1.清香 深夜の遭遇  
 
「ああ、もうっ!」  
そんな言葉でむかつきを吐き出しながら、私は車も通らない深夜の山道に自転車を走らせていた。  
この山道は、夜も更けると人も車も滅多にいなくなり、緩やかな上りと下りがつづいて、  
こういうイライラしたときの気晴らしにはちょうどいいコースだ。  
私は親と衝突したりすると、よくこうして深夜の外出をする。  
今日もそうだった。  
雑貨屋で買い集めた綺麗なガラス細工や磁器を見て、父は、  
清香、無駄遣いをするな、そんな物を買う金があるのなら貯めておけ、と言ったのだ。  
金がどれだけ大事なものか、金を稼ぐことがどれだけ大変かわかってるのか、と  
そういうときだけは大きな声で私を説教する。  
父は何もわかってくれない。  
趣味の雑貨集めは、私がアルバイトをして得たお金でやっていることだ。  
その使い道について、なぜ父の意思を尊重しなければならないのか。  
父は毎日ビールを飲むしタバコも吸う。  
私はそのことについて文句を言ったりやめさせようとしたりしたことなんかない。  
それとどこが違うんだろうか。  
もう何度目かの同じお説教に私は腹が立って、こうして夜の散歩に出かけたのだった。  
 
今は6月の下旬で、深夜でもそう寒くはならない。  
それでも、上りでいったん休憩して自転車を押す身体からは汗が熱を奪って、  
意外と冷えてくるのを感じた。  
同時に尿意も覚え、私は自転車を道端に停めると、道の脇の茂みに分け入る。  
見られる心配がない場所なので、こんな野外での用足しにも慣れていた。  
パンツを下ろし、スカートをまくりあげてしゃがみこむ。  
そして用を足し終え、ティッシュで股を拭こうとしたときだった。  
なにかわからない生き物が、前触れもなく突然そこに張りついてきたのだ。  
かん高い悲鳴をあげ、私は後ろに跳びすさる。  
大きな芋虫のように感じられるそれを手でつかみ、取りのけようとする。  
だがその生き物はちょうど割れ目全体を覆うようなかたちでがっちり食いつき、  
いくら引きはがそうとしても微動だにしない。  
なに、こいつ。  
虫の幼虫か、それとも別の生き物か。  
街灯の明かりは遠く、その姿は確認できない。  
それにしたってなんでこんなところにくっついて、しかもちっとも離れないのか。  
と、生き物がぐにっとからだを折り曲げ、突然一方の端を膣内へと侵入させてきた。  
びりっと鋭い痛みを覚える。  
「やめて!」  
今度こそ私は必死に、生き物のからだをつかみ満身の力で引っ張り出そうとする。  
しかし生き物は私の手をぬるりとすり抜け、膣に栓をするかのようにもぐりこんだ。  
そしてからだをくねらせながら前後に動き出す。  
「やめてっ!」  
私は叫んだ。この生き物、普通じゃない。  
私はセックスをしたことがない。膣にものを入れたことがない。  
なのに、この生き物は、私の中で動いてる。  
まるでセックスの動作のように、出たり入ったりして。  
肌が粟立つ。沸き起こる嫌悪感に涙がこぼれる。  
どうしたらいいんだろう。いったいどうしたら……。  
再度手をやったそこでは、蠢く生き物の端しか触れられず、  
からだをくねらせる生き物の動きで膣口が広げられよじられるのがわかる。  
 
そのとき、手をぬろっと舐める感触がした。  
それは小さく細い舌のようなもので、たちまち何本にも数を増し、  
手だけではなく膣のまわりから上部の敏感な突起、さらには肛門まで舐めあげはじめる。  
私は我知らず声をあげていた。  
膣内を犯す本体とは違い、そのたくさんの舌は優しく穏やかな愛撫を繰り返し、  
私から快感を、気持ちよさを、かんたんに引き出していく。  
特に小さく敏感な突起への責めは、絶え間なく私に甘い刺激を送りこみ、私の頭を痺れさせる。  
腰がもじもじと動く。  
もっとほしいと身体がうずく。  
私の吐息に甘い声が混ざりはじめた。  
膣壁に与えられる刺激が、いつしか私を少しずつ、少しずつ高ぶらせていく。  
私はパンツを下ろし、スカートをまくりあげたまま、茂みの中で四つん這いになり、  
腰に加えられる快感を余さず得ようと身体を揺らしていた。  
襞が舐められ、クリトリスがこすられ、おしりの穴さえほじられて、  
とろりと甘く快感が滴り落ちる。  
ついには腰を前後に動かし、もっと高く、もっと熱く、もっと感じたい、と  
恥じらいもなく求める。  
どんな生き物なのかはまったくわからない。  
けれど、初めてでこんなに気持ちよくさせられるなんて。  
そして私は、めくるめく感覚の中で、あそこから頭に快感が走り抜け、  
背中をピンとそらして、震えるような高い声をあげた。  
それが私の絶頂だった。  
なおも動きつづける生き物によって、二度、三度と、熱い小さな高みに押し上げられ、  
私はすすり泣いた。それほど気持ちよかった。  
そんな快感の中、生き物のからだが二回、ふくらんで何かを吐き出した。  
私の中に。  
それが何かはわからなかったが、ぼうっとした私の頭は、何も考えずただそれを受け入れた。  
やがて生き物の動きが止まり、ポロポロと膣内から何かがこぼれ落ちるのを感じる。  
それは生き物の死骸のようで、私の手の上でさらっと崩れ去り、  
土のような粉末になってあたりへ散っていった。  
私は膣にそうっと指を入れた。  
内壁はまだ熱く敏感で、そんな身体の反応を除けば生き物の痕跡はもう残っていなかった。  
 
 
2.清香 電車内  
 
一週間後に来る予定だった次の生理が来なかったり、  
いつもと様子が違うようだったら、婦人科へ行って診てもらおう。  
そう考えていたのだけれど、生理は順調にやってきて何事もなく終わった。  
そして、あの夜の出来事が対処すべき現実からただの不思議な過去の記憶へと  
移行しつつあったころ、再び事件は起きた。  
 
私は大学へ向かう電車に乗っていた。  
通勤・通学の時間帯だが、大学が僻地にあるせいもあって、  
その辺りまでくると乗客も減ってくる。  
サラリーマンっぽい人やOL、大学生、高校生などが座席をまばらに埋め、  
何人かは立って窓の外の景色を見るなどしている。  
私はサマーセーターにフレアスカートという格好でドアの脇に立っていた。  
車窓から見られる郊外のたたずまいや遠くにうっすらと連なる山並みが好きなのだ。  
と、急に下腹部から何かが出てくるような感覚を覚え、私はびくっとした。  
生理とかそんな液状のものじゃない。  
もっとはっきりした形をもった、虫か小動物かなにかが、膣内から這い出てくるような感触。  
私はとっさに腰をカバンで隠すと、その陰で下腹部に手をやり、  
膣口のあたりをぎゅっと押さえた。  
その指先に、中から出てきた何かの先端が触れる。  
芋虫の頭のようなそれは、私の中から外へ出てこようと、明確に私の指を押してくる。  
一瞬力を抜いた隙に、それは頭を膣の外に出してさえいた。  
左右に首を振って、さらに外へ出ようという動きをする。  
私は必死になって頭を膣内に押し戻した。  
異物の入り込む感覚とともに、あの夜の事件が心によみがえる。  
何か関係があるんだろうか。  
もしかして、あのとき卵を産みつけられちゃったとか?  
とにかく、明らかに生きて動いているこの生き物を、外に出しちゃいけない。  
私はそう思った。  
大学の最寄り駅まではあと15分ぐらいかかるけど、  
そこなら通りすがりに所在を知っている婦人科の医院がある。  
なんとかそこまで我慢しよう。  
そう思ううち、また生き物が頭を出してくる。  
押さえる指の圧力を打ち破り、じわじわと出てくる。  
私は力をこめて再びそれを押し込んだ。  
襞がこすられ、刺激が腰の奥に伝わる。  
 
そして突然、細く柔らかい舌のようなものが何本も、膣のまわりをくすぐった。  
思わず小さな悲鳴をもらす。  
あの夜の生き物と同じだ。  
やっぱり卵か何かを産みつけられて、私の中で成長していたんだろうか。  
絶えず出てこようとする頭を押し込む動作が、ピストン運動のように膣を刺激する。  
押さえる指の隙間をぬってとびだす舌が、ちろちろと襞や粘膜を舐めこする。  
お願い、やめて!  
動かないで。出てこないで。  
私の願いが通じるはずもなく、生き物の活動は止まらない。  
ぴちゅ、ぴちゃ、とかすかな音が聞こえてくる。  
這い出し、押し込む一連の作業が私の性感を刺激して、そこを潤ませているのだ。  
さらに細い舌が膣のまわりを這い回る。  
私の額にはいつのまにか汗が浮き、呼吸も荒くなってきていた。  
絶え間ない責めに、だんだんと身体が反応していく。  
私は気持ちよさをはっきりと自覚していた。  
舌が敏感な突起にまで及び、そこを執拗に舐めたてる。  
漏れそうになった声を必死に噛み殺した。  
這いずり、押し入れ、這い出し、押し込む。  
舐められ、こすられ、さすられ、つつかれる。  
私は汗を浮かべ顔が紅潮するのをはっきりと感じた。  
傍からは、電車内でカバンで隠して自慰をしているようにしか見えないかもしれない。  
でも私は必死だった。  
この生き物を出しちゃいけない。声をもらしちゃいけない。  
じんじんする感覚をどうにもできず、私はただひたすら耐える。  
膣口とクリトリスが同時に刺激を受け、確実に性感は高まっていく。  
腰がひくっと動き、愛液がとろりと漏れ出すのを感じる。  
もうだめ。もうもたない。  
生き物の頭をぎゅっと押し込むたび、あそこがじんわりと熱をもつ。  
ぎゅっ、ぎゅっ、と押し込むごとに、耐えがたいくらいにまで熱くなってくる。  
やめて。動かないで。舐めないで。お願い。  
甘い吐息をはきながら私が腰をぶるるっと震わすのと、  
生き物の舌がクリトリスをつつくのが同期して、私はついに陥落した。  
「――――っ!」  
身体がびくびく痙攣して、手も足も力を失って、  
私はついに訪れた高みに泣きたいくらいの気持ちよさを感じながら顎をのけぞらす。  
しだいにぼんやりする意識の中で私は、  
生き物が1匹、2匹と這い出て身体から離れるのを感じ、  
1匹が立っておしゃべりしている女子高生たちのすぐ下に、  
もう1匹が学生かフリーター風の女性の足元に、  
それぞれ跳びはねていくのを目に入れながらずるずると足からくずれて座りこんだ。  
 
 
3.綾奈  
 
通学のために乗っていた電車の中。  
友達と3人で立っておしゃべりしていたそのすぐそばの床に、ぽとりと何か落ちた音がした。  
なんだろう、と思ったときには、もう何か蠢く生き物がわたしの股間に取りつき、  
そこにパンツがないかのようにズブッとからだを割れ目に割りこませていた。  
わたしはかん高い悲鳴をあげる。  
「海(うみ)さん、取って!」  
わたしはついさっきまでしゃべってた目の前の背の高い友達を見上げて叫ぶ。  
そしてパンツを膝まで下ろし、海さんの背中に手を回してしがみつく。  
股間を襲った生き物は、膣に入り込んでからだをくねらせながら、  
中へ、外へと既に動きはじめてる。  
ピストン運動だ。Hのときにする動き。  
怖い。ただそう思った。  
Hは経験したことがない。話に聞くだけ。自分とは違う世界の話。  
海さんが腕を伸ばす。だけどわたしがくっついてるから、わたしのあそこまで届かない。  
「あたしがやる」  
すぐ後ろから声がする。もう一人、一緒に通学してる友達、翔子の声だ。  
わたしのパンツをさらに下ろして、スカートに頭をつっこむと、翔子の指が襞に触れる。  
「これか」  
引っ張られる感覚。生き物のからだが、中で伸びるのがわかる。  
翔子の力んでうなる声。  
わたしの中の壁が、生き物とくっついて、かたまってるように感じる。  
「んっ、うご、かない……」  
翔子の声があきらめの響きを帯びてもれる。  
がっちりとくっつきながら、翔子が手を離した入り口付近では、  
左右に不規則にうねってわたしの身体を震わせる。  
「綾奈、だいじょうぶ……?」  
海さんが声をかけてくれる。  
わたしは息を荒らげてうつむきかぶりを振る。海さんの背中にさらに強くしがみつく。  
翔子はスカートから顔を出して、手でわたしのそこをまさぐってる。  
どうにかできないかと頑張ってくれているみたいで。  
でも。  
「どうしよう……どうしたら、いいんだろ……」  
膣をぎっちりふさがれて、蠢かれて、わたしは怖くて不安でたまらなかった。  
翔子の手があの生き物を根元からつかんだ。  
そのとき、翔子の悲鳴があがると、細い紐状の何かが  
わたしのスカートの中から勢いよく伸び出てきた。  
それは先端が少しふくらんでいて、何十本と出てきて、  
腿に、脚に、いくつもいくつも小さな口のようなものが吸いつく。  
伸びた紐の先が口になっていて、それが足を覆いつくすようにくっついてる。  
口の触れた部分の靴下に穴が空く。溶かされてる。  
紐はあの生き物から出てるみたいで。  
わたしの肌をいっせいににゅちゅっと吸いあげる。  
わたしは、甘い声をあげた。  
足からあそこにじんじんと痺れがのぼってくる。  
柔らかい口で吸われて、あそこの中の壁まで熱くなる。敏感になる。  
中へ、外への動きがどんどんわたしの奥のなにかを高めていく。  
どんどん、どんどんのぼってく。  
 
「海さんっ、なに、これっ」  
わたしは海さんにしがみつく力を強める。  
海さんもわたしをつかむ手に力をこめて返してくれる。  
どこまでいっちゃうのかわからない。  
小さな口が、おしりに、そして背中にまでたくさん吸いついてきた。  
とろりとあったかい液を垂らしながら、やさしく噛むように肌を吸いたてる。  
腰が熱い。  
下からも後ろからもせめたてられて、それが腰にじわじわ集まってきて、  
わたしは全身をぶるるっと震わす。  
これが、こんなのが、初体験になっちゃうんだ。  
怖い。  
でも、熱くて、痺れて、すごすぎる。  
背中にくっついた口を誰かがはがそうと引っ張ってる。たぶん翔子だ。  
でも取れない。  
柔らかくやさしくせめてるのに、皮膚にしっかりくっついて離れない。  
セーラー服の背中の布が大部分溶かされてしまったのを感じる。  
ブラの紐さえ溶けて切れた。  
「翔子っ、取るの、もう、いいから、肩、持って、腕を、寄せて……」  
返事のかわりに肩に手がおかれる。  
翔子の腕がわたしの腕に添わされる。  
わたしはまたぶるっと震える。  
いっぱいになったあそこが、中でうねって、こすられて、  
中へ、外へ、出入りしてわたしをせめつづける。  
足からも、おしりからも、背中からも、ねっとり吸われて気持ちよさだけが集まってくる。  
いつしか、わたしは腰を動かしてた。  
生き物の動きに合わせるように。  
熱い喘ぎを海さんの胸元に当てつづけて。  
海さんの背中にしがみついた手と、後ろから腕を寄せてくれる翔子の手のほかは、  
あそこと、背中とおしりと足だけがわたしのすべてになったみたい。  
ちゅく、ちゅく、と音がする。  
わたしのあそこから、エッチな音が出てる。  
漏れ出る声を抑えられない。  
「こわい、こわいよぉっ」  
吸われて、舐められて、中へ外へと動かれて。  
あそこの奥が熱くなる。  
もう耐えられない。  
わたしは、甘い声をあげる。  
海さんの胸に顔をおしつけ声を殺す。  
じんじんする腰。高まる熱。  
どこまでもどこまでものぼっていって。  
そして、真っ白にはじけた。  
わたしは身体をのけぞらせる。海さんの背中に爪を立てる。  
頂点に達して、でも生き物の動きは止まらなくて。  
私は身体を震わせながら、声をもらしながら、何度も何度も真っ白になる。  
気持ちいい。気持ちいい。気持ちいい。  
ぎゅるぎゅるうねる生き物の動きに翻弄されて、わたしはただ感じるだけの存在になる。  
と、わたしの中で、生き物がどっくん、とからだを一瞬ふくらませる。  
あそこに走る痛み。それさえも今のわたしには快感のスイッチ。  
そして生き物の動きが止まり、うすれゆく意識の中で、  
わたしは自分の中になにかが産み落とされたように感じた。  
なんだろう。  
真っ白になった頭が、不安に侵されながら急速に暗い世界におちゆく。  
膣の中からポロポロこぼれ落ちる何かと、からっぽになったあそこを感じて、  
これで、終わったのかな、とぼんやり思った。  
 
 
4.絵理  
 
「やあっ!」  
虫みたいな変な生き物がパンツを破ったのか溶かしたのか、  
それさえわからないほどあっという間にあたしの中に入ってきたとき、  
ただ気持ち悪さだけを感じて声をあげた。  
こんな人の多い中で、しかも前戯もなしにいきなりつっこまれるなんて初めての経験だ。  
生き物は適度な固さで、伸び縮みしながらうねりくねって、あたしの性感を刺激する。  
もっと早く動いてほしい、ほかのところも触ってほしい、  
と一瞬浮かんだ思いを、あたしは払いのける。  
こんな電車の中で感じたり、ましてや甘い声をもらしたりなんてできない。  
だけど、その生き物がやってきたことはそれだけじゃなかった。  
音もなく、先の膨らんだ紐のようなものが2本伸びてきて、あたしの左右の胸にぶつかる。  
粘っこい液を漏らす小さな口が乳首を直接吸い上げる。  
それだけであたしは声をもらしてのけぞった。  
見ると紐のようなものはあたしのスカートの中から出ていて、  
その先が口のような形になっており、  
乳首のまわりだけ服もブラもまとめて溶かされ、乳輪まで含めて吸いつかれていた。  
弱く、弱く、そして強く。変化をつけて何度も吸われ、あたしは身体を震わせる。  
声を我慢しなきゃ。そう思わなければいけないほど、感じていた。  
膣の中に入った生き物は、なおもゆっくりと動きつづけ、少しずつ性感を引き出していく。  
たぶんパンツも溶かされてる。そこから潜りこんでるんだ。  
今のうちに、なんとか引っ張り出さないと。  
あたしは右手をスカートの中に入れ、まさぐる。  
膣内に入った本体はすっかり潜りこんでいるようで、つかみようがない。  
胸に伸びた紐状の器官の根元あたりを握り、力いっぱい引っ張った。  
固い。  
引きずり出すことも、引きちぎることさえ、まったくできない。  
と、生き物が突然ぎゅるぎゅると回転を始め、  
同時に激しく伸び縮みを繰り返して膣口と膣壁をこすりたてる。  
乳首も間断なく吸われ、粘液をまぶしてやさしく啜りたてられもし、  
さらに紐が何本も伸びて胸のそこここに口をつけ、服を溶かし、  
歯のない口で甘噛みをそこかしこにくわえてくる。  
 
あたしは息を荒らげ、力の入らない手で胸から口を引きはがそうとする。  
胸の快感と腰の快感がつながって、身体の奥がうずく。  
うずいてうずいてしょうがない。  
頭の芯が痺れてくる。  
責めたてられる気持ちよさに、心が抗えない。  
気づくと、あたしは泣き声みたいな声をあげていた。  
もらした息が声になり、甘い喘ぎが電車内に響く。  
顎をのけぞらせ、吸われ舐められ噛まれる胸をむきだしにして、  
あたしは腰を振っていた。  
イきたい。イきたい。もっと激しく動いてほしい。  
だってこれはしょうがない。変な生き物のせいなんだから。  
感じちゃうのは当たり前。イきたくなるのも当たり前。  
「もっと、もっとして!」  
自分の声が耳に響く。  
あたし、特別にエッチなわけじゃないよ。  
ただ気持ちよすぎるだけ。  
そしてもっともっと気持ちよくなりたいだけ。  
膣の中では生き物が暴れるように激しく動いている。  
外の襞が引きずりこまれ、巻きついて表に戻ってくる。  
こすれて、よじれて、たまらない。  
あたしの願うとおり、あたしを責めたててくれる。  
胸のほうでは、快感のセンサーが作動しっぱなし。  
たくさんの口が粘液を垂らして、吸って、噛んで、くわえて、  
ちりちり、ちりちりとあたしの神経を灼いていく。  
漏れ出す声も止まらない。  
ぐりっと膣がよじられて、あたしは湿った悲鳴をもらす。  
もうくる。もうきちゃう。  
痛いのさえも気持ちよくなって。  
のぼっていく。どこまでものぼってのぼってのぼりつめて。  
あたしの頭は白熱した。  
全身がぶるるっと震えて、気持ちよさが肌を越えて飛び出していって、  
それでも生まれてくる快感はどんどんあふれて、どこまでいっても果てがない。  
あたしは声をあげつづけた。  
こんなの初めて。イッてもイッてもイきつづけられる。  
膣内で、ぼこっ、ぼこっ、と生き物のからだが一瞬かたく膨らみ、しぼむ。  
それだけであたしはまた絶頂に達する。  
何かが膣内に放出されたような感じ。  
なんだろう。  
でも、今はどうでもいい。  
何も考えず、ただただ最高に気持ちいいまま、あたしは身体を震わせつづけた。  
 
 
5.清香 事後  
 
あの生き物を「排出」してしまった私も消耗していたが、  
謎の生き物に突然凌辱された2人の女性のほうがより状態はひどかった。  
虚ろな目をして座りこむ彼女らに、ジャケットなど羽織るものを貸し与える女性もいた。  
生き物の被害にあった2人と私は、次の停車駅で降りると、  
近くの病院へ送られ、婦人科で診察を受けた。  
超音波で探ると2人の子宮内に異物が見られるとのこと。  
あの夜私が体験したことも話して、検討した結果、  
私も含めてさらに詳しい検査をしたうえで、  
彼女らは近日中に手術をして異物を取り除くこととなった。  
 
結局あの生き物はなんだったのか。  
それが解明されるときは来るのか。  
私にはわからない。  
ただ、私がもっと早く医師の診察を受けていれば、電車での出来事は防げたはずで、  
それを思うと、あの2人には改めてきちんと謝ろう、お見舞いにも行こう、と考える。  
そして、あの生き物がもう現れないことを、これ以上私たちのような被害者が出ないことを  
ただただ願うのだった。  
 
(終)  
 

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