「「さて・・・」」  
そして日が沈みかけた夕方。  
俺達は俺の自室のベッドの前で何故か正座して向かい合い、  
「よろしくお願いします」  
「こちらこそよろしく」  
なぜか三つ指ついていた。  
これが悪いというわけではないが、これから若い男女が夜(夕方だけど)の営みをするにしては、  
少々堅苦しいんではないだろうかと他人事のように思う。  
「・・・ってオイ。ちょっと待て」  
「どうかした?」  
俺は物思いに耽ってる隙に抱きついてきた不埒物に半目を向け、  
「お前今、俺をベッドに押し倒そうとしてないか」  
「・・・はっはっは。そんなばかな」  
「お前ウソ吐くときは作り笑いになるからすぐ分かるんだよ」  
その言葉を聞いた綾乃は動きを止め、少しの間を置くと小首をかしげていった。  
「・・・これも愛の力?」  
「幼馴染みとしての経験だろ」  
まあともかく、といって綾乃は俺から離れ、  
「前に私言ったよね。  
『啓介が元気になってくれるなら私は嫌われたっていいし傷つけられてもいいから』って」  
だからさ、と前置きすると真っ直ぐに俺の目を見て、言った。  
「メチャクチャにしちゃって、いいよ。啓介がしたいのなら」  
口の笑みとは対照的に目の真剣さが彼女の決意が本気だと物語っている。  
とはいえ、俺もそれに答えなければいけない。  
あまりこういうこと言うのは気が乗らないが、そうもいってられない。  
そう思いながら俺は頭をかき、  
「メチャメチャにする気はないけどな・・・」  
そこで一息つき、  
「今更言うのも何だけどさ。俺はお前のことすごく魅力的だと思う」  
俺は真っ直ぐに綾乃の目を見て、言った。  
「だからさ、出来るだけ優しくする」  
「・・・うん」  
俺の言葉に綾乃はそう頷き返し、やがてどちらとも無く唇を重ねた。  
それが開始の合図となった。  
 
まず俺は綾乃の上着を脱がせた。  
続いて綾乃も同様に俺の上着を脱がせる。  
どちらかが求めたわけでもなく、俺達は一枚一枚、お互いの身体から衣服を脱がせていく。  
そうやっていると先に――彼女が先に脱がされたため当然だが――綾乃が下着だけになった。  
レースのついた黒の下着を身に纏った彼女の肢体は彼女自身の豊かに実った乳房や尻、  
細く引き締まった腰、そしてわずかに赤みを帯びた肌と相まって俺の目には非常に官能的に見えた。  
「・・・なんか、色っぽいな」  
「・・・ありがと」  
綾乃は軽く礼を言うと俺のズボンを脱がせ、俺に身をすり寄せた。  
いつものように抱きつくわけでもなく、ただ肌と肌を触れ合わせるだけ。  
が、触れ合った胸から綾乃の速い鼓動が伝わってきて、彼女の不安と緊張が理解出来る。  
それを解消しようと、俺は彼女の背中に腕を回してその細い体躯を抱きしめた。  
一瞬後に綾乃も抱きしめ返す。  
が、俺はそこで終わらずに彼女の髪をかき分け、背に指を這わせ、ブラに触れる。  
髪とブラ、二つの黒い物の感触を楽しみながらも指先がホックに到達する。  
そこに指を引っかけて軽く動かすとホックはあっけなくはずれ、薄い背が露わになった。  
胸は身体から離さぬまま肩紐を外すと、  
綾乃も俺の意図を理解したらしくはずれた肩紐からさらに腕を抜いていく。  
そして一度身体を離すとブラが落ち、綾乃の豊かな乳房が露わになった。  
俺は即座に自分と綾乃の間に手を差し込んで乳房を鷲掴みにし、揉み始める。  
その感触は、例えるならゴム鞠のようだ。  
少し動いただけでぷるぷると揺れ、しっかりとした弾力を触れる者に伝える。  
その感触を味わうためにさらに指を動かす。  
我ながらお世辞にも上手いとは言い難いけど、以前とは違い欲望のままという訳ではなく、  
ゆっくりと指を埋めていく。  
そうしながら顔を上げると、綾乃と目があった。  
・・・喜んでいる。  
自分への過信というわけではないのは彼女の恍惚とした顔を見ればわかる。  
少しだけ揉むペースを速くしてみると、さらに頬と視線の熱が増していく。  
 
と、突然背中に何かが滑っていく感触がした。  
背中に回されたままの綾乃の手指が俺の背を撫でたのだと一瞬後に理解する。  
俺も気持ちよくさせようとしての恋人の行動に嬉しくなる。  
お互いに熱を帯びた視線を交差させつつそうしていると唇を重ねたくなり、実際そうした。  
いつものようにどちらかが目を閉じたりはせず互いの唇と視線、そして舌の感触を交換しあう。  
しばらくそうした後唇を離すと俺は本格的に綾乃を攻めようと手を滑らせる。  
昨日の風呂場での出来事のおかげで少しはコイツの弱点が分かっている。  
その内の一つである彼女の桜色の乳首に俺の指先が触れた。  
「ひあっ・・・!?」  
先端に指を這わせるだけだが綾乃は針で刺されたように激しく反応する。  
無論、痛くしたわけではなくむしろ快感を与えたのだが。  
ともかく俺は綾乃の抱擁をほどき、彼女の右の乳房に顔を近づける。  
そして右手で彼女の左の乳首を責めながらも右の乳首を舐め始める。  
「・・・あぅ・・・」  
やはりここが弱点か、と小さくあえぐ綾乃の姿を見た俺は確信する。  
だから俺はそこを執拗に攻めた。  
舐めて、くわえて、甘噛みし、時には吸いもした。  
空いた方の乳房にも攻めを忘れない。  
「あぅ・・・、あっ・・・!」  
そして俺の攻めに綾乃は敏感に反応する。  
ひとしきりその様を楽しむと、今度は身体全体に指を這わせて責める。  
「ふぁっ・・・、あぅっ・・・、あんっ・・・!!」  
その動きの激しさに比例して綾乃の声もボリュームを増していく。  
荒い息。高鳴る鼓動。柔らかな肌。玉のような汗。  
それらすべてが俺を興奮させる材料となり、  
綾乃の扇情的な姿を目で見て、綾乃の嬌声を耳で聞き、綾乃の柔らかな肌に指で触れ、  
綾乃の身体に浮いた汗を舌で味わい、綾乃の髪の匂いを鼻で嗅ぐ。  
五感全てを使って綾乃を感じていく。  
 
と、綾乃は俺の身体に残った最期の一枚となったパンツをずり下げる。  
すでに固くなっていた俺の肉槍が露わになる。  
俺も同様に彼女のパンツに手をかけると、それをわずかにずらして尻のみを露出させ、攻め始めた。  
尻を撫でて、揉むことで乳房とはまた違ったやわらかさを堪能する。  
そして、パンツを取り払うと露わになった秘所に指を這わせる。  
「あっ・・・!」  
柔毛に覆われた割れ目を指でなぞり、もう片方の手指で肉豆を弾く。  
「うあぅっ・・・、けい、すけ・・・」  
「ん?」  
「そろそろ・・・、いれて・・・」  
「わかった」  
彼女の懇願に簡潔に答えると俺は綾乃の身体を抱え上げ、ベッドに横たわらせた。  
そして俺は彼女の身体に覆い被さり、  
肉棒を入れようと先端を彼女の湿り気を帯びた秘所にあて、腰を突き出す。  
が、俺の肉棒は彼女の秘所に侵入することはなく、つるりと音を立ててあらぬ方向へ滑った。  
「あんっ・・・!」  
もっとも敏感な位置を刺激された綾乃は嬌声をあげるが、  
「・・・あれ?」  
失敗した俺は首をかしげた。  
角度がいけなかったのかと思い再度トライするがまたも失敗。  
「・・・」  
「・・・」  
気まずい。とてつもなく。お願いだからそんな冷めた半目でこっちを見ないで。  
・・・ここまで上手くいってたのにこんなところでとちるなんて  
まあともかく気を取り直して別のアプローチで行くことにする。  
「け、けいすけ?なにやってるの?」  
「いや、もうちょっと濡らした方がいきなりモノ入れるより抵抗少なくて済むだろうと思って」  
言いながらも俺は指を彼女の秘所にあて、割れ目をなぞり始めた。  
 
「・・・ふあぁッ・・・!」  
彼女の喘ぎ声を耳にしながらしばらくそれを続けると、俺はもっとも濡れている部分を探り当てる。  
「・・・このあたりか」  
そう呟くとまた肉棒を探り当てた部分にあて、今度は滑らないように手を添える。  
「・・・いくぞ」  
「・・・うん」  
お互いに頷きあうと、俺はゆっくりとそれを突き入れた。  
「・・・っくぁ・・・!!」  
聞こえてくる綾乃の声は喘ぎ声ではなく苦痛に耐えるモノに変わっていた。  
「・・・どうする?」  
「・・・え?なに、を・・・?」  
この時点で既に息を乱れさせている綾乃に、俺は先ほどの発言の補足を行う。  
「このまま続けるか?やめるなら今の内だぞ?」  
俺の問いに綾乃は首を左右に振ることで答えとした。  
それに答え、俺はさらに奥に突き出す。  
と、先端が何かにぶつかる感触がした。  
処女膜だ。  
ふと、彼女の方に視線を向けると綾乃は表情をさらに苦痛に歪ませていた。  
その様に、俺の心に少しだけ躊躇が生まれる。  
だが、本当に彼女のことを思うならここでやめていいはずがない。  
だから――――膜ごと一気に貫いた。  
 
「うぁッ!くぅッ・・・」  
闇色の髪を振り乱して綾乃が苦痛に耐えきれずに苦悶に満ちた声をあげる。  
「だ、大丈夫か?」  
「・・・ちょ、ちょっと、たいむ・・・・・・」  
涙目になりながら息も絶え絶えに言う彼女に、俺は首を縦に振って見せた。  
とはいったものの、実はこの状況はすごく辛い。  
俺の肉棒を締め付ける彼女の膣内は異物を入れているにもかかわらず、  
それを受け入れようとしているように暖かく俺の肉棒を包み込んでいる。  
決して緩いわけではなくむしろキツく締め付けているのだが  
決して痛いわけではなくむしろこちらに快感を与えてくる。  
正直すぐにでも果てそうだが綾乃の方はそうはいかない。  
「――――――――!!!」  
無言で苦痛に耐える綾乃の様が見ていて痛々しい。  
が、彼女の目は端に涙を浮かべながらも「続けて」と語っている。  
こういうときはこの技能が便利だと思いながら俺は彼女の思いに答え、動きを再開する。  
最初のうちはゆっくりとだったが、動きを繰り返すうちにペースがあがっていく。  
「ふぁ、あぁっ・・・!あんっ、あっ、あぁぁぁぁっ!!」  
俺が動くたびに綾乃の身体も揺れ、それ以上に彼女の乳房が激しく上下に弾む。  
そして彼女の声から苦しさが弱まっていき、代わりに甘さが生まれていく。  
「あっ、あっ、あっ、あっ、あぁぁぁぁっ!!」  
彼女のその声と同時、俺は彼女の膣中に自分の欲望をはき出した。  
 
 
「――――しちゃったね、私たち」  
「ああ」  
少しの間ベッドで眠りについた後。  
目が覚めた私たちはベッドの上でいちゃついていた。  
率直すぎる表現だけどこれ以外的確な言葉が思い浮かばないから仕方がない。  
「もう大丈夫か?」  
「うん。最後の方は気持ちよかったし」  
「さらりというなよそんなこと・・・」  
そう言われた啓介は照れてしまったのか私から目をそらしてしまう。  
「啓介は?」  
「・・・まあ、すごく、気持ちよかった」  
彼は顔を赤く染め、とぎれとぎれになりながらもそう答える。  
あんなことした後なのに、まだ照れている。  
そこが可愛いと思っていると、啓介は彼の机に置かれた包装された小さな箱  
――私からの誕生日プレゼント――を見つめながら言った。  
「何か悪いな。誕生日にいろいろプレゼントしてもらって」  
「ううん。私たち付き合ってるんだからこれくらい平気平気♪」  
そのプレゼントの内容には先ほどの睦事も含まれてるだろうけど、  
流石に恥ずかしいのであまり言及はせずに別の話題を口にする。  
「なんなら歌でも歌ってあげようか?」  
「遠慮しておく。お前音痴だし」  
「な・・・・・・・・・・・・!?」  
啓介の遠慮の遠慮のない発言に、私は愕然とした。  
「人が気にしてることを・・・、だからいつも鼻歌で誤魔化してたのに!」  
こうなれば意地でも歌ってやる。  
ムキになった私は、大きく息を吸って歌い出した。  
 
「きょっうは〜すってきな、た〜ん〜じょ〜う〜び♪」  
「そっちかよ!?」  
そのツッコミを無視し、私は素早く啓介に抱きつくと彼の耳元に唇を寄せ、  
「わったっしっのっすっきな、啓介っ、おめでと〜♪  
わったっしっのっすっきな、啓介っ、おめでと〜♪」  
「や〜め〜ろ〜、耳元で歌うな〜!」  
「やだもう照れちゃって、素直じゃないんだからぁ♪そこが好きなんだけど♪」  
「可愛く言い直してもダメだから!」  
「えっ、可愛い!?」  
「都合のいいところだけ聞くなぁ!」  
顔を真っ赤にしてツッコミを入れる啓介をまあまあといってなだめると、  
私は彼の肩に頭を預け、  
「・・・ずっと、こうしてたいな・・・」  
「・・・ああ」  
そういってお互いの身体を抱きしめあう。  
そして身体を離して向かい合う。  
「じゃあ早速・・・」  
私の言葉に啓介は期待をこめて目を輝かせ、  
「受験勉強しよっか」  
「そっちかよ!?」  
思い切り派手にコケた。  
即座に立ち上がると私に詰め寄る。  
「もっかいHしようとかそんな流れじゃないの!?」  
「うん」  
「即答!?」  
私に平然とかわされ、啓介は狼狽し、がっくりと肩を落とした。  
・・・やっぱいいリアクションするなあ・・・。  
でもこれ以上は流石に意地が悪い。  
「本音言うとさ、そうしたいのは山々だけど・・・」  
そういいながら私はある一点を指さす。  
「もうそろそろ帰らなきゃ」  
「・・・ああ」  
啓介は私が指先にある時計の時刻――既に十時になっている――を見ると納得したのか返事をした。  
「・・・まあ、それならしょうがないや」  
「顔がちっとも『しょうがない』って表情になってないけど」  
私のツッコミは啓介に黙殺された。  
 
「ありがとう。この二日間」  
「私の方からも、昨日と今日はありがと♪」  
私の自宅の前で、私たちはここ二日に起こったいろんなことについて礼を交わす。  
「じゃ、また――――」  
「――――待った」  
急に啓介は私を呼び止めた。  
何事かと彼に向き直ると、彼は真剣な表情で、  
「忘れ物」  
「へ・・・?」  
私が間抜けな声を出した直後。  
啓介は自分の唇を私の唇に触れ合わせた。  
私に促されたわけでもない本当に初めての啓介からのキス。  
それは触れ合うだけのキスなのに私の心をときめかせた。  
そして、唇が離れる。  
呆然とする私に啓介は頬を赤く染めつつも真っ直ぐに私の目を見据えて言った。  
「・・・じゃ、また明日」  
その言葉で、私はようやく正気を取り戻す。  
「・・・うん、また明日」  
私がそうオウム返しすると啓介は背を向け、去っていった。  
みるみる遠ざかっていく彼の姿を見ながら私は自分の唇に手を当てようとして――――やめた。  
つい先ほど啓介と触れ合った感触を消したくないから。  
・・・啓介って、何かする時は結構思い切るなあ。そこも好きだけど。  
そう思いながら、私はもはや啓介の姿が見えなくなった路地に背を向け、大きく一歩を踏み出した。  
「あいたっ!あいたたたた・・・」  
――――そして、再発した破瓜箇所の痛みに強制的に現実に引き戻らせられた。  
 
 
帰宅したあと。  
私の前にはなぜか赤飯と鯛の刺身が並べられていた。  
これでもか、とばかりに何かの祝いのような夕食に私は首をかしげるけど、  
ニヤニヤとした笑みを浮かべたお母さんのこちらに向ける視線と、  
どこか上の空なお父さんの様子でピンと来た。  
・・・バレてる。  
一体なぜバレたのだろうかと考えながらも食事を終え、  
気分と身体をさっぱりさせるため浴室に向かおうとすると、お母さんがすれ違いざまに言った。  
「お風呂場では静かにね」  
「・・・はい」  
流石に顔を赤くしながら私は答えた。  
 
帰宅したあと。  
俺の前にはなぜか出前でとったとおぼしき特上寿司が並べられていた。  
これでもか、とばかりに何かの祝いのような夕食に俺は首をかしげるが、  
ニヤニヤとした笑みを浮かべた両親と兄夫婦(こちらが外出してる間に帰ってきていた)  
のこちらに向ける視線で理解出来た。  
・・・バレてる。  
一体なぜバレたのだろうかと考えながらも食事を終え、  
場の空気から逃げるために部屋を出ようとすると唐突に父さんが言った。  
「初孫まであと十月十日かぁ」  
「イヤちゃんと避妊したから!」  
途端に4人のブーイングが聞こえてくるが無視。  
・・・この分だと綾乃もバレてるかもしれん。  
嫌な予感に身をすくませながら俺はその場を後にした。  
 
なお、翌日には友人全員にバレました。  
 

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