第三幕 アルマとゆかり  
 
勝手口の扉を開くと、吹雪が吹き荒れていた。横殴りの白。  
「毎日、吹雪吹雪、氷の世界……」  
ゆかりは木箱から大根を探しだして引っこ抜いた。  
その木箱も半分雪に埋まっているし、側面にも雪がこびりついている。  
冷たい。  
そして寒い。  
それだけ取り出すとひょっとからだを戻し、扉を強く締めた。  
 
「坊ちゃま、大丈夫かしら。凍えたりしてなければいいけど」  
誰にいうでもなく呟いた。  
その予感は大当たりだったのだが、だからと言っていまこの厨房にいる自分が何かできるわけでもない。  
背後からアルマが話しかけてきた。  
「大根、あったでしょう?」  
「ええ、ありました。ですけどこれ……」  
「なに?」  
「完全に、凍り付いちゃってて、包丁の刃が立ちそうにないんですけど……」  
「あらまあ」  
「……どうしましょう」  
「なあに、すこし火の近くにおいておけばすぐ溶けるわよ」  
「そうですか」  
「そう、ちょっと貸して」  
アルマはゆかりから凍りついた大根を受け取る。  
おもむろに大根を振り上げ、調理代の端に叩き付けた。  
大根は見事二つに折れ、内面の白さは雪のようで、空中でくるくると2回転した後、どすんと  
調理台の上に落ちた。  
 
ゆかりは目を丸くしてアルマを見る。一体何事だ。  
アルマはさも当然といわんばかりの表情で言った。  
「こうすれば、早く溶けるわ」  
 
「そ、そうですね……」  
アルマさん、怪我が治って絶好調ね……ゆかりは内心でジョンと同じ事を思った。  
 
楽しいクリスマスの楽しい準備だ。  
遠足の前の日、リュックサックに荷物を詰めるのと同じことだ。  
楽しいもののために準備する時、やはりそれは楽しい。  
 
そう、楽しくなるはずだった。そう思っていた。  
あの、窓も開けていないのに空気が凍りつくようなあの瞬間までは――  
 
 
 
 
 
 
 

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