「拓海?」  
 今日も今日とて、昼休みの俺の机(と隣の机)で弁当を広げている俺と詩織。  
 深い緑色の瞳がセクシーです。ていうか、もうこの瞳に見つめられていないと禁断症状がでるようになりました。  
おめでとう俺。ハッピー詩織ジャンキー。  
 そんな気分を悟られないようにクールに答えてみる。といっても友人どもの評によると「デレデレじゃんお前」だそうなんだが、  
自分じゃ全く判らない。クールじゃないのか俺?  
 まあそんな俺は  
「なんだ?」  
 と詩織に訊き返す。  
「あのね……今日も焼いてきたの」  
 もう「何をだ?」と尋ねる気力すらない。  
 俺的対ワッフル最終兵器の「お前だー」攻撃も、この教室という戦場では使用しようがない。  
 詩織は幸せを幸福というソースで煮込んで多幸感のシロップをかけてハッピーをトッピングしたみたいな笑みを  
浮かべて俺に話しかけてくるわけで。  
 俺としてはその蕩けそうな微笑を見たら無条件で頬が緩んでしまうのを止められないわけで。  
 
 そんな俺たちを見る周囲のクラスメイトの目。  
   
  ぬ   っ   頃   ス  
 
というロンリーウルフどもの灼熱の視線と  
 
 
  裏 山 ス ィ ッ !  
 
という女子たちの目。  
 
どっちにしろ、死にそうだ。  
「あのね、今日はね……チーズと細切りハムを挟んでみたの」  
 
あ、それはちょっとだけ期待しちゃうかも。  
だって死ぬほど甘そうな気配がしないもの。  
 
「それいいな。俺わりとプレーンな生地のほうが好きかも」  
 練乳とグラニュー糖を生地に練りこむのはちょっと勘弁、というニュアンスを言外に含ませて見る俺。  
 でも通じないんだよな(涙)  
「いつもの、たっぷり、こもってるから、美味しい……よ?……きっと」  
 
 こんなに傍若無人な愛情表現をしてくる割には人前で愛だとかスキだとかという言葉は口に出来ない詩織。  
 奥ゆかしいヤマトナデシコっぽくて俺はまたそーゆーとこに惚れてしまう。なんだかな。  
 
 詩織に言わせると、強力粉と薄力粉を同じくらい、砂糖とグラニュー糖もその半分くらいの量、あとは蜂蜜を  
大さじ四杯と卵を二つ、牛乳を200mlとドライイースト、溶かしバターに練乳を半缶、バニラエッセンス少々と  
ボウル山盛り10杯の愛情をよく混ぜて焼くといいワッフルになるらしい。  
 
てゆーか愛情はともかく糖分は多すぎる気がする。俺は10代で糖尿病にはなりたくないと思うんだが、  
そこいらへんみんなはどう思うかね?  
 

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