「雨、かぁ……」  
「雨、ねぇ……」  
7月7日。七夕。  
その日、俺こと白木啓介とその幼馴染み兼恋人の黒田綾乃は、  
止む気配のない雨を自室の窓越しに眺めていた。  
ちなみに綾乃は今、黒い浴衣を着込んでいる。  
今は結い上げている黒髪だからか和服が似合うとは思っていたが、  
髪と同色の浴衣を着込んだその姿はいつもよりも大人っぽく見え、  
恋人の贔屓目を差し引いても魅力的に見えた。  
「お褒めにあずかり光栄です」  
「何が!?」  
「いや、なんか啓介が私を褒めてくれた気がして」  
「心読むなよ!何そのスキル!?」  
「あ、当たってたんだ」  
「え!?ブラフ!?」  
「さて、どっちでしょう?」  
そういってニヤリとする綾乃。  
……毎度の事ながら、俺をおちょくるのが好きな困った女だ。  
 
このまま彼女に振り回されるのも癪なので、話題を戻す。  
「そ、そういや七夕って言ったら思い出すよなー。  
子供の頃お前の家に遊びに行ったときのこと」  
実は余り覚えてないけど。  
「ああ、啓介とお父さんがスイカの食べ比べしておなか壊したり、  
クリスマスツリー感覚で笹のてっぺんに短冊つけようとして梯子から落ちたり、  
何故か啓介が私に自分の着物の帯持たせて『あ〜れ〜』って言って回ったり、  
私と一緒にお風呂入ったら何故か一人だけ溺れて私に人工呼吸されて  
ファーストキス体験したりした甘酸っぱい思い出のこと?」  
「碌なことしてないな子供の頃の俺!ってか全然甘酸っぱくないだろ!」  
「あの頃のやんちゃ坊主がまぁ、こんなに大きくなって」  
「やめろよその親戚のおばちゃん目線!」  
幼馴染み相手に過去の話を振るのは危険だ。  
自分が恥ずかしい過去を持ってるなら特に。  
ま、せっかくの七夕なんだし、短冊にお願い書こっか!」  
ひとしきり俺をいじって満足したらしく妙に切り替えが早い。  
が、そこを指摘してもやはり俺が不利なだけなので彼女に合わせることにする。  
「……まぁ良いけど、笹無いぞ?」  
「別に織姫彦星にお願いするわけじゃないからいいの。  
今日雨だから人の頼み聞く余裕無いだろうし」  
「へぇ、意外だな。  
お前なら『啓介が私にプロポーズしてくれますように』とか  
『啓介と私が結婚できますように』とか書くのかと思ってた」  
「そーゆーのは自分の手でやり遂げるからいいの。  
神様に頼らずに自力じゃないと」  
「意外にリアリストだな」  
 
じゃあ、なんでわざわざ短冊を使うのだろうと思っていると、  
「……って、え?」  
綾乃は俺の腕に短冊をくくりつけ、何故か手を叩いて俺を拝み、  
「啓介が私にプロポーズしてくれますように」  
「本人に言うんかいっ!ってか口に出したら短冊に書いた意味あらへんがな!  
そもそも普通に言えっちゅうねん!」  
綾乃の予想外の行動につい興奮して、思わず関西弁で突っ込んでしまった。  
「で、いつプロポーズしてくれるの?」  
「この流れで言うと思ってるのか!?」  
「啓介なら、あるいは」  
「何その信頼!?言うわけ無いだろ!」  
「でもいつかは言ってくれるのよね?」  
あぁもぅ!口の減らん彼女だなぁっ!  
口では勝てないことを改めて悟った俺は、綾乃を口づけで黙らせた。  
不意打ちに弱い綾乃は驚きで硬直するが、  
彼女が復帰する前に耳元で囁く。  
「……今は、これでカンベンしてくれ」  
「……こういう反応が返ってくるとは予想外だったけど、まぁ、許す♪」  
そう言って俺の織姫は上機嫌そうに笑った。  
 

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