海。
人類にとっては母なる場所。
ここに来ることで人は安らぎを得る。
そんな事言いだしたのは何処の誰なのか。
まあ全然関係ない前文はおいといて、俺達は海に来ていた。
目の前に広がる巨大な海。
それと地上を分ける境界線となる砂浜。
そしてその上に大量の人間が所狭しと行き交っていた。
それらを真剣な目で見つめる二人の人物がいた。
「先生」
「なんだ生徒」
赤一色の水着姿の男――赤峰は同じく紺一色の水着姿の男――兄の手をがっちりと握り、
しかし視線は水着のネーチャン達から外さず、
「来て良かったです・・・!」
「俺も同感だ同士よ・・・!」
そういって男二人は抱き合い――――
「気味悪いわ馬鹿共ッ!!」
「「ぐげぇっ!?」」
――――俺のドロップキックの直撃を受け見事に吹き飛んだ。
もちろん落下地点は熱砂。
「「う゛わぢゃぢゃぢゃぢゃぢゃぢゃぢゃぢゃぢゃ!!!!!」」
太陽光で十分以上に熱を持った砂浜にダイブした二人はあまりの暑さにのたうち回った。
その光景があまりに見苦しいので、俺は紺と白の水着の裾を直しながら忠告した。
「やかましいぞお前等・・・。全く海に来てテンション高くなったからってそんなに騒ぐな馬鹿共」
「白木。お前の行動なかなかエゲつないぞ」
隣でぼそりとツッコミを入れるのはグレーに黄色のラインの入った水着の男――黄原だ。
俺はいつの間にか現れたそいつにも冷ややかな目を向け、
「お前も水着のネーチャン達に鼻の下伸ばして丸焼きになりたいか?」
「いや遠慮しておこう」
そういうと何故か黄原は俺から目をそらして雲一つ無い青空を見上げて、
「俺はみどり以外は特に興味ないしな」
「っだーもー、ただでさえ暑いのに惚気で余計に熱くさせるなよっ!」
「痛たっ痛たっちょ、『あつい』の漢字が違って痛てっ痛てっ!」
俺は黄原の背に何発も紅葉パンチをたたき込んだ。
「っていうか、お前が一番テンション高いような・・・」
「そうか?そんなつもりはないんだがなぁ」
思ったことを口にしただけなのに三人――いつの間にか兄たちも戻っていた――は俺に半目を向けた。
「お待たせー」
と、暑い日に似合わないノーテンキな声が聞こえてきた。
「着替え遅いって四人とも・・・」
そういいながら振り向くと、予想通りの四人組が予想以上の姿でこちらに駆け寄ってきた。
向かって一番左側にいるのは青野だ。
青いワンピースとフリルの水着に包まれた身体は、幼いながらもそれなりに成長していた。
まあどちらかというと一般よりは一部の人が好きそうではあるが。
そのすぐ隣――――つまり左から二番目にいるのは茜義姉さんだ。
スタイルが良く背筋もピンとしていて、足も長いモデル体型で濃い赤のセパレートの水着が目を引く。
ただし乳はないが。
一番右側にいるのは吉川だ。
ヘタをすれば男よりもあると思えるほど背が高く、顔立ちだけでなく身体も学生とは思えないほど
成熟しており、紺に黄色のラインの入った競泳型の水着が窮屈そうだ。
もっとも本人はそのことを気にしてるのだが(だから『ちゃん』付けで呼ばれることを好むらしい)。
そして――――綾乃は右から二番目にいた。
いや最初に目についたのだが最後のお楽しみにしようと意識して目をそらしていたのだ。
黒く艶のある豊かな長髪。
その一房に巻き付くように結ばれている白いリボン――おそらくは、俺が昔プレゼントしたもの
――が黒に対するアクセントのようで目を引く。
いつもより露出過多な細身の身体。
それに不釣り合いな大きさの胸。
まあ大きいと言っても大きすぎず、かといって小さいわけでもない、
つまるところほどよい大きさの乳房が白と黒のビキニに包まれて谷間を作り出していた。
ウェストも見事にくびれており、無駄な肉が一切無い。
つーかドコに内蔵入ってんだこれ。
正面からじゃ見えないが、きっと尻もすごいのだろう。
そういやー尻の方は今まであまり意識してなかったなー俺。
足も細く、それでいて太ももは柔らかそうだ。
・・・やべえ、すごくいい・・・。
と、俺の視線に気付いたのか綾乃が俺に笑顔を向けてくる。
それはいつもの表情なのだが、いつもよりも扇情的な彼女の姿に今までにない色気を感じてしまい、
おれはぎこちない笑みを返すのがやっとであった。
「いや綾ちゃんってかなりスタイル良くってねー」
「・・・お前も十分凄いと思うが」
「いやー、私あんなに細くないし」
「・・・そうでもないと思うが・・・」
「――ってどさくさに紛れてドコ触ってンのよっ!?」
「・・・なにやってるあの黄色・・・」
「・・・不潔です・・・」
「いや〜、若いって良いね〜。まあ茜にはかなうまいが」
「な、なななななななななな何言うのよこんなところで!?」
そんな友人達の声――ついでに打撃音――も遠くから聞こえているように感じる。
「どう?」
綾乃も騒音を無視して笑顔――だが微妙に不安そうな顔――で俺に聞いてくる。
いやお前前にかがんで上目づかいに聞いてくるなよ。
(っていうかさっき、乳揺れたよな・・・)
いつも身体の線が出る服装なので揺れるのは見たことはあるが
今回はちょっと動いただけで胸元から露出した乳房が揺れた。
そのせいで目線が胸に行きそうになるが何とかそれを阻止。
勢い余って顔を背ける形になってしまったが。
「・・・いいんじゃ、ないでしょうか・・・」
緊張のあまり何故か敬語になってしまった。
くそう。いまだに慣れん。
と言うか以前に着替え中の半裸姿を目撃してしまってるからついその姿を思い出してしまう。
そんな俺の葛藤を知ってか知らずか綾乃は表情から不安さを消し、
「ありがとっ♪」
そういった彼女の笑顔は、今日の空にも負けないくらい晴れやかだった。
それからすぐにランチタイムとなった。
腹が減っては戦は出来ぬ。
そういうわけで俺達の前に重箱が置かれていた。しかも二つ。
その女性陣手作りの味に舌鼓を打っていると、
綾乃は割り箸で唐揚げをつまみあげ、それを俺の眼前に突き出し、
「あ〜〜〜〜〜〜ん♪」
「・・・やると思った」
俺は綾乃に冷ややかな視線を向ける。どうせ効かないだろうけど。
「ほらここにいるバカップル共でもそんなことやってな・・・」
「「「「「「あ〜〜〜〜〜〜ん♪」」」」」」
俺が最後まで喋りきる前に、他6人が一斉に食べさせ合いを開始した。
しかも全員俺達をきっちり視界の端にとらえている。
そして全員の目がいっていた。『早くしろ』と。
「・・・逃げ場無しかよ・・・」
覚悟を決めた俺は口を開き、唐揚げを口に入れてもらった。
キチンと良く噛んでから喉を通し、一言。
「美味い・・・」
「本当!?」
いつものように身を乗り出して聞いてきた。
いや顔近い顔近いってかそんなカッコで急に動くな乳揺れてるし。
それにとまどいつつも何とか答える。
「お、おう・・・」
「よかった〜。それ作ったの私なんだ〜〜♪」
綾乃はそういって俺に笑顔を向ける。
俺がそういう顔をさせた、と思うと何やら照れくさい。
それから目を背けると、他6人が一斉に溜め息をつくのが見えた。
「「「「「「はいはい、御馳走様」」」」」」
「なんで?みんなまだちょっとしか喰ってないだろ?」
「「「「「「「そういう意味じゃない!!」」」」」」」
何故か、7人全員――綾乃も含む――に一斉に突っ込まれてしまった。
そして昼食後。
俺は独りで意味もなく空を見上げて思案していた。
「どうしよっかな〜・・・」
俺がそう呟きながら思い浮かべることは一つだ。
今朝見た悪夢。過去に俺が犯してしまった『罪』。
それが俺の心の中にしこりのように引っかかっていた。
もうあいつにあんな思いはさせたくない。二度と泣かせたくない。
――ならば、どうすればいいのか。
もう、あんな思いをさせないようにするには――――
「け〜い〜す〜けっ♪」
と、突然いつも聞き慣れている綾乃の声とともに、俺の身体にいつものように細い腕が巻き付き、
俺の背中にいつもより柔らかいものが押しつけられた。
「どわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
背に感じたもののあまりの感触に驚いた俺は自分でも驚くぐらいの大声を上げていた。
周囲から視線を感じるが、そんなことは気にせずに勢いよく首を45度左――アイツはいつも
後から抱きつくときはそっちに顔を出す――に旋回。
するとそこには――予想通り――綾乃が小悪魔のような笑顔を浮かべて俺の肩に顎を乗せていた。
「おおおおおおおおおおおおおおまえいいいいいいっったいなにをした!?」
「後ろから抱きついた、っていうかしてるんだけど?」
「サラリと言うなよそんな恥ずかしいこと!
ていうか人前でするなっていっただろ!?」
「だって啓介さっきから元気ないみたいだったし。」
そういうと、綾乃は真剣な目を俺に向けながら俺の頬に手を触れさせ、
「啓介が元気になってくれるなら私は嫌われたっていいし傷つけられてもいいから」
と、綾乃は突然表情から力を抜き、眉尻を下げる。
「・・・ごめんね?」
先ほどのテンションは何処へやら綾乃は申し訳なさそうな表情で、
「結局、言い訳だよね」
「いや・・・」
俺は彼女の頭に手を乗せる。
太陽の光を浴びて熱を持った柔らかな髪の感触を楽しむように頭を撫で、
「ありがとな」
「・・・うん」
腕の下から見える綾乃の顔からは陰りが消えていた。
「じゃ、泳ぎに行こっ泳ぎに!」
「え?あ、ちょ待て、待てって!?」
俺の返事も聞かずに、綾乃は俺の手を取って海に向かって駆けだした。
海で一通り遊んだあと、俺達は宿泊先の旅館に到着した。
予約してる部屋は男用と女用の二つだ。
と言っても、宴会に使うようなデカめの部屋を襖で仕切っただけだが。
兄が言うには「その方が騒げるだろ?」らしい。
まあ予算をケチった可能性がないわけではないが、これぐらいは見逃しても良いだろう。
殆どの費用は兄が支払ってるし。
その内の男部屋に荷物を下ろすと同時、兄が宣言した。
「さあ、風呂にでも入るか!」
「また濡れるのか・・・」
「男が『濡れる』って言っても嬉しくねえ・・・」
その場にいた全員で赤峰に鉄拳制裁を行った。
赤峰の屍を引きずりながら部屋から出ると、ちょうど隣の女部屋から出る綾乃達と鉢合わせした。
「あっ、啓介」
「よっ、綾乃」
綾乃は俺が抱えているビニールケース(中身はシャンプーや石けん等)や肩にかけたタオルを眺め、
「これから御風呂?」
「まあな。そっちは買い物か?」
「ううん。私たちも御風呂」
「なぬっ!?」
即座に赤峰が復活した。
「っていうことは直美も・・・!ああこうしちゃいられんすぐにでも――」
「覗いたら殺す」
「「「「すみませんでした」」」」
吉川の殺意のこもった視線に気圧され、何故か俺達まで頭を下げていた。
旅館での大浴場。
そこの湯船に仁王立ちする二人の男がいた。
彼らは目の前の壁――男湯と女湯を仕切るためのものだ――を真剣な顔と目つきで睨みつつ口を開く。
「先生」
「なんだ生徒」
全裸の男――赤峰は同じく全裸の男――兄の手をがっちりと握り、
しかし視線は壁から外さず、
「女湯覗きたいです・・・!」
「俺も同感だ同士よ・・・!」
なにやら本当にやりそうな気がしたので、俺はドロップキックを放つため空中で身を縮め――
「「まあ覗かんけど。怖いし」」
――派手な音を立てて背中から湯船にダイブした。
私たち四人しかいない大浴場。
ほぼ貸し切り状態な浴場に何故か男湯の方から何かが水に飛び込んだような音が響いた。
「・・・何やってるのかしら・・・」
「・・・まあ馬鹿やってるんじゃないかと・・・」
「・・・いつものことですよね・・・」
口々に率直な感想を述べる友人達。
「悪かったな馬鹿で!!」
どうやら聞こえてたらしく、啓介が抗議の声を上げた。
きっとみどりちゃんや義姉さんあたりがこのあと啓介に冷淡なツッコミを返すだろう。
それは避けたい。私以外の人に啓介をからかわれたくないし。
ここは幼馴染みである私がフォローしなければ!
「でもそんなところも含めて好き〜〜!!」
そう叫んだ途端、女湯男湯両方の場が静寂に満ちた。
それからきっかり十秒後、男湯から絶叫が響いた。
「そんな恥ずかしいことこんなところで叫ぶな馬鹿!!」
どうやら私のフォローは気に入らなかったらしい。
うわ腹立つ。せっかく人が助けてあげようと思ったのに。
「いいじゃないべつに他に人いないんだし!」
「そう言う問題じゃねえ!素っ裸で何トチ狂ってんだお前は!」
「な・・・・・・!裸なのはお互い様でしょこのエッチ!」
その後、私たちは延々と壁を挟んで口論を続けていた。
その間にみんなが退室してることも気付かずに。
浴衣を着込んで脱衣所から出ると、隣の脱衣所から出た綾乃と鉢合わせした。
そのまま二人並んで帰路につく。
「ゴメンね?」
「こちらこそ」
それだけ言うと後は無言だ。
だが、決して険悪な空気ではないことは俺の浴衣の裾を掴む綾乃の手が証明していた。
部屋に戻ると、既に食事の用意がされていた。
部屋を仕切る襖も開いており、その境界線を越えてお膳が八つ並べられていた。
「おう遅いぞ二人とも〜」
兄がそういいながら手招きする。
俺達はそれに導かれるまま向かい合うように席に着く。
と、そこで気がつく。
「オイ馬鹿兄」
「なんだ愚弟」
「なんでビールが全員分用意されてるんだよっ!?」
「いいじゃんこんな時ぐらい」
俺は全力でツッコミを入れるが、軽く流された。
「そうそう、空気読もうよ空気」
「真面目すぎるのもどうかと思うぞ〜」
「おかわり〜」
・・・何人かは既にできあがってるようだ。
この状況じゃあ俺1人がどうこう言ってもどうしようもあるまい。
「・・・まあ仕方ないな・・・」
それぐらいの我が侭は許しても良いだろう。本人も悪気がある訳じゃないだろうし。
それがいけなかった。
食事開始からどれくらいの時が流れただろうか。
俺が目にしている光景は地獄絵図そのものだった。
赤峰は青野相手にストロベリー――と言うか聞いてるこっちが赤面しそうな――トークを繰り広げ、
青野はそれに黙って頷いてるように見えるが、実際には船漕いでウトウトしてるだけだ。
黄原と吉川は最近のマスコミの姿勢やら国際問題やらについて熱く語り合っていた。
ちなみに両者ともに誰もいない空間に向かってだが。
兄夫婦は一言一言喋るたびに身体をくの字に追って爆笑し合っている。
綾乃はと言うと、浴衣が着崩れるのも構わず俺にベタベタしていた。
その格好が正直目の保養いやいや目に毒なんだが、
とろんとした目で見つめられると何も言えないのが悲しい男の性。
かくいう俺も、船をこぎ始めているというか、既に何度か意識が飛ぶことがあった。
「これ以上、絶対飲んでたまるか・・・!」
そう決意したとき、誰かが俺の肩をつついた。
そっちの方に振り向くと、そこには何かを頬張ったような綾乃の顔があり――
「!?」
――いきなり唇を重ねられた。
慌てて顔を離そうとするが、後頭部を既にホールドされててされに唇を押しつけ合う形となる。
次の瞬間、半開きだった俺の口の間から何かが口の中に入ってきた。
熱く、苦い味が口の中を満たしていく。
ビールだ、と悟ったときには既にそれらが喉を通っていた。
・・・俺に口移しで、飲ませたのか・・・!
「図ったな、綾乃・・・!」
そう言うと同時、俺は勢いよく立ち上がった。
が、妙に視界が傾いていた。
「・・・・・・・・・・・・・あれ?」
そういうと同時、俺の足裏がどこにも触れていないことに気付く。
つまり、俺は今――――
「・・・足を滑らせて転んでる?」
俺の呟きに答えるように後頭部に衝撃が来た。
気がつくと、視界全てが真っ暗だった。
まあ目を開けている感覚がないことから
逆に今は目を閉じているというのはわかるが問題はそこではない。
頭が痛い。ものすごく。
その上まるで重りでもついてるのかと思うくらい頭が重い。
が、それて同時に柔らかいものに触れている感触もある。
そのことに対して疑問と好奇心が頭に浮かび、自然と瞼が開く。
すると、俺の目の前に綾乃の逆さまの顔があった。
「気がついた?」
その返答の代わりに起きあがろうとする。
が、額を思いの外強い力で押さえられているため首を小さく震えさせるだけとなった。
と、その動きに応じて柔らかい感触が俺の後頭部に伝わってきた。
枕や布団、ましてや畳では決して味わうことの出来ない、弾力を持った柔らかさだ。
・・・なんで?
よくよく考えてみれば綾乃の顔が逆さまに見えるのもおかしい。
ようするに――――
「俺、膝枕されてる?」
「うん♪」
にこやかに答えるなよ。
しかしこうして見上げると、顎や口元のあたりを隠す胸の立体がよく分かる。
大きさそのものは吉川の方が上だろうが、綾乃のは丸く、ほどよい形をしており、
なんというか、たまらなくそそる。
などと思ってると、綾乃の表情は眉尻を下げた笑みになり、
「ゴメンね?なんか今日、約束破ってばっかりで」
俺は知っている。
綾乃は本当に済まないと思ったときにはこの表情になることを。
そうじゃないときは笑って誤魔化すだけだ。
それだけの時間を幼き頃に過ごし、再会した後もそうしてきたつもりだ。
だから、こんな時に俺のすることは一つだ。
「大丈夫。怒ってる訳じゃないから」
俺はそういって笑顔――可能な限り柔らかめな――を浮かべた。
「うん・・・」
綾乃の顔から陰りが消えていくのがわかる。
「おお、やるな色男」
「うるせえ」
俺は聞こえた声にぶっきらぼうに返し――――
――――声?
先ほどの声は綾乃のものとは違う、低い男の声だ。
見れば綾乃も困惑した表情を浮かべている。
そのことを疑問に思った俺は声のした方向に勢いよく身体ごと視線を向けた。
すると、そこには兄や友人達六人が神妙な顔つきでこちらを見つめていた。
「ちっ、気付いたか」と露骨に舌打ちする奴もいるがそれは無視。
「っていつから見てたんだよお前ら!?」
「「「「「「口移しのところから」」」」」」
「最初から!?」
慌てて身を起こそうとする。
が、綾乃の手は未だ俺の額の上から動かず、反動でさらに彼女の太ももに沈み込むことになった。
「ってオイ綾乃、離せって!」
「え?いや、その、あははははは・・・」
「オイ落ち着け!頼むから落ち着いて状況を整理してああもうとにかくパニクるな
ってこの体勢のままで抱きつくなー!」
再び、地獄絵図が展開した。