<気づいたときには遅かった> この言葉はよく悲劇の語り始めに使われるモノであるが、  
これから紹介する話は<気づいたときには遅かった>から始まった喜劇の物語。(嘘  
 
 
あっ!?そう思った時にはすでに遅く、視界は大きく傾き、手を伸ばそうにも硬直した身体は  
自分の言う事を聞かずに重力にのみ身体を開く、天地はひっくり返り、目まぐるしく変わる  
景色、青と緑と焦げ茶色…その三色が左から右へ何回も流れていく。  
 
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「……ッテエ、」  
少しの間気を失ってたみたいだ…、ふと見上げれば10mほど上に登っていた山道が見える、  
「クソォ〜…狐なんか見ながら歩くんじゃなかった…」  
山道を歩いていると突然目の前に狐が現れた、この辺の山では狐は珍しく、つい見入って  
しまった、しかしそれがいけなかった、案の定道を踏み外し安全用のロープが在ったにも  
かかわらず此処まで転がり落ちてきたのだ。  
はぁ、とため息を一つすると、頭の処理が落ち着いてきたのか体中が痛いことに気づく、  
「うわぁ〜、いろんな所擦りむいてるよ、イテテテテ」  
体中の傷を見るたびにうわぁ〜と呟く俺、すると突然  
『クックックックック…さっきお前に魅入っていた男が居るぞw』  
『止めてください、怪我をしているではありませんか』  
だ、誰?と周りを見渡すが誰も居ない、が、人の代わりにちょこんと座っているものが居た、  
それは綺麗な金色の毛を風になびかせた2匹の狐だった。  
 
?????  
周りに人はいない、おまけに山道に近いとはいえ10m以上転がり落ちた、こんな所山菜取りの  
おばちゃん達も来ないだろう、ということは…、  
「き、狐が喋った…?な訳ないか」  
狐が喋るわけないよ、うん、まだ頭が混乱してるんだなきっと、  
「喋れるはずないよな〜ただの狐だもんな〜お前ら」  
『ただの狐が喋るはずないだろ』  
……へ?  
『思ったとおり、と言うか見たまんまの間抜けかww』  
なっ、確かに間抜けとしか見えないけど初めて会った、おまけに人間でもない狐に言われたくない、  
『顔も丁度良い間抜け面で良かったなぁ〜お前』  
ケラケラ笑う一匹に俺は歩み寄る、  
「狐に、間抜け面だなんだ言われる筋合いはねぇーんだよ!!」  
久しぶりにキレた、相手が動物ってのがなんか悲しいが…  
「大体なんだよ!狐が喋るってぇ!おかしいんだよ!!」  
傍から見れば動物相手に怒鳴ってる俺のほうがおかしいんだろうがそんな所まで頭が回らない、  
山の中で本当に良かった、街中だったら病院に連れて行かれる所だ、  
『おかしいのはお前の頭だけだ!!順応力がなさ過ぎるぞ!』  
「頭の中まで馬鹿にしやがったな!脳みそ少ない狐のくせに!!」  
だんだんヒートアップしていく一人と一匹、そしてそれをいつ止めようかウロウロするもう一匹、  
『あったまに来たぁ!!見ていろ人間、いまお前の頭に入っている物と私の頭に入っている物が  
変わらないと言う事を教えてやる!』  
『!!?っ、ちょっと姉さん!相手は人間なんですよ?』  
『なぁに、少し脅かしてやるだけだ、そうでもしなきゃ私の気がすまん。おい間抜け面!今から  
お前の顔をもっと面白おかしく変えてやる、顎が外れないようにしっかり押さえてろ!!』  
そう言うやいなや目の前の狐が光りだし、周りにも青白い炎…いや、狐火が現れる、  
狐の身体が眩い光に包まれ俺は手で光を遮る、光は一瞬、恐る恐る手を下ろす俺の目の前には…、  
『どうだ!無知で低脳で間抜け面の人間が、』  
美女だ、美女が仁王立ちしている…裸で、  
『クックックック、どうだ人間、驚きすぎて声も出ぬか。…何を赤面しておる?そうかそうか、余りにも  
絶世の美女なんで惚れたかwカッカッカッカw』  
あぁ、透き通るような白い肌、腰まである艶やかな金色の髪、勝気そうなつり目だが茶色がかった  
瞳はくりっとしている、声は透き通ったソプラノ、そして、その…魅惑的な身体、出るところは出て  
締めるところは引き締まってる、そんな言葉がピッタリだった、そして情けないことに奴の言う  
とおり、俺は一目惚れしてしまった。  
 
『ねっ!?姉さん!!』  
『なんだ騒がしい?』  
『ふ、服…服着てない、』  
『…へ?………キャアァァァァァ!!!???』  
バッっと両手で胸と下半身を隠し女の子座りになる狐もとい美女、そして今にも鼻血を噴出しそうな  
ほど真っ赤になった俺  
『クソッ、人化に固執しすぎて服にまで気が回らなかった…』  
赤い顔でなにやらブツブツ言っていたと思ったら急に顔をこっちに向けてきた、  
『何時まで見ている!向こうを向け!!』  
あ、ああ、悪い。と言いつつ後ろを向く、5秒もたたないうちにもういいぞ、っと言われまた向き直る、  
今度はしっかり服を着ていた、いや、服という表現はおかしいか、なんせ…  
「…巫女服…?」  
白と赤の上下はどこからどう見ても巫女服だ、  
『なんだ?どこかおかしいか?』  
いや、おかしくはないんだろう、服装としては、ただ現代の日本において巫女装束で出歩くのはどうか  
と思う、一部の地域や行事以外では。まあ裸じゃないだけいいか。  
『そっそれより、さっきの話だが………み、見たか?』  
いやぁ〜もうナイスなバディは心行くまd(ry なんてことはもちろん言えるはずもなく、なにを?  
なんて平凡な応答を口にする、  
彼女(今の見た目では)は探る目つきで俺を見ていたが赤い顔で …いや、よい。とだけ呟くと、さっと  
顔色がもどった。  
『どうだ人間、私の頭とお前の頭、違いなどないだろ。いや、いろんな術が使えると言う点ではお前  
より脳の使用率は高いと言えるな。』  
フフーンと言わんばかりの勝ち誇った表情で喋ってくる、悔しいが彼女の言っていることは正しいのだろう。  
「…まぁ悪かったよ、さっきは。」  
『おい、それだけか?』  
「おいおい、なんだよ?土下座でもしろっていうのか?」  
せっかく謝ってやったのに  
『そんな事ではない、お前、私を見て何も思わないのか?』  
はぁ?何って、お前は狐だろ?と言うと彼女はハア〜とため息をつき  
『人に成れるんだぞ?昔会った人間は喋っただけで一目散に逃げて行った。』  
「狐が人を化かすのは当たり前の事だろう、」  
そう言うと、 まったく、本当にこいつは…ある意味大物かも知れん と肩をガックリさせながら呟いた。  
 
 

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