「いやぁああああ!」  
 深夜、月明かりに照らされた廃ビルに、鋭い絶叫が木霊する。  
本来ならば無人のはずの場所。その四階部分に複数の人影がある。  
それは制服姿の少女と、それを囲む十人以上の人数の男達だった。  
男達・・・とはいっても、不良や暴走族の類ではない。否、そもそも人間であるかどうかも怪しい。  
なぜなら、それらは皆一様に同じ姿――まるで、影法師のように真っ黒であり、  
体格などから男だろうと想像できるものの、それ以外には何の特徴も(顔すらも)なかったからである。  
 
 その内の一体が、眼鏡をかけた真面目そうな少女に近寄る。  
「ひ、ひい!」  
 後頭部の三つ編みを揺らしながら、必死に後ずさる少女。  
しかし、その逃走は背後に立っていた別の影によって阻まれる。  
そして、少女のつけている、ワンピース状の白い制服が引き裂かれるとともに・・・  
彼女をメインディッシュとした、影達による凄惨な宴が始まった。  
 
 男達の手によって、ずたずたに引き裂かれる制服。  
さらけ出された白い胸を、黒色の手が荒々しく握り締める。  
「いやあ!もうやめっ!」  
 あまりの痛みに泣き叫ぶ口に、硬い物がねじ込まれた。  
口内を激しく動きまわる、おそらく生殖器なのであろうそれを、  
少女は首を振りながら、必死に吐き出そうとする。  
だが・・・逆に喉の奥まで貫かれ、涙を流しながら咽返った。  
 そうしている間にも、少女の服は剥ぎ取られ、全裸に近い白い体を黒い手が撫で回す。  
そしてついに、まだ濡れてもいない性器が影の生殖器に貫かれた。  
「〜〜!」  
 かっと目が見開かれ、ふさがれた口からくぐもった悲鳴が漏れる。  
そんな少女に構わず、激しく動き始める男。  
あまりの激痛に少女は両手両足を振り回すが、その手もまた別の影につかまれ黒い生殖器を握らされる。  
 やがて、口内を前後する物の動きが激しくなる。同時に、下半身を攻める男の動きも激しさを増す。  
すでに意識が朦朧としていた少女は、その行為の意味に気づき、涙を流しながら許しを請う。  
しかし、少女の弱弱しい抵抗も虚しく・・・  
上下の口を蹂躙していた影達は生殖器を勢いよく突き込むと、そのまま少女の体内に粘液を吐き出した。  
 中に出されたショックで動かなくなった少女から、ズルリと生殖器が引き抜かれる。  
激しい陵辱から解放される少女の性器。まだ血の滲むそこへ、再び生殖器が突きこまれる。  
下半身に走る痛みにうめき声を発する少女。  
その口にもまた、新たな生殖器が突きつけられ・・・終わりは未だ、見えなかった。  
 
「こ〜ら!あんまり激しくやると、早々に壊れちゃうじゃない」  
少女を犯す黒い影達に声が掛けられる。そこから少し離れた先。  
鉄骨を半ば剥き出しにした柱の側に、水色を基調とした服を着た女が立っていた。  
「駄目よ?女の子は優しく・・・もっと長持ちするように使わないと」  
 一見、修道女のような姿をした女――フリルの付いた修道服などあまり無いが――は、  
しかし、その姿とは裏腹の残酷さに溢れる言葉を、目の前の影達にむかって投げかけた。  
「まあ、壊れたら壊れたで別の楽しみ方はあるし、  
 要は器が使えればいいんだから・・・問題ないかしら?」  
 修道女はそう呟くと、白色の柔らかそうな長髪を揺らしながら、くすくすと笑った。  
 
 
「そこまでよ」  
 地獄のようなその空間に、不意に第三者の声が響き渡る。  
窓の外に、月明かりに照らされた影。  
そこには、黒い装甲に顔以外の全身を包まれた少女が一人、  
足場も無い空中を、背中部分から生えた蝙蝠状の翼で浮遊していた。  
その身を包む、黒く頑丈そうな装甲は・・・しかし、体にぴったりとフィットしているのか、  
少女の若々しい体のラインを、あまさず外部へと晒している。  
 
「01、また貴方なの」  
 空中の少女に、修道女がつまらなさそうに声をかける。  
01と呼ばれた少女は、そんな修道女の様子を憤怒に燃える目で睨みつける。  
「お前達がこの世に存在し続ける限り・・・私はどこにだって現れるわよ、ガブリエル!」  
「本当にしつこい子ね・・・01」  
「違う・・・」  
 呆れたように肩をすくめる修道服の女―ガブリエルの言葉を、少女は血を吐くような声で否定する。  
 そして、少女は背中の翼を展開し、廃ビルへと目掛けて空を翔けながら叫んだ。  
「私は01なんかじゃない・・・私はライジング・ヴィーナス、お前達を断罪する者よ!」  
 
 ビルの淵に、黒い天使が降り立った。  
そこに、犯していた少女を打ち捨て、黒い影が殺到する。  
天使よりも、二回りは大きいかと思われる影の突進。  
それに臆する様子もなく、彼女はかすかに鼻を鳴らし両腕を振るった。  
その一撃で、周囲を囲もうとした影が木の葉のように吹き飛ばしされる。  
 勢いよく壁に叩きつけられる化物達。  
その様子を目にも止めず、ヴィーナスは修道女へと駆けながら叫んだ。  
「ライジング・バレット!」  
 少女の声に答えるように、両腕の形が変化する。  
手の形から銃の形へと・・・そして、そのままガトリングのように弾丸を放った。  
 修道女へと向かい放たれる、無数の弾丸・・・  
しかしそれは、彼女の前に立ちはだかる様に現れた、黒い影に阻まれる。  
見ると、吹き飛ばされた影達もまた、ゆらりゆらりと立ち上がり始めていた。  
 
「邪魔よ!ライジング・カノン!」  
 ヴィーナスの怒声と共に、右腕の砲身が大きさを増す。  
「シュート!」  
 そのまま影達に銃を乱射しつつ、前方へむけて砲弾を放つ。  
嵐とでも形容すべき弾幕に、後方から迫っていた影達が耐えられずに弾け飛んだ。  
そして、それはカノン砲の直撃を受けた影も、また例外ではなく・・・  
 数瞬後、白煙の晴れたその場には、天使と修道女の姿があるのみだった。  
 
 
「相変わらずよねぇ、貴方も。もう、あの方の元へ戻る気はないのかしら?」  
 余裕の表情のガブリエルに、天使は無言で砲身をむける。  
修道女は呆れたような表情で肩をすくめたが、すぐに笑顔に戻って言った。  
「別に遊ぶのは構わないんだけど・・・  
 貴方、どんなプレイでもすぐに感じ始めちゃうからつまらないのよね」  
「・・・! き、きさま・・・!」  
 女の言葉に、ヴィーナスの怒気が頂点に達する。  
天使はその左腕をも砲身に変えると、いまだ何かを呟き続ける修道女に、両腕をむける。  
「ライジング・カノン!この世から消えさりなさい!」  
 
 叫びと共に放たれた砲弾。  
しかしそれは、その弾道の狭間に現れた白い物体によって遮られた。  
「ああ、ごめんなさい。貴方の相手は私じゃないの」  
 ガブリエルの言葉と共に、それは天使へと襲い掛かる。  
「くっ・・・」  
 ヴィーナスの放った回し蹴りをいなし、カウンターで殴りつけるそれは・・・  
つい先程まで、黒い影に襲われていたはずの少女だった。  
「あ・・・な、なに?あたし・・・何やってるの?」  
 自分の行っている行為が、理解できないといった様子の少女。  
常人ではありえない速度で振るわれる右腕を、それ以上の速さで受け流しながら・・・  
ヴィーナスは、苦虫を潰したような顔で呟いた。  
「拒否反応か・・・」  
「そう、この子は『ハズレ』だったみたいね♪」  
 
 修道女の言葉を合図とするかのように・・・変化は唐突に訪れた。  
突如、少女がその動きを止める。そして、瘧が掛かったように全身を震わせた。  
「あ、ああああああ!」  
 叫び声と共に、少女の全身から瘴気が溢れ出す。  
涙を流しながら、力なく首を振る少女の顔が闇へと消える。  
そして、黒い霧が完全に晴れたとき・・・  
そこにもう、人の姿は――人と呼べるモノの姿は存在していなかった。  
 
 毒々しい色の笠に、同じく毒々しい色の触手。  
人間のような下半身が生えていなければ、それはクラゲによく似た姿をしていた。  
「や〜ん、かわいい〜!貴方もそう思うでしょ?」  
 両手を頬にあて、体をくねらせるガブリエル。  
それを無視して、天使は両腕をモンスターへとむける。  
「くだらない・・・私の前に立つモノは、何であろうと消し去るだけよ」  
 小さな呟きと共に、ヴィーナスは砲弾を放った・・・  
 

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