隠しただけの姿。その表情もあいまって、会場の狂気じみた興奮はさらに高まります。  
 少女が舞台の中央に引き据えられると、尋問が始まりました。  
 神官の一人が、少女の名前、住所、年齢などを尋ね、少女が小さく「はい」とうなずきます。  
「おまえは魔女であることを認めるか!」  
 それから居丈高な声で、中央の神官が詰問します。  
「い、いいえ……わたしは……」  
 おびえた声で、小さく否定する少女。広場の群集から野次が飛びます。  
「わたしは……魔女ではありません……」  
「では裁判官よ、この者の言は信に足るか?」  
 傍らの神官が、否と答えます。  
「女は魔女であることを認めず、裁判官はその言を信に値わぬとなすならば、神に審判をゆだねるより他にはない」  
 中央の神官から、高らかに宣言されます。  
 わあっと、いっせいに広場から歓声が沸き起こりました。  
 もとより、ここまではすべて裁判といっても形式的なものです。むしろ、これから行われる「神の審判」こそが、観衆の……いえ、おそらくは裁判を行っていた神官たちさえも待ち望んでいた「本番」でした。  
 舞台の左側。幕で包まれていた大きな何か。幕が取り払われ、それが白日の下にさらされます。  
 それは、全長にして30メートル、高さは4メートルほどもほどもある大きな水槽でした。  
 分厚いガラスの水槽の中には、泥が1メートルほど入っていて、そこから緑色の触手がまるで藻のように伸びて、うねうねと蠢いています。  
 その上には、銅の円柱が一本、横にかけられています。  
 これが「神の審判」とよばれるものです。  
 少女はその上を歩き、無事に向こう側まで渡り終えたならば無罪が証明されます。  
 ただし、途中で落ちたならば……まちがいなく触手の餌食となり、群集のよい見世物となるでしょう。  
 少女の首輪が外されます。  
 そして、兵士に押されるようにして銅柱の上を歩き始めました。  
 
 無数の触手が蠢く上に立てかけられた柱の上を、少女が恐る恐ると歩き始めます。  
 この審判は、始めは銅柱に油を塗っていたといわれますが、それではあまりに早く落ちるため、本音を言えば「面白みがない」ということか、今は油は塗られていません。  
 しかしそれでも、両端を固定されているとはいえ丸い胴の柱。危ういことにかわりはありません。  
 ましてや少女は、両手で胸と恥部を隠しているため、手で平衡を取ることさえできないのです。  
 そんな少女に、卑猥な野次が飛びます。  
「……っ……」  
 その声に反応して、羞恥で体をすくめる少女。そのせいでかえって動きにくくなるのですが、少女にはそこまで気をまわす心の余裕はありません。  
 前かがみになっているせいで、少女の丸いヒップラインが、陽光に照らされます。  
 両手はすでにふさがっているため、それを隠すことさえできません。  
 それを知っていて、群集からはさらに卑猥な野次。  
 涙を浮かべながらも、少女はそれに耐え、健気に足を先へと進めます。  
 二分近くかかって、ようやく、10メートルほども歩いたでしょうか。  
 少女の目に否応なく入ってくる、無数に蠢く触手。落ちたら……という恐怖に、体がすくみます。  
 少女の足が止まりました。  
 恐怖のあまり、動けないでいる少女。そんな少女に、群集からはまた野次の嵐が起こります。  
 前後からそれを眺める神官。一矢まとわぬ少女が、白昼に一矢まとわぬ姿のまま、震えながら立ちすくんでいるなど、なかなか見られるものではありません。  
 目を閉じ、野次に耐えるようにして身をすくめる少女。そのせいで、足元に迫っていた一本の触手に気がつきませんでした。  
 くるり、と一本の触手が少女の足にからみつきます。  
 びくん、とはじかれる様に目を開けた少女は、次の瞬間、絡みついた触手に足をとられ、銅柱から滑り落ちました……  
「きゃあああああっ!」  
 悲鳴を上げ、必死に銅柱にしがみつきます。  
 両手で銅柱にしがみついた少女。腕を銅柱に巻きつけているため、小ぶりな胸も、下腹部の薄い茂みも、隠す術すらなく群衆の目にさらされます。  
 どっと、群集から歓声が起こりました。  
 しかし少女には、もはや羞恥などは残っていません。  
 ただ、恐怖のあまり銅柱にしがみつくだけ。  
 そしてそんな少女の下半身に、いっせいに触手が襲い掛かりました。  
「いやあぁぁぁぁぁぁぁっ!」  
 少女が、悲鳴をあげました。  
 すらりと伸びた脚。両足首に絡みついた触手が、無理やり別方向に押し広げます。  
 少女の筋力ではとうてい抗うことはできず、大きく左右に広げられた両足に、別の触手が絡みつき、巻きつくようにして愛撫します。  
「いやぁっ……だめ……」  
 
 太ももを襲うくすぐったいような気持ち悪いような感触。しかし、それはまだまだ序の口に過ぎません。  
 少女の無防備な裸体を襲う触手は、十本や二十本ではないのです。  
 全身に絡みついた緑の触手と、白い素肌のコントラストが観衆の目を楽しませます。  
 両手はそれでも銅柱にしがみついて、必死に落ちないようにとする少女。  
 両目にはあふれんばかりの涙が浮かび、可憐な唇からは嗚咽交じりの喘ぎが漏れます。  
「いやぁ……誰か……助けてぇ……」  
 しかし助ける者など誰もいません。みな、卑猥な野次や歓声を浴びせながら、少女が力尽きて触手溜めに落ちるのを見守っているだけです。  
「お願い……あっ、ああっ……」  
 一本の触手が、少女のおへそを軽く責めます。  
 それだけで、男を知らない体には貫くような快感が走ります。  
 つんと堅くなった桃色の突起。  
 待ちわびていたように、二本の触手が少女の小ぶりな胸のふくらみの先端にあるそれを転がします。  
「やんっ……だめぇっ……」  
 あどけない少女の口から漏れる小さなあえぎ声。それは群集の野次にかき消されてほとんど聞き取れません。  
 少女のお尻。撫で回す数本の触手と、菊門をつつく触手。  
 菊門をつつくたび、未知の恐怖にはじかれたように体が動きます。  
 そしてそのたび、絡みついた触手はそれを少女の反撃と受け止め、押さえつけてはさらに激しい刺激を加えるのです。  
「あっ、ああっ……だめ、そこはだめぇ……」  
 天を仰ぐように身をそらせ、少女は始めての快感に身悶えます。そして銅柱にしがみつくようにしてまた必死に耐えます。   
 そして、そんな少女のもっとも大切な部分である下腹部の茂み。  
 茂みをかき分け、割れ目に沿ってなぞりあげていた触手が、やがて恥部の湿り気に気づくと、ずぶりとその先端をもぐりこませました。  
「い……痛いっっっ! いやあ、痛いぃぃぃっ!」  
 両足を左右に押し広げられているため、少女には拒むことさえできませんでした。  
 赤い血が触手に流れます。  
 銅柱にしがみついたまま、痛みに泣き叫ぶ少女。  
 群集からは見えませんが、少女の秘部にもぐりこんだ触手が、そのころ秘部の中でぬるりとした粘液を出し始めました。  
 一種の麻薬というべきか、特殊な催淫成分を含んだ白濁液が少しずつ、少女のそこから痛みを取り除き、代わりに全身の性感を高めてゆきます。  
 ちろり。  
 触手が、少女の乳頭をつんとつつきました。  
「いやああぁぁぁっ!」  
 気を失いそうになるほどの刺激と快感。銅柱にしがみついて必死に耐えます。  
 
 こちょ。  
 おへその周囲をくすぐる触手。それすらも、乳液を陰部に振付けられる前とは比べ物にならないようなくすぐったさです。  
 さらに、わき腹や足の裏など、くすぐったい場所も今はまるで無防備ですから、そういったところを這い回る触手から与えられるくすぐったさも先ほどまでとは比べ物になりません。  
「いやぁ……ひゃあんっ……いや……あはぁんん……」  
 淫らにいたぶられているのに、涙を浮かべた笑顔で笑う姿がなんともなまめかしく見えます。  
 そして、そんな中で恥部を責めていた触手は。  
 まるで人間の性器のように、今なおくちゅくちゅと前後への蠢動を行っています。  
「はぁん……だめぇ……だめなのぉ……」  
 快感に耐え切れず、恍惚とした表情の少女。  
 それでも、腕だけはしっかりと銅柱にしがみついていて決して放そうとしません。  
 ですが、それはただしがみついているというだけ。もはやこのままなぶられ続け、そして手の力がなくなったときに有罪が確定するだけなのです。  
 それでも、魔女とされる恐怖、もっと言えば火あぶりにされる恐怖が少女に無駄な足掻きをさせていました。  
 ですが、少女があがけばあがくほど、それは無防備に触手になぶられる時間が増え、群集が楽しむ時間が増えるということにすぎないのです。  
 ぬちゃ、くちゅ、ぬちゅ。  
 無理やり大きく押し広げられた両足の付け根で前後に蠢動する触手。  
 そこに絡み付いているものは、もはや血ではなく、とろりとした少女の愛液です。  
「おねがい……だれか……たす……けてぇ……」  
 助けを求めるか弱い声。それはもはや、一番近くにいる兵士にすら聞こえないほどの小さな声です。  
 しがみつく手の力がだんだんと弱くなってきました。  
 乳房をもてあそばれ、堅くなった突起をこすられるように責め嬲られるたび、少女の全身を快感が貫き、そして体力が奪われてゆきます。  
 もはや抗う余力はなく、ただ本能だけで銅柱にしがみついている少女に、それでも触手たちは容赦しません。  
 ぬちゃ、くちゃ、ぴちゃと、少女のあえぎ声が小さくなるとともに、ぬめった触手の起こす卑猥なハーモニーが聞こえてきます。  
 乳液の成分はすでに全身に回り、ただ触手が体のどこかに触れただけでも快感に蜜が漏れるほど敏感になっています。  
「あぁ……」  
 そして、ついに少女は力尽きました。  
 するりと、手から力が抜け、触手溜めの中に落ちます。  
 気を失った少女に、いっせいに触手が襲い掛かりました。  
 しかしもはや、こうなっては群集からは少女をみることはかないません。  
 ぞろぞろと、帰宅の徒につきました。  
 この「神の審判」がはじまってからおよそ一時間ほど。  
 少女は、これでもずいぶん長くがんばった部類なのです。  
 しかし、もはや少女は再び自由の身となることはないでしょう……。  
 
 
 その夜遅く。  
 地下牢の一室に、少女は監禁されていました。  
 全身には触手たちに責められた跡が生々しく残っています。  
 逃げないようにと両手両足を鎖で壁につながれた姿。力なくうなだれる少女の目元には涙の跡が見えます。  
 魔女と認定された少女は、神の罰と称してたった今まで、若い神官たちの手で陵辱の限りを尽くされていました。  
 魔女は悪魔の手先だから、何をしてもよい。  
 厳しい規律に抑圧される若い神官たちが欲望のはけ口にできる唯一の存在が魔女だったのです。  
 乳液の効果がまだ残っていたというのに、少女は手足を枷につながれ、身動きさえできない状態で何度も陵辱され、失神させられては水をかけられて起こされ、そしてまた犯され続けました。  
 人間としての尊厳をすべて奪われた仕打ちを受けても、ただ泣くしかなかったのです。  
「起きろ」  
 若い神官たちがいなくなった部屋で、彼らよりは少し年のいった、おそらく三十代前半かと思われる神官が、少女のおとがいを持ち上げて言います。  
「……あぁ……」  
 先ほどまでの陵辱地獄を思い返して恐怖の色を浮かべた瞳が、神官を見ます。  
「ふん、やはりお前は魔女だったな」  
「ち……ちがいます……」  
「まだ言うのか。神の審判すら下ったというのに」  
「でも……わたし……」  
「まあよい。所詮有罪は覆らない。よって刑の執行を行う」  
 その言葉に、少女が絶望の表情を浮かべます。  
「しかし、贖罪の儀を受け、神に懺悔して身を清めるのであれば命は赦してやってもよい」  
「……え……?」  
「明日、広場で火あぶりになるか、神に懺悔して贖罪の儀を受けるか、この場で決めよ」  
「……たすけて……くれるのですか……?」  
「神の教えに従うのであればな。一言「贖罪の儀」を受けると言えば赦してやろう」  
「それならば……わたしは、しょくざいのぎをうけます……」  
「いいだろう」  
 神官は、鍵を取り出すと、少女の手かせ足かせを外しました。  
「贖罪の儀は一ヶ月に及ぶ。その間は、われわれが責任を持ってお前の命を管理する」  
 そういいながら、神官は少女を背負うと、「贖罪の儀」の行われる部屋に歩き始めました。  
 そのころ、大神殿の一室。  
「そろそろ来るかな」  
「はい。誰しも死は恐れるもの。嫌とはいいますまい」  
「ふふ……あの小娘はなかなかのものだったからな。今度はたっぷりと楽しめそうだ」  
「まことに」  
 下卑た笑みを浮かべる二人の神官。  
 その前には、直径2メートルもある大きなガラスの壷があり、そこに張られた水の中にはなにやら揺らめくものがあります。  
 そして、その横にはがっちりとした首枷と足枷、そして棚の中にはいくつもの薬瓶ががありました……  
 あと一ヶ月もすれば、少女はよい修道女……という名の玩具となっていることでしょう……  
 
 

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