しかし何なんだろうこの最初からクライマックスな状況は。  
始まりはいつも突然にしても突然過ぎる気がする。  
私は啓介の頭を洗いながらそんなことを考えていた。  
そりゃあ啓介になら裸見られても胸触られてもいいけど、  
こーゆーのはちゃんと段階踏んでからの方がよかったとは流石の私も思う。  
でもこーでもしないと私たちは進展しないような気もする。  
・・・啓介は消極的だし流石の私もえっちな方面には知識も経験もない。  
義姉さんや友人からは「そこはキャラとハートでカバーしなさい」と謎のアドバイスを受けたけど、  
具体的にはどうすればいいのか分からないままこの状況になっちゃって正直動揺が抜けきってません。  
まあ私以上に啓介が動揺してるからまだ彼よりは冷静でいられるけど。  
でも、啓介はそんな私の葛藤を知るよしもない。  
私が彼の背後にいるからだけど。  
私は――どうせなら開き直ってしまおうと――彼の正面に回って洗おうとしたのだけど、  
流石にそれはと啓介に拒否されてしまった。  
その時の彼の視線は私の首から下――具体的に言うなら胸や臍、そして秘所――に注がれており、  
有り体に言えば、いやらしい目を向けていた。  
でも不思議と悪い気はしなかった。  
それは多分、『私』を見てくれているということだから。  
さっきお尻見られた時はともかく彼の気持ちを聞いた今ならそう思える。  
こんなこと考える私ってひょっとしてMの気でもあったのかなとふと疑問に思う。  
まあ啓介以外の人にそうされたらすごく嫌だから多分違うと思うけどそれはともかく。  
「頭流すよー」  
「ああ」  
彼は返事をすると瞼を閉じる。  
そのことを確認すると私は彼の頭に熱めの液体をかける。  
それが数度繰り返し、終わったことを伝える為彼の頭を軽く撫でる。  
 
「まだ治ってないんだ・・・頭洗うときに目つぶるクセ」  
「だって目にシャンプー入ったらいやだろ」  
「・・・うつむいてたら目にかからないと思うけど」  
彼は少し間をあけると、真剣な表情になって言った。  
「・・・その手があったか!」  
私は少し間をあけると、真剣な表情になって言った。  
「・・・単刀直入に言うけど啓介って実は馬鹿?」  
「単刀直入すぎるだろっ!?」  
「否定しないんだ・・・」  
「多少は自覚してるからな」  
そう自嘲気味に言う彼に、私は思いきり抱きついた。  
「どわぁっ!?」  
即座に啓介は悲鳴を上げて私から離れた。  
その時、彼の背中に触れていた私の乳首が擦れてしまった。  
・・・ちょっと気持ち良かった。  
そんな私の内心を知らず、啓介は顔を真っ赤にさせて私に抗議した。  
「おおおぉぉお前なあ!俺ら今裸なんだからいつも通り抱きつこうとするなよ!!?」  
「い、いやごめん。啓介の自虐的なところに母性本能刺激されて、可愛く思えちゃってつい」  
まだ動揺の抜けきってない私も  
「ついじゃないだろついじゃ・・・」  
さらに文句を言いながら啓介は私に  
が、彼の視線は私の顔から徐々に下に向いていき、かと思うと私から目をそらした。  
でもちらりちらりと目線は私の方をまた向いて、また離れるを繰り返していた。  
「・・・なにやってるの?」  
「い、いや、お前の方向くと、つい、顔じゃなくて体の方見ちまうんで」  
といいつつやっぱり私から目を背けていく。  
彼にとっては私を思いやっての行為かもしれない。  
でも、私にはなんだかその態度がいまだに私に「遠慮」してるように思えてカンに障った。  
だから私は彼の頭を両手で掴み、無理矢理啓介の顔を私の胸に触れる寸前にまで引き寄せた。  
 
「なっ・・・!?」  
予想通り啓介が短い悲鳴を上げた。  
だから私はその声を無視して言った。  
「見たいのなら見ていいし、触ってもいいよ。啓介になら、されてもいいから・・・」  
「ちょっとまてい」  
啓介はいつものように励まそうとする私の声を遮ると自分の頭を拘束していた私の両腕を振り払い、  
逆に私の頭を両手で掴み、自分の顔に触れる寸前にまで引き寄せた。  
「なっ・・・!?」  
予想外のことに私は短い悲鳴を上げた。  
そして啓介はその声を無視してキスしてしまいかねないほど顔を近づけて言った。  
「言っておくけど別にこの期に及んでヘタレたわけじゃないからな」  
「ええっ!!?」  
真剣な眼差しで私の目を見つめての彼の台詞に、私は心の底から驚きの声を出してしまった。  
私のその声――それと一緒に出てしまったツバ――を超至近距離で浴びてしまった啓介は、  
私に半目を向けて低い声で言った。  
「・・・なんだいまのリアクション」  
「いえなにも?」  
出来る限りの満面の笑みを浮かべてとぼける。  
でも彼が私に向ける目線は自分の顔についたツバを手で拭いても変わることはない。  
でもそんな冷たい目線の啓介もいいかもと思うとカラダの奥の方が熱くなるような気もする。  
そんなことを思っていると、啓介は私から顔を若干引かせた。  
「いやそんな熱っぽい視線向けてもダメだから」  
どうやら顔に出てしまったらしい。  
もしくは心を読まれたか。  
まあどっちにしろ。  
「これって私たちの愛の力なのね!?」  
そう勝手に確信した私は私の頭をホールドしていた啓介の両腕を振り払い、彼に抱きつこうとする。  
けど、啓介は素早く両手を交差させるように身構え、  
左手で私の頭、右手で私の身体を受け止めた。  
 
「な・ん・で・そうなるーっ!!」  
一言一言に力を込めて、同時に両腕にも力を込めて啓介は私を押し返そうとする。  
「いいからおとなしくし・な・さ・いーっ!!」  
私も負けじと両腕を彼の身体に絡ませ、無理矢理引き寄せようとする。  
力自体は啓介の方が上だけど、私がのしかかるような格好になってる為拮抗状態となっていた。  
この状況を打破する為、私は全体重をかけようとし、  
体重を・・・。  
たいじゅう・・・。  
つい最近体重が増えたことを思い出した私は力を抜いた。  
いえ違うんです太ったんじゃないんですむしろウェストは細くなったんだけど  
その分胸とお尻に肉がついちゃったんですそれもウェストから消えた分を超える量が。  
これって女として喜ぶべきなんでしょうかそれとも悲しむべきって誰に言ってんだろ私。  
それはともかくいきなり力を抜いたら私が彼に押し倒される。  
いや啓介になら押し倒されてもいいけど場所が場所なんで怪我する可能性がある。  
そう判断した私は口を開いた。  
「ところでさ」  
「何?」  
「さっきから啓介、私の胸触ってるんだけど」  
「なにぃっ!?」  
そういわれた啓介は即座に絶叫をあげて私から離れた。  
でも今までの経験から彼のリアクションは予測できたので私は慌てることなく笑顔で言った。  
「う・そ♪」  
啓介は一瞬何か言いたそうな顔をしたけど、特に反論することなくおとなしく腰を下ろした。  
実際はホントにさわってたんだけど、それを言うとさらに話がややこしくなりそうなので言わない。  
でも残念そうな彼の表情を見ると嘘をついた罪悪感がこみあげてくる。  
代わりに彼の手に自分のそれを重ねると表情が和らいだ。人のことは言えないけど現金な。  
 
「一体どうした急に冷静になって」  
「乙女にはいろいろ事情があるの」  
「・・・そうですか」  
それ以上の詮索を許さない私のドスを利かせた声に啓介は若干引いたようだ。  
いけないいけない。私の理想はカカア天下じゃなくて夫を引き立てる大和撫子なのに。  
まだまだ日々是精進だなと思うけど今は別にやることがある。  
「ところで目をそらしてた理由は?」  
「あー・・・」  
私にそう質問された啓介は今度はバツの悪そうな顔になった。  
でもそれは本当に一瞬のことで、私が洗ったばかりの頭をバリバリとかくと、  
「軽蔑しない?」  
「内容によっては」  
「・・・余計にプレッシャーかけるなよ」  
そう言いながらあからさまに肩を落とした。  
「まあ、話を聞きもしないで『大丈夫』と断言されるよりかは信用できるからいいけど」  
「断言ならできるよ」  
「え?」  
ちょっと間の抜けた顔になった彼に、私は言った。  
「何があっても、私はあなたが世界中の誰よりも大好きです」  
そう言った途端、啓介の顔が真っ赤になったけど私は気にせず続ける。  
「それだけは断言できる」  
キッパリとした口調で言うと、私は彼に笑顔を向けて言った。  
「だから安心して本音ぶっちゃけちゃっていいよ」  
いつもならここで抱きしめてるところだけどさっきの繰り返しになるからガマン。  
だから、その代わりに彼の顔を見つめた。  
彼も私の顔を見つめ返す。  
 
少しの間そうしていると、啓介は苦笑しつつ手を私の頭に移し、撫で始めながら口を開いた。  
「まあ、気は楽になった」  
「うん・・・」  
久方ぶりの自分の頭を撫でられる感触に身を委ねる。  
啓介はそんな私に肩を落としつつ言った。  
「ぶっちゃけた話、お前を襲いたいっていうかしたくってしょうがないんだ。  
でも、自分でもどこまで制御できるかわからんからなるべくお前の方見ないようにしてたんだ」  
「別にいーのにー」  
「そーゆー発言はキチンと避妊する用意してからいいなさい」  
「・・・あ。」  
忘れてた。  
というかこの状況にとまどって完全に思考の外になっていた。  
それ以前にこんなことになるなんて予想してなかったので、避妊の用意なんてしてるはずもなかった。  
それを考慮に入れてくれている彼の気遣いがなんとなく嬉しかった。  
そのことに礼を言おうとしたけど、啓介はがっくりとうなだれた。  
「ごめんな」  
「謝らなくていいのに」  
この状況の責任は彼と私どちらにもあるし。  
「でも」  
私は啓介の頭を撫で、笑顔を向けていった。  
「よく言えました」  
「・・・また子供扱いかよ」  
「ああごめん。そーじゃなくてさ」  
ついいつものような口調になってしまったことを謝罪しつつ、私は啓介の身体を抱きしめた。  
今度は何も抵抗されなかったことに満足し、彼の頭を撫でながら語りかける。  
「啓介が私に本音を言ってくれるようになったのが嬉しかったの」  
 
以前から啓介は他人に遠慮して、ここぞというときに言いたいことを言えないところがあった。  
私が彼のそばに戻ってきた当初はそれがさらに強くなっていた。  
その原因は多分『あの事件』。  
でも、私と付き合うようになってから――もっと具体的に言うなら『あの事件』を吹っ切って、  
彼が私にしてくれた『告白』の一件以来――たまにではあるけど、自分の主張を見せるようになった。  
具体的には私を押し倒したりキス以上のことを求めたりなどの本能に忠実なことだけど。  
まあ私はそのことは幼馴染みとしてカノジョとして素直に嬉しいしむしろうふふバッチコーイなんだけども  
もう少し普段の私や他の人にも自己主張できるようになってほしいとも思う下心抜きでいや若干あるか  
けど私には本音で向き合ってくれてるってことだから本当に私以外にするようになると嫉妬しちゃうな  
いや啓介の思い人は私だという自信と信頼はあるけど――――  
「綾乃、久々に目が危なくなってるぞ」  
「へ!?」  
正気に戻された私はとっさに自分の顔をぺたぺたと触って確認。  
「いや顔じゃなくて目だから」  
「め?」  
「目つきがとろんとしてたというか、すごく熱っぽい目だった」  
どうやら啓介のことを考えてそんな目になってたらしい。  
「そういう目はきらい?」  
「嫌いじゃないってかむしろ慣れた自分が怖い・・・」  
啓介はそこまで言うとなぜか頭を抱えだした。  
失礼な。ただの愛情表現の副産物なのに。  
そう思っても話がややこしくなるので口には出さず、代わりに礼を言う。  
「・・・ありがと」  
「・・・ああ」  
互いに耳元で言葉を交わしあうと、私はさらに言葉を続けた。  
「ホントにガマンできなくなったら言ってね。いつでも覚悟は出来てるから」  
「いや一時の気の迷いでしちゃうのはマズいだろ」  
「な・・・・・・・・・・・・!?」  
苦笑混じりの彼の返答に私は絶句し、思わず彼の身体を離して後ろにのけぞった。  
 
・・・・・・・・・そんな、そんなバカな・・・!  
「啓介は私との子供がほしくないの!?」  
「んな事言ってねぇ!それと風呂場で大声出すな近所迷惑な!」  
「なんで?」  
「外に聞こえるだろうが!」  
その瞬間、私はあることをひらめいた。  
が、口はそれとは別の用件を言う。  
「そういう啓介も、声、大きい」  
そういわれた啓介はしまったというような表情を浮かべた。  
チャンス!  
私は目を輝かせて大きく息を吸い込み、叫んだ。  
「私黒田綾乃は、白木啓介が大好きですー!!」  
私の放った叫びはエコーとなって風呂場に響いた。  
――――沈黙。  
「おおおおおおおおおおお前なぁぁ!!」  
顔どころか耳まで真っ赤にさせて啓介は私に詰め寄った。  
「よりにもよってそんな恥ずかしい事言うなバカ!」  
「あっひっどーい!恋人の愛の告白をそんなに言うなんて、啓介は私のこと嫌いなんだー!?」  
「バカ言うな!俺だって綾乃が好きに決まってんだろ!!」  
――――沈黙。  
「やっちまった・・・!」  
「よし!作戦勝ち!」  
思わず恥ずかしい台詞を大声で叫んでしまった啓介はがっくりと肩を落とし、  
逆にこれである種の既成事実がご近所に広まると確信した私はガッツポーズを取った。  
まあ毎日のようにこの家に来てるんですでに何らかの噂はされてるかもしれないけど、  
こういうたゆまぬ努力が明日への勝利――具体的には啓介との幸福な結婚生活――に繋がるはずだ。  
・・・って結局グダグダになってるし。  
「まあともかく、続きしよっか♪」  
「・・・好きにしてくれ」  
なぜかぐったりとした声で啓介が答えた。  
 
「・・・体も洗うのか?」  
「そりゃもちろん」  
返事しながら私はボディシャンプーを染み込ませたタオルを手に持ち、空いた手で啓介を手招きした。  
「おいで〜♪」  
「ペットか。俺は」  
そう突っ込みつつも啓介はその場で座ったまま半回転し、私に背中を向けた。  
私はその背中を遠慮なくタオルで拭き始める。  
「おかゆいところはないですか〜♪」  
「・・・強いて言うなら全身っていうかこの状況そのもの」  
「要するにここ?」  
言いながら私は啓介の背に指を滑らせる。  
「うおぁっ!?」  
瞬間、啓介が悲鳴を上げて身を震わせた。  
その反応はただ背中を触られたにしては明らかにおかしい。  
そう判断した私は、もしやと推測をたてた。  
「もしかして、背中弱い?」  
「・・・・・・・・・」  
無言。  
それは反論の術を持たない――――つまりは肯定だということだ。  
勝手にそう結論づけた私はあることを思いついた。  
 
早速実行に移すべく私はボディシャンプーのボトルを手に取る。  
そしてボディシャンプーを自分の胸にかけ、啓介に抱きついた。  
と、流石に気付いた啓介が私に振り向いた。  
「っておいおいおい!!」  
啓介の抗議を無視して私は身体全体を動かして彼の背に押し当てた胸で洗い始めた。  
「む、胸当たってるって!」  
「大丈夫。あててるから」  
「っていうか妙にニチャッて感触がするんですけど・・・」  
「そりゃ胸にボディシャンプーかけてそれで洗ってるんだし」  
「なにぃっ!?」  
私の発言に、なぜか啓介は目を見開いた。  
ついでに口元がにやつき、鼻もひくひくとしていた。  
「・・・いま、いやらしいこと考えてなかった?」  
「はっはっはっ、何をバカなってゴメンナサイ実は考えてましただから離れないで下さい」  
この期に及んでシラを切ろうとしたので身体を離そうとしたら啓介は即座に訂正した。  
・・・ホントに正直になったなあ、エッチな方面で。  
「つーかさっき俺が必死にガマンしてる状態だっていっただろ」  
「それは分かってるけど、その分啓介を気持ちよくさせてあげたいと思ったの」  
言いながら私は胸をすりつける作業を再開する。  
そして、啓介の耳元にささやきかける。  
「それにね。私もなんだか、エッチな気分になってきちゃって」  
本心からの言葉だった。  
異性の裸をみてエッチしたくなるという啓介の気持ちは――自意識過剰ではなく――よく分かる。  
というか私の方がしたくてたまらない。  
好きな男の子の裸がこんなに魅力的とは思わなかった。  
いや正直啓介をオカズにするときに――他の人をしたことはないけど――いろいろ想像はしたけど、  
実物は私の想像を超えてすごかった。  
だから今こうやって身をすり寄せている。  
それに胸の先端がこすれてなんだか気持ちいいし。  
 
と、私の内心を知らないだろう啓介は私に半目を向け、  
「・・・あのさ。実はお前がしたいだけじゃないのか?」  
「うん。こういう恋人らしいいちゃつきがしたかったし♪」  
「即答!?ていうか否定しろよ少しは!」  
その発言を無視ながらも私の指先は彼の首、胸板、腹へと滑っていく。  
「っていきなり前かよっ!?」  
「だって背中終わったし」  
「普通は腕とか足から先にやると思うんだがってかそんなに体中なで回すと当たるっていうかやめれ」  
「当たるって何に――――」  
その台詞を最後まで言い切る前に、私の手が何かに触れてしまった。  
「・・・ん?」  
それまで触っていたものとは違う異質な感触に疑問を持った私は、  
啓介の肩越しに自分の触れている物を覗き見る。  
そして、仰天した。  
「え、えええええええええええ!!!?」  
私の触れていたもの。  
それは啓介の足と足の間つまりは股についている肉棒と袋状の男性特有の部位すなわち――――  
「けいすけの、お、お、お、おち、おち」  
「落ち着けいいから」  
「だ、だって、間近で見るのは久しぶりだしさっきは湯気とかであんまりよく見えなかったけど、  
てっきり子供の頃のをそのまま大きくしたものを想像してたけど全然違って、  
記憶にあるものよりおっきくなっててなんか黒くなってて、  
毛も生えてて何か皮みたいなのが剥けててちょっとグロテスクになってるし、  
触ったらやわらかいようでちょっとかたいしあったかい変な感触がしたりして」  
「・・・そこまで言われると流石に落ち込むんだが」  
「ご、ごめん。だからそんな落ち武者みたいな顔しないで」  
「どんな表情だ一体。とゆうかオチにもならんことを言わんでいい」  
啓介は落ち着いた声で突っこみを入れる。  
顔が赤く見えるのは風呂場の熱気のせいだけではないだろう。  
まあ自分もおそらくそうなってるだろうけど。  
 
「・・・意外と純情だな」  
「・・・なによ意外って」  
半目で睨むと啓介は目をそらして自己弁護し始めた。  
「い、いや、いつも抱きついてきたりキスしてきたりするから、そういうの平気かなっていうか、  
ヘタしたらこういうエロイことの経験あるんじゃないかって思ってたんだが・・・」  
「ダーリンとは今度じっくり話し合う必要が出来たんけど」  
「誰がダーリンだっ!?」  
「啓介」  
「だから平然と言うなってそんなこと!?」  
「まあそれはともかく」  
「無視かよっ!?」」  
その発言を追加で無視して一息つき、私は彼の股間を、じっくりねっとりと見つめる。  
当然ながら自分にはないその器官は――  
「綾乃、さっきとは違った意味で目がイってるぞ」  
「へ!?」  
啓介のその言葉で私は正気を取り戻す。  
どうやらトリップしてしまっていたらしい。  
現実に戻った私はふうと一息つき、額の汗を拭うジェスチャーをした。  
「あぶなかった・・・。」  
「何がだ。」  
啓介はそういいながら冷めた目で私を見るが、追求する気はないのか異なる話題を口にした。  
「とりあえずさ」  
「な、なに?」  
未だ動揺の抜けきってない私に啓介は目を背け、頬を赤らめながら言った。  
「先に腕とか足とか洗ってくれないか?」  
私は慌ててタオルを拾い上げた。  
 
 
啓介の両手足を洗い終わった(普通に洗いました)私は再び彼のモノと対峙していた。  
「これが、啓介のおちん○ちん・・・」  
「○の位置に意味がない気がするが」  
「まるのいち?」  
「・・・なんでもない」  
彼の台詞に違和感を感じたけどそこを指摘する前に啓介が再び口を開く。  
「そんな真剣な目で見られるとものすごく恥ずかしいんですが・・・」  
「あ、いや、あの・・・」  
私は顔が火照っていくのを自覚しながら言った。  
「お恥ずかしながら男の人のこんな姿を見るのはこれが初めてで・・・」  
「AVとかも見てない?」  
「見てないよ。啓介のしか見たくなかったし・・・」  
そういって目を背ける私に啓介は遠慮しがちに聞いてきた。  
「・・・退いた?」  
「全然」  
私はキッパリと言いきり、目線を戻す。  
啓介が若干退いたようだけど構わずに言葉を続ける。  
「私の知らないところがあってビックリしちゃっただけだから」  
「お前だったらホントにそう思ってそうだよな・・・」  
「ホントにそう思ってるって」  
言いながら私は啓介の股間の棒にゆっくりと手を触れた。  
重さを確認するために軽く持ち上げては力を抜いて下ろし、そびえたつそれの上に手をのせ、  
肌触りを確認するためにゆっくりと指を這わせ、輪郭をなぞっていく。  
そしてゆっくりと揉み始めた。  
・・・やわらかい。でも、芯でも入ってるみたいにかたい。  
「感触まで本当に子供の頃と違う・・・」  
「いやこれは興奮してる時だけだから」  
啓介は私に何をバカなことをという風な口調で言う。  
・・・まあ確かにこちらの勉強不足かもしれない。  
 
そう考えるとこちらの知識不足がなんだか申し訳なくなってきた。  
ならば聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥。根掘り穴掘り聞いてみよう。  
「おおきい方なの?」  
「知らん。前に旅行行った時には黄原、俺と兄貴、赤峰の順にデカかったけど」  
「それって赤峰くんのが小さいだけじゃない?」  
「そうなのかなやっぱ・・・」  
がっくりと肩を落とした。  
どうやら先ほどの私の発言は失言だったらしい。  
「まあ大きくても小さくても啓介のが一番だから別にいいや」  
そういいつつ私は再び彼の肉棒に視線を移す。  
そして、私の指が彼の先端に触れたと同時、  
「うぁっ!?」  
啓介が普段にはあり得ない素っ頓狂な悲鳴を上げ、椅子から転げ落ちて尻餅をついた。  
それと同時。  
私の指にねちゃりとした感触が伝わった。  
そちらに目を向けると、私の指にお湯とは違うあたたかい液体がついていた。  
「・・・なにこれ?」  
「・・・・・・ガマン汁だよ悪いかこんちくしょう」  
顔を真っ赤にし、私から目を背けながら啓介は答える。  
流石にこれは聞くまでもない。  
「感じてたの?」  
「そりゃ全裸のカノジョにあそこ弄られて何も感じないわけないだろ・・・」  
「つまり、『くやしい・・・!でも、感じちゃう・・・!』ってこと?」  
「・・・言い方はかなりアレだがそんなところだ。つーかいきなり先触るなよ一番敏感なんだから」  
ビンカン・・・!  
啓介の反応とその言葉で調子に乗った私は、再び彼のものに触れる。  
 
「ちょ、待て、待て待て待て!」  
彼の制止の声も聞かず、私は指を滑らせていく。  
かつて啓介がしたように、ありとあらゆる部位に。ついでにたまには揉んでみる。  
「いやホントもうそろそろ勘弁して――」  
目の前には、顔を真っ赤にした啓介が私を見つめている。  
抱きしめたい衝動に駆られるけど、それでは啓介の男性器を触りにくい。  
というわけでガマン。  
ガマン。  
ガマ――――  
「いいやもうべつに」  
「なにがっ!?」  
彼の突っこみを黙殺し、ガマン出来なくなった私は素早く啓介の背後に回り込んで抱きしめた。  
そして背中越しに再び彼の分身に触れる。  
これなら啓介を抱きしめながら責めることが出来る。  
さらにお互い一糸まとわぬ姿なのでお互いの肌の感触と体温、心臓の鼓動がダイレクトに伝わり、  
私の気持ちを高ぶらせる。  
これぞまさに一石二鳥ならぬええと何鳥になるのかなまあいいや気分いいし。  
そう考えながらも指の動きは止めない。  
爪をわずかに立てて輪郭をなぞると、傘状の部分にひっかかってしまい、弾いてしまった。  
「あ。」  
揺れ動くそれをつかみ取ろうとするが手を滑らせてしまい、手のひらを擦らせるだけとなった。  
が、それは宿主本人には案外強力なダメージになったらしい。  
「あ、やばいもう出る」  
「出るって何が――――」  
私がそういうと同時。  
彼の先端から白い液体が飛び出した。  
 
床に落ちた白濁液。  
それを私たちは他人事のような目で見つめていた。  
先走り、というやつだろうか。  
詳しいことは知らないしそれがどんなことなのかは分からない。  
でも、少なくともいい思いはしないというのは啓介の顔を見れば分かる。  
私が啓介にそんな顔をさせた、と思うとなんだか自分がものすごく情けなくなった。  
「・・・ゴメン。調子に乗りすぎた」  
「いや、お前のせいじゃないよ」  
啓介はそういいながら、私の肩に頭を乗せた。  
私に向けるその表情は、笑顔だ。  
「誰のせいかって聞かれると返答に困るけど、それでも、お前のせいじゃないよ」  
まるで理屈になってない、だけど、不器用ながらもこちらを気遣う啓介の言葉。  
その気持ちだけでも、嬉しい。  
だから私はその気持ちを伝える為、彼の唇に口づけて、言った。  
「ありがとう」  
「ああ」  
そういって微笑みあう私と啓介。  
もうさっきの罪悪感は消えていた。  
落ち込む私を啓介が励まし、笑顔を取り戻させてくれる。  
子供の頃からの私たちが幾度となく繰り返してきたこと。  
どれだけ月日がたっても、長い間離れていても、これは変わることがない。  
・・・やっぱり、根本的な部分じゃかなわないなあ。  
そう考えると共に、この人が恋人で本当によかったとも思う。  
「じゃ、先あがるね――――」  
「待てい。」  
ドスの利いたその声と同時、啓介はその場を立ち去ろうとする私の肩をガシリと掴んだ。  
 
その声の低さと尋常ではない何かを察した私は、  
油の切れた機械のようにギギギと音が鳴りそうなくらいぎこちなく彼の方を向き、仰天した。  
一言で言うと、目が逝っていた。  
何かが切れたようなスイッチが入っちゃったような輝きを瞳に宿しており、  
目つきは獲物を目の前にしたケモノのようにギラついていた。  
こんな啓介を見るのは生まれて初めてです。  
つまり――――彼の行動は普段以上に予想不能。  
行動パターンを予想して彼に接し、それゆえ予想外の事態に弱い私にとってはスーパーピンチ!?  
「あはははは・・・」  
流石の私も、いつもと違うふいんき(←なぜか変換できない)な啓介にたじろいでしまう。  
「見逃して・・・くれないよね?」  
「当たり前だ。恥をかかされた責任は取ってもらうぞ」  
そう言うと返事も待たずに啓介は私を抱え上げた。  
「・・・っていうかなぜにお姫様抱っこ?」  
「だってこれが一番運びやすいし」  
言ってる間に私は再び椅子に座らせられ、啓介も向かい合わせになるように腰を下ろす。  
再び彼の股間の方に目を向けると、既に大地を割りかねないくらいにそそり立っていた。  
回復早ッ!?いや標準がどれくらいかは知らないけど。  
と、どうやらまだ冷静な部分は残ってたらしい啓介が私の顔色をうかがうように言った。  
「イヤなのか?」  
「まさか」  
私は微笑みながら否定した。  
「言ったでしょ?啓介なら、何されてもいいって」  
「・・・あとで後悔するなよ。その台詞」  
 
こうして、攻守の逆転した第2ラウンドが始まった。  
 
「髪、柔らかいよな。サラサラで綺麗だし」  
「ありがと」  
啓介の膝の上に座った私は背後から自分の髪を洗う彼に礼を言う。  
(髪が長いので後ろに回った方が洗いやすいという理由でこうなった。  
まあさっき自分で洗ったのでシャンプーで軽く洗うだけだが)  
彼が自分から私のことほめるなんて珍しい。  
ならば、私の方からも。  
「啓介の顔って・・・」  
「ん?」  
微妙に何かを期待するような目を向ける啓介に、私は言った。  
「童顔よね」  
「サラリと言うなよ!人が気にしてることを!」  
どうやら逆効果だったらしい。  
・・・案外繊細な。知ってるけど。  
そんなことを思ってる間に髪にシャワーがあてられていく。  
そして、シャワーが止まる音が聞こえると私は言った。  
「カラダ、触っていいよ」  
「あ、ああ」  
言われた啓介はボディシャンプーを手に取ろうとする。  
「あ、待って!」  
「ん?」  
私は伸ばした彼の手を取り、彼に頬を寄せ――位置関係でこうなっただけで他意はない――言った。  
「私が啓介に使ったのでいいから」  
「へ?」  
間の抜けた声を出す啓介に続けて言う。  
「啓介の匂いをつけたいの」  
「ん、わかった」  
意外とあっさりと了承し、啓介は先ほど私が使ったボトルを手に取った。  
何の迷いもなく。  
 
ホントにいつもと調子が違うなと思いながら私は身を啓介に預けた。  
背に当たる啓介の胸から伝わってくる彼の鼓動が心地よい。  
が、啓介はそれを気にせず自分の両手にボディシャンプーをたっぷりとかけ始めた。  
「え、手で直接!?」  
「誰かさんは乳でやってくれたしな」  
そういわれると誰かさん=私は反論出来ない。  
「あのー出来ればタオルの方が・・・」  
控えめに言う私の意見を啓介は答えは聞いてないと言わんばかりに黙殺し、  
私の背中越しに腕を伸ばして私の腕を洗い始めた。  
最初はおっかなびっくりといった感じの手つきだったけど、  
次第にかつてのように這うような動きになっていく。  
「啓介、手つきやらしくない?」  
「好きな女に触れるのにやらしくなくてどうする」  
即答された。  
ダメだ。今の啓介には会話が出来ない。制御出来ないかもと思ってたけどまさかここまでとは。  
そう思ってる間に啓介は私の両腕を洗い終え、今度は私の足に手を伸ばした。  
まあ今は彼の好きなようにさせてあげようと思いつつ、私は彼が洗いやすいように座る向きを変えた。  
 
啓介は私の足も洗い終わると、今度は背中を洗い始めた。  
「どんな感じ?」  
「気持ちいいよー」  
私は彼の質問に軽い調子で答える。  
実際、背中から伝わる感触は私に快感を与えてきている。  
普段自分が触ることのない部位を愛する人が愛撫する。  
それがこんなに気持ちいいなんて知らなかった。  
そんなこと考えてると、急に啓介が私のお尻に触れた。  
「ひゃぅっ!?」  
「おお、やっぱり声上げた」  
思わず悲鳴を上げるが、なぜか啓介の声と表情は満足そうだ。  
どうやら私の反応が鈍かったことが不満だったらしい。  
「あ、あのね啓介?気持ちよかったのはホントだからね?」  
「む。そうかスマンスマン。んじゃ尻洗うから腰浮かしてくれ」  
そういって私の前に出された腕に私は渋々捕まり、腰を浮かせる。  
啓介はそれに「よし」と頷くと、お尻に触れた。  
鼻歌まできこえてきそうなくらいご機嫌な表情で私のお尻を撫で、時に揉む。  
人の話をあまり聞かず、あくまでマイペースに作業を続ける啓介。  
・・・なんだかいつもと立場逆転してるような気が。  
でも、これも啓介の一面だと思う。  
今まで抑制してた彼の欲望。  
それが私に向けられてる。  
そのことが女として恋人としてすごく嬉しい。  
「終わったぞ」  
「うん」  
言われた私は啓介と向かい合わせに座り直した。  
 
啓介は遠慮なく私の剥き出しになった胸や秘所に視線を向けた。  
流石に恥ずかしいけど手は太ももの上に置いて、胸や秘所は一切隠さない。  
こんな状況で隠しちゃ今までの流れが台無しだし。  
そんな私の葛藤を知らない啓介は私の胸の二つのふくらみにゆっくりと手を触れた。  
重さを確認するように軽く持ち上げては力を抜いて下ろし、何故か乳房の上に手をのせ、  
以前のように肌触りを確認するようにゆっくりと指を這わせ、輪郭をなぞっていく。  
そしてゆっくりと揉み始めた。  
「すごくやわらかい・・・」  
「・・・うん、ありがと」  
そしてある程度そうしていると、啓介は私に質問をする。  
「またでかくなってないか?」  
「うん。そうみたい」  
「具体的には?」  
「上から87−59−86だったのが89−58−87になった」  
「そんなにか・・・」  
ツバを飲み込んで喉を鳴らす。  
でも、そうしてる間も彼の手は止まることはなくひたすら私の胸をも見続ける。  
「・・・そんなに気に入った?」  
「うん」  
啓介は私の質問に案外素直に頷く。  
「・・・よかった・・・」  
それを聞いた私はほっと胸をなで下ろす。  
「うつぶせで寝ると胸が圧迫されたり肩こったり暑いときは胸の下とか谷間に汗掻いたり  
机とかに当たったりして邪魔だったりサイズの合う服とか水着とか下着とかがなかなか無くて  
いいのが見つかっても高かったり太って見えるからワンピースが着れなかったり  
エッチな目で見られてもその一言があれば報われるなーって思えるわ」  
「・・・苦労してんだな」  
「それなりに」  
しかしそうやって会話しながらも啓介の手は止めることはない。  
 
そこまで気に入られると女冥利に尽きるとか思ってる間に既に私の乳房は泡まみれになっていた。  
触られた胸から伝わる快感を味わった私は今度はいまだ触られてない先端が触られることを期待する。  
が、啓介はなぜか乳首には触れずに両手を私の乳房から離した。  
「先っぽ、さわらないの・・・?」  
「あとで」  
啓介は簡潔に答えると十指を私のウェストに触れさせ、その指を這わせた。  
途端に、未曾有の快感が私の身体に伝わった。  
「ひゃっ!?」  
思わず悲鳴に近い嬌声をあげて、椅子から転げ落ちてしまう。  
「だ、大丈夫か?」  
急に過度のリアクションをした私に啓介は声をかける。  
つい先ほどまで欲望のままに私を弄っていたのに、異変を感じると即座に気遣いの言葉をかける。  
そんなところが彼の美点だと私は思う。  
そんな彼だから、私は心惹かれたのだ。  
「大丈夫、ビックリしただけ「んじゃ続けよう」」  
切り替え早ッ!?と私が突っ込むより速く、啓介は私のウェストを撫で回す。  
「あぅっ!」  
言おうとした言葉はただの嬌声に塗り替えられた。  
「何か乳や尻の時より敏感じゃないか?」  
「多分胸やお尻より肉が薄いからだと思うひゃぅっ!?」  
言い終える前に啓介は私の乳首にボタンを押すように触れたため、嬌声をあげてしまう。  
「関係ないと思うぞそれ」  
「ツッコミの代わりに乳首責めないでよ・・・」  
顔を赤くして口を尖らせると、啓介は泡まみれの手で私の頭を撫でてきた。  
「もう、そんなんで機嫌直ると思ったら大間違いだからね」  
「めっちゃニコニコしてそういっても説得力ないぞ」  
啓介はそういうと同時、私の乳首を同時に指で弾いた。  
「ふあぁぁっ!」  
私は悲鳴を上げて、胸を揺らしながらのけぞってしまった。  
 
「けいすけの、えっち・・・。そんなところもすきだけど・・・」  
「何を今更」  
完全に開き直った発言をし、啓介は私の太ももに触れて足を開かせる。  
当然啓介はそこに視線を移す。  
「そんなに見つめられると流石に照れるんだけど・・・」  
「何を今更」  
剥き出しになった私の恥部。  
その真上には私の髪と同じ色の毛が生えていた。  
そこを見られ、顔が火照っていくのを自覚した私はそれを誤魔化すようにまくし立てる。  
「ほら、私って毛が真っ黒だから濃く見えるかなーって」  
「そんなことないと思うけどな」  
そういわれた私は多少なりとも落ち着きを取り戻した。  
「啓介に言われると例え気休めかもしれなくても安心するなーって」  
「気休めじゃないっての」  
そういいながら彼の指がついに私の亀裂に触れる。  
が、触れただけで止まってしまった。  
「・・・濡れてる?」  
「・・・たぶん」  
秘所の湿りを看破された私は再び動揺しだした。  
さわられる前から濡れてしまって、いやらしい、と思われないだろうか。  
そんな考えが脳に宿り、私の心から落ち着きを奪う。  
と、そんな私の思考を気いてるのかいないのか落ち着いた口調で啓介は言った。  
「綾乃も、これぐらい感じてたんだ」  
「・・・うん」  
耳まで真っ赤になりながら私が答える。  
が、彼の言った言葉は予想外のものだった。  
「よかった」  
彼のその台詞を聞いた途端、私にまとわりついていた不安が吹き飛んだ。  
 
彼は単純に私を感じさせてるか不安だっただけだ。  
さっきまで私が嬌声をあげていたというのに。  
こういう微妙に察しが悪く、臆病なところはいつもと変わってない。  
ならば私のやることは一つだ。  
そう判断した私は、彼の背中を押す台詞を言う。  
「いいよ、好きにして」  
「・・・ああ」  
気を取り直した啓介は私の割れ目にあてていた指を動かし始めた。  
 
その手つきは何というか、おっかなびっくりといった感じで以前のように欲望のままにと  
いうわけではなかった。  
でも、それは最初の方だけで、次第に激しさを増していく。  
そして空いた手で胸を責める。  
「・・・ぅあっ・・・!」  
片方の手は割れ目をなぞって時に指先を少し突き入れ、もう片方は乳房とその先端を蹂躙する。  
それにあわせて私も嬌声をあげる。  
二点同時の責めに、私の理性はあっけなく崩れていた。  
と、突然啓介の割れ目側の手が止まった。  
そちらに目を向けると、彼の指先は  
啓介の顔を見ると、私に何かを問いかけるような目を向けていた。  
何のことかはすぐに分かったけど、あいにくしゃべれる余裕はない。  
だからその代わりに無言で頷いた。  
それは正確に伝わったらしく、啓介はその一番敏感な部位を指で転がし、弾いた。  
秘所の中の豆を弄られ、そこから私の身体に快楽と言う名の刺激が伝わっていく。  
「ひあああああああ!!」  
悲鳴か嬌声か自分でも分からない叫びが私の口から放たれた。  
 
イってしまった。それも好きな人の手で。  
嬉しい、と思うと同時に私ってこんなにエッチな子だったのかと恥ずかしくも思う。  
絶頂のあとの脱力感で動けない身体を啓介にもたれさせながら私はそんなことを考えていた。  
「おつかれさん」  
耳元で最愛の人の声がする。  
内心を悟られぬように残った力を振り絞って枕代わりにしていた彼の肩から顔を上げ、  
「もういっかい、する?」  
そんな体力もないのに微笑みながら言う。  
が、返ってきた答えは予想外のものだった。  
「ごめん、もう無理・・・」  
そういった啓介の鼻から紅い筋が流れ落ちた。  
そして、今度は啓介が私の身体にもたれかかった。  
軟弱な、とは思わなかった。  
私もものすごく疲れたし。  
だから私は啓介の頭を撫で、言った。  
「おつかれさん」  
と、肩から疲れたような声がした。  
「・・・つづきは、あとに、しようか・・・」  
「・・・うん、そうしようね」  
いろいろな意味でのぼせ息も絶え絶えになった啓介にそういうと、  
私は浴室を出るために啓介ごと身を起こした。  
 
 

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