いきなり係長(25才の独身女性=私と同い年)から残業を頼まれ、一緒に……二人きりで仕事をしてしまった。
なんでこう、毎回毎回私ばかりに残させるのか、気が気じゃない。
私の妻は嗅覚が良いから、他の女の匂いもすぐかぎ当ててしまうというのに。
まぁ、私は就職してからと言うもの、いっきに昇進続きで(今は部長)期待しているのも分かるのだが。
……とまぁ。こんな訳で、今私は、自転車で帰路についている。
妻が「貴方もそろそろおじさまの仲間入りなのだから」と、自転車通勤をすすめてきた
(というか強制した)おかげで、今ではそこそこ良いプロポーションを保てているようだ。
まぁ、人間の雄の体つきの話など、いま目の前にいる読者の諸君には興味ないだろうが。
今日は冬と春の境目ということで、よほど寒くはないが、星が綺麗に見れる。
この空を眺めて自転車をこいでいると、『あぁ……こんなに落ち着くなぁ』とおもうのだが
こうしていられるのは今の内なのだな、と思うと、なんだか惨めで、情けなくなってくる。
……一般的に言うと他の男からしてみれば、『うらやましがられる』とは思うけれども。
地方都市ということで、安く手に入った大きめのマンションの扉を開けると、目の前には私の妻が出迎えてくれていた。
「貴方が帰ってくる頃だなって、おもったの……動物の勘、って奴かしらね」
妻はとても可愛く笑うと、私にキスを求めてきたので、それに答えてやる。
フレンチキスでは物足りないと、妻の方から率先して、舌を差し入れてくる。
私も負けじと、妻の舌へ自分の舌を絡め合わせた。
『このままベットにいきましょう?)』とでも言っているかのように誘っている妻の瞳を見つめながら……
あぁ、またこうやって、私はこの女に墜ちていくのだなと、そう思いかけていたとき。
ギュルルルル……と、腹の音がする。
唇を外し、私は消え入りそうな声で
「……すまん」と言う。
これじゃあ、ムードぶちこわしというか……なんていうか。
それでも妻はというと、全く気にもとめていない……いや、少しにやついた笑みを浮かべつつ
「ふふ。貴方には沢山してもらわないとならないもの、ご飯にしましょう」
と、そういって、私の鞄と上着をもって、すたすたとリビングの方へと向かってしまっていた。
はぁ。つくづく情けないな、私は……。どっちが上なのか……「今」は私が下だろうな。
さっと飯を済ませると、先に妻にシャワーを浴びるように言った。
「貴方も一緒にどう?」なんてウィンクしてきているのだが
一緒に浴室に入ってしまってしまおうものなら、耐えきれなくなってしまう……と直感し
「いや、少しやることがあるから、先に入ってくれ」と、少し申し訳なさそうに言った。
「そういうなら……仕方ないわね」と妻がシャワールームに行くのを
私は視線だけ向けて見送った。
後悔はしてない。するはずがない。
私の人生の中で最も私好みの躯を持ち、最も私を愛してくれる、そんな我が妻に不満はない
ただ、彼女の持っている「癖」にちょっと難があるだけで。
それ以外を除けば、本当に申し分ない妻である。
私はこれから起こる事態を想像しながら……それを振り払おうと、ビールを喉に流し込む。
……ああ。段々テレビの音がはっきり聞こえなくなってきた。
疲れからだろうか。一気に視界が暗転し、意識は暗闇へと墜ちていった。
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股のあたりがむず痒い……というか、「あれ」の辺りが……ジョリジョリと
うすら瞼をあけると、目の前に………ナニカを舐める………妻の顔が写る……。
すこし赤黒く変色した………私の………ナニ。
認識が完了すると、明かりが付いたの如く一気に意識が覚醒し、私は無意識に起き上がった。
「うっ……ねっ、寝ている間を狙うなんて酷いじゃないかっ!」
私はまだ呂律が回らない口を必死に開き、声を上げた。
……ベットの上で、私は全裸にされてしまったらしい。
妻はクスリと笑って、もう一度私の肉棒を舐める……。
寝起きだと言うこともあってか、私のモノは完全に勃起しているようである。
「だって、最近残業残業で、貴方はちっとも私の相手してくださらないし」
すねた声で私のそれに頬ずりする……た、たまらん……じゃなくてだなっ!
「仕方がないだろう!?係長直々の頼みを断れるはずないだろう?」
「……そうかしら」
すうっ、と彼女の目が細くなり、鋭くナイフのような視線を、私に向けた。
それはとても冷たく、私をすぐにでも切り刻んでしまいそうな……そんな視線で。
とてもゾクゾクしてしまう……いや。確かに怖いことには変わりないのだが
「貴方はお洒落だけれど、女物の香水なんて付けるはずないでしょう?だけど、こんなに匂ってるもの」
と犬のように私の躯を嗅ぎ回る。
嫌と言うほど鼻を押しつけ……時に舌を這わせる。そんな彼女の愛撫にもにた拷問を
私は感じてしまうのだ。
とっても……エロいです。
妻は言葉を続けた。
「私、時々貴方の様子を窓側からみるのだけれど……」
「知ってる」
良くカナリヤのような小鳥が、よく窓際のデスクの前に座って、私の方を見ているのを知っていた。
他の男なら分かるはずも無いと思うが、私のほうをずっと見ている視線が、妻のそれと似ていると言うことも。
「よく、あの係長?の女が……貴方の肩を叩いたり、体を近くに寄せて資料を"魅せたり"しているのよ」
「……嫉妬、してるのか?」
段々妻の声が荒くなっていくのを直感し、私は恐る恐る尋ねてみた。
まるで、感情を抑えるかのように。妻は言葉続ける。
「嫉妬……?無論、貴方がそんなことをしないというのを分かっているわ。貴方はとても素敵な方ですもの。
私の事を見ていてくれると、わかってる。でも……でもね」
私はその妻の言葉を聞きならがら、真っ直ぐ目の前の顔をみる……。目を潤ませて、泣きそうな顔をしている。
「でも……?」
「悔しいっ!。凄く悔しいの!」
そういって私の胸に、妻は顔を押しつけてきた…・…。
「……」
「貴方はなにも思っていないことは分かってるけど、あの女はずっとずっと貴方のそばにいれるのに
私は小鳥の姿で眺めるしかないでしょう!?……今にでもあの女を切り裂いてやりたいのに!!!」
……時々、女の嫉妬は怖い物だな、という事を耳にするが、
私の妻の嫉妬心もとてつもないことだと思う。
「……そんなことしたら、お前が捕まってしまうだろう?」
「貴方が沢山沢山慰めてくれるのは、とっても嬉しいの……もう死んでしまいたいぐらい……でもね
そう思えば思うほど、この気持ちが止まらないのよ……。」
どうしようも出来ずに、立ちすくんで泣いている子供のような顔で、妻は涙を流した。
私は彼女を抱き寄せ、優しく撫でた
「寂しかったんだな」
「うん……」
「そうか……ごめんな」
思いきり穏やかな声で、謝る私。いつも笑顔で迎えてくれた彼女が、
まさか……まさか、ここまで追い込まれていたとは。
「どうしたい……?」
「……貴方……」
「……いいよ。お前の好きにして。お前が気持ちよくなりたいならそれで良いし。
私を気持ち良くさせたいのなら、それでもいい。……好きにして良いよ」
そういってもう一度力強く抱き寄せる。
「あなた……」
涙でにじんだ顔を、私の胸板でぬぐう……。
私はもう一度、妻の頭を撫でてやり、そして背中をさすってやった。
「今日は……貴方を気持ちよくしてあげたい……」
それが、君の願いなら……
「ああ……いいよ」