草原の中で 
 
 
あれから二日経った。 
メイは今でもあのときの事は戻っていく時の事以外のことは鮮明に覚えているし、ガブはメイが見ていた事に気づいているそぶりも見せていなかった。そして、普通の日常─ガブはまだよそよそしかったが─に戻った。 
ただ、メイがガブの顔を見るとちょっとだけ顔が赤くなるのを除けば。 
勿論、ガブだってオスだし、そういう気になってしまうのもおかしいことじゃないというのはメイにも解っていた。しかし、こんな私の何がそういうことをさせるように駆り立てさせるんだろう?それだけは、知りたくて。 
 
直接聞いてみようかな……恥ずかしいけど…、いや、聞くかどうかはその時になったら考えよう。 
メイは昨晩そう決め、ピクニックという名目で、明日もし晴れたら一緒に近くの草原にお昼を食べに行きませんか。そう誘ってみたのだった。 
まるでデートだ、とも思えたのは置いておいて。 
 
 
天気は見事に雲一つない快晴になった。 
 
「あの、今日は本当に良い天気で良かったですね」 先行していたメイが後ろに歩いているガブにちょっとだけ緊張しているのを隠し、笑顔で話しかけた。 
「え、あ、ああ、そうっすよね、おいらもそう思ってたところでやんすよ」 突然話しかけられ驚いたのか、あたふたとした口調でガブは答える。私でもあんな事をガブに隠れてしているのならちょっと、そういう態度を取ってしまうのかも知れないけど。 
そう思った時、はたと思い出した。こんな事もミイが言っていたっけ…… 
 
──カレシが何か隠し事してて、それが何なのか知りたかったり、何で隠してるのか直接聞き出したい時はね、それっぽくカマかけするのが一番なんだよ。知ってた? 
──カマをかけるって? 
──ええとね、つまり誘ってみるの。妖しく笑って見せたりとか。オスにはこれがいっちばんなんだから。でも、メイにはきっと、無理かな? 
──えっ、そんなことないよっ。 
──へへ、まぁ、無理だったら適当な事を言ったり、嘘をついたりするのもいいけどね〜。 
 
まさしく、たった今それをしようとしてる。誘ってみるって言っても、つい昨日したことだし……。 
ガブの顔を見つめていながらぼーっとそんな事を思い出していると、ガブが突然口を開いた。 
 
「あ、あの・・・ちょっとおいら、おしっこに行ってくるっす。」 
 
メイの頭に稲妻が閃いた。蒼色の。 
 
「本当に……トイレだけが目的なんですか?」 
ぎくりとガブの体がたじろいだ。「え、メイ、何を言って・・・」そう言った、多分。がくがくと顎が動いていてちゃんと聞き取れなかったものの。 
再び稲妻が閃いた。今度は紅い。 
「私のおしり……そんなに魅力的でした?」 
また、ぎくりと動いた。あうあうと口を動かしている。 
本当に適当に言っただけなんだけどな…もしかしてその通りだったのかな。えーと、後は……。 
 
それが演技だったら、ものすごく上手すぎる情婦の笑みを、見事にメイはやってのけた。 
 
「あっとあとととにかくおしっこに行ってくるっす!」 
顔を真っ赤に染めてガブは凄い速さで草原を駆け抜けていった。 
 
「あー………」 
しばらく、見たことのないその速さで去っていったガブを呆然と眺めていたが、答えはまだ聞いていない。とりあえず追わなくては……。 
メイも小走りでガブの方を追っていった。本当にガブの顔、真っ赤だったなぁ……そう思い、くすりと笑いながら。 
 
突如、うぎゃあというガブの叫びが草原に響いたので、メイは足早にその方へ走り出した。 
 
 
 
すぐにガブの背中は見えた。立ち上がってなにやら踊っている、ように見える。一度止まりよく見てみると、ガブの尻にある尻尾とはまた別に、前に尻尾がついている……? 
それがヘビだと理解するのに時間はかからなかった。 
悠然と頭の角を構えガブの方に突進していく。丁度ガブもこちらのほうに踊り向き、ぎょっという顔をした。ヘビの模様が見える。緑の肌に黄土色の斑点があったので、さわさわ山に時々出てくる「しびれ蛇」というのをメイは確認した。 
ヘビもメイに気が付いたのか、ガブを噛むのを止め、逃げ出していった。 
 
「ガブ!大丈夫……ですか?」 
「い・・・いや、咬まれたっすが・・・大丈夫、でやんす」 
すばやく、ガブが立ったままメイに背を向けるように向きを変えた。咬まれた部分を前足で押さえているのが後ろ姿からでも解る。 
メイも必死にガブを説得した。 
「咬まれたって、さっきのはヘビですよ!?しかも、さわさわ山に時々出てくるしびれ蛇です!毒を吸い出すので見せてください」 
「見せて下さいって言われやしても・・・」 
ガブは座りこみ、まだちょっと赤い顔をぽりぽり掻きながら、決してメイの方を向こうとしない。ヘビが逃げたわけでも無い方向をじっと、見つめていた。メイにはそれがなぜだか解らなかった。 
「いいから!……?」 
メイがガブの前に行こうとする。ガブはそれを避けようとしたが──いてっ、と呻き、少し動いただけだった。 
構わずメイはガブの前に回り込んだ。そして、ガブが先ほどから股間を押さえているのに気づき、はっと気づいた。 
ガブが咬まれたのは、そのガブが雄である、その象徴──メイの顔もみるみるうちに赤らんでいく。 
 
恥ずかしながらもガブの手を払い避けると、それは「平常時」よりほんの少し大きな状態で──先の方に雄には無くてはならない小さな切り込みの他に、6つの丸い痕があり、そこから少し血が滴っていた。 
「あ、あの…… 毒蛇に咬まれた時、私たちは……」 
言いながら、語尾が小さくなる。ガブもその先は聞かずとも知っていた。毒蛇に咬まれて、近くに何も無い時は、「患部から血液、毒を抜き出す」。回るのが極端に早い毒はそれでも防ぎにくいが・・・しびれ蛇はそれほど早くもなかった。ただ、一日から三日は動けなくなる。 
もしメイなどのヤギやリスなど、草木やその果物を食べる動物ならその辺にあるのでなんとか食えるけども──狩りをしなきゃならないオオカミのガブには、致命的だった。 
それが足なら、まだよかったのに。 
ガブは少しだけメイの方を見た。ぼそぼそと何か呟いているが、あまりにも小声で聞こえない。しかも、俯き(それだとどうしても視線の先は、ガブのそれになってしまうのだけど)そのふかふかだと感じ取れる毛まで赤くなるくらい、真っ赤になっていた。 
メイにそんなことをさせる訳にはいかない──ガブも、とりあえず一言、呟いた。 
「こ、ここここんな傷、舐めときゃ治るっすよ・・・・・・あ」 
あああああ、オイラはなんてことを。 
メイもガブの顔を見上げ、目を見開き口をパクパクさせている。言おうとした言葉が詰まっているように、しかしすぐその状態で、思い出したかのように一口に言った。 
「あ、あの……とにかく毒も吸い取らなきゃならないし消毒もする必要があるんですっ」 
だから…… メイがその先を言うか言わないか迷っていたが、結局それは言わないままに。メイは少しずつ座り込んだガブの足の間に進み──ガブの体が、一度びくっと跳ねた。 
 
「メ、メイッ・・・そんなところ舐めたら汚いでやんすよ」しびれ蛇の毒が回っているのか、もしくは別の意味で全身が麻痺してるのかは解らないが、とにかくその言葉とは裏腹に、体はそれを享受していた。 
 
「ガブのなら……大丈夫ですよ」 
ちゅっ、と音がして、再びガブの体がびくんと動いた。メイがガブの「ソレ」の毒を吸い始めた。 
「うあっ・・・・メイ・・・」 
少しずつ、しかし確実にガブの「ソレ」はより大きく膨らんできていた。流石にメイの小さな口には余る大きさで、両前足でメイはそれを支えていたのだが、余計にガブを刺激する結果となる。 
駄目だと思いながらも絶頂を迎えそうになるという瞬間、メイは丁度巨立したそれを口から離し、ペッと口から血を吐き出す。四、五度ほどこれを繰り返しただろうか、ガブの体からは毒が抜けていた。 
 
──ただし、別の毒がガブの体に完全に、否、ほとんど完全に回っていたのだけれど。 
ガブの「理性」という免疫はその毒を見事にブロックしていた。 
 
「メイ・・・大分楽になったっす・・・さ、もう大丈夫ですし行きやしょう」 
大分普通の声を粧って、立ち上がろうとする。だがメイは─再びガブの「ソレ」をくわえ始めたので、足に力が入らずがくんと先ほどと同じように倒れ座り込んだ。 
「ガブの、ガブはまだ大丈夫じゃないですから……」 
「何を言って・・・」 
「私、知ってるんですよ、夜中に森に行って、私のこと……」 
顔をまた俯かせ、口ごもった。ついに言ってしまった、とメイは思った。 
え、それってまさか・・・いや確かに──でも知られてるなんて──メイの事を想う夜もありやすがね・・・。ガブもまたしどろもどろにそういう事を考えた。 
「ひゃっ」 
いきなり鋭い快感が走ったのでガブの思考は止められた。先ほどとは明らかに違う動き─まさしくそれは、愛撫だった。 
足をそれにすり合わせ扱く、それと同時にガブのそれの先端をくわえ口の中で舐め回す・・・とても洗練されたように思える、動き。 
 
「メイ・・・なんでこんな・・・」 
「私だって、ガブの事が好きなんです。」 言った後に、答えになってないようにも思えたが、きっぱりと言った。 
ただ、ちょっとだけ心の奥でミイに感謝して。ミイは本当に何でも知っていた(本当に、何故なんだろう?)し、教えてくれた(それも、一方的に)。まさか実戦相手が狼だとは予想もしていなかっただろうけど。 
 
「うあっ、メイ、お、おいら・・・」びくんびくんと、メイが弄るたびにガブのそれは反応をする。 
既に絶頂寸前にまで追いやられていた。メイにもそれは解り─メイは根本を強く握ってそれをさせなかった。 
「へ・・・メイ・・・?」 
「あの」握っている部分がびくびくと動いている。「私の何処が、いいんですか?」 
意図してやったわけではないが、掴みながら、愛撫するのはやめ顔を上げ上目遣いでガブの顔をじっと見つめて聞いたので、ガブの「理性」は既に崩れる寸前にまで達している。 
「え、いや、その、あの・・・」「言ってくれるまで放しませんからね」また口に入れた。 
ごにょごにょとメイの柔らかい舌で先端が刺激され、びくっと一度大きくガブの腰が浮かんだが、メイが握っている部分で快感はストップした。なんというか、ものすごく焦れったい感じ。 
その焦れったさに負けて、ガブはついに叫んだ。 
「解った、解った言うっす!」メイが顔を上げて、綺麗な青色の目でガブの顔を凝視した。 
 
「その・・・ねぇ。メイは可愛いんすよ」 
「私の……私の、何処が?」 
「好きになった相手は、全てがいとおしく感じるもんでやんすよ」 
確かに。それはメイも頷けた。私はガブのいろんな事が好きだし。 
ガブはそのまま続けた。 
「メイの寝顔、可愛いっす。満腹になったあと、四つ葉のクローバーを探してるのも可愛いっす。水を飲む仕草も、歩く仕草も、メイの何もかもがおいらにとっては可愛く見えるでやんす。」 
やっぱり顔を赤くするのは忘れずにガブは言い切った。それがとても愛おしくて、嬉しくて。メイはガブの胸に抱きついた。 
「私も、ガブの全てが大好きですよっ」 
ふわり、としたメイの体毛がガブの胸に押しつけられる。ヤギの独特の匂い─メイのフェロモンが今になってこんなに強烈だとは思わなかった。─もう耐えきれない。 
丁度その時、メイがガブの激しく勃起しているそれを(偶然にも)軽く蹴飛ばした衝撃で、びくっ、とガブの腰が跳ねた。同時に、メイの耳元でガブの喘ぎ声も。しまった、とメイは思った。後ろ足に生暖かい何かがかかっている感覚がして、急いでガブの胸元から離れて立ち上がった。 
「うわぁ……」 
後ろ足から腹部にかけて白濁した液は飛び散っている。メイの体は白い毛で覆われているので目立ちはしないが、それでもちょっと、気持ちが悪い。 
前足で絡め取ってみる。ねとっとしたガブの精液は「あのとき」のと同じように糸を引いて地面に垂れた。 
「ご、ごめんっす」 
頬が紅くそまったまま、ガブはメイにかかった白濁液を見つめた。メイは蹄で何度も拭おうとするが、毛に絡まった精液はなかなか取れなかった。べちょべちょと蹄は精液を何度もはねさせ、それがメイの顔にかかったので、メイは、いやぁ…とちょっと呻いた。 
 
それが、とても、いじらしくて。 
ガブの免疫─理性は、ガラガラと崩れていった。 
 
「これ…乾いたらとれにくくなるような……」 取ろうとするのを止めたメイがぼそっと呟いた。 
 
「オイラが取りやすよ」 
そう言ってガブがメイの体にのしかかった。きゃ、とメイは少しだけ声を張り、柔らかい草原の中にあおむけに寝ころんだ。ガブがメイの後ろ足を掴んだ。 
「ガブ、何を……ハハハ、いや、くすぐったい!」 
ガブがメイにかかった精液を後ろ足から舐め始めた。ガブが舐め取るのと同時にメイは笑い声をあげる。メイはくすぐったがりだが、耳や腹、足は特にダメだった。 
後ろ足をガブは丹念に舐め続けた。 
「ガ、ガブ…もう、ハハハ、くすぐった、ひゃん!」 
メイの体がびくんと跳ねた。ガブが後ろ足から秘所へ舐める位置を変えたのだ。 
ザラザラなガブの舌はメイのそこを舐め続ける。 
「ガッ、やっ、ふぁあっ、そんなとこ、汚いですよっ」 
「メイのなら、大丈夫っす」 
どこかで聞いたようなセリフ。 
一瞬はそう思ったものの、電気が走っているような凄まじい快感ですぐそれはかき消された。 
─こんなに気持ちいいんだ… ふわふわとした感覚の中、メイはかすかに思った。 
ガブの鼻がぐいぐいとそこに押し当てられ、再びメイの体はびくっと跳ねた。 
 
急に、ガブの動きが止まったので、息を荒げさせながらメイはガブの顔を覗き込んだ。 
 
「メイのここ、もうこんなにぐちょぐちょになってやすよ。メイがこんなにいやらしかったなんて、オイラ知らなかった」 
「そ、そんなこと…」 
「さっきメイが舐めてくれた時、凄く上手だったっす。もしかして、他のオオカミともそういうことをしてたんでやんすか?」 
「初めてだよっ。やり方は友達のミイから聞いたものですよぉ…」 力なくメイが言い返した。腰が引けて立ち上がれない。 
「じゃあ、初めてって事を証明させてもらいやすよ」 
言うなり、ガブはいきなり自分の、そそり立ったソレをメイの秘所にあてがった。ガブのソレがぴくんぴくんと脈打っているのが触れている部分からわかる。 
「まさか…」 メイが息をのんでそれを覗いた。 
「そのまさかっす」 
一気にガブはソレをメイの中へ突きこんだ。 
 
狭い中をぐいぐいとガブは押し広げていく。無理やりガブは押し込んだので、すぐそれは奥まで入っていった。結合部から少しだけメイの血がにじみ出してきている。 
「痛ぁっ、抜いてくださいっ」 じんじんとした初めての激痛に堪えながらメイが言った。しかし、ガブはそれ以上動こうとしない。それどころか、ガブはそのザラザラな長い舌をメイの口の中に押し込んだ。はじめは抵抗していたメイも、抵抗は無駄だと思ったのか、やがてガブの舌に自分の舌を絡めさせていた。 
目の前にガブの顔が見える。文句抜きに、凛々しく、かっこよかった。しかし、眼はギラギラと光っている。まるで、獲物を狙っているかのように思える眼だ。 
数分経って、メイの口とガブの口が離れた。ガブの舌からどちらかのものとも判らない唾液が一筋糸を引いて垂れメイの胸に落ちた。 
「メイ…そろそろ動かすっすよ」 
気づいたら、下半身には痛みは既になかった。ガブとの熱いキスでどこかへ消えてしまったようだ。 
メイも、意を決して頷いた。 
 
ガブの腰が引かれ、またすぐ突いてくる。森で初めてやった自慰も、もう何日前なのか思い出せないくらい昔のことに感じられた。しかし、これだけははっきりと覚えている。「この気持ちよさは、あのときの比じゃない」 …素直に思った。 
ずっ、じゅっ、と淫猥な音と共にガブの太い肉棒はメイの膣内を擦りつけていく。少しずつ、速く。何度も動かされ、やはり少しずつメイが感じる気持ちよさは増えていく。 
自分はヤギなのに、オオカミ─ガブと交わっている…そんな考えがさらにメイを興奮させ、ガブの男根をさらにきつく締め上げた。 
「ふぁっ、んっ、ガブぅ、ガブッ…」 
「も、もう少し、力抜くっす…っ」 
言いながら、ガブは少し頭を下げ、メイの顔を覗いてみた。 
─口の端からほんのすこしよだれを垂らし、両目を瞑ってその快感にもだえている。 
─自分が少しでも腰を振れば、メイも、いつもはそんな声など出さないのに喘ぎ声を上げて感じている。 
─突き上げるたびにびくびくと体をはねさせ、でもまだ物足りないというかのように自分でも腰を動かしていた。 
「メイの顔…凄い、いやらしいっすよ」 ガブがメイの耳元でそっとささやく。それを聞いてメイは声にもならない声で何か呟きさらにガブを締め上げた。 
性器のこすれで生じる淫猥な水音は、先ほどより格段に大きくなり、メイの愛液は少しずつ地面に水たまりを作っていた。じゅぷっ、ぐちゃっ、という音が響いている。ワンストロークもだんだん速くなっていっていた。二匹とも、そろそろ限界だ。 
「メ、メイッ…、オイラもう……」 
「うあぁっ、ガブ、あああっ!」 
ずん、とガブが最奥まで突き入れたのと同時に、メイの体が大きく震え、二匹の体はゆっくりと崩れた。 
 
 
ぱちり、とメイが目を開けるとそこには満天の星空と暗闇があった。傍らでガブがまだ寝ている。あの後数時間か寝てしまっていたらしい。いつのまにか二匹のつながりは解けていたようだ。腹にかかったガブの精液は毛と絡まって固まってしまっていた。 
とりあえずメイはガブを起こそうと揺さぶるものの、なかなか起きる気配が無い。仕方なしにメイは一人で星空を眺めることにした。 
北斗七星が遠くで輝いている中、ガブが言ったあのセリフをまたメイは思い出した。 
『メイの何もかもがおいらにとっては可愛く見えるでやんす。』 
「私も、ガブが大好きですよ……」 
ガブのまだ眠っている頭を優しく抱きしめ、小さくそう呟いた。 
夜は、まだ更け始めたばかりだ。 
 

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