昼間、十分な温もりと光を与えてくれた太陽は、ずうっと前に沈んでしまっている。  
灯りの無い、寂しい道。  
しかし星や月の灯りは美しく地を照らし、幻想的な明るさを作り出している。  
 
そんな景色の中を、のんびりと歩く少女、雪。  
両親と喧嘩し、家出をしている最中だ。  
喧嘩の原因は、最近出来た恋人『健』の事。  
余所者を嫌うこの地で、他の土地からやってきたばかりの男と『結婚したい』などと言ってのけたのだから無理はない。  
雪の事も健の事も散々に言いのめされ、激怒して家を飛び出したのだった。  
 
「はぁ……これからどうしよう…」  
勢いで出てきたのは良いが、行くあてなど全く無い。  
友人も居ない事はないが、健の事で何を言われるか分からない。  
大きな溜め息をついて、空を仰ぐ。  
 
満天の星空。淀んだ雲は見あたらず。  
 
雪は、何故か健に会いたくなった。  
顔が見たい。  
声が聞きたい。  
 
そう考えたら、もう体は止まらない。  
 
雪は、冷たい夜道を駆け出した。健を求めて――――  
 
雪は、健の家を知らない。しかし雪には、能力が有った。  
 
ふと、雪は立ち止まる。鼻先を空へ向け、すぅ、と一つ息を吸い込んだ。  
―――健の、匂い。  
雪は健の匂いを、様々な匂いの中から探り当てた。  
こっちだ。健はこっちに居る。  
『匂い』で探している対象を見つけ出す能力。雪はその能力に秀でているのだ。  
健、健―――  
雪が駆け行くにつれて、健の匂いは濃くなる。  
雪は、健の優しい、銀の眼差しを思い浮かべた。  
雪の白い体は、駆けながらも喜びに震える。  
吠えた。  
吠えながら駆けた。  
健の居る場所。近い、もうすぐだ。  
愛しい健が、私を抱きしめてくれるのだ。  
――雪は、大きな洞の前に立っていた。  
健の匂いが立ち込める、洞。  
「健……」  
雪は、静かに歩を進めた。  
 
シュンッ――…  
何かが、目の前を横切った。  
そして、低い唸り声。  
「健…?」  
「………グルルル……ガアアァッッ!!!」  
一匹の獣が、雪に飛びかかってきた。  
「キャアァア!!!」  
雪よりも一回り大きな銀色の塊が、雪の体にのしかかる。  
「誰だ君は…何をしに、来た…?」  
銀色の瞳が雪を見下ろす。  
「健…離してっ……!」  
「僕の名前を………?」  
半ば泣きだしそうな声をあげ、自分の脚の下でもがいている獣の顔をじっくりと見つめる……  
「!!!!! ゆっ 雪!!?」  
たった今自分が倒した相手が恋人である事に、健は漸く気付いた。慌てて飛び退く。  
「ごご ごめん!」  
「ひどいわ、健!」  
上体を起こして、雪は健をキッと睨みつけた。  
「寝ぼけて悪い奴かと思っちゃったんだよ……本当にごめん!」  
さっきまでの威勢の良さとは打って変わって、只々雪に平謝りをする健。  
その健の何とも情けない姿に、雪が噴き出した。  
「クスクス…分かった、もういいわよ健?」  
「う うん…」  
しょんぼりと肩を落としている健。  
雪は彼の体に優しくすり寄った。  
「会いたかった……健…」  
「僕も……来てくれて有り難う……」  
触れ合う互いの毛皮。雪は健の確かな温もりを感じて、喜びに小さく震えた。  
洞の中に集めた草の上に、二匹は一緒に寝そべった。  
洞窟に僅かに差し込む、柔らかい月の光。  
滴る水の音。  
苔の優しい匂い。  
ふと、雪は思った。  
『コノママ、イッショニ…ワタシノ、ゼンブヲステテ、カレトイッショニ…』  
 
「健―…」  
健の顔をじっと見つめる雪。月の光が白い雪の顔を照らし出す。淡いクリーム色の輝きと、何かを訴えかけている瞳。  
一種幻とも言える様な、はっとする美しさ。その中に潜む艶やかな表情。  
互いに見つめ合い、触れ合おうとした時――  
…ン……アオォォ―…ン…  
聞き覚えの有る、遠吠え。  
「父さん…母さん…!?」  
雪の両親が、家を飛び出した雪の事を探しているのだった。  
「君のご両親かい?」  
「…ええ」  
「あの様子だと、かなり心配してるみたいだね。今日の所は家に帰った方が…」  
「イヤよ!」  
雪は首を横に振った。  
「雪?」  
「父さんも母さんも嫌いよ!健が余所者だからって毛嫌いして…私と健は一緒になっちゃいけないって……!」  
雪は声を荒げる。  
「それは仕方のない事だよ。今は、ね。その内皆も解ってくれ」  
「そんな訳ないわ」  
健の言葉が終わらない内に、それを雪は否定した。  
「健…お願い。私と一緒に逃げて」  
「え…?」  
「このままじゃ私達はずっと一緒になれないわ。この地を離れて、二人で暮らしましょう」  
あまりにも唐突な雪の意見に、健は驚いた。  
「で でもそれじゃ君のご両親が心配するよ!」  
「いいの…。私、父さん達より健と一緒に居たい。身勝手だって分かってるわ。それでも…」  
「……。」  
「私、貴方に会って間もないけど…貴方の優しさだとか強さが好き。私を守ってくれるって約束してくれた時から、貴方と一緒になるって決めたの。でもこのままじゃ…」  
雪の瞳には、強い意志が宿っていた。  
愛する雪にここまで言わせておいては健も引き下がれない。  
「辛くても帰りたい、なんて言わないでね…?」  
念を押して尋ねる。  
ゆっくりと頷いた雪。  
「……行こう、雪。二人で幸せになれる場所に。」  
雪と健は洞を飛び出し、獣達の遠吠えとは逆の方向へ…『幸せになれる場所』へと駆け出した。  
 
 
二人は新しい住処を探すものの、そう簡単に見つかる筈はなかった。  
食べる物が少なかったり、敵が多かったり。  
何処へ行っても必ず余所者扱いを受ける。  
以前から放浪の身であった健は冷たい視線に慣れているが、雪の方はそうもいかない。  
長い旅の中で雪は心が疲弊してきているようだ。  
健が夜中目を覚ますと、時々一人で泣いている。  
今日も余所者扱いを受け、追いかけ回され、今やっと敵のいない洞で夜をしのぐ事が出来る。  
すっかり暗い顔をした雪は、洞の隅で座り込んでいる。  
「辛いかい?」  
健は声をかけてみる。  
雪は無言で首を振った。  
「本当に?」  
「…大丈夫…」  
必ず弱音を吐こうとしない。  
「両親の所に帰りたいとか…」  
「そんな事ない!私は大丈夫だって言ってるでしょう!?」  
雪は怒ったような口調で吠える。  
「涙…」  
強がりを言う雪の目には、うっすらと涙が浮かんでいる。  
「こ これは違…」  
「別にいいよ、雪。苦しいなら泣いても。君が隠れて泣いてるのは見たくないよ。」  
「……」  
「余所者扱いされて一人ぼっちになった気分、なんだよね?」  
「……」  
「でも君は一人じゃないよ。他の皆が君を嫌いでも、僕は君が好きだから。言ったよね?君を守るって…君を一人ぼっちにはしないよ」  
「健…」  
「苦しい時は僕を頼ってよ。ね?」  
白い体を健に押し付けて、雪は泣き出した。  
その体を優しく舐めてやる。  
突然、雪の耳の内側を舐める。  
「ひゃっ!?」  
健に舐められるままになっていた雪は、毛の薄い敏感な部分を刺激されて小さい悲鳴をあげた。  
さっきまでグズッていたのが吹き飛んでしまったようだ。  
「な 何する…」  
視線の先に有ったのは、舌を出したまま悪戯っぽく笑っている健の顔だった。  
 
「どう?悲しいのは無くなった?」  
           笑顔のままで優しく尋ねる健に、何となくだが全てを預けられる気持ちになる。  
安心する。  
           「もうっ…馬鹿…」  
           しばらくは、お互いの体を舐め合い、じゃれ合った。  
顔や背中。  
健に耳の敏感な部分を舐められると、雪は不思議な感覚に襲われた。  
           「んっ…」  
           しつこいまでに舐めまわす舌が、雪の秘部へ回った。  
本能的に、伏せた状態から動かなくなった。  
舐める、というより雪の秘部から溢れだした透明な液をすくう感じだ。  
           「やだっ……」  
           何とも言えない快感を得て  
ヒクヒクと小さく痙攣する秘部からは、大量の液体が分泌される。  
健はそれを一滴も落とさんというばかりに、夢中に舐め取る。  
           「んっ…あっ……」  
           抗い難い快感に、普段出さないような声が漏れる。  
普通の神経ならば  
それは恥ずかしいのだろうが、今はそれを考える事は出来なかった。  
           満足したのか、健は雪を舌で責める事を止めた。  
快感を受け続けた秘部は、たとえ外部からの刺激を失おうとも  
絶えず液体を滴らせる。  
           健が上に覆い被さった。  
猛り狂った自身を、枯れない泉のような部分にあてがう。  
           「いいかい?」  
言葉の代わりに、小さく「キュン」と鳴いた。  
           それを待っていたかのように、一息に雪を貫いた。             
 
「あああぁぁっ!!!」  
               
入り口だけであった快感が、結合部を中心に数倍に跳ね上がり全身を襲う。  
雪の内部すみずみを守っている液体は、強欲な侵入者を暖かく迎え入れる。  
               
肉の内壁がまとわりつき、健の細部まで探ろうとじらじら動く。  
               
何も考えずに、激しく腰を降る。  
               
「いいっ!!いぁっ!!」  
               
雪を打ち殺さんばかりの腰の動きは止まる事を知らず。  
激しい摩擦は絡み付く液体に痛みを吸収され、ただただ快感のみを二人に提供する。  
               
「あぁっ!!ぃゃっ……だめぇっ!!!」  
               
雪の奥の奥。  
突き入れるだけでなく  
グリグリとそこを刺激すると、狂ったように泣き叫んだ。  
同時に、激しい締め付け。  
               
涎を垂らしながら泣き喚く姿は、ただ健の興奮を煽る。  
結合部から入り込んだ空気と溢れる液体が混じり、グチャグチャと卑猥な音を立てる。  
交わりの音と悲鳴、液体の醸し出す艶やかな匂いは狭い空間に充満する。  
                            
最も激しいたかぶり、雪の体を破壊せんばかりの腰の突き上げ。  
最後の嬌声を上げ、今までで一番強い、雌の締め付け。  
               
ぐぅ、と低く呻いた雄の獣は、自身の子種を雌の内にたっぷりと注いで果てた。  
 
 

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