「美冬エライっ!でも、そんなことわざわざ聞きに来るなんて子供ねー」  
 休み時間で騒がしい教室によく通る女の声が響いた。一瞬、教室中の視線が声のした方に集まる。  
 髪の毛をほとんど金色に近い茶色に染めた、可愛らしい、しかし、軽薄そうな女生徒が机の上に座っている。ただでさえ短いスカートなのに、足を組んでいるせいで下着が正面からだとまともに見えてしまいそうだ。  
 彼女の近くにいる数人の男子生徒は、今にもよだれをたらしそうな顔で彼女のふとももに釘付けになっている。  
「ばっ、ばか!こ、声が大きいっ」  
 慌てて美冬と呼ばれた女生徒が、茶髪の女性の口を塞ごうと飛びかかった。こちらの生徒は対照的に真面目そうな雰囲気の女の子である。  
「そりゃ明日香はその……経験豊富かもしれないけど」  
「そうね。誰かみたいに空手ばっかりやってたわけじゃないからね」  
 周りの男子生徒に色気を振りまくように、明日香と呼ばれた女の子が、髪をかきあげて見せた。大人びた仕草と可愛らしいショートカットというアンバランスさが、少女のコケティッシュな魅力を引き出していた。  
「確かにそうだけど。でも仕方ないじゃないか、そういう相手がいなかったんだから」  
「で、相手ができたから私に聞きに来たんだ」  
 明日香の言葉に美冬は頬を桜色に染めてうつむいてしまう。  
「けなげだよねー。初体験について友達に聞きに来るなんて。よっ! 女の鏡!」  
 周りの生徒がぎょっとした顔で美冬を見た。注目を集めて美冬がますます縮こまる。  
「こ、声が大きい!」  
「ごめん、ごめん。もうすぐ休み時間終わっちゃうし、続きは放課後ね」  
「わ、わかった」  
 顔を隠すようにして美冬が自分の席に戻るのを見ながら、明日香は内心、焦っていた。  
「どうしよ……」  
 まさか美冬のほうが自分より先に経験してしまいそうになるとは思ってもいなかったからである。  
 
 その今風の女子高生といった格好と言動、メリハリの利いたスタイルのせいで明日香は周囲からはかなりの遊び人であると思われていたし、自分でもそれを肯定してきた。  
 が、事実はまったく違う。  
 実は明日香はセックスはおろか、キスもしたことがないのだ。せいぜいボーイフレンドと手をつないだことがあるぐらいである。  
 人から聞いたことをさも自分の経験のように語っていたのだ。ようするに明日香は耳年増だった。  
 最初につまらない見栄から経験豊富で遊んでいるふりをしてしまったため、嘘は嘘を呼び、誤解は誤解を呼んで、とうとう学校一の遊び人という称号を頂戴してしまった。  
 起立、礼、着席。クラス委員の声にあわせて体に染み込んでいる動作をこなす。  
 普段なら教科書を開くところだが、今は授業よりも美冬のことをどうするかだ。  
 教師が黒板になにか書き出したが、ちらりとも見ずに明日香は手にしたペンを器用にくるくる回しながら考える。  
 いままでは美冬に経験者ぶって色々と言ってきたが、それではごまかせなくなるだろう。  
 しょせんは頭の中の知識だけだ。実際に経験してしまえば明日香の言葉など実体験ではないと美冬に気づかれてしまう。  
 どうしよ……。  
 ノートに落書きを増やしながら明日香は頭を抱えた。  
 自業自得とはいえ、いまさらどうしようもない。  
 いっそ実は今まで言ったことは全部嘘だった。と、白状して謝ってしまおうか。  
 いや、そんなことはできない。明日香のプライドが許さない。  
 けれどまさか美冬がフェラチオなんかしていたとは。明日香は先程の美冬の相談を思い出す。  
「実は、その……セックスはまだなんだ。けど……フェラ……チオはしちゃって。そのうちセックスも、あの……すると思うから、どんな感じなのか明日香に聞きたくて」  
 ものすごくか細い声で、途切れ途切れに言われたため、何度も聞き返すはめになったが、そのような内容だった。  
 空手一筋だった友人からセックスなんて言葉が出てきたことにまず驚いたが、さらに驚いたことにフェラチオはすでに済ませているという。  
 
 くそー、まさか美冬に先を越されるなんて。あらためて思い出して、なんだか悔しくなってしまう。  
 とはいえ、どうすれば嘘がばれずにすむのか。  
 明日香は考えれば考えるほど状況が絶望的に思えてきた。  
 解決法が浮かばないまま時間が過ぎていき、チャイムが鳴って授業が終わってしまった。次の授業が終わればもう放課後になってしまう。  
 始まったときと同じようにクラス委員が号令をかける。機械的に礼をした瞬間、明日香に素晴らしい解決法が閃いた。  
 悩み苦しんでいた自分が馬鹿みたいだ。明日香は途端に晴れやかな気分になった。  
 休み時間になり、不安そうに自分を見詰める美冬にひらひらと手を振って、明日香はトイレに行った。実際に自分が経験するまでは美冬と話をしてぼろを出したくなかったからだ。  
 しばらく鏡の前で時間を潰し、チャイムと共に教室に戻る。  
 挨拶も終わり、教師の声が教室に響き始めた。  
 五分ほど経った頃、明日香はいきなり手を上げた。  
「すいません」  
「どうした?」  
 明日香は額に手をやり、頭が痛いというアピールをする。  
「ちょっと体調が悪いみたいで……。保健室に行ってもいいですか?」  
「そうか、わかった。おい、このクラスの保険委員は誰だ。連れていってやれ」  
 あっさりと教師の許可を得ると、クラス委員に付き添われて明日香は教室を出ていく。  
 予想以上に上手くいった。もっと先生になにか言われると思っていたがあっさりとしたものだった。  
 廊下に出て、自分に付き添っている保険委員を密かに観察する。  
 高校生というには少し幼い感じのする少年で、男らしいというよりは可愛らしいというタイプだ。  
 この保険委員、山田は実は過去に明日香に告白したことのある男子生徒である。  
 明日香はよく男子生徒から付き合ってくれと言われるのだが、そのほとんどはこの女なら簡単にやらせてくれるだろうという下心が透けて見えるものだった。  
 
 しかし山田はそうではない、真剣な気持ちを持っていた数少ない男の一人だった。  
 山田に告白されたときに、付き合ってもいいかな。と、思ったのだが、当時の明日香は恋愛というものに恐れを感じてしまったため、つい断ってしまったのだ。  
 それでも山田は一途に明日香のことを想い続けているらしく、いまだに目が合うと恥ずかしそうに頬を染めて目をそらしてしまう。  
「ねぇ山田」  
「な、なに?」  
 名前を呼ばれて、少し嬉しそうな顔で山田は明日香を見た。  
「つらいんだったら肩貸すよ」  
「あんたさぁ、今も私のこと好き?」  
「えっ?」  
 突然の質問に山田は目を白黒させている。保健室に連れていかなければならない病人からそんなことを尋ねられるとは夢にも思っていなかったのだろう。  
「えっと……その」  
「好きなの、嫌いなの? はっきりしなよ」  
 正面から明日香に見詰められて山田の顔が真っ赤になる。  
「すっ、好き……です」  
 山田は精一杯の勇気を出して答えた。  
 それを見た明日香の顔に安堵の表情が浮かぶ。そうだろうとは思っていたが実際に確認するまではやはり不安だった。なにより、ここで嫌いなどと言われては計画がすべておじゃんになってしまう。  
 明日香のほっとした顔の見て山田は少し嬉しくなった。どうやら自分は振られたけれど嫌われているわけではなさそうだ。と、思ったのだ。  
「ふぅん……。じゃあさ……」  
 山田が今度はなにを言われるのか。と、緊張した面持ちで明日香の言葉を待つ。  
 もしかして、もしかするかも。思春期の少年らしい淡い期待が山田の胸に膨らんでいく。握った手が汗ばんでいくのがわかる。  
「私にフェラチオしてもらいたい?」  
 山田はぽかんと口を大きく開け、間抜けな顔を明日香に晒した。  
 
 山田は予想もしていなかった単語の登場に一瞬、意識がどこかへ飛んで行ってしまった。  
 もしかして付き合えるのだろうか。そんな夢は見たけれど、目の前のクラスメートがなにを言っているか理解できない。自分はからかわれているのか。  
 山田はあからさまに肩を落とした。  
「早く……保健室行こうよ。具合良くないんでしょ」  
 明日香を促し、山田はとぼとぼと廊下を歩いていく。  
「ちょ、ちょっと。どこ行くのよ」  
「保健室だよ。言ったじゃないか」  
「なんで? あたしの話聞いてないの? なんとか言えってば」  
 明日香が山田の腕を掴み、引き止める。  
 足を止めた山田は振りかえると、強ばった顔を明日香に向けた。  
「僕の気持ちで遊ばないで欲しい。遊んでるらしいってことは聞いてるけど、こんなふうに人をからかって楽しいの? 自分が振った男を馬鹿にするのはそんなに楽しいの?」  
 悔しそうに唇を噛み締めて明日香を睨んでいる。  
 明日香は自分の言葉が誤解を招いたことを悟った。どうやら馬鹿にされていると山田は思ったらしい。  
「ち、違うって。冗談なんかじゃなくて」  
 焦って山田に声をかけるが、山田は一人でどんどん歩いていってしまう。  
「て言うか、待てって言ってんでしょ、人の話聞けってば。勝手に勘違いしないでよ」  
 走って山田に追いつくと、そのまま止まらずに正面に回り込んだ。  
「なにが? そんないきなり好きかって聞いて、好きって答えたらフェラチオして欲しいかなんて。僕を馬鹿にしてるとしか思えないじゃないか」  
「違うって、私馬鹿だから上手く言えないけど、ふざけてんじゃないって」  
「だったらどうして急にそんなこと言い出したの?」  
「それは……ちょっと説明しにくいんだけど、私にも色々わけがあんの」  
「わけ?」  
 山田が怪訝な顔をした。  
 それはそうだ。一体どんな理由があればフェラチオをしなければならないのか。  
「もしかして……誰かに脅されてるとか?」  
 しばらく考えた末に山田が出した結論を口にする。自分で言ってみたものの納得がいかないのだろう。妙な顔をする。確かに、脅迫者が自分に奉仕を命じるならともかく、他人の山田に奉仕をさせる意味がない。  
 
「そんなんじゃないって。ほんとに自分からやってることだから」  
 明日香がぱたぱたと手を振って山田の言葉を否定する。  
 いきなりフェラチオしてやると言うのは少々急ぎすぎたかもしれない。しかし、フェラチオしたことがないから、経験しておきたかった。などと言えばよけいに相手を混乱させるだけだろうし。明日香は頭を悩ませた。  
「だから、ようするに、私はあんたが嫌いじゃないからフェラしてあげるって言ってんの。文句ある!」  
 小難しいことを考えるのが苦手な明日香は結局、開き直った。  
 偉そうな明日香の態度にもともと余り気の強くない山田はたじたじとなる。  
「いや、別に、文句なんてないけど……でも」  
「でもなに!」  
「なんでもないです」  
「だったら今からしてあげるから」  
「はい……」  
 腰に手をやり、踏ん反りかえって迫ってくる明日香の迫力に押され、山田はつい頷いてしまった。  
 その途端、明日香の顔に底抜けに明るい笑みが広がった。つられて山田も笑い返してしまう。  
 明日香が山田の腕を取って歩き出す。まるでスキップでもしそうな勢いだ。  
「よし、じゃあ行こう」  
「どっ、どこに?」  
 好きな女の子に触れられて慌てる山田。  
 しかし明日香はそんなことに構わず、ぐいぐいと山田を引っ張って行く。  
「フェラできるとこに決まってんでしょ。あんた、こんな廊下で咥えさせる気?」  
 咥える。という直接的な言葉がこれから行なうことを想像させて、山田は赤くなった。  
「で、でもそんなとこあるの?」  
「あるって……ここ!」  
 
 明日香が自信満々に立ち止まったのは女子トイレの前だった。  
「……ここ?」  
 丸と三角が組み合わされた女性を表すマークが赤で記されている表示を見上げながら、山田が不安げな顔をした。  
 それとは対照的に明日香が自身たっぷりの顔で山田を見る。  
「そ。ここなら誰も来ないから大丈夫だって。授業中だしさ」  
 にっこりと笑いかけられて山田に逆らうことはできなかった。  
 非常に勇気を要したがなんとか女子トイレの個室に侵入する。ただでさえ男の山田にとっては女子トイレに入ることは緊張するのに、好きな女の子と一緒ということで、心臓が口から出てしまいそうだった。  
 少年と向き合ったまま、明日香は後ろ手でドアの鍵をかけようとした。が、手が震えて上手く錠をおろすことができない。何度かの失敗のあと、音をたててドアがロックされた。  
 実際にはそれほど大きな音ではなかったのだが、明日香にはそれがひどく大きく聞こえた。  
 山田も同様だったらしく、目をきょろきょろと動かし辺りをうかがった。二人の他に誰かがいるはずもないのだが。  
「どっ、ど、どうするの?」  
 そんなのこっちが聞きたいわよ。明日香が心の中で悪態をついた。  
 明日香は明日香で緊張していたのだ。心臓がバクバク音をたてて明日香の心を煽りたてている。  
 やっぱり止めようかとも思ったが、いまさら引き下がるのはなんとなく悔しい。ここまできたらやるしかない。  
 明日香は覚悟を決めるとゆっくりと口を開いた。  
「とりあえず……そこに座って」  
 視線で便器を指し、山田を座らせる。  
 おずおずと、まるで檻に入れられた小動物のように山田が便器に腰掛けた。  
「こっ、これでいい?」  
 山田の言葉が届かなかったのか、明日香は緊張した面持ちでドアの前に立っているだけでなんの反応も返さない。  
 
「……吉崎さん?」  
 おそるおそる手を伸ばし、山田が明日香に触れようとする。  
 山田の指が触れたか、触れないかというところで、明日香はびくりと体を震わせた。がたり、とドアが揺れる。  
「なっ、なに? 急に名前呼ぶなってば」  
「ご、ごめん。座ったけど」  
「そ、そう……。じゃあ、今からフェラしたげる」  
「う、うん」  
 できるだけゆっくりと明日香はしゃがみこんだ。視線の先にはちょうど山田の股間がある。  
 妙な沈黙があたりを包み、緊張と興奮に満ちた山田の吐息だけが聞こえた。  
 そろそろと明日香の手が山田のズボンに伸ばされる。  
 うわー、うわー。私、今からほんとにフェラするんだ……。  
 なんでこんなことになってんのかもうわかんなくなっちゃったけど、フェラだったらセックスと違って初めてが痛いなんてことないから大丈夫だよね。  
 別に減るもんじゃないし……。  
 細く綺麗な指がジッパーにかかった。ちりちりと音をたてて、ジッパーが降ろされていく。  
 ぱっくりと開かれたチャックからは、カラフルなトランクスがこんもり盛り上がって覗いていた。  
「山田ってトランクス派なんだー。なんか以外」  
「そ、そうかな」  
「なんかブリーフ履いてそうなイメージだったのになー」  
 自分の緊張を誤魔化そうと、明日香はわざと軽口を叩いて見せる。もっともそんなことをせずとも、山田はそれ以上に緊張していたので気づかれることはなかっただろう。  
 再び、どちらもしゃべらなくなってしまった。黙って、慎重な面持ちで明日香はトランクスに触れた。  
 
 熱い。というのが明日香の最初の感想だった。  
 うっわー。もう勃っちゃってるんだー。  
 明日香は場違いなぐらい呑気なことを思う。そのまま優しく、盛り上がりに沿って撫でてみる。  
「う……あ……」  
 無邪気な明日香の行動で山田はうめき声を洩らした。  
 耳聡く快感の声に気付いた明日香は、それに気を良くして、こんもりと盛り上がった丘に掌を沿わせるとニ、三度揉んでみた。  
 山田がせつない顔をするのが目線を上げた明日香に見えた。  
 山田のやつ、気持ち良さそうな顔してる。おちんちん触られるのってほんとに気持ちいいんだ。  
 げっ、なんか手の中でどんどん膨らんで固くなってる。すごい!  
 ほんとはこんなのアソコに入れちゃうんだぁ。そりゃ痛いよねー。  
 驚きをできるだけ顔に出さないようにして、手馴れたふうを装う明日香。  
 さわさわと敏感な部分を弄繰り回されて山田の興奮はどんどん増していく。しかし、トランクス越しのため、その快感は頂点を極めることはない。もどかしい思いが山田の胸に湧きあがる。  
 しかし、引っ込み思案な性格が災いして直に触ってくれとも言えず、山田は甘美な拷問を受けているような気持ちになった。  
 別に明日香も意地悪をしていたわけではない。単純に踏ん切りがつかなかったのだ。勢いでここまで来てしまったものの、土壇場になって怖くなったのだ。  
「こ、このままじゃしにくいし……やっぱ立って。それと……ズボン脱いでよ」  
 少しでもそのときを遅らせようと、明日香はそれらしいことを言って時間を稼ごうとした。  
「う、うん」  
 山田がギクシャクと立ちあがり、ごそごそとズボンを下ろして、トランクス姿になった。  
 数十秒の時間しか稼げなかったが、明日香にとっては十分だった。もともとのあっけらかんとした軽い性格もあってか、半ばやけくその決心を固める。  
 
 ここまできたらやるしかないって!  
 別に死ぬわけじゃないし。  
 私も山田のこと嫌いじゃないし、ていうか結構好きな方だし。  
 よし!  
 覚悟を決めて、トランクスに手を掛ける。明日香の動きに合わせて山田が腰を僅かに浮かせる。明日香は、ぐっ。と顔を近づけると、  
「いっせーので」  
 その場にそぐわない掛け声と共に、一気にトランクスを引き摺り下ろした。  
 ふるん。と、大きく揺れて、山田のペニスが飛び出した。そのまま勢い余って明日香の顔を叩く。  
「ぅわっ! 痛っ!」  
 鼻先に衝撃を感じて、明日香がドアにぶつかるようにして飛びのいた。  
 実際には驚くほどの痛みではなかったのだが、ペニスに叩かれるなど予想外の出来事だったのだから明日香を責めるのはかわいそうと言うものだろう。  
「ちょっ、なに?」  
「ご、ごめん」  
 鼻に手をやっている明日香を見て、山田が申し訳なさそうな声を出した。  
 本当は顔を近づけすぎた明日香が悪いのだが、そんなことは二人には関係ない。  
「もー、勘弁してよねー……」  
 明日香が言葉を途切らせた。初めて生で見る男のものに目を奪われてしまったのだ。  
 頭では目を逸らしたいと思っているのだが、目は釘付けになって離すことができない。  
 今まで無修正のビデオなどで見たことがあるので平気かと思っていたが、先ほど感じた熱が掌に残っていて、それが明日香をおかしくさせている。  
 一方、山田もとても平常心ではいられなかった。トイレにきた時点でわけがわからなくなっていたのだが、自分のペニスを好きな女の子に見られていることで、いような羞恥を感じていた。  
 ジロジロと遠慮のない視線で見つめられて背筋がぞくぞくするような気分になってくる。明日香の視線が自分のものを這いまわるたびに、ペニスがぴくんと勝手に動いてしまう。  
 
 うわ、うわー。動いてるよ。  
 でも、なんかビデオで見たのと違う。  
 ビデオのやつはもっといかめしい感じだったけど……。  
「ねぇねぇ。山田のって普通と形が違わない?」  
「え? ……あの、僕、仮性包茎だからだと思う……」  
 明日香の遠慮ない言葉に少々傷つきながら山田が答える。  
「あー。これがカセーホーケーか。じゃあ、剥いたらいいんだよね」  
 そそり立ってはいるものの、いまだ皮を被っているそれに、明日香は無造作に手を伸ばした。  
 山田は慌てて明日香を止めようとしたが、間に合わなかった。  
 ちょうど亀頭のあたりを掴むと、ずるんと、余っている皮を剥いてしまった。  
「あっ!」  
 異様なシチュエーションに興奮しきっていた山田にとって、敏感な亀頭に加えられた刺激は強すぎた。  
 普段は包皮で守られているせいで敏感になっている部分が急に外気に触れる。それと共に、明日香の指が亀頭を掠めた。  
 
「っ! あぁ……!」  
 情けない声を上げて、山田は射精してしまった。かくかくと空腰を使って明日香の顔に白いシャワーを浴びせかける。  
「えっ!? え? うわっ」  
 慌ててペニスから指を離すが、もう遅い。突然のことに明日香は気が動転してただ悲鳴をあげることしかできない。  
 騒ぐ明日香の顔がどんどん汚されていく。  
 熱いっ! なにこれ? うわっ、キツイ匂い。  
 あー、でもおちんちんがあんなに熱いんだから、精液も熱いよね。  
 違うって、そんなこと考えてる場合じゃ……あ! これ顔射だ。  
 ちょっと、私初体験の前に顔射しちゃったよ。  
 冷静なのか混乱しているのか、明日香の頭で様々な思考が渦を巻く。  
「ちょっ、山田! とめろってば。うわっ!」  
 明日香の言葉が耳に入らないのか山田は惚けた顔をして、快感に震えている。  
 悲鳴をあげたせいで開いた明日香の口に精液が飛びこんできた。どろりとした塊が明日香の舌の上に乗る。  
 反射的に舌を動かしてしまったので、その気もないのに精液を味わうはめになってしまう。  
 うえっ、凄く不味い。美味しいとか全然嘘じゃん。  
 彼氏ができたらこれ舐めなきゃいけないの?  
 顔をしかめながら、なんとか飲み下す。その直後、吐き出せば良かったと後悔するが後の祭である。  
「もー! なにこれっ! マジ最悪! うえぇ!」  
 顔中をベトベトにして明日香が悪態をついていると、ようやく山田が射精を終えた。  
 膨れっ面の明日香を見て、自分の行動に気付いたのか山田が青褪めた。  
「ごめん! あの、大丈夫? ほんとにごめん!!」  
 泣きそうな顔で謝っている山田を見て、明日香の怒りも収まってきた。必死で謝っている山田がなんだか可愛く思えてくる。  
「こっ、これ使って!」  
 山田はからからとトイレットペーパーを巻き取ると、あたふた明日香に手渡した。  
 明日香は黙ったまま、顔の汚れを拭っていった。  
 
 明日香が乱暴に手を動かすと、わしゃわしゃと渇いた音をトイレットペーパーがたてる。  
 その様子を山田が恐る恐る見守っている。山田の胸の中は、情けなさと恥ずかしさでいっぱいだった。  
「ほんとにごめん。まさか急にあんなことになるなんて思わなくて」  
「もういいよ。別に気にしてないからそんなに謝んなくてもいいってば。でも……出ちゃったから、もうフェラチオはできなくなっちゃったね」  
 残念そうに明日香が山田のペニスを見ると、一回出したというのにその硬さを失わず、元気なままでいる。  
 それどころか、明日香の目には皮を剥いたせいで亀頭が露出して、いかつさを増したように見えた。もっとも皮が剥けたといっても、かりの部分に引っかかって半分ぐらいだけで完全に剥けきったわけではないのだが。  
「なんで? 男って一回イッちゃうとしばらく待たないといけないんじゃないの?」  
 興味津々といったふうに明日香はそろそろ手を伸ばしたが、先程の惨事を思い出して慌てて引っ込める。  
「普通はそうなんだけど……。あの、すごく興奮してるからだと思う……」  
 恥ずかしそうな顔をして山田が自分のものを見た。とてもじゃないが明日香の顔を見ることなどできない。主の思いとは関係なく自分のものが自己主張しているのが情けなかった。  
 明日香はというと、感心した様子で、ふーん。だとか、へー。だとか声を出して頷いている。  
「あっ! つーことはさぁ、山田は私で凄く興奮してるってことだよね? なんか嬉しいかも」  
 にっこりと無邪気に笑う明日香。  
 
 その場にそぐわない爽やかな笑顔とあけすけな言葉が山田の興奮を煽った。自分でしごいて静めてしまいたいが、そんなもったいないことはできない。目の前の美少女が口でしてくれると自分から言ってきているのだから。  
「こんだけ勃ってたら咥えられるよね? あー……」  
 自分がどれだけはしたないことをしているかにまるで気付かずに、明日香は大きく口を開けて、精液の残滓がこびりついている肉棒に顔を近づけた。  
「……むっ」  
 まるでアイスキャンデーを食べるような気軽さでぱくりと口に含む。  
 明日香の口中に生臭い匂いが広がった。  
 あんまり美味しくないな、それになんか変な匂いがする。  
 でも、すごく熱い……。触ったときも思ったけど、やっぱり熱い。  
 うえっ! 苦いっ! なにこれ? あっ! 残ってた精液だ。きちんと拭いてから舐めれば良かったー。  
 明日香がどこか呑気な感想を抱いていたころ、山田は初めての快感に感激していた。  
 気持ちいい、暖かくて、凄い……。  
 あっ、またイッちゃいそうだ。まずい……。  
 山田が明日香に唇を離すように言おうとしたちょうどそのとき、明日香が口内に溜まった唾液を飲み込もうと口をもごもご動かした。  
 柔らかく暖かい舌がペニスを這いまわる。明日香にその気はなかったが、山田にとってはじゅうぶん愛撫として感じられた。  
「は……っう」  
 うめき声を上げたものの、なんとか射精を我慢して安心した山田を更なる刺激が襲った。  
「ひょっと、いひひょうりらっららいっれよ」  
 ちょっと、イキそうになったら言ってよ。明日香がペニスを咥えたまま喋り出した。  
 
 当然、なにを言っているのか山田には皆目見当もつかなかったが、舌がうねうね動き回り、唇が閉じたり開いたりして硬い肉を締めつけ、山田の我慢は限界に達しそうになる。  
「ひいれるの?」  
 明日香が返事がない山田を上目づかいで見上げたそのとき、歯がピンクの先端をを引っ掻いた。  
「う、あぁっ!」  
 イッたばかりの敏感な亀頭にこの刺激は強すぎた。山田の我慢はあっさりと崩壊してしまう。  
「でっ、出る」  
「ふむぅ! んんっ!? んー」  
 異変を感じて口を離そうとする明日香の頭をむりやり抑えつけ、山田は喉の奥まで自分のものを突っ込んだ。  
 なんとか逃れようと暴れる明日香の動きは山田にとって心地良い刺激でしかなかった。  
 明日香の口の中で熱い塊が暴れまわったかと思うと、先端が膨らんで、勢いよく白い欲望を吐き出し始めた。  
 山田は恍惚の表情で腰を明日香の顔に押し付けている。  
 陰毛に顔をくすぐられながら、明日香は山田の豹変に驚いていた。普段はどこか頼りない感じの山田がこんなふうに明日香の意思を無視するような行動に出るとは思わなかったからだ。  
 喉を突かれ、涙目になって苦しむ明日香の口が青臭い粘液で溢れかえった。  
 抑えつける手をなんとか振りほどいて、口から肉棒を吐き出す。同時にどろりと白いゼリーも口の端から零れ落ちた。  
「ぅえっ! けへっ、けほっ……ちょっと山田! あんたなに考えてんのよ」  
「はぁー……。凄く……よかった……」  
 力無く、山田は便器にへたりこんだ。  
 
「あんたが気持ちよくてもこっちは最悪だっつーの!」  
 陶然としている山田を睨みつけ、口元を拭いながら明日香がまくしたてた。  
「むりやり飲ませるし、やめろっ言ってたでしょ。この馬鹿! こっちは苦しいのに一人で気持ちよくなるな!」  
 口の周りをベトベトにしたまま、明日香が顔を山田に寄せる。  
「つーか、こんなにすぐイカれちゃったらなんの経験にも、練習にもなんないじゃん!」   
「え?」  
 腑抜けた顔で聞き返してきた山田を見て、明日香がしまった。と、口を抑えたが手遅れだった。  
「いや、違うって。別にそんな、フェラしたことないとかじゃなくって。その、あれよ、ね。わかるでしょ? だからね、まだセックスしたことないから……」  
 焦って、喋る端からぼろが出ていく。最初の言葉だけならまだごまかしもきいただろうが、動転した明日香はぺらぺらと自分の秘密を喋り続けてしまった。  
 数分後。  
 頭を抱え込みしゃがんでいる明日香の姿があった。  
「あー、もー……私の馬鹿……」  
「てことは、吉崎さんって……こういうことしたことないの?」  
「え? ああ、そうよ。悪い」  
 明日香はふてくされた態度で立ちあがると、座っている山田を威圧するように見下ろした。  
「別に悪くないよ。それどころかなんか嬉しいかも」  
「なんでよ。まさかこんなことで私の弱みを握ったとか思ってんじゃないでしょうね。言っとくけど、別にこんなのなんでもないんだから」  
「い、いや、そんなんじゃなくて。やっぱり吉崎さんがいい人だって思って」  
「どーやったらこの状況で私がいい人になれんのよ」  
 明日香が呆れた顔をする。  
「だって、友達のためにこんなことまでできるんだし……」  
 
 上目づかいで見上げられて明日香は驚いた。自分の嘘をつきとおすためにやったことなのに褒められるとは思ってもいなかったのだ。しかも自分に好意を抱いているのを知って、利用しようとした相手から。  
「いや、違うって。自分のためだって」  
「そんなことないよ」  
 にっこりと笑いかけられて、明日香は呆れかえった。どこをどう曲解すれば自分がいい人だという結論が出るのだろうか。凄いお人よしだ……。しかし、そう思うのと同時に、なんだかこの底抜けのお人よしが可愛くなった。  
「ま、細かいことはいいって。とにかく今日はもう二回もイッちゃって無理だろうし、解散!」  
 勢いよく言ったものの、明日香は困り果てた。結局ほとんどなにもしないまま美冬に会うことになりそうだ。  
 どうしよう。とぶつぶつ呟く明日香の目に驚くべきものが飛びこんできた。萎えることなく上を向いている山田のものである。  
「うわっ! ちょっと凄くない? なんでこんなに元気なの!? でも、これでちゃんとフェラできるじゃん」  
 嬉々として山田の前に座りこもうとした明日香を山田が無言で制止した。  
「なに?」  
「あの、いまさらだけどやっぱりだめだよ。こういうことはやっぱり好きな人としないといけないと思う」  
 こんなこといえる立場じゃ無いと思うけど。と、山田は苦笑いしながら言った。  
 そのままズボンを履きなおし、立ちあがろうとしたそのとき。  
「だめっ!」  
 明日香が山田の肩を抑え、そのままの勢いでのしかかった。ちょうど山田のひざの上に明日香がちょこんと座る形になる。  
 
「私が嫌いな人にフェラしたいと思う?」  
「でも……嫌いじゃないだけなんでしょ」  
 うっすらと化粧の施された綺麗な顔を間近にして、山田が赤面した。お互いの息遣いがわかるほどの距離で異性と接するのは初めてだった。  
 山田の鼻先をうっとりするような良い香りが掠めた。明日香がつけている香水の匂いだろうか。いや、明日香自身の香りに違いないと、山田はなぜか確信できた。  
 明日香も、線の細い割に、がっしりした感触を感じて、自分が迫っているのは男だということを実感する。なにより、直接は見えないが、股間の盛り上がりの中身が雄であるということを主張していた。  
「最初はそうだったけど、なんか山田って可愛いし」  
「か、可愛いって……」  
 山田が女の子に可愛いといわれて思わず憮然とした表情になる。男としてちょっと情けないと思ったのだ。  
「凄いイイやつだしさぁ。好きになっちゃった」  
 あっさりと告白されて山田はうろたえた。夢にまで見た瞬間だが、こんな状況で、とは夢にさえ見なかった。  
「そ、そんな軽くていいの?」  
「いいって。あ! もしかして山田がいや?」  
 想い人に哀しい目で見つめられて山田は白旗を振るしかなかった。  
「い、いや、そっんなことないけど」  
 変なアクセントになってしまったが、山田がなんとか返事をする。  
 明日香が抱きついてきた。あまりの笑顔に先程の泣きそうな顔は嘘だったかと山田は思った。が、それでも好きな人と想いが通じ合ったのだから、騙されてもなんら問題無い。  
「よし! じゃ、両想いになったところで続きしよっか」  
 彼女の体温を感じて山田が陶然としていると、明日香はあっさり身を離し、山田のズボンを降ろしにかかった。  
 

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