この世は実に不平等だと思う。  
別に差別するわけではないが、女性がか弱いだなんて誰が言った。  
最近は女性の身を守るために色々と工夫されているそうじゃないか。  
男は必ずしも強い者ばかりではない。  
女に罵られる男だっているのだ。  
そう、極々普通の生活を送りたいだけの俺のように。  
 
冷え込んでいる朝。  
寒さの所為で布団から出られず再び夢の中へと直行しかけた。  
ふ、と隣に住んでいる幼馴染みが俺を起こしに来る事を思い出す。  
それは10年くらい前からの日課なのだ。  
 
しかしどこぞの純愛ゲームのような優しい起こし方ではない。  
ねぇ起きて、と困った顔で言いつつ体を揺さぶってくるわけでもない。  
そんな可愛らしく起こされるのは大歓迎だ。いつでも受け入れられよう。  
なんて思っている傍から地響きが伝わってきた。  
 
ドシドシと階段を上ってくる足音は  
徐々に大きくなり、遂に部屋のドアの前で止まった。  
部屋に鍵なんてものはなく、俺は布団を頭まで被って身を隠す。  
 
「−−こらぁ! いつまで寝てやがんだ!」  
「おい、何すんだ! 布団返せ!」  
 
勢い良く捲られた布団。大工の親方のような口調。  
この暴君っぷりで俺の中の幼馴染みのイメージは一瞬にして抹消される。  
俺の幼馴染みである桜井椿は可愛い方だ。  
半殺しにされるから口には出せないが胸は小さい。多分Bくらいだろう。  
しかしスタイルは悪くないし、結構整った顔立ちをしている。  
肩まで伸びた焦げ茶色の髪は地毛だ。  
 
俺、椎名司はコイツといつも一緒だった。  
幼稚園も小学校も中学校も、そして現在通っている高校までも。  
 
 
「返したら二度寝するだろ。早く学校行く準備しろよ」  
 
腕組みして見下す目つきで睨んでくる。  
それよりも紺色のブレザーとチェックのスカートが眩しい。  
決して優等生という言葉は似合わないが不良でもないだろう。  
けれど俺から言わせてもらえばゲームに登場する炎の魔人のようだ。  
その怒りは周囲を焼き払い、一度暴れたら手が付けられない。  
 
「椿、そんなに俺のことが……」  
「黙れバカ!」  
「ぐぇっ!」  
 
腹を踏まれて俺は奇妙な呻きを発した。  
仰向けの体勢で腹部を圧迫させられることには慣れている。  
痛みと苦しみには慣れないが。  
慣れてしまってむしろ気持ち良くなったら確実に変態だ。  
 
だが踏まれた時に見てしまった。それは全くの偶然。  
足を上げたことで椿の短いスカートが捲れ  
健康な色をした太腿の付け根から覗く純白の……  
いや、皆まで言う必要は無い。  
 
視力が優れていたことに感謝しよう。  
うっすらとした縦筋と弾力がありそうな花弁が下着を通して見える。  
滅多に見ることの出来ないものに、ありがたや、と心の中で拝んだ。  
 
「お前、なに見て……って、あぁ!? てめっ、この変態!」  
「そっちが勝手に見せ……−−ガハッ!!」  
 
その時、俺は初めて臨死体験というものをした。  
 
 
いつもの通学路をいつもの薄汚れた自転車で駆け抜けていく。  
ペダルを漕ぐのは毎回俺で彼女は毎回後ろに座っている。  
それくらいは許容範囲内だ。  
しがみついてくれるから密着度も増すし。  
……こいつも黙っていれば可愛いんだけど。  
 
ちらりと振り返ると、前見て運転しろ、なんて低い声で脅される。  
こんな野蛮な奴に惹かれているなんてどうかしているかもしれない。  
確か俺の好みは椿とは思いっきり正反対の、物静かで素直で可憐な女の子だ。  
しかし正直今まで何度椿で抜いてしまったことか。  
罪悪感を抱いても完全に止められることは出来なかった。  
 
「……い……っ」  
 
ああ、男って案外楽じゃないよな。  
自慰は健全な男子ならほぼ行うが本命で抜くのってどうなんだ。  
 
「おいっ!」  
「わっ!? い、いきなりそんな大声出すなよ!」  
「さっきから呼んでたっつぅの! もうここで下ろせっ」  
間抜けな声を上げている間に彼女は自転車から降りてしまう。  
幼馴染みのちょっとした心境の変化に俺は気付かなかった。  
彼女が自転車を降りた意味すら深く考えずに訪ねる。  
 
「え、だってもうすぐ着くぞ?」  
「……付き合ってるって噂になってるだろ、私たち。これからは別々な」  
「そんなデタラメ、言わせておけばいいじゃないか」  
 
「お前のために言ってやってんだよ」  
そう言い捨て、彼女は走り去っていった。  
残された俺と後ろが寂しくなった自転車はただあいつの背中を見ていた。  
俺のため、と椿は言った。何故別々に登校することが俺のためなのか。  
それは教室に入って席に着いたときに明らかになった。  
 
 
「よ、司。お前と桜井が一緒じゃないなんて珍しいなぁ」  
「ほっとけ」  
ヘラヘラと締りのない顔で話し掛けてきたのは後ろの席の鈴木正悟。  
どっちかというと彼は軽い男で女好き。つまりは俺と正反対ってことだ。  
……まぁ近いものはあるがな。  
 
「でも別れて良かったんじゃねぇ? 性格キツイし女らしくないし」  
「別れるも何も、付き合ってないって。何回言わせんだよ」  
お前に椿の何が判る。  
いくら乱暴なあいつでも俺しか知らない良い所は沢山あるんだ。  
幼馴染みの悪口を言われても全然面白くない。ていうか腹が立つ。  
同時にあの言葉の意味が分かってしまった。  
生徒達に恐れられている彼女には常に悪い噂が付き纏っている。  
 
万引きは当たり前だの、  
暴走族の頭で恐喝や喧嘩ばかりしているだの、  
実に根も葉もない噂だが信じている生徒がいる限り語り継がれるだろう。  
そんな彼女と登下校している俺を冷やかす者や心配する者は少なくない。  
だから椿は自ら身を引いたのだ。俺がからかわれないように。  
きっとそうだ。  
 
斜め前に座っている椿を見やる。  
窓の外をぼんやりと眺めている彼女は浮いている存在だった。  
近寄りがたい雰囲気があるため誰も寄っていこうとしない。  
 
「勿体無いよな。性格がああじゃなかったら彼女にしたいくらいだぜ」  
「何だよ、正悟は彼女いるだろ。それって失礼じゃないか?」  
「なにマジになってんだよ。冗談だよ、冗談」  
 
こういう友人に限って不思議と縁が切れないものだ。  
ははは、と笑う正悟に苦い顔をしながらも椿のことが気になっていた。  
席が近いこともあって話は聞こえてしまったであろう。  
正悟が半殺しにされてしまうのでないかとハラハラしていると  
椿は急に椅子を引いて立ち上がり鞄を片手に教室を出て行ってしまった。  
 
その表情は本当に微妙だがいつもより強張っている気がする。  
クラス中が静まり返り、皆が正悟を憐れむように見たのは言うまでもない。  
 
「えーと……オレ、言い過ぎた?」  
「あぁ、たぶん明日お前死ぬぞ」  
「やばいなぁ…。司、頼む! オレの代わりに謝ってくれ!」  
「何で俺が。自分で蒔いた種だろ」  
「オレ、まだ人生楽しみたいんだ! 後で缶ジュース1本奢るから!」  
 
――安い取引だなオイ。  
結局は正悟も彼女を恐れていたんじゃないか。  
 
はぁ、と溜息をついて席を立つと応援のエールが耳に届いた。  
まるでこれから生きては帰れない戦地に赴く兵士を見送るようだ。  
幸い授業が始まるまで時間はある。  
彼女が行きそうな所といったらあの場所しかない。  
 
階段を一段跳ばしで屋上へと歩を進めた。  
ドアを開けると冷たい風が肌に当たり、既に帰りたくなってくる。  
 
しかし手すりの上に腕を乗せて  
景色を眺めている椿の後ろ姿を見つけたのでそうはいかない。  
気付かれないようにそろそろと歩み寄って肩に手を置いた。  
瞬間、鋭く引いた肘が腹部を直撃する。  
死霊の呻き声に近い声を発して地に膝をつく俺を見るなり椿は息をついた。  
 
「なんだ、司だったか」  
「先制攻撃しておいて「大丈夫?」の一言も無しかよ」  
「だって打たれ慣れてるだろ、お前」  
あっけらかんとしている誰かさんのお陰でな。  
……っと、いけない。先程の攻撃で本題を忘れる所だった。  
 
「あのさ、正悟がお前に謝っておいてくれって」  
「ふうん。……で?」  
 
まずい。非常にまずい。  
もはや蛇に睨まれた蛙の状態だ。  
何で俺が自分より背の低い女に恐れなければならない。  
やっぱり不平等だ。  
 
「あー……アイツの言ってたこと、気にすんなよ」  
「……別にもう気にしてないけど」  
「え、じゃあ少しは気にしてたんだ」  
「んな訳ねぇだろ! ――うわっ!?」  
バランスを崩して手すりから身を乗り出してしまった椿。  
気が付けば俺は彼女の名を呼び、体を引き寄せるように抱き締めていた。  
 
驚いたことに肩は小さく華奢な体つきだった。  
それにさらさらの髪からは良い匂いが漂ってくる。  
細身な事は分かってはいたがこうなるまで正直実感が湧かなかった。  
 
しかし椿はちっとも大人しくしてくれない。  
腕の中でじたばたと暴れるものだから下手すれば二人揃って落ちてしまう。  
なので彼女には申し訳ないが最大限の力を込めて細い手首を掴み押し倒した。  
その拍子に後頭部を打った椿の瞳に涙が浮かんでいて  
慌てた反面、見たこともない表情に胸が高鳴り思わず息を呑んだ。  
 
「椿……」  
「な、ななな何っ、早くどけよ! どけってば! ぶっ殺すぞ!」  
 
特に最後の一言が非常に可愛くない。  
良心がある男なら多分退くだろう。  
だが俺は退かずに彼女のぷるんとした唇に自分のそれを重ねた。  
つまりは衝動で彼女のファーストキスを奪ってしまったのだ。  
 
ふるふると震える唇を味わった後に口内に舌を入れた。  
逃げるように動く舌を貪りつくように  
捕らえている内に椿の抵抗が弱々しいものへと変わっていく。  
 
「んぅぅ……! んっ、ぇぅ……んんっ」  
 
そっと瞼を開けると、ぎゅっと目を瞑った椿が映り込む。  
目尻には若干の涙があって居た堪れなくなったが欲望の方が勝った。  
あれほど適わず敵無しだった幼馴染みが  
自分の手によっていとも簡単に押し倒されキスに翻弄されている。  
ゾクゾクと快感に打ち震える俺は紛れもなくサディストだろう。  
 
「らめっ、ん……っ、ん、ん……!」  
 
彼女は気付いているのだろうか。自ら舌を絡み始めてきたことに。  
現に抵抗もしなくなっている。  
つい調子に乗って制服の上から胸に触れた。  
一瞬彼女の体が跳ねて感じてくれたのかと思いきや、再び腹部に蹴りを入れられた。  
 
「ぐっ、ごほっ……椿……」  
 
痛みに耐えて顔を上げる。  
ぼろぼろと涙を零している彼女にぎょっとした。  
言葉に詰まって何も言えなくなる。  
その隙を突いて椿は駆け出し、屋上を去っていってしまった。  
 
 
 
すごすごと教室に戻った俺に皆の視線が集まった。  
まるで異形の者を見るかのような目つきだ。  
何だか嫌な予感がする。  
 
「おい、司。他のクラスの奴が目撃したらしいんだけどさ、  
 桜井が泣きながら帰ったのって……もしかしてお前が原因か?」  
「……うん、まぁ……そう、だな」  
 
驚く正悟を見るのは久しぶりだった。  
もはや笑うしかない。  
かくして俺はあの桜井椿を泣かせた男として学校中に知れ渡った。  
ああ、出来ることなら登校拒否したいものだ。  
 
学校に居たくないのもあったが  
それよりも椿が気掛かりで仮病を装って早退した。  
しかし彼女の家を訪問しても彼女は出掛けてしまったらしい。  
 
仕方なしに隣の自宅に帰り、重い足取りで部屋へ通じる階段を上る。  
ドアを開けた途端、視界に生脚が映り込んだ衝撃でドアを閉めてしまった。  
 
――何だ? 今のは何だ?  
さては人形か? びっくりするじゃないか。  
終始考えた結果、おそるおそるドアを開けて部屋の様子を窺う事にした。  
 
「……ぅええっ!?」  
 
思い掛けない展開に素っ頓狂な声が上がる。  
何と彼女が俺のベッドで、  
俺のシャツを抱き締めながら眠りに就いていたのだ。  
一度家に帰ってから来たのだろう、ブレザーを脱いでいるだけの制服姿だった。  
奇声に目を覚ました椿が虚ろな表情で起き上がって辺りを見渡す。  
そこに俺の姿を見つけるや否や、目を見開いてシャツを放り投げた。  
皺だらけのシャツがばさりと無残な形で床に落ちる。  
 
「なな、なっ、何でお前がここにいるんだよ!」  
「や、あの、ここ俺の部屋なんだけど……てか、俺のシャツで何してたの?」  
「な、何もしてないぞ! 決してお前が好きだからとかそんなんじゃ……」  
「え?」  
「あ……!!」  
 
「俺のこと、好きでいてくれたの?」  
「誰がお前みたいな軟弱な男……っ!」  
 
ひゅっ、と椿の喉が鳴る。  
突然抱き締められて身体が石のように硬直した。  
本気で殴るなり蹴るなりすれば逃げられるが  
そうしないのは心の何処かで彼を受け入れてしまっているからだ。  
屋上と同様に身体が熱くなってゆく。  
 
「……俺は好きだよ。椿のこと」  
次は椿が奇声をあげる番だった。  
彼女の顔を覗き込むと信じられない様子で口をぱくぱくしている。  
頬を朱に染めたまま何も言い返してこない。  
 
「う、ぅぅう嘘言ってんじゃねぇ! どうせアレだろ、  
 お前のことだから私をからかってるんだろ!? それに何で私なんだよ!」  
「からかうものか! ずっと前から好きだったんだ!」  
 
ぜぇぜぇと互いに息を荒くさせながらの告白ではムードの欠片もない。  
軽く咳払いをして「椿はどうなんだ?」と問う。  
そうだ。まだ両思いと確定したわけではない。  
 
「ど、どうって言われてもだな……」  
「好きか嫌いか選ぶだけじゃないか」  
「ああもう! お前と同じ答えだ!」  
口が悪いのはは相変わらずだ。  
ただいつもより可愛く見えてしまうのだけは除いて。  
 
「良かった。嬉しいよ」  
宥めるようにキスを贈ると椿はとろんと恍惚な表情を見せた。  
こんな表情を目の当たりにして理性が崩れないほど俺は大人ではない。  
健全な男子学生なのだ。興奮してしまうのが性だろう。  
名残惜しく思いつつ唇を離すと細い糸が引いた。  
 
そのままベッドになだれ込み、熱を帯びた耳朶を咥える。  
 
「ぁんっ」  
 
聞いた事のない椿の喘ぎに雄の中心が熱くなっていった。  
耳に舌先を突っ込んでねっとりと掻き回す。  
時には言葉も囁き、その度に彼女はびくびくと震えて反応してくれた。  
シャツのボタンをプチプチと外して胸を曝け出すと罵声が飛んでくる。  
 
「ちょ、ちょっと待て!」  
「え? なに?」  
「……す、するのか?」  
「どうしても嫌なら我慢するけど」  
だがここまで来ておいてオアズケは辛い。  
ちらちらと視界に入ってくる形の良い乳房と突起が逐一性欲を煽る。  
仰向けになっても形が崩れない胸に  
今すぐにでもしゃぶりつきたいのを堪えた。  
 
「嫌じゃないけど……むっ、胸はダメだ」  
「どうして?」  
「お、男は大きい胸が好きなんだろ? 私は小さいから……」  
そう呟いた椿は自らの胸を両手で覆い隠してしまう。  
十分魅力的な体だということに気が付いていないのだろう。  
手を胸から引き離して双丘の間に顔を埋めた。  
 
「まあ、好みは人それぞれだけど俺は椿の胸が一番好き」  
「へっ変態……ぁっ」  
肌を一舐めするだけで声があがる。  
小振りな乳房を包み込んで突起を指の腹で撫でた。  
 
爪でくにくにと転がすだけでも突起は硬くなる一方。  
にも関わらず彼女はあまり嬌声を聞かせてはくれない。  
正確に言えば堪えているのでくぐもった声や吐息ばかりなのだ。  
こういうのも男心を擽るが、それでは物足りない。  
 
「椿、もっと声出せよ。その方が興奮する」  
「ぜっ、絶対、ゃだ……ッ、んん!」  
「意地っ張り」  
それじゃあ、と突起を舌先でちろちろと舐めた。  
もちろんもう一つの突起も人差し指と中指で弄り続ける。  
 
「はっ、ぁ、やぁっ……あぁっ、ぁんっ!」  
 
こんな声、何処に隠し持っていたのだろう。  
椿はうっすらと汗ばんだ喉を反らせ、初めての感覚に困惑していた。  
それと同時にひ弱な印象しかなかった司に押さえ付けられ  
されるがままに弄ばれていると思うと胸の鼓動が早鐘を打った。  
 
硬く尖ったピンク色の突起をちゅうちゅうと吸い、  
些か肋骨が浮き出たへこんでいるお腹に手を這わした。  
滑らかで柔らかな肌は撫でているだけでも心地良く感じる。  
 
「気持ちいい?」  
「ぅあ……ぁ、ぁんっ、なんか、変だ……っ」  
 
変、か。  
それは気持ち良い感覚と取っていいのだろうか。  
しかし息を乱れさせて頬を上気させている  
彼女の顔からは快感を表しているようでそう受け取ることにした。  
 
丹念に愛撫しながら手を下降させてゆく。  
そしてスカートのホックを外して引き下ろし下着姿にさせた。  
今朝見た純白の下着に変化がある。  
中央がじんわりと染みていて秘所の形がくっきり浮かんでいるのだ。  
 
「椿、もう濡れてる」  
「やっ、やめ……! 見るな!」  
 
強引に脚を開かせて染みをまじまじと観察し、  
誘われるように鼻を近付けて秘所特有の匂いを嗅いだ。  
誰にも見せたことのない場所を見られた挙げ句、  
匂いまで嗅がれてしまい椿は恥ずかしさで泣きそうになった。  
だが脚を閉じることさえも許されない。  
 
「ん、ふぅ……やぁ、だ……っ」  
眺めているうちにまた染みが広がってきた。  
明らかに椿は見られているだけで感じてしまっていた。  
最後の砦である下着を脱がして露になった秘所に顔を埋める。  
 
「毛、あまり生えてないんだな。椿って」  
「ッ!! お、おおおお前っ……!」  
 
まるで中学生みたいな薄い恥毛に指を絡めて弄ぶ。  
最後に椿のあそこを見たのは確か幼稚園の時だったっけ。  
俺にあるものが彼女にはなくて、ただ純粋に不思議がっていた。  
もう殆ど大人の体になってしまったかと  
思っていたが毛は薄いわ胸は小さいわでまだ幼い少女のようだ。  
しかし胸はこれから俺が直に揉んで大きくしてやればいい。  
 
花弁を指で広げると皮に包まれている小さな蕾が芽を出した。  
舌先で舐め上げて彼女がどう反応するかを試す。  
 
「ぃ、あぁぁっ! あぁっ、そこぉ……やっやぁぁっ!」  
「ここ、そんなにいいんだ?」  
だらしなく垂れている愛液を指ですくい取って  
壊れ物を扱うくらい丁寧に蕾をつついてみたり、きゅっと指で挟んでみた。  
悲鳴に似た嬌声に征服感を覚える。  
 
「らめぇ……やめろよぉっ、ひぅっ……もっ、やめてぇぇっ……!」  
 
もはや呂律が回っていない椿は近付いてくる何かに  
言い知れぬ恐怖を覚えて司の頭を押さえ何とか止めようとした。  
だがそれは無駄な抵抗に過ぎず、  
敏感な所を重点的に舌や指で責め続けられる。  
 
ぬるぬるとした液体が次々と零れていく。  
初めて愛液を口にしてみたが何とも言えぬ味だ。  
けれど好きな人の液だから美味しく感じてしまう。  
もっとぐちょぐちょになるくらいに溢れさせてやりたい、とも思う。  
 
唾液や愛液にまみれた蕾を優しく摘む。  
身を捩って喘ぐ椿からはいつもの男勝りなイメージが消えていた。  
 
「ひゃっ、あぁっ……あ、あぁぁあぁっ!!」  
 
嬌声と共により多くの愛液が溢れ出てきた。  
大きく跳ねた身体はシーツの海へと沈み、彼女は懸命に肩で息を整えている。  
 
「イッちゃった?」  
「分からない……急に、頭が真っ白になって……  
 何も考えられなくなって……すごく、気持ちよくなったんだ…」  
 
これ以上にないくらい顔を真っ赤にして告げる椿。  
抱き締めたくなったが、そろそろ己の欲望も限界だ。  
罵られるのを覚悟で彼女を見つめた。  
椿は何が何だか判っていないようで眉尻を下げて見つめ返す。  
 
「椿。その、何だ……俺も気持ち良くしてもらえると嬉しいんだけど……」  
「え、ぁ……!? おま……っ!」  
 
すぐに理解してもらうように  
硬くなった己自身を彼女の太腿に擦り寄せた。  
多少よろめきながらも身を起こした椿は初めて見る男のそれに  
一旦視線を逸らすが気になってしまってチラチラと見てしまう。  
 
何となく知ってはいるものの、椿の性に関する知識は低い方だ。  
やり方も分からず、反り立つペニスと睨み合いが続く。  
しかし悠長に待っていては萎えるのも時間の問題だ。  
というより視姦されている気分で恥ずかしくなってくる。  
 
「ええと……触って、優しく握ってくれる?」  
「う、うん……――それでどうするんだ?」  
「上下に扱いて」  
「しご……?」  
「ああ、ごめん。動かしてってこと」  
本当に優しい握り方だった。  
不慣れな手つきでゆっくりと扱いてくれるが焦らされている風に思える。  
椿はすっかり熱を帯びて固くなっている  
ペニスの感触に戸惑いながら時折上を向いて司の顔色を窺う。  
 
「もうちょっと速く扱いても平気だから」  
「痛くないのか?」  
「全然。むしろ咥えてくれたらなー…なんて」  
 
渇いた笑いが部屋に虚しく響いた。  
思わず本音を口にしてしまった途端、  
それまで上下に扱いていた彼女の手がぴたりと止まってしまう。  
しかもつむじしか見えないからどんな顔をしているのか、  
何を思っているのか全然予想出来ない。  
何て誤魔化せばいいか悩んでいる合間に何かが俺のモノを包み込んだ。  
暖かくて柔らかい、何かが。  
 
「ん、ぁむ……こう、か?」  
「!! つ、椿ッ!?」  
まさか口でしてくれるとは思ってもいなかったため、  
大胆な彼女の行動に少なからず動揺を隠せない。  
 
「んんぅ、ん……はぁ……お前の、大きくて苦しい……っ」  
「ご、ごめん」  
何でサイズが大きくて謝ってるんだ、俺は。  
むしろ喜ぶべきじゃないか。  
咥えながら手でぎこちなく上下に扱いてくれるものなかなか良い。  
 
早くも零れてきた先走りの液体に椿は驚いて眉を顰めた。  
だが健気にも先端から零れる汁を追いかけるようにツーッと舐め、  
また口いっぱいにぱくりとペニスを頬張る。  
 
「んぐ……ん、んっ、んん……」  
「ぅ……っ」  
「ぅん、はむ……ふ……」  
途中、彼女の頬や口にかかる髪の毛を梳いた。  
無意識なのかそうではないのか舌先が先端の窪みを擽ってくる。  
柔らかい唇に包まれただけでもイッてしまいそうなのにこれは危ない。  
 
「あ、ありがとな……でも、もう挿れたい……」  
不規則に乱れた息をつきながら欲を吐き出すことに  
堪えて一生懸命頑張ってくれている椿の身体を引き離した。  
そしてベッドに組み敷き、膝裏を持って脚を外側に開かせる。  
てらてらと濡れ光っている秘所に生唾を呑んだ。  
 
「っ……や、やっぱり無理に決まってる!  
 こんなデカいの、入るわけないだろっ……!」  
「は、入るって! 充分濡らしたし……力抜いてろよ」  
 
腰を落として潤った窪みを探る。  
先端が蕾や花弁に刺激を与えてしまい、  
椿は身体を強張らせながらも小さな嬌声をあげた。  
クッ、と狙いを定めてゆっくりと侵入させるが  
狭い膣内はそれを拒むように異物を追い出そうとする。  
 
「く、ぁぁあっ……! や、ぃ、抜いてぇ……っ」  
「無理言うな……っ」  
「あ、あぁっ! やぁあぁぁあっ!」  
ほぼ強引だが一気に腰を進めてようやく根元まで納まった。  
あまりのきゅうきゅうとした締め付けに苦しささえ覚える。  
しかしそれよりも彼女の方がもっと苦しくて痛い思いをしているのだ。  
必死に空気を取り込んでは苦悶の表情を浮かべる椿の髪を撫でてやった。  
 
すると彼女は目に涙を浮かべながら  
ぎこちなく微笑んで震える手を伸ばしてくる。  
その手は俺の頬をそっと包み、無性に愛しくなって小さな手に自分の手を重ねた。  
 
一度納まりきったものをぎりぎりまで引き抜いて再び突き入れる。  
「ぃあっ、ぁっ……ぅく……!」  
顔を歪めて破瓜の痛みに耐えている椿は  
爪先が白くなるほどシーツを掴み、痛みが去っていくのをひたすらに待った。  
こんな痛いものだとは考えもしなかった。  
だが出し入れを幾度も繰り返されている内に  
痛みとは違う感覚がようやくやってきたことに気付く。  
 
「ぁ……あ、ふぅ……んぁ、ぁっあっ……」  
「気持ち良くなってきた?」  
「う、ん……っ」  
「そう……じゃあ少し激しくするからな……」  
 
肌がぶつかり合う音と液体の音が艶かしく聞こえる。  
締りのいい膣内は潤いが増し滑りも良くなった。  
理性も無くなってきてただ獣のように行為に没頭する。  
快感を訴える喘ぎもまた欲を奮い立たせ、一層激しく打ち付けていた。  
 
「ひゃ、あぅっ、あっ、あぁん……っ!」  
「はぁ……椿……くぅっ」  
「あっあぁ……! や、んぁっ……あぁ、ひぁっ!」  
今目の前に居る彼女のことしか考えられない。  
それは椿も同じ事だった。  
生理的に流れる涙が耳まで伝ってシーツを濡らす。  
最中にその涙を優しく拭い取ってくれる司に甘えるように縋り付いた。  
 
そうして何度も何度も深く挿入していると徐々に限界が近付いてきた。  
司は中に射精してしまってはまずいと思い、己を引き抜こうとする。  
だが知らず知らずの内に足を絡めていた椿が離してくれない。  
我慢しようにも限界は待ってはくれず、  
甲高い嬌声をあげた椿と共にそのまま中で果ててしまった。  
 
−−−−−−−−−−  
 
あれから彼女が変わったのかというとそうでもない。  
起こしに来るときの蹴りは健在だし、  
相変わらず良くない噂が付き纏っている。  
そして誰も彼女を恐れて話し掛けることはない。  
しかし彼女は大して気にも留めず、自由奔放な生活を送っている。  
 
だがベッドの上ではほぼ別人と化す。  
というか形勢逆転だ。  
シーツを頭まですっぽり被って真っ赤になりながら  
半泣き状態で威嚇してくる彼女を俺は立って見下ろしていた。  
 
「いや、だから、どうかなって」  
「そんな物騒なモノ持ってくるんじゃねぇ!」  
「物騒とはヒドいな。ただのバイブじゃないか。  
 これを椿のあそこに入れたり敏感な所をぐりぐりしてみた……」  
「いっぺん死んでこい! 変態!」  
 
椿もいじめられてイッちゃう変態のくせに、と言い返そうとしたが  
本気で泣かれてしまっては困るので喉まで出掛かったその言葉を呑み込んだ。  
結構自分たちはソリが合うかもしれない。  
そんな事を思いながら彼女の身体から  
シーツを引き剥がして太腿にバイブを当てた。  
 
「椿。気持ちいいこと好きだよな? 最初は恐いけど慣れたら気持ちいいよ」  
「わ、私はそんなものよりも……司の、でイキたいんだ……」  
頬を紅潮させつつ蚊が鳴くような声で言った彼女の言葉に耳を疑った。  
もう一度聞きたいが俯いてしまって聞きづらい。  
誰も知らない椿の素顔を知っている優越感に浸りながら  
苦しくない程度に彼女を抱き締めて甘く激しい時間を過ごした。  
 
 
終。  
 
 
 
 

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