リビングには暑いほどの暖房がかかっている。ユナ様がお湯のいっぱい入った鍋を  
持ってくるとぼくはそこから煮沸消毒した手術道具を1個づつ取り出してガーゼで  
丁寧に拭いて並べていく・・・。ちなみにユナ様もぼくもタオルでマスク代わりの覆面を  
している。  
 「あの・・・ユナはあと、何をすればいいですの・・・」  
 心なしか顔色の悪いユナ様が心細げにぼくに聞く。ぼくが口を開く前に背後から声・・・  
 「・・・どうせユナは何も出来にゃいにゃ、ユナは黙ってリナ様の手でも握ってれば  
いいにゃ・・・」  
 ご主人様が部屋に入って来ていた・・・手を洗いに行ってから10分ぐらい経って、  
やっとやって来たのだ・・・。  
 「わかった・・・ですの」  
 ユナ様は自身の無力さと悔しさの半ば混じった言葉を口から押し出し、ペタリと  
ソファに座る。そして応接テーブルを利用した即席手術台の上のリナ様の手を  
しっかりと握る。  
 「リナ・・・痛くて泣いたらダメですの・・・」  
 と軽口を叩くユナ様の口調は泣き出しそう・・・。そんなユナ様を見てリナ様は  
薄っすらと微笑んだ・・・。  
 
 「始めるにゃ・・・」  
 大きく頷きなら言うご主人様。どちらかといえば妹達より、自分に頷いた・・・と  
言うところ。空気はピリピリと緊張している・・・  
 「メス・・・」  
 「は、はいっ・・・」  
 メスを渡すまえに、手早く手術道具とセットで入っていた茶色の消毒液で切開部を  
大きく脱脂綿で消毒する。ちなみにリナ様はあそこの毛があるのかないか位なので  
剃網する必要はなかった・・・コホン。  
 
 ご主人様はメスを手に取るとブツブツと呟き始めた・・・  
 『あわわ・・・緊張のあまり、おかしくなっちゃったのかな・・・』  
 と、挙動不審なご主人様を横目で覗きながら心配になるぼく。だいたい本物の  
ドクターでも身内の手術はしないものなのだ・・・  
 『・・・それなのにぼくは・・・』  
 今更ながら、勝手な事を言った自分を責めるぼく。ブツブツと唇を震わせる  
ご主人様を覗き込み、正気に戻るように祈るのだが・・・  
 「あっ!? 」  
 ぼくは小さくマスクの下で悲鳴。ブツブツと呟いた状態のまま、いきなり  
ご主人様がリナ様にメスを入れたのだ。その範囲はかなり大きい・・・通常の  
盲腸手術の3倍ほど・・・10cmぐらいの切開。傷が大きいほど出血も多く、その分、  
早く終わらせなくてはいけないのに・・・。だけど意外な事が起こる。  
 『あれ・・・血があまり・・・』  
 出血が少ない・・・。それはなんともイヤな匂いが生じてぼくは理解する・・・  
 『ジュ・・・』  
 小さな音と共に血管が焼ききれる匂い。小さな血管からの出血はほとんどなかった。  
 『炎の呪文、唱えながら開腹してるんだ・・・』  
 ぼくはドキドキして幼いご主人様を見た。やっぱりご主人様はすごい。ぼくは  
手術の成功を確信して、慌てて自分も太目の血管からこぼれる血をカンシで  
押さえていく・・・。これぐらいならぼくだってできるけど・・・やっぱり血は怖いし  
傷口を見る度に貧血をおこしかけそう・・・  
 
 「にゃふ・・・」  
 唇を舌で湿す。手を洗っていた時に湧いてきた不安はメスを握った瞬間にすうっと  
消えて行った。後から切り足していくと麻酔無しで耐えるリナの負担が大きくなるので、  
始めから大きく切ると決めていた。切開範囲は自称召使いが消毒した部分いっぱいを  
使うことにする。  
 
 白いリナの下腹部にそっとメスを入れる。イヤな感触・・・  
 『皮膚から脂肪層・・・』  
 心の中で確認しながらしっかりと確実に切る。背ばっかり高くて、やせっぽちの  
リナなのにまっ黄色の脂肪層が厚くちゃんとある・・・なぜかザラザラとしたイメージ・・・  
 『そして3層の筋膜にゃ・・・』  
 外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋を丁寧に切る。キレイなピンク色。ちなみに筋肉が  
赤ければ持久力。白ければ瞬発力というからリナの筋肉は両者を兼ねそえて  
いるのではなかろうか・・・自称召使いから筋鈎が素早く、タイミングよく出され、  
一層一層創部を広げて行く。それによってマナの作業が滞ることはなかった。  
 『ふん・・・ちょっとは使えるかにゃ・・・』  
 と、少し余裕が出てきたのか心の中で呟く。  
 『さて、腹膜・・・』  
 思ったよりピラピラとした感じがする腹膜をピンセットで摘んで押さえながらこれも  
切開。何層も切り開くたびに切開部は小さくなっていく・・・  
 
 そして内臓が見えた・・・  
 
 『にゃ!! ・・・こ、これは・・・本と違うにゃ・・・』  
 さすがに静脈が図鑑の通りに青色をしているとは思ってはいなかったが、リナの腹腔は  
びっしりとごちゃごちゃでよく分からない・・・。赤黒い血管やらヒモが内臓各所に巻きつき、  
どこまでが小腸でどこからが大腸なのかさえ不明だ・・・。不意にメスに集中していたマナの  
意識が苦しげなリナの荒い呼吸を拾ってしまい、一気に心の余裕を奪っていく・・・  
 『どこにゃ・・・!? 』  
 こんな所で手を止めてしまったらリナの命に関わる・・・。このまま元通り縫合して  
そのまま逃げ出したい気分になる。または泣き叫んでリナに許しを請えば許して  
くれるだろうか・・・  
 『にゃ、にゃ・・・・・・・・・』  
 額の汗が目に伝う・・・その時、横から手が伸び脱脂綿で額を拭われた。酒精綿だったらしく、  
おでこがヒヤッと冷たくなる・・・。熱くなった気持ちが不意に冷め、小さく深呼吸・・・  
 「ご主人様、これからホンバンですよ、確実にいきましょ!」  
   
 と、覆面の上からでもわかるほどニッコリと笑う召使い。不意にオロオロした  
キモチが吹き飛び『負けるもんか』とファイトが湧いてきた・・・あの巨乳だけが  
取り得のミルフィにバカにされたときよりも、爽快で強い力が不思議と体内に  
満ちてきた。  
 「に、にゃにゃっ・・・関係ないヤツは・・・黙ってるにゃっ!! 」  
 メスを置くと、マナは手をリナの腹腔に突っ込んだ。ショックでピクリとリナの体が  
反応するが、一回で治まる・・・普通のネコなら泣き叫ぶか、激烈な痛みに気絶  
するに違いない・・・リナも今、とうにネコを越えた超人的な意思でこの手術を闘っている。  
 「ひっ・・・!? 」  
 スプラッターなシーンにユナの押し殺した悲鳴。それでもためらうことなくマナは  
腹腔の手をゆっくりと動かす。  
 『目で見えないなら触って確かめるまでにゃ・・・』  
 腸管を探っていき、リナを苦しめている元凶を何とか見つけ出そうとする。手はたちまち  
赤く染まる。不快ではなかった、逆に動脈に近いせいで熱く脈打つその場所はリナの命、  
そのものに触れているような気がして涙ぐみたくなるほど・・・  
 
 「痛くないですの?リナは偉いですの・・・」  
 悲鳴一つ上げないリナにユナは握った手をさすってやりながら、ショッキングな手術を  
目の当たりにし、半分べそをかきつつ言う。  
 「思ったより平気だ・・・不思議だ・・・ふふ、偉いと思ったら私のこともちゃんと『姉』と呼べ・・・」  
 顔色こそ青いが、しっかりとしゃべるリナ様。ショックの心配はほとんどないだろう。  
 「そ、それとこれは別ですの――っ」  
 ぐしゅぐしゅと鼻をすすりながらユナ様が微笑んでいる。その時、ご主人様がビクリと  
震え、動きが止まった・・・  
 
 「あった・・・にゃ・・・」  
 それは結局、切開部の丁度ど真ん中、ただし腸管の真後ろにあった・・・。黄白色の膿が  
パンパンに詰まった虫垂・・・。破裂寸前の白い爆弾・・・。  
 「ほ、ほっ、縫合・・・して、それから・・・」  
   
 上ずる声だが全部言い終わる前に針と糸が手渡される。自称召使いを  
こ憎たらしく思いつつもがんじがらめに結節部を糸で縛って行く・・・  
 「リナ、あと少しにゃ・・・鋏・・・」  
 がっちりと固定してから手をのばして言う。手を出すと同時に鋏が載せられる。  
ピンセットで保持しつつ、『じょきり』と虫垂を切除・・・リナを苦しめていた元凶を  
取り除く・・・膿が出ないよう、切除部をピンセットで摘んだそれをゆっくりと垂直に  
持ち上げる。使用済みの避妊具にも似ているが、この時代のマナにはそんなコトを  
知る由もない・・・  
 後は、縫合するだけ・・・。自分の手際よさに、ほくそえむマナ・・・  
 『・・・にゃっふ!やったにゃ・・・このわたしに出来にゃいことなんてないにゃあ・・・あっ・・・』  
 
 それは全くの油断。気の緩みだった・・・  
 『にゅる・・・』  
 ピンセットから不意に破れかけの虫垂が逃げた・・・。ピンセットが安物なのか不良品  
だったのか、力を入れるほど歪むのか、ズルズルと膿だらけの虫垂が保持部から逃げる・・・  
 「にっ!? ・・・・・・」  
 凍りつくマナ。慌てて握りなおすが、かえってツルリと虫垂は滑っていき・・・。その下は  
まさにマナが切開し、創部を広げたままの腹腔内・・・このままこのバイキンのかたまりを  
落したらリナの胎内に膿みがばら撒かれ、内臓が次々と感染症を起して腹膜炎で死んで  
しまうだろう・・・この場合リナは虫垂炎で死んだのではなく、たんにマナが殺したことになる・・・。  
突発的なアクシデントで体がフリーズしてしまうマナ。しかし、無情にもツルリと虫垂は  
ピンセットをすり抜けて落下した、それは狙い違わずリナの腹腔の中へと落ちていく・・・  
 「にゃあああっ・・・!? 」  
 小さく叫んで、なんの解決にもならないと解かっていながら目をギュッと閉じてしまうマナ・・・  
 
 『ぺん・・・』  
 妙な音がしたので顔色を蒼白にしつつ、薄目をあけるマナ。なにやらキラキラと  
した光が目をうった・・・。薄っすらと目を明けたマナが見たものはステンレスの  
脳皿に膿を散らせ落ちた虫垂・・・そしてその皿を懸命にカラダを伸ばして持っていたのは・・・  
 「ユナ・・・・・・!! 」  
 へなへなと崩れ落ちそうになりながらマナは叫ぶ。さっきまでユナのことを  
『役立たず』ぐらいに言っていた自分を深く恥じ入る・・・  
 「コレでいいですの――っ? 」  
 「はい、ナイスキャッチでしたよユナ様・・・」  
 と、微笑みつつ、テキパキと切断部の消毒をしている召使い・・・。あらかじめちゃんと  
打ち合わせをしていたらしかった・・・。マスクのしたの頬が紅くなるのがわかる・・・  
 「マナ姉っ!」  
 『ほめて、ほめて』と言わんばかりの生意気盛りのユナに精一杯の見栄を張って  
マナは言った。  
 「うるさいにゃ・・・ちゃんとお腹を元どおりに塞ぐまでがオペにゃ、ちょっと上手くいった  
からって、はしゃいだりしたらダメにゃ!まったく・・・。お前も早く消毒するにゃっ!」  
 「はいはい・・・くすっ・・・ご主人様・・・消毒、終わりました・・・」  
 「に゙っ・・・にゃふ・・・くっ!? わかったにゃ・・・」  
 慌てて緊張するユナだが、召使いは思わせぶりな態度を取ってマナを歯ぎしりさせた・・・。  
しかし、もう一度気力を振り絞り針を握って言う。  
 「リナ、あと少しの辛抱にゃ」  
 「そうですの、ユナもちゃんと活躍したんですから、元気になってお礼をいうですの――っ!! 」  
 開腹時とは比べ物にならない速度で、今度は逆に、『腹膜』『筋肉』『皮膚』の順に  
手際よく縫い合わせて行く・・・。下腹部に残る10cm程のごっつい手術跡は死ぬまで  
残ってしまうだろうが勘弁してもらおう・・・  
 
 「終わった・・・にゃ・・・」  
 ご主人様は思わず天を仰ぐ。短いポニーテールがピョコンと跳ねる。失敗はなかったと思う。  
そして冷静だった。ぼくなんて何度も血を見て失神しかけていたというのに・・・。その度に  
ご主人様はぼくを『じろっ』と睨んで猛然とオペを続けていった・・・。僅かながら血色の戻った  
リナ様が言う。  
 
 「姉上・・・ありがとう・・・なんかもう、この世に怖いものが無くなったって感じがする・・・  
私、一回も泣かなかったよ・・・」  
 薄っすらと微笑みさえ浮べてリナ様が言う。同じリナ様なのに今まで全くなかった  
自信に満ち溢れた顔になっている・・・きっとこれから厳しい鍛錬と武者修行を繰り返して  
大陸無双の勇者になって行くのだろう・・・。ご主人様も頷いて言う。  
 「そうにゃ、こんなコト耐えたネコはお前ぐらいのものにゃ、もっと自信をもってもいいにゃあ」  
 するとユナ様も『かまって、かまって』と言わんばかりのキラキラとした目で言う。  
 「ユ、ユナも将来は人の命を救うお医者さまに・・・いや、血はコワイですの・・・そ、  
そうですのっ、お薬屋さんになりますの――っ!! 」  
 と、宣言している。今の手術に痛く感激したらしい・・・。命の大事さを知ってしまった  
ユナ様は金儲けを考えない、いい薬屋さんになっていくに違いない・・・  
 ぼくは感激しつつ三姉妹の様子を頷いて眺めていた。  
 「姉上・・・ありがとう・・・」  
 そっとご主人様の手をとり、その金色の瞳を見つめるリナ様・・・  
 「マナ姉・・・リナを助けてくれてありが・・・クスン・・・とう・・・」  
 その手の上に小さな手を重ねるユナ様。  
 「・・・リナ、ユナ・・・にゃにゃ・・・」  
 パチパチと瞬きをせわしなくしてから、不意にご主人様は金色の瞳を逸らすように言う。  
 「そ、そんなコトたいしたことないにゃ。さ、もう寝て体力を回復させるにゃ。ユナも今日は  
ココで一緒にいてやるにゃ、わたしはコイツと後片付けするにゃ・・・」  
 と、グイグイとぼくの袖を引張ってリビングからご主人様の私室兼、実験室に引張っていく・・・。  
 唐突なご主人様の態度にキョトンとしていた二人の妹だが、一応納得して二人、手を  
つないで眠りの国へと入って行くのであった・・・  
 
 『バタン』  
 ドアを閉めるぼく。振り返るとご主人様は部屋の真ん中でぼくに背を向けるように立っている。  
三姉妹に遠慮してさっきは黙っていたけど、ぼくもご主人様を祝福する。  
 
 『パチパチパチパチ・・・』  
 静かな室内にぼくの拍手だけが響く。まだ訳のわからない実験器具がそろって  
ないご主人様の部屋は結構広く見える。  
 「ご主人様、見事な手術でしたよ・・・リナ様もユナ様もすっごくご主人様のこと  
感謝してました・・・あ、ぼくだってご主人様のこと信じてました・・・え、あの、ご主人様・・・?」  
 背中を向けたまま手を握り締めて背を震わせるご主人様。ぼく、ヘンなこと言っちゃったかな・・・  
 「ちがうにゃ・・・わたしはすごくにゃいにゃ。何度も分かんなくなって、逃げたくなって・・・  
運が良かっただけで、全然感謝される謂れはにゃ・・・ふにっ、に゙ゃ・・・ゔ・・・」  
 「ご主人様・・・泣いてるの・・・ぐはっ!! 」  
 振り向きざまにいきなり飛びついてきたご主人様。ぼくは胸を強打したあげく、次には  
反動でドアに後頭部をぶつけてしまい悶絶する。文句を言おうと下を向くがぼくはフリーズ  
してしまう。  
 「うっ、うっ・・・ぐしゅ、よかった、よかったにゃ・・・に゙ゃううぅぅ・・・うわあああああ〜ん・・・!! 」  
 ぼくのシャツに取りすがってカラダを震わせるご主人様。ふるふると震える猫耳がぼくの  
顎をくすぐる。安堵のあまり腰がくだけたのかずるずると座り込もうとするご主人様を  
慌てて抱きしめて支えるぼく。  
 『・・・ぼく、ご主人様にばかり、大変なこと押し付けて・・・ご主人様のプレッシャーとか  
気にもせずに・・・』  
 ぼくは反省しながら小さいご主人様をそっと抱きしめ、頭をなでる。耳の大きさは  
そんなに10年後と変らないのでネコ耳が相対的に大きく見える・・・  
 「ご主人様・・・泣いてるの・・・」  
 「ゔにゃ、泣いてにゃいにゃ!! わたしは人生で一度も泣いた事がないクールな  
オンナとして売り出すんにゃ!! 」  
 と、涙に声を詰まらせつつ、頬を膨らませて見上げた目の周りは腫れぼったく、瞳は  
涙で潤んでキラキラと金色に光っていた・・・  
 『かわいいな・・・ご主人様・・・』  
 
 ぼくはそのまま、この愛らしいご主人様をギュッと固く抱きしめたくなってしまうが  
自制する・・・。そんなぼくの微笑を勘違いしたのか、じたばたとぼくの胸元で  
抗議するご主人様。  
 「お、お前っ、わたしが泣いたって、言いふらす気にゃ!? 」  
 「えっ!? そんなコト言いませんよ、誰にも・・・」  
 「に゙ゃ・・・・・・」  
 疑惑の目。  
 「ホントですってば・・・ぼくの目を見てください・・・」  
 『キラキラ・・・』  
 「にゃ、ミルフィとかにチクッて笑おうとしてる目にゃ・・・」  
 「そ、そんなぁ・・・」  
 「・・・・・・」  
 ショックをうけるぼくをよそに何か考えているご主人様・・・ふいに言う。  
 「そ、そうにゃっ・・・わたしの召使いになりたいきゃ?」  
 「え、あの・・・も、勿論ですっ!! 」  
 叫ぶように言うぼく。  
 「じゃあ、今からわたしの召使いにしてやるにゃ!・・・その代わり・・・今のことヒミツにゃ!  
もし、言いふらしたら・・・」  
 喜びを爆発させようとしたぼくをギロリと睨むご主人様・・・ごくり・・・  
 「もし、言いふらしたら、電気をビリビリ体に流したり、食事の時にお皿代わりにしたりして  
死ぬほどの恥辱を味あわせてやるにゃ」  
 「・・・は、はぁ・・・ははは・・・」  
 力なく頷くぼく。ご主人様って・・・  
 「わかりました・・・じゃあぼくはいつものようにリビングで・・・」  
 「待つにゃっ!! 」  
 と退出しようとした時、不意にご主人様がぼくのカラダに手をまわし、押さえながら言った・・・  
 「ま、待つにゃ・・・く、口止めしておかないと安心できにゃいにゃ・・・」  
 「へ・・・?」  
 首をかしげるぼく。  
   
 「だから・・・にゃふ・・・め、召使いとしてのシゴト・・・にゃ・・・」  
 顔どころか耳の中まで真っ赤になりながらご主人様はつぶやくように言う。そして、  
思い切ったように、ぎゅっと目をつぶってぼくの方に顔を上げる・・・  
 「ご主人様・・・」  
 目をつぶってはいたが、大きなネコ耳は神経質そうに震えていた。その頬を紅く  
染めて軽く唇を突き出すようにして目を閉じている・・・。いくらぼくがニブくてもこれは判る・・・  
 「いいんですか・・・」  
 ぼくはご主人様のまだ目立たないウエストに手をまわして言う。ご主人様は返事の  
代わりにさらにつま先立ちになり背伸びをして・・・  
 「ご主人様・・・んっ・・・ちゅっ・・・」  
 ぼくは身をかがめるようにして、10年前のご主人様と唇を合わせた・・・その感触は  
懐かしい感触・・・。ご主人様の長い睫が震えている・・・。  
 日はとうに落ち、部屋の中に明かりは入っているものの、人がいない城の明かりは  
通常より弱く、時おり揺らぐ・・・ぼく達は唇を合わせたままゆっくりと移動してベットに二人、  
倒れこむ・・・10年後と同じシーツの匂いがした・・・  
 
 薄暗い部屋の中、スチームの音が静かに響く。唇を合わせている間、目を閉じてキスに  
慣れたオンナを演じているのだが、不慣れなご主人様は時おり唇を離し、『ハフハフ』と  
可愛い息継ぎをしている。そんな初々しいご主人様にぼくはちょっとイタズラ・・・  
 『ちゅ・・・ん・・・』  
 「・・・・・・!!!!」  
 不意にご主人様のシッポとネコ耳がビビビと逆立つ。目を見開くご主人様。ぼくは余裕  
たっぷりに言う。  
 「どうしました?こんなオトナのキスは不慣れですか?」  
 「にゃにゃっ!! そんにゃこと・・・いまこっちからシようと思ってたトコロにゃっ・・・んっ、れちゅ・・・」  
 
 強がってぼくの頭を両手で抱くと、自ら舌を挿入してくるご主人様。ぼくは  
ご主人様の小さな舌をすくい取り、舌先で舌の裏を刺激したり、深く絡めてから  
強く吸いたてたりする。  
 「にゃ、ん・・・れちゅ、ちゅく・・・にゃ、んっ、にゃふぅ・・・ちゅく、ちゅ・・・」  
 舌から脳に直接伝わる快楽にみるみる体が脱力してくるご主人様・・・ビクビクと  
小さな体が熱く震えてる・・・。ご主人様の舌は、慌てて自分の陣地へと退却して  
いくが、ぼくの舌は容赦なく追撃していく。  
 「ふふ・・・ご主人様の八重歯・・・裏側感じるでしょ?・・・ちゅ、ちゅく・・・ほら、歯茎の  
内側とかも結構気持ちいいって言ってましたよね?・・・れるっ・・・ん、ちゅっ・・・」  
 「にゃ、ふにゃっ・・・んちゅ、ちゅく・・・はにゃん・・・ん〜・・・んっ、んっ・・・」  
 ご主人様の体がビクビク、ふるふると震えてる・・・。まあ、ご主人様のキモチイイ  
ところも、隠されたポイントも全部知っているのだか当然か・・・キスだけでイク寸前まで  
追い詰められるが、ご主人様は最後の力を振り絞って力の入らない両手を使って  
ぼくをなんとか突き放した。  
 「・・・に、にゃふ・・・キスはもういいにゃ・・・次は、もっと別の・・・にゃふぅ、はふぅ・・・」  
 「・・・かしこまりましたぁ・・・」  
 小さく笑ってぼくはご主人様の長袖Tシャツをたくし上げていく・・・。まだ体験した  
ことのない強烈なオルガズムの入り口を覗き見て、力の抜けたご主人様は、  
なすすべもなくシャツを脱がされていく・・・  
 
 『うにゃっ・・・予定ではわたしのキスにメロメロになったコイツがすでに忠誠を誓っている  
ハズにゃのに〜っ・・・このままじゃ・・・』  
 ぎゅっと太ももをすり合わせるマナ。その動きで自分の大事な所から『ジュワ・・・』と熱い  
蜜がこぼれ落ちそうになったのに気がつき、溢れるほどのその量に自分で愕然とする。  
そのとき召使いがシャツをたくし上げた途中でピタッと停止しているのに気がついた・・・  
慌てて様子を伺うが、脱がしかけのTシャツに阻まれてその表情は良く判らない・・・。  
なぜか泣きたくなるような不安に襲われておずおずと問いかけるマナ・・・  
 
 「にゃ・・・わ、わたしの胸・・・小さくてダメにゃのか?・・・みんなミルフィ見たいな  
大きなオッパイが好きにゃのか?・・・」  
 不意に自分が惨めになってシャツを下ろそうとした時だった・・・。余裕たっぷり  
だったハズの召使いがいきなり・・・  
 
 『ふんふ〜ん』とココロの中でハミングしつつシャツを下ろしていくぼく。  
 『へへ・・・このまま、ぼくにメロメロにしちゃって、素直で、良い子で、  
ムダ遣いしないご主人様に教育しなおしてあげますからね〜』  
 コレをきっかけに、ご主人様には『イワシ姫』ではなく、王位継承権上位の立派な  
姫様に僕が鍛えなおしてあげるのだ!! と一人時をかけるプロジェクトに  
燃えるぼくだった・・・が、ふと視線を落として凍りついた・・・  
 『えっと・・・ご主人様の胸の感じるトコロは・・・え・・・こ、これ・・・』  
 ブラジャーはしていなかった・・・まだふくらみの目立たないご主人様のバストは  
仰向けに寝たせいで、輪をかけて控えめになって見える・・・。なめらかな白い肌は、  
幼いせいか、もっちりと熱く、まさに手に吸い付くよう・・・  
 『キレイ・・・これが10年後ににはすごく大っきい美乳に・・・』  
 うっとりとお腹から手を這わせていくぼく・・・。シャツをたくし上げて・・・なだらかな丘の  
先端が見えて・・・。ここでぼくは眉をひそめる・・・  
 『あれ・・・ヘンだな・・・ぷっくり膨らんでるけど・・・先っぽ、ポッチリ凹んでる・・・これって・・・  
ひょっとして・・・か、か、か、陥没してるのかな?』  
 桜色の小さな乳輪があって乳首のあるトコロはポッチリと凹んでいる、まるで桜色の  
お餅の一番上にマイナスドライバーでぷちっと『−』の跡をつけたみたいな感じに・・・  
 『これは・・・乳首が外に出たいよ〜って、ぼくに訴えかけているような・・・はふ、はあっ、  
ふうっ・・・まだ膨らんでないのにフルフル揺れてて・・・はあはあ・・・』  
 
 じっと、凝視したままぼくは考える。自分で気がついていないが頭には血が上り、  
息が荒くなっている。シャツの向こうでご主人様がなんか小さく言っているけど  
気がつかない・・・  
 『そ、そうだ・・・乳首・・・ちゃんと吸い出して上げないと・・・うん、や、優しくぼくの  
クチで・・・はあ、はあ・・・ご、ご主人様ぁ・・・』  
 何度も唾を飲むぼく。ちゃんと今のうちに外に出すクセをつけなくちゃ包茎な乳首に  
なっちゃうから・・・と勝手な理論?を自分で作り上げ・・・  
 「ぼ、ぼくはもうっ!! ご、ご主人様――っ!!!!」  
 ぼくはご主人様の小さな体にのしかかるよう両手を押さえつけ、ガバッと可憐な胸の  
先端にむしゃぶりついた。ぼくの先ほどから稼いでいたハズのオトナの余裕は見事に  
吹き飛んでいる・・・  
 「ふにゃあああっ!乱暴はダメにゃ・・・うにゃああッ、ヘンなコトしちゃだめにゃ!?  
にゃっ!? リナっ、ユナ――っ!! 助けてにゃ―――っ!! 」  
 声を限りに叫ぶご主人様・・・でもこの壁も扉もご主人様の実験に耐えられるほど  
厚いってぼく、知ってるんです・・・。とココロの中で小さく謝罪しつつ、ぼくは欲望のままに  
ご主人様のミルクの匂いがしそうなロリロリな乳首を舌でねぶり、唇で吸い立て  
犯していく・・・  
 
                (つづく・・・)  
 

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