「ねえ、隆ちゃん。アレ取って」  
と、炬燵に入って蜜柑を食していた麗奈が言うと、  
「ホラ」  
と、ベッドで寝転んでいた隆二が、そこらに放ってあった少年跳躍を投げて寄越した。  
そして、再び麗奈。  
 
「ねえ、そういえばそろそろお昼だけど」  
「カツ丼、食いたいな」  
「うん。私もカツ丼気分」  
「電話しよう」  
隆二は自室の電話から、近所の蕎麦屋に出前を頼んだ。その間、麗奈は蜜柑の皮を  
ゴミ箱へ投げ入れ、飲みかけの烏龍茶のペットボトルに手を伸ばす。  
 
「あ、それ、俺の飲みさしだぞ」  
「うん。別にいい」  
いとこ同士だからね──と、麗奈は目で言ったつもりだった。葉月麗奈に伊東隆二。  
互いの母親が姉妹で、同じ年に生まれた二人は、暇があるといつも一緒に居る。今日  
は麗奈が隆二の家へ来ており、夕方まで居座る予定だった。  
 
「カツ丼来るまで、取り調べごっこでもやるか」  
「いやよ。高校生にもなって」  
隆二が電気スタンドを持ってきたので、麗奈は渋い顔をする。  
 
「葉月麗奈。お前が、なすび一トンを強奪した事は分かってるんだ。さっさと白状して、  
お縄になれ」  
「ちっ、ちっ、刑事さん。私は何もしちゃいませんぜ」  
一旦、渋い顔をしておいて、この有り様である。麗奈もこの手のノリが、嫌いな訳では  
無かった。  
 
「故郷のお袋さんが泣いてるぞ、葉月。なあ、素直になるんだ」  
「ダンナ、私は本当に何もしてないんですよ。信じてつかあさい」  
「いい加減にしろ。俺もいつまでも優しくないぜ。さあ、白状しないか」  
隆二は電気スタンドを手に、麗奈から自白を強要した。刑事ドラマなどで良く見る光景  
である。  
 
「何だったら、体に聞いてやってもいいんだぞ」  
「人権侵害ですよ。出来るものなら、やってみたら?」  
「良く言った」  
隆二が炬燵を部屋の端に寄せ、カーテンを閉めてから、麗奈に向かって言った。  
「まず、身体検査からいこうか。着ている物を脱ぐんだ」  
「えー?いやーん」  
麗奈は腰をくねらせながら、胸を手で抑えた。口では嫌とは言いつつも、その仕草はど  
こか楽しげである。  
 
「窃盗の取調べなのに、どうして脱ぐ必要があるんですか?職権乱用だわ」  
「脱がなきゃ、泣く羽目になるぞ──俺が」  
「あんたがか」  
がくっと肩を落とす麗奈。二人とも、ボケとツッコミの基本が出来ていた。  
 
「罪を認めて脱ぐか、それとも認めずに裸になるか。お前に残された選択肢は、ふたつ  
にひとつだ。さあ、どっちにする?」  
「って、どっちも結局は、脱ぐんじゃないの!質問に、YESかハイで答えろって言ってる  
のと同じよ!」  
と言いつつ、麗奈はスカートのホックを、嬉々として外し始めた。犯人役の彼女にしてみ  
れば、ここは見せ場である。  
 
「身体検査って、どこまで脱げばいいんですか?刑事さん」  
「もちろん、全裸だ」  
「まったく、もう・・・」  
麗奈は隆二に背を向けて、スカートとシャツを脱いでしまった。丸みを帯びた少女らしい  
体には、ピンクのブラジャーとパンティが着けられており、清楚ながらも色っぽさを有して  
いる。麗奈はそれらも手にかけ、まずはブラジャーを腕から抜く。  
 
「後で裁判になった時、ひどいですからね。激しい人権侵害があったって、主張します  
から」  
「人権侵害とは?」  
「艶罪(えんざい=冤罪)ですね。それと、婦女ボーボーの罪に問われます」  
麗奈がパンティを脱いで振り向くと、その通り婦女のボーボーした物が露わになった。  
言うまでもないが、陰毛の事である。  
 
「それならば俺も言わせてもらうが、今のお前は猥褻物陳列罪を犯しているぞ」  
「チン列罪は、女には適用されません。残念でした」  
「いいなあ、女は」  
「そのかわり、子産むシッコ妨害が適用されるから、どっこいよ」  
法曹界に身を置く人間が聞いたら激怒しそうな会話が続く中、玄関の方から誰かの声が  
響いてきた。聞きなれない、若い男の声だった。  
 
「こんにちは。森市でーす」  
それは、カツ丼を頼んだ蕎麦屋の名だった。すると、隆二は財布から金を取り出して、麗  
奈へ手渡し、  
「これで、カツ丼もらってきて」  
「わ、私が?今、裸よ」  
「靴下、履いてるじゃん」  
などと言うのである。  
 
「靴下だけ履いて、人前に出てったら痴女よ痴女!素っ裸の方が、まだましよ!」  
激昂する麗奈。当たり前と言えよう。  
「じゃあ、おまけしてパンツだけは許してやる。さあ、行け」  
にやつく隆二に促され、麗奈は脱いだばかりのパンティを拾って一言。  
「鬼・・・」  
だが、ピンクのパンティを足に通すと、麗奈は部屋を出て玄関に向かったのであった。  
 
「すいません。誰か居ませんかあ?」  
蕎麦屋の出前は気が短いようで、勝手に玄関の扉を開けていた。そこへ、廊下の奥から  
麗奈がやって来る。それも、かなり陽気に。  
 
「すいませ〜ん。ちょっと、お風呂、入ってて」  
麗奈は顔を真っ赤にしながら、乳房を抱きこむように手で覆いつつ、現れた。下半身はパ  
ンティ一枚に頼み、後は陰毛が透けていない事を祈るばかりである。  
「あっ、こちらこそ、すいません・・・」  
出前に来た男は目を丸くして、その場に立ちすくんだ。女が何故、パンツ一丁なのか。いく  
ら風呂に入っていたからといって、何もそんな格好で出て来なくても──男は一瞬の間に、  
そんな事を考えていた。  
 
「おいくらでしたっけ?」  
「せ、千二百円です」  
「じゃあ、二千円から。ぴったりじゃなくて、ごめんなさい」  
「いいえ、そんな・・・」  
麗奈からお代を受け取った男の手は震えていた。まだ二十歳前後だろうか、あまり女に縁  
の無さそうな、線の細いタイプだった。それゆえ、半裸の麗奈が眩しいのであろう、おつり  
を数えるふりをしながら、チラチラと柔肌を盗み見ている。  
 
「暖かくなりましたねえ・・・お蕎麦屋さん、お花見には行きましたか?」  
「いいえ、まだ・・・今週末に、大将たちと行く予定で」  
「いいですね。じゃあ、カツ丼、頂いていきます・・・」  
そう言って麗奈は、お盆に置かれたカツ丼に手を伸ばした。もちろん、隠していた乳房は  
丸見えになる。  
 
「いやん、恥ずかしい。あんまり、見ないで下さいね」  
「あ、は、はい」  
大きすぎず、小さすぎずの二つの果実は、手を放した瞬間、プルンっと揺れ、男の視線  
を奪った。麗奈は努めて平静を装っているが、内心では卒倒しそうなぐらいに昂ぶって  
いた。血走った男の目で裸を見られていると思うと、眩暈すら感じた。  
 
「いい匂い。私、ここのカツ丼、好きなんです」  
「そ、そうですか。また、どうぞよろしく・・・」  
「気をつけて帰って下さいね」  
蕎麦屋の出前は、本当に名残惜しそうに玄関から出て行った。その姿を見送ってから、  
麗奈は隆二の待つ部屋へ帰って行った。  
 
「カツ丼、お待ち」  
「さっそく食べよう。そういえば蕎麦屋の出前、お前を見てどんな顔してた?」  
「宇宙人にでも出会ったような顔してたわよ。これ以上、驚いた事無いって感じ」  
「そっか。並みの反応だな」  
隆二は炬燵を再び部屋の真ん中へ置き、麗奈と向かい合わせになった。  
 
「で、お前はどうだった?」  
「私?私は別に・・・」  
「感じたんだろ」  
「そう・・・かなあ」  
麗奈は割り箸を手に取り、真ん中から割った。そして、さてカツ丼を食うべしと丼の蓋を  
取る。  
 
「お前、見られるの好きだもんな」  
「やだあ。それじゃ私、変態みたいじゃないの」  
「女は多かれ少なかれ、そういう傾向にあるものさ」  
「どこで仕入れた知識よ。ねえ、もう服を着てもいい?パンツ一枚じゃ、バカみたいだし」  
「どうせ、後で脱ぐ事になるぜ」  
「・・・じゃあ、いいや」  
隆二の言葉は、体を重ねるという意味である。だから麗奈は、服を着なかった。  
 
「あ、隆ちゃん、あれ要る?」  
「おう、要る要る。台所にあるから、持って来てくれよ」  
「ちょっと待ってて」  
そう言うと麗奈は立ち上がり、台所へ向かった。ちなみにあれ、というのは七味の事で、  
二人ともカツ丼を食らう時には、これが必需品だった。  
「やっぱりいとこだなあ・・・以心伝心、か」  
あれ、とか、それ、というだけで、相手が何を欲しているのかが分かる。麗奈はそれが  
不思議だった。ひとえに血縁のなせる技といえばそれまでだが、親子でも兄妹でもな  
い二人が、どうしてここまで心を通わせる事が出来るのか、不思議でならないのである。  
 
「そうなると、パンツが湿ってる事もバレバレだな。厄介だなあ・・・」  
先ほど言われた通り、麗奈は見られるという事に妖しい愉悦を感じる時がある。実際、半  
裸で蕎麦屋の前に出た時、軽い絶頂を感じていた。下着のクロッチ部分に、恥ずかしい  
シミがあるのは、それが原因である。  
 
「この後、セックスするんだろうから、またいやらしい事を言われるな・・・」  
七味を持って帰る途中、麗奈は頭の中で隆二に抱かれる光景ばかりを浮かべた。逞しい  
異性に女を貫かれると、麗奈はこの世のものとは思えないような快楽を得る。しかも、そ  
れは隆二が相手の時に限って、素晴らしく高まるのだ。  
 
「持ってきたよ、あれ」  
「サンキュ。さっそく、かけてくれよ」  
麗奈は自分のと隆二のカツ丼に、七味をさっさっとふりかける。食の好みも同じで、量った  
ように同じだけ、七味はオン・ザ・カツ丼と相成った。  
 
「これ食ったら、やろうな」  
「・・・ウン」  
隆二の問いに、麗奈は恥ずかしそうに答えた。きっとまた何度もいかされてしまう。そう思う  
と、麗奈の食は進んだ。食って体力をつけないとやられっ放しになるので、箸はガスガスと  
カツ丼を掘り起こした。  
 
 
「あっ・・・」  
隆二の男が、自分の最も深い部分を突き押して来ると、麗奈はそれの持ち主の背中に  
爪を立ててやる。血の繋がった相手とのセックスは、愛憎入り混じった不思議な感覚が  
身を包み、心を融かすような気がする。麗奈は隆二に突かれる度、唇から甘い吐息を漏  
らしては、腰を捻っていた。  
 
「痛いぞ。爪、立てるなよ」  
「だって、憎いんだもん。隆二の事」  
「何でだよ」  
「こんなに、私のアソコをジンジンさせるから・・・あっ」  
ぐっと男を押し込まれ、女の入り口が開くこの瞬間が良い。それを引き抜かれる時の、肉  
襞が捲れるような感触も、麗奈にはたまらなかった。また、隆二も心得たもので、三浅一  
深を心がけつつ、したたかに女を狂わせるのである。  
 
「あッ、あッ、あッ・・・」  
「・・・お前の中、吸い付いてくるぞ。いい気持ちだ」  
「そんな事、言わないで・・・恥ずかしい」  
耳元でそんな風に囁かれると、麗奈は顔をそむけてむずがった。女の道具を批評する  
なんて、嫌な人だ。そう思うのだが、腰は淫らに動き続けている。  
 
「俺、そろそろいきそうなんだが、中に出していいか?」  
「いいよ・・・ぶちまけちゃって、隆二の精子・・・全部、受け止めてあげる」  
「キスしようぜ、麗奈」  
「・・・ウン」  
絶頂時は、必ず唇を重ねて──特別、決め事がある訳ではないが、二人は決まって  
そうしていた。これも、麗奈の不思議のひとつだった。  
 
 
「ただいま」  
その日、麗奈は夕方過ぎに自宅へ帰った。台所には母が居たが、隆二と一緒だった事  
は言わなかった。  
 
「ねえ、麗奈」  
「なに、お母さん」  
「あんまり、深入りしちゃ駄目よ」  
そう言われて、麗奈はドキッとした。一瞬、母が何を言っているのか分からなかったが、次  
の言葉で、麗奈は釘をさされる事となる。  
 
「隆ちゃんは、いとこなんだからね」  
母はそれ以上、何も言わなかったが、その意味はすぐに理解できた。  
「・・・うん」  
麗奈は力なく返事をするしか無かった。母は二人の関係に気づいている。それだけで、十  
分なほど打ちのめされてしまったのだ。  
 
「いとこ・・・か。中途半端だね、お母さん」  
「そうね。だから、困るのよね」  
血縁関係にあるが、結婚できぬ仲でもない。これがもし、兄妹などだったら、悲壮な覚悟で  
愛を貫こうとするかもしれない。そうかといって、まったくの他人でもないので、結婚すると  
言えば、親戚一同、変な顔をするに決まっている。そう、いとこ同士というのは、中途半端  
なのである。  
 
「誰かが、いとこの味は鴨の味って言ってたわね。そんなに良いの?」  
「娘にそんな事、聞かないでよ」  
「ふふふ・・・顔が赤くなってるわよ」  
母の問いに、麗奈は答えなかった。まさか、良い加減でしたと答えるわけにもいかない。  
 
「私、お風呂入るね」  
「しっかり洗うのよ。お父さんが知ったら、ショック死するかも」  
「お母さん!もう、女ってやだなあ・・・」  
母は女の本能で、娘の中に隆二が放った子種がある事が分かるのか、意味ありげな  
言い回しをする。もちろん、これにも麗奈は答えなかった。  
 
脱衣所で服を脱ぎ、素っ裸になるといまだに女が疼いていた。隆二の男にさんざんに蹂  
躙されて、随分と悲鳴を上げさせられたが、そこは今も貪欲に彼を求めている。  
「いけない。たれてきちゃった」  
後始末が至らなかったのか、女から白濁した隆二の子種が逆流してきた。麗奈はそれを  
指で掬い、ぺろりと舐めてみる。  
「・・・鴨の味には、程遠いな。でも・・・」  
ジーンと下半身を疼かせる独特の苦味は、麗奈にとって、甘露のように感じるのであった。  
 
おしまい  
 

テレワークならECナビ Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル