『明日会えたら』  
 
 その部屋は実にアンバランスな印象。落ち着いた印象の大きな衣装タンスの  
上には赤、青、黄色の積み木をデザインした飾り布が敷いてあり、その上に  
数こそ少ないがアクセサリー入れの箱がちょこんと置かれていた。半分開いた  
その中には一昔前のデザインだが綺麗な紅玉のピアスが大事にしまってある。  
そしてその小物入れの隣には小さなゾウのぬいぐるみ。そのゾウが守るように  
写真立てがあった・・・  
 写真の中には3人の幼いネコ姫が仲良く映っている。中央の黒髪のネコ姫は  
腕を組み薄い胸をそらしている。短いポニーテールはまだ短くてチョンマゲのよう。  
その右隣のネコ姫は錫色の髪の毛をきっちりとツインテールにまとめ、すまして  
カメラ目線。そしてもう一方の端の赤毛のひょろりとしたネコ姫はおどおどとした  
様子で真ん中のネコ姫に縋りつくようにして写真に収まっている。  
 そんな女の子っぽい部屋・・・全然アンバランスじゃない?そう・・・そろそろ  
アンバランスの訳を話さなくてはいけない。それはファンシーなリビングの床に  
転がるダンベルや、プロテインのペットボトル。さらにアンバランスを決定付け  
ているのは、女の子らしい小物の並ぶ壁の反対側にかけられたごつい方天戟。  
そしてその下に並んであるのは大きな肉厚の太刀・・・これはいったい・・・  
 そんなリビングの部屋の主の声が小さく響いている。そう、それはリビングに繋がる  
ドアから・・・ドアについている、蔦の絡まったデザインのプレートには  
『りな'Sべっどる〜む』なんて可愛い書体で書いてあって・・・  
 
 
 
 「ひあああっ!! あっ!! あっ!! あっ!! あああっ!・・・」  
 部屋に響く悲鳴のような喘ぎ声。この寝室の主である大柄なネコ姫は自分のベッドで  
なく、その手前にいて・・・  
 
 
 
 「んっ!! くっ!! ・・・リナ様っ・・・んんっ・・・」  
 ぼくはリナ様の両ヒザの裏に腕を差し入れ、一気に持ち上げると立ったままリナ様を  
刺し貫く。ぐぐっと渾身の力を込め、リナ様を揺すりあげてから、その体が落ちるのと  
同時に腰を突き上げる。その度にリナ様は派手な喘ぎ声を漏らし、僕にしがみ付く。  
ぼくの目の前で大きなおっぱいが激しく立て揺れしてる・・・  
 「ふああっ、うあっ・・・あ゙っ・・・こんなのっ、こんなの初めてっ!! ひいいいいっ!! 」  
 すごい乱れっぷり。それというのは、ぼくより体重のあるリナ様を持ち上げ、下半身に  
力を入れているせいか、まるで鉄みたいにバキバキにぼくのアソコが固くなっている。  
しかも、息を詰めているのでアソコの血管がびしびし浮き上がっちゃって、まるでぼくの  
シャフトに細めのロープを巻きつけたような凶暴な姿になっていた。その出っ張りは  
余さずリナ様のトロけた内側の壁を遠慮会釈ナシにゴリゴリと引っ掻きリナ様を  
狂わせていく。もちろんリナ様もそれに合わせるようにぼくのシャフトをきつく、熱く  
締め付けてくる。またリナ様が小さくイッたのか、耳をヒクヒクと動かし、ぼくに持ち  
上げられたまま背筋をきゅきゅっとそらす。そして筋肉の付いた体に汗を飛び散らせ、  
吠えるようによがりまくる。  
 「うああああっ!! 、またイクっ!! ふぅあっ!! もう、もうっ!! 」  
 リナ様は自分の寝室で駅弁スタイルのまま、揺すられながらぼくの頭に腕を回し、  
そのまま夢中でぼくを抱きしめた。ハリのある巨胸に挟まれ溺れかけるぼく。  
 「んぷっ・・・リナ様っ!! い、息がっ・・・むくくっ!! ・・・」  
 もがくぼくだがリナ様は夢中で首を打ち振り、半狂乱になって言う。目の下の泣き  
黒子のせいでドキッとするほど妖艶な顔。  
 「ひああっ!! か、噛んでっ!! 強くしてっ、メチャクチャにして――っ!! 」  
 危うく窒息しかけたけど、何とか呼吸を確保する。そして硬く尖った乳首を強く吸い、  
なるべくリクエストに応えようと強めに甘噛する。とたんにのけぞり、すすり泣くように  
よがるリナ様。不規則にぼくのシャフトを揉み上げるように締めつける。そして耳から  
首筋にキスの雨を降らせてくる・・・というかもう半分かぷかぷと噛み付いてくる感じ・・・  
跡をつけられると明日の夜。ご主人様が異常に燃えてしまうのに・・・  
 
 「ひああっ!! いいっ、すごいっ・・・すごすぎるっ・・・イタイのもいいの、キモチ  
いいの――っ!! おしりも、おしりもギュってつねってっ!! 」  
 ヨダレを吹きこぼし、はしたないおねだりをするリナ様。さらに感じているらしく、卑猥な  
音を立てる結合部から溢れた愛液はもうヨーグルトのように白く泡立ち、ぼくの太ももの  
内側を熱く、トロリと流れる。  
 『ぎゅむっ!! 』  
 つねるのはさすがに遠慮して、ぼくはリナ様の膝の裏を通して抱えているお尻の手を  
強く、思いっきり握る。大きなお尻がぼくの指をプリプリと押し返すけど、赤い手形が  
つくのも辞さず思いっきり握り締める。  
 「くふああああっ!! イタイっ!! イイっ!! いたいの!! イイの――っ!! 」  
 ついにぼくの腰に両足を絡め、自分で腰を使い始めるリナ様。キツクみっちりとした  
お尻に指を立てるたびに電気が通ったみたいに赤いシッポがピンと立ち上がっては、  
快楽にうねる。ぼくは力尽きて倒れないようにするのが精一杯。手がさすがに痺れて  
きた・・・  
 「くっ・・・リナ様っ・・・」  
 ぼくはそろそろケリをつけようと最後の力を振り絞る。目の前で重そうに揺れる大きな  
胸に大きく口を開けて巧みに吸い付き『ずじゅちゅ』とはしたない音を立てつつ、  
乳輪ごと揉むように、軽く歯を立てて吸引する。そしてお尻を掴む手の指が一本だけ  
リナ様のアヌスに紛れ込むと、絶妙な力加減で、アヌスの内カベの一枚を隔て、  
挿入されているシャフトと擦り合わせるようにして、ゴリゴリとリナ様が感じる所を  
集中攻撃する。  
 「ひぎっ!? ゔ、ゔああああああああっ!!!!」  
 効き目はてきめん。リナ様は絶叫して背を反らし、天井に向かって吠える。おもらし  
したようなリナ様の熱い蜜がぴゅっ、ぴゅっと溢れてぼくの太ももを熱く濡らした。  
ぼくは息も絶え絶えになりながら、よろよろと歩いてリナ様ごと何とかリナ様を  
落すことなくベットに二人、倒れ込む・・・  
 
 
 「はぁ、はぁ、はぁ・・・」  
しばらくして落ち着いたのか、ベッドの上でゆっくりと息をつくリナ様。息をするたびに  
仰向けになっても全然形の崩れないリナ様の胸が息づく。ベッドサイドのランプに  
照らされたリナ様のカラダを見つめるぼく。  
 「あれ・・・?」  
 紅潮したリナ様のカラダに薄っすらと赤い筋が何本も、無数に浮き出ている。ぼくは  
その赤い筋を指でそっとなぞりながらリナ様に聞く。  
 「リナ様・・・コレ、どうしたのです?引っかき傷・・・?」  
 その腕から、足、お腹や肩口にある赤い筋を指先でなぞられ、くすぐったそうに  
リナ様は言う。  
 「ん、くすぐったい・・・これは昔ついた傷跡・・・だな」  
 「ええっ!? イタクありませんか?」  
 慌てて聞くぼく。リナ様は自慢げにぼくに言う。  
 「全然・・・昔の傷さ、体があったまると時々出てくる・・・それにここ5年は私に傷を  
つける相手に会ったことは無いな・・・あ、コラやめろ・・・んっ、はくぅ・・・もっと休ませて・・・  
あんっ・・・」  
 ぼくがいたずらして、チロチロと舌で赤い筋を舐めると、小さく身悶えるリナ様。だって  
ぼくまだイッてないし・・・リナ様も口ではそういうけどぼくの首の後ろに手をあてて  
押し付けるようにする。髪をくしゃくしゃと撫でる指が気持ちいい。  
 「でも、リナ様に傷をつけるなんていったいどんなネコなんですかね・・・ちゅ、ちゅ・・・」  
 ぼくが聞くと誇らしげにリナ様が言う。  
 「ん・・・姉上だ。私に一番初めに稽古をつけてくれたのは姉上・・・すぐ追い抜いたが、  
始めのうちは毎日ボロボロにされては泣いていたな・・・」  
 「ええっ!! ご主人様ですかっ!! ご主人様剣を使えたんですか・・・?」  
 ビックリして思わず顔を上げて聞くぼく。リナ様は言う。  
 「姉上は剣も使える・・・今は持ちさえしないし、質屋に持って言ったままだが・・・まあ、  
あのミルフィが姉上をライバル視するのもあながち買いかぶりでは無いということだ・・・  
んっ・・・あっ、んんっ・・・やさしくされるのも・・・んっ・・・」  
 いつしかぼくの舌は赤い傷跡に沿ってゆっくりとお臍の下に・・・  
 
 「でも、ご主人様って乱暴です・・・こんなにリナ様のこと傷だらけにして・・・ああっ!! 」  
 ぼくは叫ぶ。ちょうとリナ様の縦長のお臍の斜め下に一際太く長い、大きな赤い筋が  
ついてる。もしこれが傷跡ならかなり深いし大きすぎる・・・稽古にしても酷い傷だ・・・  
 「ま、まさか、これもご主人様が・・・」  
 ぼくが恐る恐る聞くとリナ様はこともなげに言う。  
 「そうだが・・・」  
 「ひどいっ!! いくら稽古だからってこんなにヒドい・・・ぼく帰ったら抗議します!! 」  
 怒るぼくをなだめるようにぼくの頭を撫でながら、リナ様はゆっくり言った。  
 「ふふふ・・・この傷は今の私を作った傷・・・これが無ければ今、『大陸無双』などと  
言われていたか・・・」  
 懐かしみ、慈しむように傷跡を撫でて呟くリナ様。もちろんぼくは後でご主人様の  
こと問い詰めようと決心してるが・・・ふと気が付く。  
 「あ、あれ・・・リナ様?・・・」  
 『す〜、す〜、す〜・・・』  
 軽い寝息が聞こえる。もう寝てしまったみたい・・・ぼくは小さく溜息をつき、コロンと  
リナ様の隣に横になる。  
 ベッドサイドの柔らかい明かりの中、天井を見て考える。  
 「・・・・・・」  
 ぼくは側にたたんで置いてあるシャツの胸ポケットから一枚の紙片を取り出し、  
寝転がりながら手に取る。つい、ご主人様に報告しそびれたこの紙片・・・  
 『パラリ・・・』とゆっくりと広げたその小さな紙片には流麗な字でこう一言だけ  
書かれていた・・・  
 
 『本日の深夜3時に謁見室で待つ。』  
 
 書かれた通り、謁見室にいくのか、それとも無視をするのか・・・ぼくをここまで  
躊躇わせている文字がすぐ下に書かれていた・・・  
 
 『フローラ』  
 
 「・・・・・・」  
 ぼくはリナ様の部屋の時計を見た。2時45分・・・ぼくは一瞬だけギュッと目を閉じ  
立ち上がる、身支度を整えて、満ち足りた寝息を上げるリナ様の部屋から忍び足で  
出て行く。シュバルツカッツェ城の中央にある王宮を、ぼくのご主人様の母親に会いに・・・  
 
 
 時は遡り。今日の朝、王宮食堂前。  
 月初めの一日には女王の朝食会がある。女王が主催して、自分の娘達と水入らずで  
朝食をとる。といってもウワサでは女王はめったにしゃべらず、非常に気まずいイベント  
らしい。  
 その朝食会もそろそろ終わる時間。ぼちぼちと、数少ないヒト召使いを持つネコ姫様の  
召使い達が自分の主人を迎えに集まって来ている。  
 「ふん・・・」  
 今頃遅れて、のこのことやってくる他の召使いを横目に見つつ、文緒は窓ガラスに  
映った自分の襟元のリボンタイを整える。今日もキッチリ一番に主を迎えに来た。  
 173cmの身長を包むのは、光沢のある白の7分丈ズボンにジャケット。王宮では  
召使いはなるべく白い着物を着ることになっている。絹のシャツの襟元には空色の  
リボンタイが優雅に巻きつく。窓ガラスに映った顔はもう19歳になっていて青年の域に  
達している。しかし、何不自由なく育ってきたせいなのか、ワガママな印象の瞳と  
生意気そうに見えるくっきりとした唇が文緒をひどく幼く見せていた。髪は長髪。絹の  
ような黒髪が背中、肩甲骨の下まで伸びている。項のところで空色を基調にした  
組み紐でゆるく結わえてあり、エキゾチックな小物が良く似合っていた。また顔の  
サイドの髪は軽くシャギーにしてあって、元々小さな顔が内ハネの髪のせいでさらに  
小さく見え、19歳になり少年の甘さが薄らいだその容姿は人形のような美しい容姿を  
完成させている。  
 
 『ん・・・あいつら・・・』  
 文緒はネクタイを直す手を止め横目で廊下の奥を覗く。やってきたのは160cm  
ちょっとの、のほほんとした印象のヒト召使い。それと、のほほんとした召使いに  
肩を並べて微笑みながら歩く、さらに背が低い超絶なる美少年。着ているものに  
質の差はあるが、どちらも白い服装をしている。のほほんとした方は首にペンダント  
替わりの黒い紐をつけている。黒はあの悪名高いマナ姫の色だ・・・  
 『ふん・・・主人に似て、のん気そうなヤツ・・・』  
 興味がすぐに失せ、小さくせせら笑い、もう一方の召使いを睨みつける。白い首に  
巻きつく金色のチョーカーはミルフィ姫の召使いの証。窓ガラスごしに映るその美しい  
召使いを睨んで、歯ぎしりする文緒。  
 『あのミルフィのせいでお館様は・・・オレは・・・』  
 わなわなとリボンタイにかけた手が震える。もともと皇位継承一位だった文緒の  
ご主人様はミルフィの登場により、なぜかいきなり5位に落とされてしまった。また  
今まで『美少年』とか『時期女王様候補の召使い』とちやほやされていた自分もあの  
ソラヤに取って代わられ、主従ともに腹立たしいことこの上ない。  
 『へへへ・・・無様な姿を見てやれ・・・』  
 ニヤリと形良い唇を引きゆがめ、文緒はそ知らぬフリで窓ガラスから向き直る。  
 「・・・・・・」  
 やって来た・・・  
 「あっ、おはようございます。文緒さん早いですね・・・」  
 へらへら笑って頭を下げるマナの召使いは無視する。しかし、もう一人のミルフィの  
召使い、ソラヤは真っ直ぐ前を向いたまま、逆に無視され文緒の神経を逆撫でした。  
 『こ、こいつっ!! 廊下に無様に転がれッ!! 』  
 カアッと顔を紅潮させながらも、絶妙のタイミングで長い足を出す文緒。  
 
 『ひょい』  
 しかし、ソラヤにあっさりと見もせずに飛び越されてしまう。目を丸くする文緒だが、  
なぜか遠くにいる筈のマナ姫の召使いがわざわざ足を引っ掛け転倒した。  
 「うわああっ!! 」  
 見事なまでの顔からヘッドスライディング。  
 「あううう・・・」  
 半べそで立ち上がった顔の鼻を赤くし、麻の半ズボンのひざこぞうは絨毯の繊維で  
擦れ、すりむけている。  
 「間違えた」。などと言う訳にもいかないほど見事にひっくり返られ、腰に手を当てて  
とりあえず言い放つ文緒。  
 「じ、邪魔だ!! お前ごときが廊下の真ん中を歩くな」  
 よろよろと立ち上がりながらマナ姫の召使いは文緒を見上げ、情けなく言う。  
 「文緒君ひどいよ・・・」  
 「ケッ、アホ面下げて、ボケっと歩いている方が悪い」  
 ツンとすまして言うと、気弱なマナ姫の召使いはソラヤの手を引いて言う。  
 「うう・・・行こう、ソラヤくん。もっと奥でご主人様たちを待ってようよ・・・」  
 鼻をぶつけたせいで涙を目に浮べたマナの召使いに手を引かれるソラヤに捨てゼリフ。  
 「ふん、とっとと行けよ・・・オレのお館様が女王になれば、お前共々、胸の大きさだけが  
取り得のミルフィ姫なんか真っ先に追放してやる・・・」  
 せせら笑う文緒に不意にソラヤがくるりと向き直る。後ろでソラヤのシャツを引張って  
おろおろしているのはマナ姫の召使い。  
 「おっ、ヤルのか?」  
 軽く拳をシュッ、シュと突き出す文緒。無表情で文緒を見つめるソラヤ。それを見て  
またもや激昂した文緒が先に殴りかかる。  
 「オレはお前のコトが嫌いだ!いっつもお高く止まっている所がなっ!! 」  
 一気に詰め寄る文緒。  
 
 ソラヤは振り返る。無表情に見えるが瞳には冷たい怒りの炎が揺らめく。  
 『ご主人様をばかにされた・・・』  
 ソラヤにできることは一つ・・・そんな失礼な者にすべきことは・・・  
 『死・・・』  
 ソラヤは軽く右手を振って、ふらりと突っ込んでくる文緒に向かって一歩踏み出す。  
 ソラヤの右手の先の何も無いはずの空間にキラリと煌きが光る。  
 
 「あわわわ・・・」  
 なんか知らないけど、ぼくのせいで喧嘩になっちゃったみたい・・・おろおろするぼく。  
だいたい文緒君がいつも僕たちをなぜか目の敵にするのが原因だと思うのだけど・・・  
でも、でも・・・体の一回り以上大きな文緒君がソラヤ君をいじめようとしていて・・・  
 ぼくはぎゅっと目をつぶって度胸を決める・・・  
 
 文緒は相手の顔を殴りつけて泣かせようとし・・・  
 ソラヤはすれ違いざまに右手から出したクリスタルのスティレットで相手の心臓を  
抉ろうとし・・・  
 そして、マナの召使いは・・・  
 「弱いモノいじめ!よくないっ!! 」  
 敢然と二人の間に割って入った。  
 
 「こ、このっ・・・ばかっ!! 」  
 文緒はいきなり出たマナの召使いに驚きこそすれ、別に繰り出したパンチを止めて  
やる義理もなく・・・  
 「あうっ!! 」  
 文緒の拳は止まらずにマトモにマナの召使いの顔に『ゴツン』と音を立てヒット。  
 「じ、邪魔だっ!! 」  
 捨て台詞を浴びせる文緒。  
 
 ソラヤはソラヤで本気で顔色を変え焦っていた。いきなり出現した大好きなお兄さまの  
背中に突き刺さる寸前のクリスタルのスティレット。ソラヤはそれを慌てて手首に  
仕舞い込むのが精一杯。やっと仕舞い込むことに成功すれば、突き出した手は  
もう止まらない状況・・・  
 『ドスッ!! ・・・』  
 「ぐはっ・・・そ、ソラヤくんまで・・・うう〜ん・・・」  
 絵に書いたようなリバーブローがマナの召使いに背後からヒット。悶絶してダウン  
するお人好し兼、間の悪いマナの召使い。  
 「お、お兄さまっ!! 」  
 慌てて駈け寄ろうとするソラヤに、うろたえつつも、さらにソラヤに襲いかかりながら  
文緒が言う。  
 「お、お前の所為だからなっ!! 」  
 そんな自分勝手な言い草に初めてソラヤに純粋な殺意が溢れた。もう一度手を  
軽く振る。今度はもう立ちふさがるものは何も無い。中途半端に突き出された相手の  
拳を軽く払いのけ、がら空きになった心臓に静かな一突き・・・  
 「・・・!! 」  
 手が動かない・・・横目で見れば手首に巻きつく青い色のロープ。ソラヤの背後から  
声がかかる。  
 「ふん・・・朝からずいぶん過激じゃあないか・・・」  
 手に鞭を持ったスラリと背の高いネコ姫が小さく笑いながら立っていた。からかう  
ように大きな蒼い耳が頭の上で揺れている。  
 「お、お館さまっ!! 」  
 前の文緒がパアッと顔を明るくさせて自分の主人を見る。それに応えずにその鞭を  
構えたネコ姫は言う。  
 「その物騒なモノをしまいな・・・」  
 ソラヤは巻きついた鞭を手首を動かして緩めようとするものの、その鞭は物理法則を  
無視してギリギリと逆にソラヤの手首を締め付ける。ソラヤはめったに無い不覚に  
ギリギリと唇を噛む。そんな時だった。  
 「エイディア!! 何をしていますのっ!! 」  
 
 ガッチリと自分の肩を押さえる手。その手の主をもう判っていながらエイディアは  
ことさらゆっくりと振り返る。そう、そこにはおなじみの金色の髪をなびかせる  
皇位継承者1位のネコ姫。  
 「ご主人様・・・」  
 ホッとしたような、怒られたような表情でソラヤは右手の爪をしまう。それを見て  
エイディアも手首を軽く返せば、あれだけ食い込んでいた手首の鞭がするすると  
生き物のようにほどけ、シュルシュルと巻き込まれつつエイディアの手に収まる。  
余裕綽綽でそれを腰の黒皮のホルスターに収め、ボタンをパチンと閉める。ミルフィを  
流し目で見ながらセクシーな声でゆっくりと言う。  
 「礼ぐらいは言っても良いと思うのだがな・・・第一皇女どの?」  
 振り返ったのはスラリとした印象のネコ姫。青を基調としたドレスは普通の姫と同じ  
だが。裾にあしらわれたリボンやドレープは全て黒く濡れたように光るエナメルの皮で  
出来ていた。青い上品なドレスの肩ひもに濡れたような黒皮が付いているのは何とも  
ミスマッチながら、ミルフィ姫よりはるかに大人びた雰囲気のこのエイディア姫には  
実に良く似合っている。髪の毛は上位の姫には珍しくショートカット。青い髪の色は  
さっきの鞭の色とそっくりだ。また、ショートカットのせいで耳が大きく見え、可愛い  
印象はあるものの、唇に浮いた冷たい笑みと冷ややかな瞳がその可愛さを遥かに  
凌駕してしまっている。一言で言えば絵に書いたようなクールビューティーという所。  
 「礼ですって・・・どうせまたエイディアの召使いがソラヤに悪さをしたんでしょ!! 」  
 グッと詰め寄るミルフィ。もはやトレードマークのような巨大な胸がぶるんと揺れる。  
ちなみに30人のネコ姫様の中でミルフィより大きい胸を持つ姫はミルフィの妹しか  
いなかったりする・・・  
 「さあ、どうだったかしら・・・?」  
 首をわざとらしく傾げ、白々しく考えたフリをするエイディアにミルフィの怒りが高まり、  
一種即発の状態。他の姫君たちが遠巻きに固唾を飲んで見守る。時期女王有力候補が  
ついに激突・・・二人の視線がぶつかり合い空気がバリバリと音を立てるよう。  
 
 
 そのころマナは・・・  
 「姉上、もう戻ろう・・・召使い君も待っているのだろう・・・」  
 情けなさそうにリナ。  
 「そうですの――っ!! マナ姉はいやしいですの――っ!! 」  
 ユナもうんざりして食堂の扉の前に立って言う。しかしマナは意に返さず、テーブルに  
向かって食事中。  
 「にゃふ・・・こんなに上等な食事、食いだめしておくのが生活の知恵にゃあ・・・」  
 などと言って、フローラ女王の前で緊張し、ロクに食事がのどを通らなかった  
他の姫の残した料理も食べてたりする。  
 「むしゃ、むしゃ・・・こんな美味い料理を残すなんて罰当たりにゃあ・・・」  
 「ほ〜ん〜と〜で〜す〜の〜」  
 と間延びした返事がそばから・・・驚いて振り返るマナ。そこにはマナに倍する速度で  
皿を空にしていくネコ姫が一人。慌てて叫ぶ。  
 「こらっ!! ミーシェはそれ以上食べるとネコが豚ににゃるからやめておくにゃ」  
 「だって〜美味し〜いんで〜す〜も〜の〜」  
 スイカのような胸をテーブルに乗せるようにして、むしゃむしゃと皿を空にしていく  
ミルフィの半妹。プニプニした二の腕は、テーブルの上では神速と形容して良いほど  
早く動き、皿の上の残り物を消滅させていく。  
 『くっ!! 』と仕方なくペースを上げるマナ。慌ててクロワッサンを口に押し込むとそばの  
カフェオレで流し込み、デザートの風猫堂のプリンを2、3個まとめてポケットに放り込む。  
 こんな卑しいのがあのミルフィの妹だとは信じられないと思いつつ、争うように他人の  
残り物を平らげて、テーブルを移動しまくる卑しい二人であった・・・  
 いや・・・要するに・・・とりあえずマナも他の姫と対決中だったのだ・・・そのあいだマナの  
召使いはずっと廊下で悶絶していたのを言いたかったり・・・  
 
 
    (つづく・・・)  

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