僕は早川周。  
少し前までは普通の高校生だったけど、だったんだよね。  
いろいろあって超能力に目覚めて、その上化物退治に協力させられるようになってしまった。  
けど、まだ日常に帰れるよねって思ってたんだ。昨日まではね……  
 
「ぼんやりしてたら駄目だよッ。」  
そういいながら少女は僕を切り刻もうと迫ってきた触手を薙刀で一閃した。  
彼女は神凪あずさ、僕の恋人で化物退治もする真面目で一直線な巫女さんだ。  
くりっとした大きな目、身長は高くないけど  
そのおかげで風になびく少し長い目の黒髪がより際立っている。  
僕が言うのもなんだけどかなりかわいい子だ。  
そして僕は神社の巫女としての彼女の本当の仕事、化物退治を手伝っていた。  
そのときは怪しい宗教の人が港湾倉庫で化物を召喚をしているという情報を聞き、そこに駆けつけた。  
けどたどり着いたときには既に全長何十mあろうかという巨大な蛸のような怪物だけがいたんだ。  
それを倒したまでは良かったんだけど……。  
 
「やったね。」  
そういって駆け寄ってくるあずさちゃん、傷だらけだけどなんとか大丈夫だったみたいだ。  
それを確認して、力を使い果たしていた僕はそのままそこでしゃがみこんだそのとき。  
「あぶな…」「えッ。」  
跳躍してきた彼女が僕に重なり、そのまま押し倒される。  
それに少し、ほんの少しだけ遅れて怪物の口から吐き出される高圧の水が僕たちの上をかすめていった。  
「ご、ごめん。」  
怪物がこれ以上動かなくなったのを確認したとき、僕は何かやわらかい感触があることに気付いた。  
「あずさちゃん、もう大丈夫だからッ。」  
思わず目をつぶり、抱きつかれる格好になっている彼女から抜け出そうとした。  
――ごろん  
僕の上から何かが転がっていく感じがしたので、目をゆっくりと開いていった。  
そこには彼女の、胴体から離れた首があった。  
「あずさ……ちゃん、あずさちゃん、あずさちゃんッ。」  
彼女の顔を両手で掴み、わめく。  
「僕がそのまま死んだらよかったのに、どうして、どうしてッ。」  
「こらッ、死んでいい人間なんていないっていってるでしょ。」  
「え。」  
「それとそんなに力込めて抱きしめられると痛いよ。」  
そういった彼女の首を胴体がひょいと取り上げるのを見て、僕は気絶した。  
 
その後、動く死体になってしまった彼女は実家の神社には帰るわけにはいかず  
下宿で一人暮らしの僕のところに来たらしい。  
幸い誰にも見られなかったけど首のない巫女さんが男の子担いで血を噴出させながら走ってるなんて  
もし見ていた人がいたら忘れられないトラウマになっただろうなぁ。  
実際港の方では『猟奇殺人事件発生か!?』とか言われてたし。  
と話がそれたけどこれが昨日のことで現在にいたるんです。  
 
「ただいまー、って何家のなかで薙刀振り回してるのあずさちゃん?」  
「見てのとおりの稽古だよ。しかも首、別のところに置いとけるから  
 今まで以上に私自身がよく見えるようになったよ。」  
「えー、ひょっとして適応しちゃってる?」  
しまった、思わず口に出てしまった。  
「違うよ。こんなことしてるのも周クンいないし学校行けないし退屈だったからだよ。  
 それに身体動かさないとなまっちゃうしね。」  
一瞬ゾンビって、身体なまるの……?と疑問が思い浮かんだけど今度は口に出さなかった。  
「ごめん、でも本当に良かったの?僕だけ学校行ってて。」  
「うん、だって周クン起きたときまだ混乱して現実逃避しようとしてたんだよ。  
 だから何か話し合うにしても日常生活に戻って落ち着いてからがいいって思って。」  
といって彼女はにこりと笑顔を浮かべる首を拾い上げる。血が抜けて青白くなった生首は笑顔でも怖いです。  
それを両手で抱えているのも恐怖をさらに増幅しています。今冬だけどこの寒さはきっとその寒さじゃないです。  
やっぱりまた現実逃避したくなります。僕の幸せな日常どこにいったの?誰か教えて。  
「周クン、どうしたの?」  
「ううん、なんでもない。」  
僕は首を振り、現実をまっすぐ、まっすぐ見詰めます。泣く泣くだけど。  
「そういえば学校のみんなもいつも元気なあずさちゃんがいなかったから心配してたよ。」  
「え、私風紀委員の仕事で口うるさくしてたから気楽に思ってる人が多かったんだけど。」  
意外そうな顔をするあずさちゃん。まだちょっぴり怖いです。  
しかし実は叱られるのを楽しみにしている男子が結構いるんだよね、言えないけど。  
「他は、不良の人たちが休んでるくらいでいつもどおりだったよ。」  
「最近サボりもなかったのになぁ。ちょっと残念だね。」  
ため息をつくあずさちゃん、人間の適応力って凄いですね。そろそろ慣れてきました。  
でもやっぱり人間の首は胴体とつながってるのがいいと思います。  
 
「ところであずさちゃん、その首つながらないの?」  
「うん、血で引っ付かないから接着剤でくっつけてみたんだけど  
 それだと首が回らなくて結局そのままにしたんだ。  
 あと接着剤つけたとこ気持ち悪かったお風呂借りたよ。」  
「う、うんッ。」  
風呂に入っている彼女を想像して思わず顔を赤くしてしまった。  
「周クン、エッチなこと考えたでしょ。」  
「ごめんなさい。考えてました。」  
他に何か言っても言い訳になるので頭下げて平謝り。  
男子であれば想像する方が健全だと思うけど『早過ぎだよッ。』とのお叱りを予測したからだ。  
「でも私、子供作るような行為一生できないかもしれないの。」  
彼女からの返事は、予想から飛びすぎた明後日の方向の答えだった。  
「それってどういうこと?僕はもあずさちゃんのこと嫌いになったりしないよ。」  
「ありがと、周クン。でもそういうことじゃないんだよ。」  
「じゃあどういうことなの?」  
彼女が寂しそうに呟いたけど僕は続けて聞く。重要なことだと思ったから。  
「周クンが学校に行ってる間に私の身体についていろいろと考えてたんだ。  
 それを説明するね。」  
「お願いします。」  
僕はこういう話はよく分からないからいつもは流してた。けど今だけはちゃんと聞くことにした。  
「アンデッドは死霊使いに動かされてるものを除くと一部の本能だけで動いてるんだけど  
 力ある魔法使いのアンデッドたちは自我を持って動けるの。  
 それで私の場合は巫女としての力があるから、今まで通りに考えて動けるんだと思うんだ。  
 だから巫女としての力が使えるしね。」  
といって薙刀を出したり消したりする。  
彼女によれば薙刀と巫女服は神様から授けられた能力らしい。  
口には出さないけどなんで御札や魔法みたいなのじゃないんだろう。  
「でね、私の力だけどね。巫女は純潔を失うと力を失うの。  
 だから周クンとね、えっとその……まぐわうと、ただのゾンビになっちゃうかもしれないんだよ。」  
僕はあずさちゃんが好きだ。簡単に引くつもりはない。  
「それでも僕はあずさちゃんが好きだよ。それにエッチなことしなかったら問題ないと思うし。」  
「子供もできないんだよ。私がゾンビになったこととかも気にしなくていいんだよ。  
 周クンの一生の問題だから本当によく考えて、お願い。」  
「うん……。」  
引くつもりはなかった。けど彼女の真剣な顔を見て僕はうなずくことしかできず  
「晩御飯作るね。簡単なものしか作れないけど。」  
場の雰囲気を変えるのに、僕ができるのはこんなことくらいだった。  
 
 
僕が晩御飯が終えてしばらく休息したあとのこと。  
「散歩でも行こうか。」  
「周クン、こんな遅くに出歩くのは健全な青年として良くないよ。」  
と箸を止めて注意してくるあずさちゃん。  
「僕もそう思う。けど夜遅くだったらあずさちゃんの顔色でも目立ちにくいと思って。さ、行こうよ。」  
「今日だけだよ、不良行為見逃すの。……ありがと。」  
まっすぐ僕を見ないで。そんなこと言われると罪悪感が生まれるから。  
なぜならこの誘い、言葉どおりの意味だけじゃないから。  
僕が食べ終わってるのにあずさちゃん、いつまでも食べ続けてるから食料尽きかけてるんだ。  
ごめんあずさちゃん、明日以降の食事のためだから欺くことを許してください。  
「そうだ、さすがに巫女服のままじゃいけないよね。寒そうだし首の切れたとこも隠さないといけないし。」  
と目を逸らしつつ赤いマフラーと黒のコートを彼女に差し出す。  
「あれ、このマフラー、お父さんに貰った大切なものって言ってたよね。いいの?」  
「いいよ、それに物は使ってこそだっていつもあずさちゃんが言ってることだよ。」  
「んー、それじゃ借りるよ。気使ってくれてありがとッ。」  
といって明るい表情で羽織るあずさちゃん、やっぱりかわいい。  
物語作ってくれた父さん、今とても感謝してます。ありがとう。  
「周クン、首外れないようにマフラーきつく巻いていいかな?少し肉片ついちゃうかもしれないけど。」  
「う、うん……。」  
ドン引きってこういうことを言うんですね、きっと。  
「で、周クンどこ行くか考えてたのかな?」  
「確かあのソフトクリームのおいしい洋菓子屋さんが、  
 まだギリギリ開いてたはずだからそっちに行ってみようかなと。」  
「それじゃまず食べに行こうか。出発出発ッ。」  
そして僕たちは夜の街へと向かった。  
 
からんからんと鐘の音。  
「毎度ありがとうございましたー。」  
「ありがとッ。じゃ行こうか。」  
僕たちはクリームを食べながら散歩することにした。  
理由は『顔色悪いの見られて心配されたくないでしょ。  
自分で言うのもなんだけど死んだ人みたいな顔色だし。』とのあずさちゃんの言からである。  
死んだ人の土気色みたいではなくそのものですと思ったけどそれは心に秘めておきました。  
「んー。」  
スプーンを咥えて何か言いたげなあずさちゃん。  
「どうしたのあずさちゃん、ソフトクリームじゃなくてイタリアンジェラートにしたの失敗だった?」  
「ううん、このチョコレートはカカオの風味が濃いのに甘さがしつこくなくて美味しいよ。  
 けど私、身体が冷たくなってるからジェラートの冷たさがあんまり感じなくて。  
 ほら、食べ物をちゃんと味わえないって勿体無いでしょ。  
 それと、口の中であんまり溶けないからなかなか食べにくいの。」  
深刻な悩みじゃなくて一安心。  
「じゃあったかいコーヒーでも買おうか。」  
「あ、いいよ。長い間味わえるからお得なのかもって思ってきたから。  
 それにね。この冷たい身体にもいいことがあるんだよッ。」  
「え?」  
思わぬ言葉とともに手を握ってくるあずさちゃん。  
「それはね。周クンの温もりを多く感じられるようになったこと。」  
どきっとした。  
なんだか熱くなってきた。  
僕の中のはっきりしなかったものが形になってきた。  
そして、それを彼女に伝える覚悟ができた。  
 
「あずさちゃ…」  
にゃーお。  
こちらを一瞥して我が物顔で前を通り過ぎてく黒猫。  
「こんな時間に堂々とした猫だね。」  
「う、うん。そうだね。はは、はぁ……。」  
覚悟が出鼻から挫かれてうつむく僕。  
しかも縁起最悪の横切る黒猫で。  
「どうしたの?縁起気にしてるんだったらお払いして……、あ。」  
と彼女の目線に目をやると、  
さっきの黒猫が車道へ飛び出したところにトラックが迫っていた。  
「これ持っててッ。」  
「え、ちょっと、わわ。」  
アイスを高く放り投げ、そして僕はコートを被せられ視界を失った。  
―ぐちゅ。ぶしゃ。びしゃ。  
嫌な音がした。  
「あずさちゃんッ。」  
コートを払いのけると、あずさちゃんは目の前にいた。  
にゃーお。  
足元には優雅に歩道を歩いてく黒猫、どうやら無事だったみたいだ。  
「でも一体どうして?」  
「ちょっと待ってね。」  
とあずさちゃんは大きく口を開け、さっき来たアイスを口に入れた。  
今コーンごと丸呑みしてるように見えたんですが気にしちゃだめですか?  
「今だけどね、これを使ったの。」  
彼女は振り向き、手に持っていた長いロープのようなものを見せてきた。  
「そんなの巫女装備にあったっけ?」  
「ううん、これ私の小腸なんだよ。」  
 
………………。  
見ると彼女の巫女服が少しはだけていた。  
彼女のへその横にはこぶし大ほどの穴が開き、周囲の肉が蠢いている。  
地面にも彼女の肉片と思われるものがピクピクしているのを確認できる。  
「ほら、己を知れって言うでしょ。  
 だから周クンが学校行ってる間に身体がどういう風に変わってるのかなって調べてたの。  
 それで再生力が強化されてるのが分かったからね。小腸を短く繋げておいて  
 残りの部分を便利な縄として使えるようにしておいたんだよ。  
 早速役に立つとは思わなかったけどね。  
 ほら、何かを成し遂げるには自分のチカラ最大限発揮しないと駄目でしょ。」  
「あの、その、早く直した方がいいんじゃない?」  
「そうだ、早くしないとお腹の穴が塞がっちゃうんだよね。ありがとッ。」  
と小腸を巻き取りながら片付けていくあずさちゃん。  
彼女は今も精一杯生きようとしている。  
人間でもなくなって、学校にも行けなくなって、実家にも帰られなくなってるのに。  
それでも、それでも彼女は生きようとしている。きっと僕以上に。  
もし逆の立場なら僕はきっと、彼女のように前向きに生きられないだろうなと。  
そして、だからそのひたむきさに僕が惹かれたんだということを思い出した。  
同時に、僕の覚悟も決まった。  
「あずさちゃん。言いたいことが…」  
どごーん。  
「これはッ、私以外の邪気を感じる……。周クン行くよッ。」  
「う、うん。」  
僕の覚悟はまた挫かれてしまった。  
神様、恨みます。  
 
爆発のあった方向は、宗教や化物蛸がいた方向で  
あずさちゃん曰く組合の人が警察に掛け合って封鎖してるはずとのことだった。  
実際、誰とも遭遇することなく現場に着いた。  
そして現場には、散らばる触手と空に浮かぶ一人の巫女がいた。  
あの、よく分からないけど下着丸見えなんですが。  
「なぎさ姉さん……。どうしてここに?」  
え、お姉さん?  
よく見ると顔立ちや髪の感じも似てる、あずさちゃんと違って背高いけど。  
「前の妖怪退治から帰ってこないと聞いて南海の果てからすっとんで来たぞ。  
 そこの男はお前の彼氏か?ん、まだ邪気があるな。な、何故あずさから  
 邪気を感じるんだッ。これは……怨霊と化しているではないか。一体どういう  
 ことだッ。そうか、分かったぞ。犯人は男、貴様だな。私の可愛い妹の命を奪った  
 だけでなくその肉体、魂魄全てをもてあそびおって。あずさ、今浄化してやるぞ。  
 待っていろ。そうか、今私に妖怪をけしかけたのも貴様だな。  
 何を考えているかは知らぬが私を怒らせたからには未来はないぞッ。」  
「え、ちょ。話せば分か……」  
「問答無用ッ。悪党らしく惨めに逝けぇいッ。」  
なぎさお姉さんの目の前に人のような何かが浮かび上がったのを見て僕は身構えた。  
そしてその幻影は避けられない速さで僕に向かって来た。  
 
あれ、僕は何をしているんだろう。  
周囲の景色が変わっていく。  
『うふふ、身体が気持ち悪くない?』  
「誰?」  
黒髪の女の子が僕の目の前にいる。  
誰かに似てる気がするけど思い出せない。  
『誰でもいいじゃない、ほら服を脱ぎましょう。』  
確かに身体がむずむずしている。だから僕は言われたとおり服を脱ぎ始めた。  
でも、何か音が聞こえる気がして僕は手を止めた。  
『気にすることなんて何もないのよ。さあ自分のしたいことをして。』  
音は止み、僕は服を脱ぐのを再開し完全に裸となった。  
でも僕の身体に異変は止まらない。  
『原因は身体の中にあるのよ。全て出しなさい。』  
と彼女は指先で大きくなった僕のおちんちんに触れ、下から上へと撫でた。  
「う、あぁ、うッ。」  
思わぬ感情に声をあげた。  
そしてなんともいえない悦びに身体を震わせ、大地に横たわる。  
『あれ、僕は何をしているんだろう。  
周囲の景色が変わっていく。  
『うふふ、身体が気持ち悪くない?』  
「誰?」  
黒髪の女の子が僕の目の前にいる。  
誰かに似てる気がするけど思い出せない。  
『誰でもいいじゃない、ほら服を脱ぎましょう。』  
確かに身体がむずむずしている。だから僕は言われたとおり服を脱ぎ始めた。  
でも、何か音が聞こえる気がして僕は手を止めた。  
『気にすることなんて何もないのよ。さあ自分のしたいことをして。』  
音は止み、僕は服を脱ぐのを再開し完全に裸となった。  
でも僕の身体に異変は止まらない。  
『原因は身体の中にあるのよ。全て出しなさい。』  
と彼女は指先で大きくなった僕のおちんちんに触れ、下から上へと撫でた。  
「う、あぁ、うッ。」  
思わぬ感情に声をあげた。  
そしてなんともいえない悦びに身体を震わせ、大地に横たわる。  
『さぁ、あとは自分でできるわね。』  
こくりと頷き、僕は指先でおちんちんを撫で始める。  
「あ、あぁ。」  
しかしその瞬間、衝撃と共に身体が動かなくなり僕はその行為を続けることができなくなった。  
『それはあなたを縛る鎖。早くお逃げなさい。』  
言われて僕はむちゃくちゃに身体を動かしたが、まったく振りほどけなかった。  
時間が経つと、声が聞こえた。  
「周クン、今術を解いてあげるから。」  
誰のことだろう?誰の声だろう?  
僕のおちんちんに触れる感触がある。さっきみたいに気持ちが……  
「あ、あッ。」  
良くなってきた。  
身体が自由になった。けどこの包まれるような感触から離れられない僕は動けない。  
そして、僕の前に女の子の姿がだんだんと見えてきた。  
そうだ、思い出した。思い出したぞ。あずさちゃんだ。  
「あッ、あッ、あずさちゃんッ、一体ど、ど、ど、どうして。」  
目を覚ましたときは、僕はあずさちゃんに跨られ、犯されている状態だった。  
 
そこは倉庫だった。  
建物が大きく損傷し、あちこちで荷崩れしてる。多分あの怪物のときの倉庫だろう。  
でも今はそんなことどうでもいい。  
僕は彼女と分離して経緯を聞いた。  
「周クン、なぎさ姉さんの術を受けて虜になってしまってたの。  
 だから、大地を砕いて煙幕にして逃げて来て、それで、それでね。  
 そういうの解除する方法私あれしか知らなかったから、ごめんね。」  
「いいんだ。あずさちゃんならいいんだよ。  
 でも、でもそうじゃないよ。意識大丈夫なのッ?」  
聞いた彼女は肩で息をしてた。どう見ても普通の状態じゃなかった。  
「多分大丈夫じゃない、ね。意識はっきりしなくなってるし  
 身体も言うこと利かなくなってきてる……。」  
「そんな、また僕の……」  
「そんなこと言っちゃ駄目だよッ。私がそうしたいからそうしただけ、だけなんだから。」  
彼女に人差し指を刺され、釘を刺されてしまった。  
「う、でもッ。」  
「じゃあ私のお願い聞いてくれる?」  
「うん、何。早く言って。」  
「どうせだし、ね。最後までやろうよ。周クンも中途半端でしょ。」  
「えッ。」  
といって彼女は袴を捲る。  
意外なお願いに、こんなときだっていうのにキョトンとしてしまった。  
 
「やっぱりゾンビだし私なんて嫌だった、かな?」  
「ううん、そんなことない。そんなことないよ。」  
「じゃ、来て。私元気に動けないから……。」  
「それじゃ、行くよ。あずさちゃん。」  
さっきの行為があったから彼女の秘所は澱んだの液体で濡れていた。  
「ごめんね、こんな身体だから普通の人と違うかもしれない。」  
「他なんて、関係ないよ……。」  
ずり、ずりりゅ。  
僕は彼女を抱きしめ、陰茎を彼女のひんやりとした膣の中に入れていく。  
竿はその冷たさに引き締められ、強く脈動をする。  
そして、それからもたらされる感情に僕は身を任せる。  
「あッ、ずッさ、ちゃん、速く、して、いいぃッ?」  
「おッ、願い、早く、速くぅッ。」  
ずりゅ、ずしゅッ、ぐしゅッ、ぐしゅ。  
行為を続けていくうちに彼女の変質した愛液も行為を潤滑にさせるようになっていく。  
「あ。」「あぅ。」「あッ。」「あぁッ。」  
本能で鳴きながら、互いに悦を深めてゆく。  
僕の突きと、彼女の振りが一致していく。  
ぐしゅ、ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅッ。  
発射準備完了。  
「行く、よッ。」  
「来てッ。」  
ぶしゅ、ぶしゃあぁッ。  
あずさちゃんの中に精をぶちまける。  
「あッ、はぁあッ、ありッ、がと、周、クン。」  
「はぁッ、はあ、ううん、あず、さちゃん、大好き、だ、もん。」  
 
メインを終え、僕達は動きをクールダウンさせていく。  
「最後のお願い、聞いてくれてありがと、ね。」  
と口付けをしてくるあずさちゃん。  
「最後……?最後なんて言わないで。  
 そんな風に諦めるなんてあずさちゃんらしくないよ。  
 それに、僕にもっと言いたいことあるんでしょ。」  
「まさか周クンに叱られるなんて思わなかったよ。  
 そうだね、それじゃ神様に直談判して来るから待ってて、ねッ。」  
「待ってるから、早く帰ってきて。」  
僕言い終わると、あずさちゃんは少し笑顔を浮かべて動きを止めた。  
「あずさ、ちゃん……?」  
と思ったらいきなり再び腰を振り出し、回転し攻防逆転する。  
「わわ、いきなり、だよッて……えッ。」  
動き出したあずさちゃんは、目の焦点が合ってなくて、口はだらしなく開いたままだった。  
巫女服もいつの間にか消えて、丸裸になっている。  
それを見て、彼女の言っていた『一部の本能だけで動いてるアンデッド』に  
なってしまっているということに僕は気付いた。  
「あー、あーッ。」  
「ごめんあずさちゃん、意思が帰ってくるまで我慢してッ。」  
僕を力ずくで押さえつけ、本能だけで犯してくる彼女から何とか離れ、  
彼女のマフラーをほどき首を取る。  
そして距離を取って、彼女の首を周りを見えないようにして崩れた貨物の中に置いた。  
目標を失った彼女の身体は、そのままへたりと座り込んだ。  
「あずさちゃんは、必ず帰ってくるよね。だからあのお姉さんを説得しないと……。」  
くちゅ、くちゅッ。  
そのとき僕が見たあずさちゃんは、背中を反らし、誰かを誘うように脚を開き、  
そして激く自らを慰みだし、全身を震わしていた。  
「そんな姿をお姉さんに見せるわけにはいかないねッ。」  
と僕は彼女を後ろ手にマフラーで縛った。  
「ふぅ、これでひとまず安心かな。」  
と落ち着いたのもつかの間。  
彼女は転げ周りコンテナにぶつかると、  
今度はそのコンテナの角を使って自慰を再開しだした。  
「うぅ、もうッ。」  
彼女をコンテナから引き剥がし、今度は両手両足をマフラーで一箇所に縛る。  
「これで今度こそ大丈夫…じゃないッ?」  
あずさちゃんの胴体は安楽椅子のように身体を動かして、  
胸を地面に押し付け変形させ快楽を得ようとしていた。  
「な、なんかだんだんドツボになってる気がする。  
 こんな変態みたいなとこ見られたらお姉さん話聞いてすらくれそうにないもんね。  
 何か縛れるもの探さないと……。」  
がらがらがら。  
シャッターが開いていく。  
「縛るだとぉ。貴様ぁあ、何をしているッ。」  
そんなところになぎさお姉さんが現れた。  
最悪のタイミング、しかも悪いところだけ聞こえてるよ。  
神様、僕のこと嫌いでしょ?  
 
「あずさの命を奪い、魂魄を弄ぶだけでは飽き足らず貴様の歪んだ醜い欲望の  
 はけ口にするとは最早救いがたしッ。許さぬ、許さぬぞぉッ……。10秒やる。  
 無駄にあがくなり神に祈るなり逃げるなりして希望を抱くがいい。そしてそれは  
 その先にある絶望を大きくするだけのものだということを知らしめてくれるわッ。10……。」  
ひょっとしたら事情を聞いてくれるかもしれない。そう考えて僕は語りだした。  
「実は…」  
「9…、ハアァ、くっくっく、やはりもう辛抱、できんなぁ。行くぞぅうッ。」  
「彼女がゾンビになった原因はってえぇッ。」  
ちょっとあなた話聞きませんか?と突っ込む間もなく  
さっき僕が受けたような幻影が超高速で飛んできた。  
しかし、今度はそれを完全にかわす。  
「何ぃい、さっきより力を増しているだとぅ……。そうか、貴様房中術であずさの  
 力を吸収しおったな。どぉこまでも小賢しい小僧だ。」  
確かにさっきまでの僕とは違う。  
だってあずさちゃんの帰りを待つって決めたんだから。  
「なぁらーば、これならどうだッ。」  
今度は一つ、二つ、三つと超高速を維持したままの幻影が連続して飛んできた。  
しかし、僕はそれをしゃがみ、転がり、バックステップしてかわすッ。  
 
(戦闘部分いらないから中略)  
 
「ふぅはぁはッ、まぁーさか我が悪魔の攻撃を全て、避けきるとはなぁッ。」  
いや、だって全部直線で僕のいたところに飛んでくるだけだから避けやすいんですもん。  
っていうかその幻影、悪魔だったんですか。あなた巫女じゃ……?  
ふにゅ。ふにゅ。  
後ろでゆれてるあずさちゃんがまたなんとも言えない間抜けな空気を醸し出している。  
「あのー、そろそろ終わりにして話を……。」  
「くぅっくっく、そぉの余裕も、今のうちだッ。その中途半端に力があるおかげで  
 この私の、真の力を見ることになるのだからなッ。」  
お姉さん、いつもこんなノリノリなんでしょうか?  
「行くぞぉッ。」  
余計なことを考えてたら彼女は体当たりをしてきた。  
それは、先ほどの幻影と比べても圧倒的な速さだった。  
僕は来るのが分かっていても避けることができず、吹き飛ばされ壁に激突した。  
「ぐあッ。」  
「ふっふっふ、この私が悪魔達より遅いと思ったかぁ?  
 あまぁーい、あまぁーいぞ。ちよこれぇーとよりも、激甘だぁ。」  
衝撃よりも先に巫女の攻撃方法が体当たりでいいんですか?  
とのツッコミが脳内に浮かぶ。  
そしてそれ以上に倒れるわけにはいかないという思いが僕を再び立ち上がらせる。  
「往生しろぉおッ。」  
そこに飛び掛ってくるお姉さん。  
いや、それ仏教用語ですよと思ったのと同時に閃光が走り目が眩んだ。  
 
目を開けると、そこには縛られたお姉さんがいた。  
「今帰ってきたよ、周クンッ。」  
声の方向には、片手に首、片手で腸を握っている巫女服のなぎさちゃんがいた。  
「くぅ、おのれぇえ。あずさにこのような戦いを強いるとはッ。」  
「お主は少し落ち着けッ。  
 儂の巫女が話を聞かぬとはなんたることじゃッ。」  
すぱこーん。  
鎧を着た女の子が、槍みたいなものでお姉さんの頭を軽く叩く。  
「貴様は一体ッ。い、いやあなた様はッ。  
 我らが神、毘沙門天様ではありませぬかぁッ。」  
………へ?  
「私、神様に直談判してきたんだよッ。」  
「お帰りあずさちゃん。」  
にっこり答えるあずさちゃんに僕も笑みを浮かべる。  
けどちょっと待って………この女の子が、神様?  
でもなんか鎧とか壊れてるしそこはかーとなく傷ついてるような……。  
「そこのあずさの強い思い、しかと受け止めての。  
 例外として黄泉帰ってもらったのじゃ。」  
そのまま少女は僕の耳元でささいてきた。  
「何せあの娘、黄泉の国や高天原で我ら神相手に  
 力づくで言うこと聞かしに来おったからの。  
 儂なんてあやつの祭ってる神じゃというのに。はぁ。」  
僕の恨み言は聞いてないみたいで良かったです。  
でもあずさちゃん、ちょっと豪快すぎませんか?  
っとそうだ、こちらを睨んで鼻息を荒げているお姉さん静めてもらわないと。  
「あの、神様。そこのお姉さまを静めていただけないでしょうか?」  
「なぁぜ貴様が私を姉などと呼ぶぅ。」  
あぁ、そんな視線を向けないでください。  
神様、早くお願いします。  
「たわけッ。お前には秘められた真実を知ることのできる部下が何人もいるではないかッ。」  
「ということはッ、そやつは巨悪の末端ということでございますかッ。くぅ、それは不覚ゥッ。」  
「いいから早く話を聞けッ。」  
すぱこーんと再びお姉さんを叩く神様。  
お姉さん、そんな便利な悪魔いるんですか。しかも何人も。  
お願いですから有効活用してください。  
この様子を見ていたあずさちゃんは小腸を解き、こちらに駆けてくる。  
「周クン、もう離さないからよッ。」  
「僕もだよ、あずさちゃん。」  
僕達は喜びのまま、互いを抱きしめた。  
 
「それではこれからも文武共に励むのじゃぞ。」  
閃光が走るとともに神様は消えた。  
「すまぬな、少年。どうやら私は勘違いをしていたようだ。  
 いやもはやこういった方が良いな。弟よ、あずさを、妹を任せたぞ。」  
いやまた何か行き過ぎてますよ。  
でも、これはいいか。  
「はい。」  
腹を張って返事を返す。  
「あずさ、私はまた戦場に赴くがいつもお前のことを思っているぞ。  
 達者にするのだぞ、では別れのときだな。」  
そういいながら彼女は天馬に乗った少年を呼び出した。  
「往くぞ、セエレ。」  
「はッ、お館様とならどこへでも。」  
だんだんとお姉さんと少年の姿がかすれ、消えてゆく。  
「なぎさ姉さんッ、人の話をちゃんと聞いて下さい。それとちゃんと考えて動いて下さい。  
 それから……」  
「はっはっは、願いごとが多いなあずさは。だが私は考えるより先に動くのがすきなのだよ。  
 だが、まぁ少しは聞いておこうか。」  
いや、お願いします。神様に言われたんだし改めてください。  
「姉さん、じゃ、これだけはお願い。元気で帰ってきてッ。」  
「その願い、しかと聞き遂げたぞ。  
 そうだ、祝儀代わりにそやつを置いておく。好きに使えぃッ。」  
 それではさらばだぁッ。」  
気になることを言い残してお姉さんは消えた。  
ヒヒィン。  
そして後ろを見ると、巨大な馬にしがみ付いてる女の子がいた。  
 
「あ、あのー。なぎさ様によりあなた方へ尽くせと命じられて参りました。  
 あの、いろいろお手伝いしますので置いてくださいね。」  
ひょっとしてこの女の子、僕たちが面倒見るの……?  
「こう見えてわたし、地位高くしたり星占いとかの力も与えることできるんですよ。」  
そういう女の子をよく見ると猫科のような耳をしている。やっぱり彼女も悪魔なのだろう。  
「でも僕達まだ学生だし、地位とかは関係ないし、ね?」  
「そうだね。それに吉凶なら私が占えるし。」  
「そ、そんな、お願いします。お仕事できないとあとでなぎさ様に叱られちゃう。」  
なんだか泣きかけてる。悪魔なんだろうけど、子供にしか見えなくなってきた。  
「姉さん一度決めたらなかなか変えない人だからしなぁ……。  
 周クン、この子置いてあげようよ。」  
かわいそうになってきてたし、あずさちゃんにそう言われて心が決まった。  
「そうだね、じゃ家事でも手伝ってもらおうかな。」  
「あ、ありがとうございます。わたしオリアスは一生懸命働かせて貰いますッ。  
 そうだお兄様、裸では不審者ですよね。えいッ。」  
彼女がそういうと僕はもやに包まれ、気付いた時には僕は服を着ていた。  
「これは……、一体どうしたの?」  
「私、人の姿を変えたりすることもできるんです。  
 普段は悪さするような人しか役に立たないですけど。」  
「ということは……。ねぇ、あずさちゃんを顔色良くしてよッ。」  
と蛇が巻きついてる女の子の肩を掴む。  
「わわ、そんなに揺らさないで下さいぃ。  
 分かりました。確かにお姉さま顔色悪いですもんね、ええいッ。」  
そしてもやから出てきたあずさちゃんは、生前のつやを取り戻していた。  
「あれ、私死んだの昨日のことなのになんだか凄く懐かしい感じがする。」  
「なんだかわたし、お役に立ってます?」  
「うん、凄く役に立ってるよッ。  
 というかなぎさお姉さんはこのことのために君を遣わしてくれたんじゃないかな。」  
とかくかくしかじかとオリアスちゃんに事情を話す。  
「あれ、お姉さま亡者だったんですか。それじゃ気をつけてくださいね。  
 偽りの姿とあんまりにもかけ離れたことすると……」  
首を上げて現状を確認していたあずさちゃんの顔色は、青かった。  
「そういう風に術が解けますから気をつけて下さいね。」  
「でもこれであずさちゃん、実家にも帰れるし、また学校に行けるよッ。」  
「うん、そうだね。周クン、オリアスちゃん、みんな、ありがとッ。」  
 
次の日の登校中。  
トンッ。スタッ。  
公園の石垣の上からあずさちゃんが飛び降りてくる。  
「周クン、おはよッ。」  
「おはよう、あずさちゃん。」  
合流してきたあずさちゃんが、茶のブレザーの制服を着てるのを見て、  
僕は日常に帰ってきたんだということを改めて認識した。  
「んー。」  
「どうしたの、あずさちゃん?」  
何か言いたげだったので尋ねてみた。  
「ほら、昨日周クンが言いたいことどうこうって言ってたでしょ。」  
「うん。そうだった、ね。何だったか聞かせてよ。」  
「でもは言えなくなっちゃったな。」  
「どうして?」  
「それはね、周クンにもっと強く心を持ってってことだったから。  
 けど、それは私の知らない間に持ったみたいだしね。  
 悪いことじゃないけど約束したのに言えないって、何か負けた感じだよ。」  
でも僕の心持はあずさちゃんがいたからこそ強くなったんだよ。  
と心の中でだけ返しておいた。  
「あッ、もう春が近づいてるんだね。」  
彼女が差した方向には、菜の花がちらほらと咲き始めていた。  
なんだか自然と笑みがこぼれてくる。  
「周クン。」  
あずさちゃんが手を握ってきた。昨日より温かくなってる気がする。  
「君が何を感じているのか当てるね。  
 それは"しあわせ"でしょ?私も今一緒に感じてるよ。」  
「あずさちゃん、当たり。」  
昨日まで以上のしあわせを、僕は今感じてた。  
「あ、早くしないと私としたことが遅刻になっちゃう。行くよッ。」  
「うん。ってちょっと待ってよあずさちゃんッ。」  
 
おわり。  
 

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