正月どころか三が日も過ぎて冬休みも残りわずかとなった冬の朝。  
「今日もいないのかな・・・綾乃」  
俺はそう呟きながら住み慣れた道を歩いていた。  
それも一人で。  
まあいつもならこんな時間に外を出歩くこともなく自宅にいるはずだが、  
それはいつも俺のそばにいてくれる少女がいるからだ。  
つまり今――――綾乃がそばにいない。  
彼女が両親の実家の田舎の方に帰省してるからだ。  
その上娘大好きパパ(綾乃談っていうか自分で言うな)がここぞとばかりに  
強制家族旅行に行っちゃったもんだからいつ頃帰ってくるかも――彼女自身にも――分からない。  
さらには彼女の携帯の電波が弱いので時たま携帯の電波の届かないこともしばしばあり、  
お互いに連絡することもままならない。  
そんな事言われればすぐにでも会いたくなるのが人の性。  
なのでここ数日、俺は毎日朝昼晩の三回は彼女の家に足を運んでおり、  
今も振り袖に身を包んだ参列客の脇を通り抜けて黒田家宅へと向かっているところだ。  
ぶっちゃけストーカーみたいだが現在綾乃欠乏症な俺としてはものすごく深刻な問題だ。  
いつもは当たり前のようにそばにいるのにいざ会えないとなるとすごくつらい。  
幼なじみでその上に付き合ってるとはいえ結局は仲のいいだけの他人だ。  
家に帰れば会える家族とは違って、下手をすれば接点すら簡単になくなる。  
実際、十年前には些細なことが原因で断絶状態になってしまった。  
今日だっていつもなら綾乃に起こされている時間をとうに過ぎて今さっき起きたばかりだ。  
まあむこうにはむこうの都合があるだろうし、綾乃だって俺と同じ気持ちのはずだ。  
現に昨夜長電話してくれたがそれぐらいで満足できるほど俺は大人じゃない。  
とりあえず八つ当たり気味に友人達に年賀状代わりの嫌がらせメールでも送ってやったら、  
『ただいまおかけになったナイスガイは、彼女と初詣中です。顔を洗って出直しやがって下さい』  
『俺とみどりとの幸せな時間を邪魔した罪は重い。具体的には死刑を超越した超死刑』  
などの頭の悪いノロケメールをよこしてきやがった。  
全くロクな奴らじゃないなあの年中ラブコメ全開野郎どもと自分のことを棚に上げて思ってみる。  
 
二人ともなんだか幸せそうで腹立つので八つ当たり気味に、  
『・・・お前らはいいよな・・・、どうせおれなんかしばらく彼女に会えないよ・・・』  
と、やさぐれメールを送り返してやったが、  
『・・・・・・・・・ドンマイ』  
『お前は今、泣いていい。泣いて、いいんだ』  
などの同情メールが送られてきてさらに鬱になってホントに泣きたくなった。  
いや待て俺。俺ってこんなキャラだったか?元がどんなキャラかは知らんが。  
ダメだ。なんだか思考がまとまるどころかどんどんカオスになっていく。  
・・・なんでこんなに落ち着かないんだろう・・・。  
答えは解りきっている。綾乃がいないからだ。  
彼女が長期間そばにいないというのは過去に二度経験してるが、  
慣れるどころかむしろその経験が不安に拍車をかけて悪循環を形成していた。  
再会からもうすぐ一年になるが、既に彼女の存在はこれほどまでに大きくなっていた。  
いや、以前から寝ても覚めても綾乃のことばかり考えてた気がする。  
イカン。今気付いたが重傷だ。俺の方こそ綾乃にぞっこん(死語)じゃないか。  
あー何か綾乃に会うのが恥ずかしくなってきた。いや会える保証はないけど。  
「とはいえ家に帰ってもなぁ・・・」  
今日はいつもは仕事やら何やらでいない両親も兄も家にいる。  
だが――いつもそばにいるはずの彼女がいない。  
彼女一人がいないだけだ。  
それだけだが――――  
「やっぱ寂しいよな・・・」  
「何が?」  
「そりゃあ綾乃が・・・」  
そばにいないから、と続けようとする。  
と、そこで俺はいつのまにか自分の隣に誰かいることに気付いた。  
慌てて足を止めてそちらに振り向くと、そこには1人の振り袖姿の少女がいた。  
彼女は俺が立ち止まったことに気付くと俺にあわせて足を止め、俺に笑顔を向けた。  
俺が今もっとも会いたかった少女――黒田綾乃が。  
 
「あ・・・・、綾乃?」  
あまりにも唐突な再会に俺はとまどってしまうが、綾乃はいつも通りの笑みを崩さず、  
「私がどうかした?」  
「あ、いや、その・・・」  
俺はさっきの続きを言うことは阻止しようとした。  
本当のことを言うのは――――恥ずかしすぎる。  
というわけで話題を逸らす。  
「・・・いつ頃からいた?」  
「啓介が『綾乃に会いたい・・・』って言ってたところあたりから」  
「言ってねえよそんなこと!」  
考えてはいたけど。  
「いやそんなこと考えてるかなーって思っただけなんだけどね」  
・・・なんでわかるんだコイツ。  
と、綾乃は俺の内心を表情を見て察したのか笑みをニヤリとした形に変え、  
「会いに来てくれたんだ?」  
「い、いや・・・」  
あまりの照れくささに、俺はつい否定の言葉を出してしまう。  
が、綾乃は俺に笑み――ニヤリとしたものではなく暖かみのある笑顔――を向け、  
「ありがとう・・・」  
「・・・おう」  
久しぶりに見た彼女のその表情にドキリとしてしまい、つい素っ気ない口調になってしまう。  
まあ彼女はそれをわかってるのか文句一つ言わないが。  
・・・本当に、いい顔で笑うよな。  
そう思ってると、綾乃は柔らかな唇を開き、  
「私もそう思って啓介の家に行くところだったんだけど・・・」  
そこでいったん言葉を句切ると俺の手を取り、言った。  
「ウチ、寄ってく?ここからならこっちの方が近いし今なら私しかいないけど」  
 
「新年あけましておめでとうございます」  
綾乃は自分の部屋に着くなりそう言いながら正座して頭を下げた。  
「あ、はい、こちらこそ」  
ついつられて正座してお辞儀する俺。  
・・・結局言われるがままにきてしまった。  
っていうか年頃の女の子が自室に同世代の男を連れ込むなんていくら何でも無防備すぎないか綾乃。  
俺仮にも一度彼女を押し倒したことがあるのに。  
それ以降はまだないし二度とああいうことにならないように――勝手に――自粛してるけど。  
まあ毎日異性の部屋に平気であがりこんでるけどアイツ。  
信頼されてるのかOKサインなのか・・・。  
前者であることを信じよう。  
しかし、さっきから何か彼女の様子がおかしいような・・・。  
その内心を悟られないようにあまり関係ない話題を出す。  
「いつ頃帰ってきた?」  
「ついさっき北海道から帰ってきたとこ。父さん達は実家の方に親戚のみんなと飲み会だって」  
「お前は行かなかったのか?」  
「親戚の人たちってみんな私より一回りは年上だし・・・」  
綾乃は桃色の着物(黒だと喪服に見えるからか)の袖に包まれた腕を左右に振りながら  
それに、と付け加え、  
「やっぱり、啓介に早く会いたかったし♪」  
そういいながら俺に笑顔を向ける。  
しかし、俺は見逃さなかった。  
彼女の視線がなぜか一瞬、何かを期待するようなものになったのを。  
お年玉を心待ちにする子供のように。  
「い、いや、金は払わんぞ!いくら付き合ってるとはいえ金を要求するなんて・・・」  
「・・・なにいってんの?」  
「いやただの気の迷いだだから冷めた目でこっちを見るな」  
・・・どうやら違ったようである。  
というわけで思考続行。  
 
金でないとしたら何か。  
綾乃という人物がどういう性格かを考えればすぐに答えは出る。  
俺に関することだ。  
自惚れるつもりはないが、それほど思われてるという自信はある。  
しかしそれがさっきの違和感と関係が・・・。  
あった。それもすごく簡単な答えが。  
「綾乃」  
「なに?」  
文字通り小首をかしげる綾乃に俺は疑問を投げかけた。  
「今日は、抱きついてこないのか?」  
俺がそう言った途端、綾乃は目を丸くした。  
が、すぐに表情をいつもの――例えるなら天使のような悪魔の――笑顔に変え、  
「してほしいの?」  
その笑顔と言葉に嫌な予感を覚えた俺は、慌てて自己弁護を開始。  
「い、いやそういう訳じゃないけどな、したいのならさせてやらんこともないというか、なあ?」  
「・・・何そのツンデレ」  
そう言って半目を向ける綾乃に、俺も同じく半目を向け、  
「恥ずかしくて本音を言えないシャイな男の葛藤を分かってくれよ頼むから」  
「それでも本音を聞かせてほしい乙女心をいい加減理解してほしいんだけど」  
あっさりかえされ、俺は深く溜め息をつく。  
「甲斐性無しだな俺・・・」  
「大丈夫。それも込みで好きだから♪」  
「・・・否定しないんだな」  
追加で溜め息をつくと、綾乃に頭を撫でられた。  
「子供扱いするな!」  
「してないわよ。ただ単に可愛がってるだけ♪」  
「それを『子供扱い』って言うんだ!」  
そう叫ぶがやはり綾乃の表情は変わらぬ笑顔のままだ。  
くそう。何か意味もなく負けた気分だ。  
 
「とゆーわけでさ」  
「・・・なにが『とゆーわけで』なのかは知らんが何だ?」  
俺の言葉に綾乃は笑みをさらに濃くして、言った。  
「啓介の方から、抱きしめてくれない?」  
意外な返答に、俺は思わず肩をこけさせてしまった。  
「・・いつも通り自分から抱きつけばいいだろ・・・」  
「いやー、振り袖って動きづらいし派手に動くと着乱れるし」  
へらへらと笑いながらそういうと綾乃は両腕をそれこそ何かを受け止めるように上げ、  
「というわけでお願いします」  
にっこりと笑顔を俺に向けた。――――ただし目は笑ってないが。  
・・・しかたない。  
心の中でそう呟きつつ、俺は綾乃の身体をゆっくりとした動きで抱きしめた。  
「・・・これでいいか?」  
「・・・うん」  
そう言って幸せそうに微笑む綾乃。  
その笑顔を見てるとこっちまで幸せな気持ちになってくる。  
「やっと会えた・・・!」  
綾乃はそう言いながら俺の肩に自分の額を乗せ、  
「寂しかった・・・!」  
「・・・ああ」  
俺の背に手を回し、自分自身も俺の身体を力一杯抱きしめる。  
俺も、綾乃の柔らかな髪に頬をすり寄せ、彼女の耳元にささやくように言った。  
「・・・俺も、会いたかった・・・」  
「どのくらい?」  
意地悪そうな声音で質問する綾乃に、少し迷ってから正直に答えた。  
「あまりの寂しさに、ここ数日、朝昼晩の3回ずつここに来るぐらい」  
「・・・ぶっちゃけストーカーみたいね」  
「何でそんな事言うかなぁっ!?」  
あははと笑いながら綾乃は俺の叫びを――耳元で叫んだにもかかわらず――無視。  
 
そして慰めか謝罪のつもりか俺の頭を撫でながら、綾乃は俺の耳元で甘えるような声でいった。  
「キスしよっか?」  
「・・・まあ別にいいけど」  
俺の言葉に綾乃は小さく頷くと、唇を軽く俺につきだした。  
が、それだけだ。  
それ以上動くこともなく、ただ俺に期待と焦りの入り交じった視線を向けていた。  
「・・・何で動かないの?」  
「啓介の方からして」  
「・・・・・・なんで?」  
俺の疑問に、綾乃はさも当然というような表情で答えた。  
「私、啓介からキスされたことないんだけど」  
・・・言われてみれば確かにそうだ。  
ファーストキスの時も昔風呂でおぼれた時一緒に入ってた綾乃に『人工呼吸』と称して奪われたし。  
って何で覚えてるんだ俺。忘れてたらとぼけることも出来たかもしれないのに。  
俺は生まれて初めて自分の記憶力を呪った。  
「いや、その・・・、それは・・・・・・」  
そこで俺の脳裏に反撃手段たり得る記憶が蘇った。  
「あ、ほら!お前の誕生日の時・・・」  
「私の誕生日のは同時だったからノーカンです」  
「ちっ・・・」  
ダメでした。  
露骨に舌打ちして顔を背けるが、綾乃は俺の頬に手をあてて強引に自分の方を振り向かせ、言った。  
「だから、啓介の方からして」  
その表情は、微笑。  
だが、目は真剣そのものだった。  
正直逃げ出したいが顔を確保されてて脱出は不可能。  
「・・・わかったから目ぇ、つぶってくれ」  
「イヤ。啓介の顔が見えなくなるし」  
即答された。  
 
「・・・まったく・・・」  
ついクセで溜め息をついてしまうが、綾乃はそんな俺を見て表情からわずかに力を抜き、  
「もう少ししおらしい方がよかった?」  
彼女の提案に俺は首を横に振り、自分なりに真剣な表情で言った。  
「綾乃は綾乃のままがいい」  
その言葉に綾乃は笑顔で頷いた。  
「ありがとっ♪」  
綾乃がその言葉を言い終えて唇と同時に、俺は自分のそれをそこに重ねた。  
不意打ち同然のその行為に、綾乃は怒りもせずに目を細めた。  
そのまま舌で綾乃の唇をつつく。  
それだけで俺の意図を理解したらしく、口を半開きにして俺の舌を迎え入れた。  
「・・・ん」  
以前のように舌で彼女の口内をつつき、舐め始める。  
と、逆に俺の舌に何かが触れてきた。  
おそらく綾乃の舌だと判断し、自分のそれを使って責め立てる。  
綾乃も負けじと、自分の舌を俺の舌にこすりつける。  
絡み合う舌と舌。  
その感触やとろけるような綾乃の表情を楽しみつつ、俺は彼女の着物の帯に手をかけ――  
――ようとしたら、綾乃に舌を噛まれた。  
 
「#$%&’@*^¥〜〜!?」  
自分でも何言ってるか分からない奇声を上げながら即座に綾乃から離れる俺。  
いや実際にはそこまで痛くはなかったんだけど、驚いてつい大声を上げてしまった。  
そんな俺の様子がおかしいのか変わらぬ笑みのまま綾乃は言った。  
「今日はここまで」  
「・・・え〜」  
「・・・不満そうね」  
あからさまに嫌そうな声を出す俺に綾乃は少し呆れ気味な視線と言葉を投げかける。  
「仕方ないでしょ。お父さん達いつ帰ってくるか分かんないし」  
「・・・そんな事言われましても、このもてあました性欲をどうしろと」  
「・・・何か最近、啓介ってキャラ変わってきてない?」  
俺にジト目を向けながらツッコミを入れる綾乃。  
どうやらお互い意志を曲げる気はなさそうだ。  
「・・・仕方ないわね・・・」  
綾乃は溜め息混じりにそういうと、  
何を、と俺が思うより速く俺の頭を自分の胸に押しつけるように力一杯抱きしめた。  
そして俺の耳元に優しげにささやいた。  
「これで勘弁してくれる?」  
「はい。」  
脳による思考よりも早く俺はそう答えた。  
 
「今度の土日、泊まりに行ってもいい?」  
リビングに場所を移し、私服に着替えた綾乃は突然そんなことを言ってきた。  
俺はコーヒー――綾乃に出してもらったもの――を口にしつつ、彼女の言葉の一部を繰り返した。  
「・・・今度の日曜って・・・」  
「そ。啓介の誕生日♪  
あ、もちろん明日からまた遊びに行くからね〜♪」  
綾乃の発言を半分聞き流して俺は物思いに耽る。  
まあ周囲では付き合う前から恋人どころか夫婦として通ってるし(俺としては不本意だが)、  
紆余曲折はあったモノの現在は既にそういうことをしてもいい関係ではあるとも思うのだが・・・。  
「どーしてもその日じゃないとダメか?」  
「・・・いやなの?」  
瞬間、綾乃の目つきが鋭くなった――――ような気がした。  
ヤバい、と思ったので慌てて訂正する。  
「い、いや、そ−ゆーワケじゃないんだが・・・、  
ほら、俺らって受験生だしこの時期は自粛した方が」  
「こないだ私たち二人ともA判定もらったし、2,3日ぐらいなら大丈夫だと思うけど」  
そうあっさりと答える綾乃を見て、  
俺は彼女が彼氏の家に泊まることの意味を理解していないのではとふと不安に駆られる。  
無論、俺も男だ。  
彼女が自分ちに泊まるなんていうイベントは俺にとっても魅力的だし、  
好きな女の子に誕生日に来てほしくないわけではない。  
が、俺には前回暴走して男性ホルモンに従いすぎてしまった苦い経験がある  
・・・お泊まりなんてされた日には、ヘタすりゃ俺、前以上に獣と化すぞマジで・・・。  
が、俺の思惑に気付いてないのか綾乃はそれに、と呟くとそこで頬を手に染めて  
俺から視線をわずかに逸らし、  
「・・・その日は、安全日だから・・・」  
バッチリ理解していました。  
 
そのことに唖然とした俺を気にせず綾乃は逸らしていた視線を俺に向け直し、  
「初めては中にって、決めてたから」  
「・・・万が一当たったらどうするんだオイ」  
「大丈夫。ピル飲めばいいから」  
あっさりとそう返す彼女に俺は半目を向ける。  
「・・・確かアレって、身体に悪いんじゃなかったっけ?」  
「一回だけだから大丈夫だと思うけど」  
「でもなあ・・・」  
俺はこの期に及んでも綾乃の言葉に頷けずにいた。  
彼女の態度に、違和感を覚えたからだ。  
というよりも、ここまで綾乃が歯切れの悪い言葉で、その上ここまで食い下がるのは珍しい。  
いつもだったらワガママを言ってるようで俺が本当に嫌がってるかどうかは解っており、  
ことは――まあ完全にないとは言えないが極力――しないのに。  
と、俺がそんなことを考えてると綾乃は俺に恐る恐るといった口調で、  
「本音言っていい?」  
何て上目遣いで言ってきた。  
ちくしょう、男の弱点を的確に突くとは!  
もしや狙ってやってるのでは、とたまに思う。まあどちらにせよ勝てないからどっちでもいいけど。  
「・・・どうぞ」  
猛烈に嫌な予感がするが、俺が勇気を最大限まで振り絞ってそう答えると、  
「理由なんてどうでも良いから、私は少しでもあなたと一緒にいたいし、  
二人で一緒に今よりもっと先のプロセスに進みたい」  
そう言うと彼女は小首をかしげて聞いてきた。  
「それじゃだめ?」  
「とんでもない」  
気がつけば、俺の口から了承の言葉が出ていた。  
俺が自分のミスに気付いたときには既に綾乃は俺に抱きついていた。  
・・・俺って一生、綾乃に勝てんかもしれん・・・。  
抱きつかれたときの勢いのまま綾乃と一緒に後ろに倒れ込みながら、  
俺はあきらめ半分の思いでそう考えた。  
 

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